終結絶望
前回のあらすじ キリトス達はショゴスロードを倒すために準備を始め、計画を立てる。そして、ショゴスロードを誘導しラプターが囮になる。
昨日は投稿できず、すみません。
ショゴスロードは一見普通のだが、怒りを感じさせる表情でラプターを追いかける。
「逃げるんじゃあないぞ。この下等生物が!」
逃げるラプターが木に飛び移れば、ショゴスロードは触手で木々を薙ぎ倒す。
「はっはっはっ、ゴミの分際でこの私から逃げられるとでも思っているのか」
(...こいつ、ラプターのこと舐めてる。ギリギリ狙ってる。その上速い。森に慣れてなかったら、追いつかれてる)
「チッ、ゴミクズが。ちょこまかと動きやがって、だがこれならどうだ」
ショゴスロードがラプターの前方方向に向かって触手を伸ばす。その触手の先端から数本の触手を伸ばす。
(...なっ、こんなこともできるのか。けど、この長さだからかコントロールが落ちてる)
「チッ、まあいい、構わん。触手はまだまだあるからなぁ〜」
ショゴスロードがそういうと背中からさらに多くの触手が出てくる。
「こういうのはどうだ?」
ラプターに向かって出した触手から針状の触手を一気に伸ばす。
(...危ない。こんなスピードと数、マリーにもできない。さすがロード)
「これも避けるか。気に入ったぞ下等生物お前は他とは少し違うようだ。頭を引きちぎって、さっきの無能の首とすげ替えてやろう。これに3分耐えられればな」
ショゴスロードの猛攻。圧倒的な数の触手と針は威圧感だけで死を感じさせる。
(...ダメだ。これじゃあ、あの場所に向かえない)
「どうした。下等種、動きが鈍いぞ。俺に集中しろ」
「...無理」
「やっと反応してくれたか。小さき者よ。さぁ、この死合を存分に楽しもう。まぁ、俺を殺すことは叶わないだろうがな」
(...よし、後少し。気づいては?なさそうだな)
「まだ俺から距離を取るか。だが、もう逃げられない」
地面が揺れる。地が割れ、上昇する。
「...なっ、地面ごと」
「今度は本気だ。地面に力を割く分が減ったからな」
(...こんなところで嫌だ)
ラプターが絶望しかけていた時、声が聞こえる。
「ラプターくん、撃ってぇー」
それはガラス細工の入れ物だった。ラプターはそれを射抜く。それと同時に広がる柑橘系の香り。
「なっ、このグズが何をしている。また私の邪魔をするのか。ただでさえ、何も出来ないというのにこれ以上何をしようというのだ」
ショゴスロードは悪態をつくがその態度とは対称的に触手の数は減り、勢いも弱まる。上昇した地面が落下する。
「まぁいい、小さき者よ。続けよう」
「...ごめん、無理」
「なっ、どこへ行く?」
ラプターがショゴスロードに矢を放ちつつ急いで例のポイントに向かう。
「すごい、音だな」
「お二人とも大丈夫でしょうか?」
「安心しなよ、ハスマ。君が思ってるほど、ラプターは弱くない」
「二人とも、ラプター来てる」
ハスマ、キリトス、トオルが木陰に隠れる。そして、トオルの合図と同時に油をかける。
「せーの」
「なんだ貴様らは?これは油か、、まさか貴様ら、この私を燃やすつもりか」
「ご明察通りさ。ラプター」
トオルがラプターに合図を送ると、ラプターは待ってましたと言わんばかりのスピードで矢を放つ。
「グァァァ、下等種が下等生物如きがこの私を、この私」
ショゴスロードが最後の悪あがきと触手を伸ばす。
「ショゴスロードだからか。数がすげぇな。いなすので精一杯だぜ」
「キリトス。早めに首を刎ねろ」
「あい、わかった」
キリトスが触手をいなしつつ、ショゴスロードに近づく。
「や、やめろ。来るな」
「悪いな。なんも思ってねぇけど」
キリトスが剣を振り被った瞬間、キリトスが後方に吹き飛ぶ。それはすでに火を消していた。
「驚いただろ、下等種。知らないのは無理もないショゴスロードは普通のショゴスと違って、一度喰らった攻撃には耐性を得るんだ」
キリトスが思考を巡らせ、口から血を垂らしながら近寄る。
「山火事か。宿屋で男が言ってたな。そんなの」
「待てよ。お前ら、まさか私の部下を燃やした奴らか。あれはかなり痛かったが、やけどへの耐性も上がったからな。感謝してやるよ」
ショゴスロードが余裕そうに立ち上がり、触手を伸ばす。それを間一髪ハスマが弾く。
「やるな、下等種。ん?貴様その力はなんだ?誰から貰った?」
「誰って教団ですよ」
「お前ら、教団の兵器かなら、殺しても構わないか」
「ハスマ。君のせいで余計な誤解された気がするんだけど」
「来い。白髪、戦いを楽しもう」
勢いよくぶつかり合う二人、ハスマはその膂力でショゴスロードと殴り合っている。
「おいマジかよ。一人だけ、生きてる次元が違うぞ」
「ほんと、それだ」
地面に潜らせていた触手がハスマの背後目掛けて伸びてゆく。
「危ない。ハスマ」
「キリトス。お前あれが何か見えるか?」
「どれだよ?もしかしてあれか、なんかの刺青?」
ハスマの破れた服の隙間から覗くそれは円の中心に陰陽マークが描かれており、円とその間を幾何学的な模様が描かれていた。
「白髪。それはなんなんだ?」
「ただの肉体強化です。よくあるでしょ」
「いいなぁ、お前。殺してコピーしてやる」
ショゴスロードが振りかぶる。その時ハスマがショゴスロードの懐に潜り込み、ショゴスロードを後方蹴り飛ばす。それをショゴスは呼んでいたかのように触手飛ばす。
「受けるか。白髪」
「ここからですよ」
ハスマがショゴスロードの触手を手で掴む。そして、ショゴスロードを振り回し、地面に叩きつける。
「グハッ。痛いなだが、毒は効くだろ」
ハスマの手が震える。
「まだ向かってくるか」
「毒なんて関係ないですよ。僕が止まる理由にはなりません」
ハスマがショゴスロードの前で立ち止まり、全力で蹴る。
「グフッ、さすがに消耗が大きいな」
「降参しては?」
「無理だ。白髪、俺はもっと楽しみ。主を甦らせる必要がある」
ショゴスロードの爪が鋭く伸びる。
「打撃がダメなら、斬撃はどうだ白髪」
ハスマは驚きつつも間一髪で防ぐが、腕についた掻き傷は深く。毒はさらに進行し、ハスマは膝をつく。
「クッ、視界が揺れる」
「どうした白髪。肉体強化を使いすぎて毒が回ってきたんじゃあないのかぁ」
「関係ないですね」
ハスマが立ちあがろうとするが震えて立ち上がれない。
「ハッ、もう終わりだな白髪」
ショゴスロードの背後に待機していた触手がショゴスロードの合図と共にハスマへ向かう。
「選手交代だぜ。ハスマ」
「ヒゲ如きに何ができる」
「さっきまでのお前だったら、俺なんて速攻でやられてるだろうが柑橘系、やけど、ハスマによるダメージ。そして、マリーの家にあった術式の描かれた石だ」
(な、なんだ。気分が悪い、吐き気がする)
「いやぁ、よかった。場所を動かしたら効かないんじゃないかと思ったんだが、時間差があるだけでちゃんと効いてよかったぜ」
「なんのこれしき。貴様程度なら」
「ハスマとの戦いはさすがに入れるようなもんじゃなかったが、今は俺だけじゃないぜ」
「粋がるなよ」
ショゴスロードがさっきよりは少ないが確実に殺す勢いで触手を伸ばす。
「どうしたよ。脆くなってるぜ」
キリトスが向かってくる触手を縦に裂き、ショゴスロードへと向かう。
「やむ追えないか。一時撤退だ」
ショゴスロードが触手でキリトスを足止めしつつ逃げる。
「言ったろ。俺は一人じゃない」
逃げるショゴスロードに向かって、ラプターが矢を放つと、ショゴスロードは倒れる。
「さよならだぜ。ロードさん」
キリトスが首を刎ねる。トオルがハスマに肩を貸しながら近づく。
「ハスマは大丈夫なのか?トオル」
「大丈夫だ。おそらくだがこの毒は野生毒草や毒虫の毒の複合物だ。けど、ショゴスロードに色々やったのとハスマの身体強化?のお陰で毒が回ったはいるが安静にしてれば問題ない」
トオルがラプターとキリトスにハスマを預けてショゴスロードに近づき、火つける。
「これで大丈夫、、」
ショゴスロードが触手を伸ばし、トオルの首を絞める。
「適当率は低いが足しにはなるるだろう」
トオルを取り込もうとした瞬間、トオルがショゴスロードの口に瓶を投げる。
「熱い。痛い。焼けるようだ。これは」
ショゴスロードが痛みでトオルを離す。
「へへッ、香水はついでだったんだ、本当はこいつを買う予定だったんだ」
ショゴスロードの肉体は人の形を保てなくなる。
「どうだ。自然界には基本ないだろ。酸なんてよ」
しばらく煙を上げた後、ショゴスロードは「テケレ・リ」鳴き動かなくなった。
「さすがもう大丈夫だよな」
「大丈夫か?トオル」
「大丈夫だ。問題ない」
トオルが冗談混じりに答える。
「よーし、念のため燃やすか」
トオルが最後のマッチを取り出し火をつける。
「トオル。ハスマ宿屋に連れてっとくぞ」
そう言ってキリトスたちが先に戻ろうとすると爆発が起こる。大きくはないが至近距離で喰らえば無事ではすまない。
『トオル』
3人が叫ぶ。煙が晴れ、トオルの影が見えてくる。全員は驚愕した。さっきまで喋っていたトオル。返事をしていたトオル。歩いていたトオル。そのトオルの左半身が吹き飛び、動かなくなっていた。
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