26. 別れ
1ヶ月後――。
アンナはルミエールのカフェエリアで、エヴァンとセリナと一緒に過ごしていた。
そのとき、誰かが近づいてきた――エリオットだ。
三人とも驚きと戸惑いを隠せない表情を浮かべた。
「急にごめん。ちょっとだけいいかな?」
「いいけど……どうしたの?」
アンナは不安げに尋ね、エリオットはゆっくりと席についた。
「なんだか久しぶりだね」
「そうだね」
エヴァンが気を使って提案した。
「俺たち、席を外そうか?」
けれどエリオットは「大丈夫」と言って、すぐに話を続けた。
「実は、報告とお別れを言いに来たんだ」
「報告とお別れ……?」
アンナの声には、何か予感を感じた。エリオットは少し息をついてから、静かに続けた。
「婚約は破棄してもらったんだ。大変だったけど、もっと早くにしておけばよかったと、今でも反省してる。それから、国外の魔法学校に編入することに決めたんだ」
「編入? もうすぐ卒業なのに?」
エヴァンは驚き、目を見開いて聞き返した。
「自分のやりたいことをやってみようと思ってさ。アルカナ魔法学校に編入することにしたんだ。あそこは、18歳で卒業した後も、マスターズクラスで魔法の研究ができるから」
エヴァンは驚きながらも、少し感心した様子で言った。
「アルカナ魔法学校!? うらやましいな……!」
エリオットは笑いながら頷いた。
「ありがとう。でも、ここからかなり遠いから、たまに帰省はするけど、しばらく会えなくなるから、お別れを言いに来たんだ」
「そっか……編入おめでとう。応援してるからね」
アンナはそう言いながら、少しだけ微笑んだ。その笑顔に、エリオットは少し胸が締め付けられる思いを抱いたが、すぐに顔を上げて、エヴァンの方を見た。
「アンナのこと、頼んだからな」
エヴァンは少し驚いた表情を見せたが、すぐに柔らかな笑顔を浮かべて答えた。
「アンナには、頼もしい友達がたくさんいるから大丈夫さ」
「そうだな。皆、機会があればいつでも遊びに来てくれ」
「うん、わかった。行くときは連絡するね」
エリオットは立ち上がり、最後に一度アンナを見つめてから、ゆっくりと言った。
「それじゃあ、また」
アンナは少し寂しげに、でも優しく笑顔を浮かべて返した。
「またね」
エリオットは頷き、静かにその場を後にした。