06_巡礼者2
「僕が彼を村まで連れて行くよ。」
レノンが症状の重い者を預かることになった。
こちらのバイクは排ガスなど出ないからサイドカーではなく後ろに人や荷物を載せる荷車を付ける。
巡礼者の先導者から患者の荷物を預かり、荷車に患者を載せてというか落ちない様に固定してレノンは元来た道を戻る。
患者の連れは別の巡礼者の一団に混じって巡礼宿の村に戻ることにした。
「ま、今回の相手なら兄貴とジーンの二人で問題ないでしょ。」
「だな、最悪は狙われた相手を連れ戻れば良い訳だし。」
レノンは患者を載せてその連れと今後について話をするとバイクに乗って走り出した。
「さて、俺達も行くか。」
必要な情報は既に手に入れた。
ターゲットとなりそうな人物は一人、同行している相手は盗賊の仲間だと思われる。
先導者曰く二人はここで初めて知り合ったもの同士で、巡礼宿辺りで休息に親しくなっていったらしい。
「あの方は少々傲慢ですが悪い方とは思えないです。
解毒剤も提供してくれましたし。
でももう一人の方は・・・」
上辺親切そうだが何か嫌な感じがするとのこと。
巡礼団に加えたくなかったが断るだけの理由がなく仕方なく同行を認めたそうだ。
ムード達が来るまで被害者が生き永らえたのはその人のお陰なので助けてほしいと頼まれてしまった。
今回、花笠茸に仕込まれた毒は、マルサイの毒、レナ・カサル固有の植物から抽出されるものだ。
花笠茸だと思って解毒剤を処方していたら助からなかった可能性が高い。
そもそも野生の花笠茸は養殖物と比べると直径が半分以下。
先導者や周りが食べるのを止めなかったのはそれを知っているからである。
先導者から味方であることの証明として巡礼団の目印の付いたバンダナも預かる。
野営地には複数の巡礼団が過ごすことがあるので必ず目印を身に付けるのが決まりとなっているのだ。
「貴方方に大いなるものの加護があらんことを」
「ここら辺かな。」
巡礼道は先程の野営地のすぐ先から森の中を歩く。
道幅はそれなり広いがどうしても視界が悪くなる。
次の野営場所は森を抜けた川の側。
近い内に巡礼宿が出来る予定で、管理人が居て、簡単な宿泊場所が用意されている。
そこまで結構な距離を歩くので前後の野営場所ではしっかり休息を取るのが基本だった。
体力に不安のあるメンバーが居る場合、早い時間でも前後の野営地で宿泊する。
今回の巡礼団も先程の野営地で一泊することを決めていた。
「次の野営地まで行けばちゃんとした場所で休めるとか言ったんだろうね。」
真っ当な巡礼団は移動に時間を掛ける。
まだまだ歩けると思う様な場所でも休息を取り、宿泊する。
ひとえに全員を聖地である法王国まで連れていくためだ。
途中何日も何日もテントでの野営をすることになるので体を慣らし、体力を付けることを優先するのだ。
単に法王国に行くだけなら直前の巡礼宿の村には飛行船の発着所がある。
金があるならさっさとそこへ行けと言うことだ。
ヤーレから先程の巡礼宿まで、地元民なら歩いても半日掛からないその距離でわざとテントで一泊する。
歩きとテントでの宿泊を経験させて無理そうなら早めにリタイアさせる為だ。
例年この距離で何人かリタイヤし、飛行船で法王国に向かっている。
「気配は・・・この先だな。」
既に夕暮れの気配がある。
夜の森は野生動物達の支配下だ。
向こうからこちらへ向かってくる巡礼団はいない。
あの騒ぎでこちらから向こうに向かう巡礼団もいない。
居るのは盗賊とその犠牲者だ。
閲覧、有難うございます。
花笠茸は野生でも比較的毒性の低い茸なので目立つ姿の割に見つけるのが難しい茸です。
閑話の女将の言葉は大げさではなく、毒性が低いが故に地元民が毒抜きに失敗して腹を壊します。
巡礼宿の村にはちゃんとした医者がいるので周辺の地元民が駆け込んでくる。
※地元民は耐性があるので死ぬことは無い・・・
見つかり辛い上に地元民でも毒抜きに失敗しやすいので養殖が盛んになった今は野生の花笠茸を食べるのは殆ど居ません。




