涼しげな音色が響くガラス風鈴
このお話は、僕が幼稚園児の頃の出来事になります。
僕は、園児の中でも背が低く、年齢よりも更に幼く見られる事が多かったのです。
近所でも、お家に招かれる事が多く、よくお菓子や果物を頂いていました。
ある夏の日に、いつもはお呼ばれしない近所のお家に、僕1人で行く事になったのです。
僕は、居間でお菓子を頂いた後、早々に帰ろうとしました。
すると、近所のおばさんは言いました。
「すぐ帰って来るから、お留守番しててくれない」
僕は、お菓子を貰った恩もあるので、素直にOKしました。
「それにしても、このお家って…」
不思議に思ったのは、とにかく部屋が暗いという事でした。
そこで、僕は縁側に出てみたのです。
軒下には、青い花柄のガラス風鈴が吊ってありました。
屋外では、そよ風が吹いていたので、ガラス風鈴の涼し気な音色が心地よく響いていました。
縁側に腰掛けて風鈴の音色を聞いていると、不意に眠くなってしまいました。
気が付くと、僕は20代前半と思われる女性に、膝枕をされれたまま、頭を撫でられていました。
その女性は、色白で美しく、瑠璃色の花柄模様の浴衣を着ていました。
「う、う~ん」
「起きたのね」
「ん、あれ?」
「ゆっくりしていていいのよ」
「ううん、僕はもう帰るよ」
「そんな事言わないで」
「あと5分だけでもいいから」
「うん、5分だったらいいよ」
それからというもの、その女性は愛おしそうに視線を送ってきました。
「あぁ~、何て可愛らしいのかしら」
数分後、その女性は言いました。
「もう帰っていいわよ」
「私は充分満足したから」
すると、ここで近所のおばさんが帰って来ました。
「ガラガラガラ」
「ごめんなさいね、すっかり遅くなっちゃって」
その声を聞くと、浴衣姿の女性は慌てて左側の部屋に入りました。
「あら、縁側にいたのね」
「うん、ここで浴衣のお姉ちゃんに膝枕をして貰っていたの」
「えっ、そんなまさか…」
「あっちの部屋に入って行ったんだよ」
おばさんは、顔面蒼白になりました。
「あの部屋に入ってみるかい」
「う、うん」
襖を開けると、さっきまでお姉さんが着ていた浴衣が衣桁に掛けてありました。
「あれ、お姉さんは?」
「娘は若くして病死したのよ」
「あの子は本当に子供が大好きだったのよ」
僕は、仏壇に案内されお線香を立てて熱心に拝みました。
「良かったら、これを貰ってくれないかしら」
おばさんが仏壇の中を指差すと、そこには青い花柄のガラス風鈴が置いてあったのです。




