17. ごめん
エヴァンは、今日も特別ラウンジで寛いでいた。そこにセリナが姿を現す。
「おはよう、エヴァン」
「おはよう」
「ねえ、エヴァン」
「なんだ?」
「アンナのこと、好きなんでしょ?」
エヴァンの眉が一瞬ピクリと動く。
「バレバレなのよ」
「……そうか」
「でもさ、ちゃんとストレートに言わないと、あの子には伝わらないと思うよ」
「わかってる」
セリナは椅子の背もたれに腕をかけ、からかうように笑みを浮かべた。
「あ、でも、エリオットと付き合ってるらしいね」
「ああ。フラれる覚悟で告白してもいいけど、今は違うと思うんだよな」
「どうして?」
「アンナは、『好き』って気持ちをまだ探してる段階なんだ。エリオットへの気持ちを確かめてる最中に、俺が告白なんかしたら混乱させちまうだろ」
セリナは目を細めてエヴァンを見つめ、肩をすくめた。
「……エヴァンって意外と良い奴じゃん」
「意外じゃねえし」
「そういうところ、結構好きだよ」
「なんだよ、急に」
エヴァンの表情が一瞬硬直するが、セリナはあくまで軽い調子を崩さない。
「エヴァンがアンナを好きなのは知ってるし、それでどうこうするつもりもない。でも、私はエヴァンが好き」
静寂が一瞬漂い、エヴァンの目がセリナの瞳を捉える。
「……ありがとう。でも、ごめん」
「うん、わかってる」
セリナはふっと柔らかく笑みを浮かべ、窓の外に視線を流した。