超常前線
前回のあらすじ 触れると変形する謎の粘液に追いかけられつつも逃げ切り、再度探索を試みる。兄の部屋を探索途中に後ろから声をかけられ、振り返るとそこには自分と全く同じ見た目をした男が立っていた。
己と全く同じ見た目をした男にキリトスは戸惑いつつも問いかける。
「お前は敵ってことでいいのか?」
「俺か?俺は仲間を取り返しにきただけだ」
「つまり?」
「俺らのことを知ってしまったお前らは敵だ」
その言葉と同時にキリトス達に殺気が向けられる。並々ならぬその殺気は全方向から肌を貫き、全身に恐怖を伝達させる。
「お前って、ショゴスってやつなのか?」
「どうだろうな」
「どうだろうと君は一人だろ。それなら、キリトスとラプターがいるんだから、負けるなんて考えられないけどね」
「そうかぁ、じゃあ賭けをしよう。俺は一人でお前らを殺す」
その男がそう発した瞬間トオル目掛けて、何かが高速で迫る。そして、トオルの腹を貫くというところで、キリトスが間一髪でトオルの体を引き寄せる。
「あっぶねぇー。トオル大丈夫か?」
「大丈夫だ問題ない。と言いたいところだが、脇腹を少し掠めた」
トオルの腹を掠めたそれは触手状でショゴスと同じ漆黒の玉虫色をしており、キリトスと同じ姿をした男の背中につながっている。男いや、ショゴスがニヤリと笑うと無数の触手が背中から飛び出る。
「マジかよ。コピーしてる時にも他のコピー使えんのかよ」
「キリトス。触手を俺に当たらないようにしてくれ。俺はこの1番分厚い資料から、なんとか弱点探してみる」
「わかった。ラプター協力してくれるか?」
「...もちろん。ここで死んだら...甘いの食べれなくなる」
キリトスがトオルとラプターの前に立ち、飛んでくる触手をいなす。
「クソッ、とんでもねぇ速さと数だ。ラプター援護」
「...ん、任せろ」
ラプターが深く集中し、弓を構え、矢を射る。その矢は無数の触手を掻い潜り、ショゴスに当たる直前にショゴスは攻撃の手を止め、矢を拳一つのところで防ぐ。
(攻撃の手が緩んだ。受け止める必要なんてあるのか。もしかして、こいつはショゴスではあるがさっきの粘液と違って再生能力が低いのか?)
「ラプター、キリトスの援護を続けろ」
「...んっ」
「トオル。なんかわかったか?」
「ああ、説明は後だ。キリトスは攻撃をいなしつつ、ラプターは狙撃を続けてくれ」
ラプターの援護により、キリトスはより広い範囲の攻撃をいなすことができ、スペースに余裕ができた。トオルがそのスペースを利用し準備を始める。
「トオル。まだか、もうそろそろ限界なんだが」
「大丈夫、今できた。ラプター、俺がこいつを投げるから今渡した矢を合図したら打ってくれ」
「...ん」
トオルが目一杯力を込めてその麻袋を投げる。そしてその麻袋は高速移動する触手に当たる。すると、麻袋の中から持参してきた油が漏れる。
「今だ、ラプター」
その合図とともにラプターは火のついた矢を放つ。ショゴスは油に戸惑いつつも矢を受け止める。しかし、受け止めた触手から炎が燃え広がる。
「ぐぁぁぁ」
「キリトス、怯んでるうちに首をはねろ」
「えっ、わかった」
キリトスが首をはねるとショゴスの触手は動かなくなる。ショゴスは必死になって首を修復しようとするが痛みと燃焼がそれを阻止し、しばらく悶えた後に動かなくなった。
「やっぱり火は有効だったんだな」
「いや、火は再生を阻害するだけで、燃やしてもすぐ消えるらしいくて、油を持ってきたのは正解だった。それより早く戻ろう。火で空気が薄くなってる」
3人がラプター、トオル、キリトスの準備に登ろうとした時キリトスの足にショゴスの触手が巻き付いた。
「クソ、まだ動くか」
「ラプター、キリトスをつかんでるうちにあいつを」
「...ん」
ショゴスの最後の抵抗虚しく、最後の矢がトドメになりショゴスは力尽き、触手はキリトスを話した。
「ありがとうな。ラプター、助かったぜ」
「...んっ、いつでも任せろ。けど次はスイーツを持ってこい」
ラプターが満足気に言う。
「おいおい、キリトス。誰がお前をつかんでやったと」
「はっ、知らねぇーよ」
「はぁ」
トオルがため息つく。
「冗談だよ。ありがとうな」
「どういたしまして」
「さっきのやつは死んだのか?」
「ああ、人間の姿をとっていると、人間と同じ構造になるらしいしくて、何かに変形してる時は再生を阻害しながらなら殺せるらしい」
各々がそれぞれの会話をし、死地を乗り越えたことにより前より一層打ち解けた。そして、地下から、屋敷から出ると、そこはには倒れるマーキュリーがいた。
「ハスマ、何があったんだ」
「キリトス。落ち着け」
「悪い」
「仕方ない。あんなのと何度も出逢えばそうなるもんだ」
「先ほどまで、彼女は普通でしたがあなた方戻ってくる少し前にいきなり倒れました。僕は目がいいので、見逃す可能性は低いと思います。」
「じゃあ一体何が?」
「今の情報じゃああまりわからないね」
「待て。みんな見てみろよ。足の傷」
マーキュリーの足には転んだ時についたであろう擦り傷があった。しかし、その傷口から覗くものは今日何度も見た。漆黒の玉虫色をした粘液状の物だった。
「もしかしてだけど、これってショゴス?」
「トオルさん、ショゴスって何ですか」
「さっきの薄い赤色の粘液とか、この傷の黒いのとか」
「そうだ、トオル。さっきの本にはなんて?」
「色々書かれてたけど、まずあの薄い赤色はショゴスの不完全体で害はないけど、追いかけてくるのは生き延びるための変形を発動させるために生物に触れ続けないといけないかららしい。そして中にはショゴスロードと言うショゴスの命令、統率、統合ができる個体もいるらしい。さっきのショゴスがキリトスに変形できたのはキリトスにが触った不完全体のが持ってたキリトスの情報を不完全体ごと吸収したってことらしいんだ」
「そんなこともできるのか。じゃあ、今までの情報から考えられることは、3つある。一つはレブロン家の兄以外がショゴスで俺たちに何かさせようとしていたか。二つ目は彼女はショゴスに全て完璧にコピーされているか、頭だけをショゴスに植え付けられただけで両親がどうなったかはわからない。三つは彼女がショゴスロードで下のやつと融合してて倒されたことによって気絶した一つ目の派生がある。結局はどれだとしても、俺たちにはどうもできないからな」
「それなら、本人から聞いたらいいんじゃないの?」
「どうやって」
「任せとけって」
トオルが縄を用意し、ラプターと協力して、マーキュリーを縄で縛り、周りに油を置きいつでも仕留められるように準備する。
「これで安心だろ。キリトス」
「確かにそうだけど、マーキュリーが何も知らない場合だと可哀想じゃね」
「仕方ないでしょ」
「まぁそうだな」
4人はマーキュリーが目覚めるまで待っていると、マーキュリーが目を覚ます。
「あ、あれ。何これ、私なんで縛られて」
「マーキュリーさん申し訳ないですけど、聞きたいことがあって、あなたってショゴスをご存知ですか?」
「何のことを言ってるかわからないですトオルさん。そんな生物見たことも聞いたこともないですよ」
「うん。マーキュリーって馬鹿何だな」
「なんて失礼なことを言うんですか。キリトスさん」
「だって、超初歩的なのに引っかかってるじゃん。ていうか、引っ掛ける気すらなかったかもだけど、誰も生物って言ってないし」
「えっ、あれ」
「じゃあ、やれ。キリトス」
「まっ、待ってください。騙してごめんなさい。本当の目的を話しますから。どうかお情けを」
マーキュリーは泣きながら懇願する。元々殺す気のなかったキリトス達はあまりにも早い自白に驚きつつも事情を聞くことに。
「マーキュリーさん。事情は勿論ですが、あなたに会った時に話した情報の件お願いします」
「わかりました」
マーキュリーは泣きながら返事をする。
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