裏話03_巡礼に向けて
本来ならデ・カサルに直接行ければ問題ないのだが立場を隠そうと明らかにしようと問題が出る。
フリーダ家はマーデに属する家なのだ。
そちらを盾に取られたら身動きが取れなくなる。
ただでさえエセルはマイセンの直系の婚約者なのだから。
フリーダ家の支配する村々は昔からマーデの作り出す様々な機械を気持ち悪くなるからと言って使っていなかった。
ゼ・ドナから発表されたそれらの道具を使い続けることに対する弊害の報告を受け、先代から村々ではそれらの機械を持ち込むことを禁じている。
規模がエセルは小さく村々の交流が盛んなので余所者が来ると直ぐに分かる。
特にマーデというかマイセン関連の人間はそれらの道具を持っているので村人達にバレ、追い出されていた。
後妻はマーデの生み出す都市の便利な生活を捨てられず、領地にくることはない。
異母弟や後妻が連れてきた使用人も同じだ。
ミラ・マーデにあるタウンハウスで暮らしている。
マーデでは上流階級のものは義務でレナ・マーデにある学園に通う。
多くは便利な道具に溢れた高級寮に入るのだが、エセルはそういう物のない平民向けの寮で暮らしていた。
移動も専らコアを使わない平民向けの自転車を使っていた。
ゼ・ドナにはそういう便利な道具が多く、近いこともあって買い物はそこで済ませる。
マーデ5都市はレナ・カサルに住む多くの者達にとって憧れの街だ。
しかし、ゼ・ドナ近隣に住む者達は珍しいものが多く食事も美味しいゼ・ドナこそが憧れだった。
元々研究施設があった場所なのでその流れを組む研究機関も数多く存在する。
成績優秀だったエセルは飛び級を使って2年目からはゼ・ドナに籍を移し、行事以外は学園に近付かないようにしていた。
優秀なものほど同じ考えを持つものが多く、マーデは優秀な頭脳の流出に頭を抱えている。
「それに事故が心配だ。」
二人は暗い表情で視線を交わす。
母が死んだ事故はミラ・マーデからレナ・マーデに移動する際に起こった。
ゼ・ドナから平民向けのバイクや三輪車が売られている。
が高位の者が使うものではないとしてマーデ都市間の移動はマーデ産の車か馬車を使う。
普段は余裕を見てフリーダから乗ってきた馬車を使用する。
が、その時は急の日程変更で馬車では予定に間に合わなくなり急遽知人の車に同乗することになった。
その車が事故を起こしたのである。
父は先にレナ・マーデ入りしていたので無事だった。
が、その車の運転者や知人夫婦は亡くなっている。
事故は運転手の整備ミスと言う話だったが知人の弟の調べて細工がされていることが分かった。
そしてその弟もある日から行方が分からなくなっている。
その事故の狙いは知人が母か?あるいは両方か?
ただ無関係な運転手が巻き込まれ死亡したことは間違いない。
そして運転手の家族は責任を問われ街を追い出された。
エセルが巡礼の旅に出るにあたり、フリーダの街で準備する分にはバレないだろう。
しかし、ゼ・ドナの飛行船乗り場にはマーデの監視が付いている。
最近、エセルや父が、ゼ・ドナに行くたび視線を感じる程だ。
その視線はフリーダ村に戻るまで続いている。
人の出入りの多いデ・カサルも同じだろう。
彼らが想定しないルートを使わない限りどんな妨害が行われることか。
幸い何でも屋ギルドの秘匿回線を使えばマーデに知られることなく連絡が取れる。
秘匿回線に暗号化技術を使うことで内容の傍聴と改竄を防ぐことが出来るようになったのは最近だ。
この暗号化は通信の妖精または魔女と呼ばれるミオ・ザントンが開発したものでその技術の詳細は公開されていない。
お陰でマーデとゼ・ドナ、何でも屋ギルドの情報戦はゼ・ドナ側有利で進んでいる。
ゼ・ドナからギルド経由で連絡を取り合い、エセルのハーレン行の詳細は決まった。
乗合馬車を使ってミリストアに行き、船でアレストリアに向かう。
そこで巡礼団に参加し、法王国に向かう。
法王国からは旧巡礼道を使ってハーレンの東の入植地に行く。
そこでエセルはフリーダの者達の入植準備を行う。
東の入植地はギルドやデ・カサルの審査に合格したものしか入れない。
その上、入植地周辺には危険な獣達が徘徊している。
不審なものはフリーダの村々以上に近付けない環境なのだ。
ハーレンに着いたらギルドを頼ることも考えたがマーデ出身者は警戒されている。
そして下手にバレて騒ぎになるとレナ・カサルに残った者達に迷惑が掛かる。
時間が掛かっても巡礼の振りをする。
巡礼の旅に出たと言う言い訳が使えるようにしておく必要があった。
全ての準備が整った3日後、エセルはハーレンに向かった。
閲覧、有難うございます。
ここでエセルが通っていた学園の上位の大学に大災害前、トーリ・サイデンは留学してました。
もっとも肌に合わず、早々にゼ・ドナの研究施設に避難してます。
ミオの開発した暗号化技術の元ネタはジーン(佳澄&寛)です。




