02_北方調査
ヤーレの何でも屋ギルドの依頼は方角によって傾向が変わる。
トライオッドやアレストリアのある南方は商人たちの護衛依頼、または採取依頼
山岳地帯のバーン方面の西方は辺境民達の村の巡回や大災害以前の遺跡の保護、はたまたトリスタン教徒の巡礼支援
レナ・カサル側の東方は討伐と廃墟の調査・管理、およびレナ・カサルからの流民の保護
北方調査は西方の辺境民達の村の巡回や大災害以前の遺跡の保護の他にその地に住む辺境民達を探すということが主なものになる。
東方の辺境民達は元々アナ・ハルナの民であり、主に聖なる山、バーンを崇め、お互いに協力しているので村を探す必要は無い。
北方には大災害以前から始まりの二柱の神や八柱の神々以外を信じ奉ずる民が暮らす村が多く存在する。
その大きくが主にエマルド大陸で祀られている太陽神や月神、星神を崇めており、天体観測の為高度の高い山の上方に村を作っている。
元々村と村は離れており、信奉する神が違えば近くにあっても交流が殆ど無い。
その為、北方にすむ辺境民ですらどこにどんな村があるのか知らないのだ。
結果、何でも屋ギルドとして地図作りの一環として辺境民の村探しが依頼されている。
「ジーンの生まれ故郷が見つかると良いな。」
ガイの言葉にジーン、ムード、レノンは頷く。
大陸を放浪していたジーンの両親は北方の村の出身であった。
ジーンの両親の死は北方所縁の辺境民を通じて故郷に伝えられている。
故郷の村からは両親の兄を名乗る男が会いに来ており、名乗りの儀は彼が行った。
その際、一緒に村に戻ることを提案されたがジーンは村には一人前になって自分から訪ねることを約束してシル・ストアに残ることにした。
彼からは起点となる村と行き方を示す古い歌を教えて貰っている。
地図は無いと言うか一種の呪陣を経由するので意味が無いらしい。
この呪陣が北方の調査が進まない理由の一つでもある。
呪陣は一種のワープゲート、転移門である。
アナ・ハルナでは古い時代の遺跡にその名残が残っている。
西方のアナ・ハルナの遺跡が保護対象なのは偶に呪陣により転移させられる事件が起こるからだ。
飛ばされる先は時々によって異なり同じ場所の時もあれば正反対の方向の時もある。
呪陣が多く使われていたのは千年以上昔。
今もそれを運用しているのは北方の者達だけたった。
そして残念なことに彼ら自身も使うだけで新たに作り出すものはいないようである。
今回受けた依頼書をムードは手にして言った。
「呪陣の調査も依頼の一つだしな。」
呪陣は条件を満たし、正しい手順を踏まないと目的地にたどり着けない。
条件を満たしていても手順を誤れば門が開かないのは良い方でどこか訳の分からぬ場所に飛ばされることの方が多い。
ある時は上空一万m以上の高度に飛ばされたこともあった。
当然この時の被害者は死亡、被害者が身に着けていた認識票の軌跡から空の彼方に飛ばされたことが判明している。
呪陣の解析と再現は多くの研究者達の悲願だが今のところその目途はたっていない。
「ジーンは覚えていないんだろう?」
「うん、両親の話では生まれた村を出たのは2歳位の頃だから。
両親も一区切り付いたからと村に戻る途中だったし。」
辺境民達は何故かどんなに離れていても連絡が付く方法があるらしい。
特に風の加護を持つ者たちはほぼリアルにやりとりが出来る。
そしてギルドの通信網はその知識を元にして作られたと言われている。
「今回の依頼はラサ湖のある山間部が中心だったね。」
ラサ湖はラサ山の山頂にある湖で周辺に古代の遺跡が多い。
またアナ・ハルナの八柱の神々の一つであるバーンとは異なる山神を信奉する部族が住んでおり、バーンに住む者たちとは様々な点で違っていた。
「北方の辺境民達は西方と違って余所者には優しくないが北方生まれのジーンが居れば少しは話を聞いてくれるだろ。」
「さて、明日の準備を始めないとね。」
そう言って宴はお開きとなった。
閲覧、有難うございます。
名乗りの儀は小さな優しい神々の話でベンジーがナレカサル一家にしたことです。




