03_バイクに乗って1
宴会の後、拠点内の整備場で3人はバイクの整備をしていた。
彼らの整備するバイクは佳澄の感覚からすると自動二輪車、オフロードバイクというより電動アシスト付きマウンテンバイクだろう。
筐体は金属ではなく木製。ただし、強度、柔軟性共に遥かに高いものである。
これらは全て3人でヤーレ周辺の森から採取したものを加工している。
車輪は樹液を加工したゴム擬きを使い、チェーンは蔦を加工している。
買えば一般4人家族の年収分位になるが素材集めから加工、製造、組み立て、調整まで全て自分達でやっているのでお金は掛かっていない。
電動アシストの部分は筐体の核となる場所にコアとなる紋章を刻むことで実現している。
ムードとレノンは今日の祝いのメインである魚はこのバイクを使って買いに行っていた。
ムードは既にCランク、レノンも先日Cランクに上がっているのでそれなりに稼いでいるし、クランの装甲車の操縦も出来る。
が、バイクの方が気分が良いからといってもっぱら移動はバイクを使っている。
こっちには免許制度は無いが、装甲車もバイクも何でも屋が使う場合、ギルドで講習を受けることが義務付けられている。
講習の目的は技能の習得というよりもルール・マナーの周知がメイン。
実際、この講習が行われる前は交通事故が多発していた。
何でも屋が講習で習ったルールを守らなかった場合、評価が大きく下がる。
その上、ペナルティとして一定期間割の良い依頼は受けられなくなるし、講習の再受講やギルドからの各種装備の貸し出しに制限が掛かるなどデメリットが多いので何でも屋達の交通ルールは比較的守られるようになった。
また、この講習は一般市民にも公開されている。
商業ギルドでも行商人用に自身で講習を開催または何でも屋ギルドでの講習受講を推奨していた。
結果、都市部近郊での交通事故の発生件数は大幅に減っている。
整備を終えると目的地とルートの確認。
「ラサ山の麓の村までの主なルートは二つ。
シル・ヤーレの大森林沿いに行くか、法王国に向かう巡礼道に沿って進んで途中で曲がるか。」
「依頼に指定はある?」
「無いな。受付では最近巡礼道での盗賊騒ぎがあるんで対処して貰えば嬉しいみたいなこと言っていたが。」
「巡礼道を狙うと言うとレナ・カサルからの巡礼崩れか。」
「最近増えているよね。」
レノンの言葉に3人は顔をあわせた。
大災害後、ハーレンから逃げてレナ・カサルに行ったものの扱いが酷く戻ってくるものが増えてきている。
デ・カサル経由で来る者達はデ・カサルである程度今のハーレン大陸について指導というか訓練を受けているのでまだ良い。
デ・カサル経由でやってくる者は金もなく、相当追い詰められており、覚悟が出来ている。
ハーレン大陸で生きることに対する忠告を素直に聞き、従う。
問題はアレストリア経由でやってくる者達である。
下手に金があり、力のあるものはハーレンの魔境を甘く見て命を落とすものが後を絶たない。
そして魔境に歯が立たないならず者達はハーレンの魔境に適応した地元の辺境民には手も足も出ない。
結果、彼らが狙うのは自身より弱い者、法王国に向かうレナ・カサル出身のトリスタン教徒の巡礼者。
今まではアレストリアからトライオッド、ヤーレまでの道で襲撃が多かった。
が、最近はバイクを使った何でも屋達が巡回するようになって減ってきていた。
「あいつら、ゼノバーン周辺からこっちに移動したか・・・」
街道の盗賊退治はムードやレノンだけでなくジーンも何度となく駆り出されている。
ヤーレ周辺はシル・ストアの他有力な何でも屋のクランが複数あるので避けてその先に行ったらしい。
「盗賊退治、しておくか。」
「そうだね。多分物資の補給はヤーレでしているんだろうし。」
ヤーレの外周区に入るためにはゲートを通る必要がある。
住人以外が買い物する場合、ゲートで発行された認識票が必要だ。
そちらを当たれば情報が手に入るだろうだろう。
「ミオ姉さんに頼んでみるとしますか。」
「そうだね。住人や辺境民以外で武器の類を買っているものを探して貰おう。」
普通の巡礼者は護身用の武器の類を手前の村や街で手に入れるので、ヤーレでは水や食料品しか買わない。
ヤーレで武器を買うのは地元民(周辺の辺境民を含む)以外は何でも屋でも目立つのだ。
「出かける前に武器屋の話を聞いた方が良さそうだね。」
巡礼者を襲うならず者で一番多いのは食い詰めた何でも屋崩れなのだから。
閲覧、有難うございます。




