14. 女の友情
「つ、付き合うことになりました……」
「キャーーー!」
「すごいじゃん! すごすぎ! おめでとう!」
翌日、アンナは寮の共有ラウンジでリリアとカミラに昨晩の出来事を報告していた。エリオットと正式に交際を始めることになったのだ。
「まだ実感がわかないというか……感情の整理が追いついてないけど……」
「羨ましすぎる! あんな誠実でイケメン、優しくて強い、リアル王子様と……!」
リリアとカミラはアンナより興奮気味に盛り上がっていた。
その後、アンナが一人で校内を歩いていると、偶然セリナを見かけ、思わず声をかけた。
「セリナ!」
「あ……何よ?」
「あ、あのさ……エヴァンにはもう絶対近づかないから!」
「え?」
「そもそも関わろうと思ったこともないし、セリナの恋を応援してるから!」
「わざわざそれを言いに来たの?」
「うん!」
「どうして?」
「だって……嘘をつかずに話せる友達ができて嬉しかったし……」
「そ、そう。嫌がらせして悪かったわね。でも、いいの?」
「何が?」
「あなた、エヴァンのことが好きなんでしょ?」
「え!? いや、無い無い! というか、エリオットと付き合うことになったし!」
「そうなの? ずっとエヴァンとアンナの様子を遠くから見てたけど、てっきりアンナはエヴァンのことが好きなんだと思ってた」
「ええ!?」
「私の勘違いだったのか、ごめんなさい」
「ううん! 今度、遊ぼうね!」
「いいの?」
「うん!」
その言葉に、セリナも少し照れくさそうに笑った。アンナは新たな一歩を踏み出し、心に少し温かさを感じながら歩き出すのだった。
そして、週末――。
アンナはセリナと一緒に街中を歩いていた。
「今日行くお店のパンケーキ、本当に美味しいから!」
「楽しみ!」
セリナのおすすめのお店に到着し、中に入ると、見覚えのある二人組がいた。エヴァンとリオだ。
「あっ……」と、エヴァンとアンナが声を漏らした。
すると、「エヴァンとリオじゃん!」とセリナが声を掛ける。
「なんでお前ら一緒にいるんだ?」とエヴァンは不思議そうに尋ねる。
「だって、私たち友達だもん! ね、アンナ!」
「うん!」
「女の友情って本当に理解できないな」とエヴァンが呟く。
すると、「一緒にパンケーキ食べるか?」とリオが提案した。
「そうしよう!」とセリナは席に着いた。
戸惑いながらも、アンナも席につき、セリナに耳元で小声で話しかけた。
「私、いない方がいいんじゃない?」
「そんなことないよ! それに、エヴァンと同じ寮だし、近づかない方が無理でしょ!」
「そうだけど……」
「お前ら何話してんの?」とエヴァンは尋ねる。
「なんでもないよ」とセリナとアンナは同時に答え、二人は思わず笑った。
しばらくして、リオが話を切り出した。
「そういえば、最近ルミエールの学生が学外で襲われる事件が増えてるらしい」
「え、そうなの?」とアンナは少し不安そうに呟く。
「セリナは強いから大丈夫だろうけど、アンナは気をつけた方がいいかもな」とエヴァンが付け加える。
「私も守られたい乙女なんですけどー」とセリナがエヴァンを睨みつけると、そのセリフに三人は思わず笑い出した。
パンケーキを食べ終えると、エヴァンとリオと別れを告げ、アンナとセリナはアンナの寮の部屋へと戻った。
「ねえ、セリナはエヴァンに告白してないの?」
「す、するわけないじゃん!」
「どうして?」
「どうしてって……フラれるのがわかってるから」
「え……」
「でも、フラれた方が次に進めるのかもね」
「フラれるかどうかなんて、気持ちを伝えてみないとわからないよ!」
「まあ、たぶん妹みたいに思われてるよ」
「セリナ、こんなに可愛いのに!」
セリナの顔が赤くなり、アンナに抱きつく。
「アンナも可愛すぎるから!」
「そ、そんなことないよ!」
アンナは頬を赤らめて笑った。