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シル・ストア~第1部 風の通り道  作者:
第2章 北の辺境民

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プロローグ_フリーダ家の家宝

内容としては裏話04

出掛けに父から木箱を預かった。

「これは・・・」

「持っていけ、先祖の約束だ。」

「・・・はい・・・」

フリーダ家には先祖代々伝わる家宝がある。

トリスタン教の開祖であるトリスタン直筆の農業指南書。

1000年以上前、トリスタンが農業支援でレナ・カサルを回っていた時期がある。

その際、祖先の家に1年以上滞在し、様々な知識を伝えてくれた。

それらをまとめたものが我が家の家宝。

代々、家督継承時にそれを読むことができる。

木箱には保存の呪陣が刻まれていて開けることが出来るのはフリーダ家の血筋だけだ。

これが1000年以上に渡り我が家が存続できた理由でもある。

トリスタン教にとって最大級の秘宝と聖地を守る一族。

今までに何度も教会やマイセン家などのマーデの有力者が手を出そうとしてきたが、全て法王国本国からの指示で免れてきた。

そういう有力者達が不自然な死を迎えていることから手を出すと天罰が下るとも言われている。


遠い昔、トリスタンの子供を名乗るものが訪ねてきたという言い伝えがある。

「我が家がこの地にある限りこれを守りましょう。」

続けて言った。

「この地を離れる際は、貴方の元へこれを送ります。

貴方が居なければその子孫、心差しを受け継ぐものへ。」

フリーダ家はこの地を離れようとしている今、渡す相手は法王だろう。

これの写しと先祖代々の記録は我が家の宝だ。

エセルは木箱を収納に入れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「殺せ」

かっては非常に華美な装飾のあった法王国の法王の間

現在は洗練され簡素でいて重厚という絶妙なバランスの部屋に法王を含む数人の男達が居る。

その場に相応しくない言葉を発したのは法王本人

ハイライトの無い目をして表情が全くない平坦な口調で言葉を発している。

「ですが・・・」

報告した男は法王の後ろに控える補佐官の表情を見て口を閉ざした。

報告対象はかって法王の部下であり愛人とも噂された枢機卿だ。

非常に優秀で清廉潔白な性格をしており、汚職が蔓延るマーデ教会の浄化のため、乗り込んでいった男だ。

次期法王候補として評判も高い。

そんな男が汚職や腐敗と戦う中、目を付けたのがフリーダ家だった。

教祖トリスタンが実際に訪れた聖地であり、好意的に語っている地。

トリスタンの教えを守り豊かな実りのある土地。

そんな土地でありながら教会はなく、昔ながらの精霊信仰が盛んな村々。

そこへトリスタン教を布教し、教会を作ることが出来れば相当な権威付けとなるだろう。

その地にはトリスタン直筆の宝があるという。

「何故そのようなものが片田舎の村にあるのか!」

教会の至宝を取り戻すというある意味筋違いなことであるが熱意をもって活動を始めたことが始祖の怒りに触れた。

フリーダ家に纏わる天罰についてはこの男も知っていた。

が、自身の清廉潔白を信じる彼は自分には関係ないと思っている。

奪い取るのではなく信仰心より奉納して貰おうと思っていたのだから。


枢機卿の処分は決定された。

遠くない未来、彼は不幸な事故または急病になることであろう。

法王の後ろに控える補佐官は思う。

今の法王の治政も長くないなと。

法王になると月に一度は祈りの間に籠ることが義務付けられる。

この義務を正当な理由もなく怠ると地位は剥奪される。

ここで言う正当な理由とは長期に渡る外遊だ。

病気や怪我による療養の場合、剥奪ではなく引退が勧告される。


法王は枢機卿の中から投票によって選ばれる。

そして当たり前のことだが法王にも色々なタイプの人が居る。

理想に溢れたもの、合理主義で現実的なもの、強欲なもの。

あるいは女好きだったり、同性しか愛せないものだったり。

機知に富み、冗談好きだったり、寡黙だったり。

男性女性様々なタイプが選ばれて法王になる。

だが長く補佐官を務める男は知っている。

どんな法王も最後は今の法王の様に表情を失い、無個性となっていく。

そこに年齢は関係がない。

こうなると数年後には崩御し、新しい法王が選ばれることになるだろう。

次はどんな人物が法王となるのだろう。

補佐官は今の枢機卿のメンバーの顔を思い浮かべた。

こちらの話をきちんと聞いてくれる人が良いなとそう思った。

閲覧、有難うございます。

この枢機卿の後任がジルフォード・・・

枢機卿になるのは星祭の唄の時です。

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