28. やっと
ルミエール・アカデミーの魔法の競技大会は、魔法生物の脱走という予想外のトラブルによって、当初予定していた5つの種目ではなく、4つの種目で行われた。
アンナが観客席で息を詰めて見守る中、エヴァンはそのすべてを乗り越え、見事に優勝を果たした。会場中が喝采で包まれたその瞬間、アンナは胸の中に何とも言えない温かさを感じた。
大会が終わり、学生たちは次々と学校へ戻り、エヴァンの所属するカリオン寮では、優勝を祝うパーティーが行われた。共有ラウンジには笑顔が溢れ、エヴァンを称える声が飛び交っている。
「さすがだよ、エヴァン!」
「次の大会も頼むぜ!」
歓声の中、アンナは少し離れたソファに腰掛け、一息ついていた。エヴァンが優勝した瞬間を思い返し、自然と笑みがこぼれる。
しばらくして、パーティーが徐々に解散し始めたころ、エヴァンがアンナのそばにやってきた。
「アンナ、ちょっと外を歩かないか?」
「うん、いいよ」
二人は静かな夜の公園を歩き始めた。涼しい夜風が心地よく、満天の星が二人を照らしている。
「なあ、アンナ」
「うん?」
「ちゃんと伝えたかったんだけど……俺、アンナにビンタされたときから、ずっとお前のことが好きだったんだ」
アンナは驚きつつも笑って答えた。
「えっ……あの時のエヴァンは最悪だったけど?」
「それは本当に反省してる。あれ以来、ずっとお前に振り回されっぱなしだ」
アンナは思わずくすりと笑い、夜空を見上げながらぽつりと呟いた。
「私もね、エヴァンのこと、ずっと気になってたのかもしれない。でも、エリオットが……」
「エリオットと付き合ってたもんな」
「うん。エリオットには何度も助けられて……本当に好きになったよ。でも、最後は辛かったな」
エヴァンは一瞬黙った後、アンナの方を向いて真剣な表情で言った。
「それでも、俺はお前が好きだ。何があってもお前を一番に考える。だから……俺と付き合ってくれ」
アンナは驚きつつもその気持ちを受け止めるように微笑んだ。頬を赤らめながら、静かに答える。
「……うん。よろしくお願いします」
その言葉を聞いたエヴァンは一瞬息を飲み、安心したように笑った。そしてそっとアンナに近づき、優しく唇を重ねた。夜空の下、二人の距離が縮まった瞬間だった。