超常邂逅
前回のあらすじ 依頼人のレブルン・マーキュリーから話を聞き、レブルン家に向かう。マーキュリーの両親の部屋を探ると、そこには薄い赤色の粘液のようなものがあった。キリトスがそれに触れるとそれが、指の形に変化した。
その指の形をした何かは、くねくねと動き、這い回る。しばらくしてそれは動かなくなる。そして、溶けるように広がり、元の粘液状に戻る。
「うーわっ、気持ちわる。吐きそうだわ」
『...』
「なんでみんな黙ってるんだよ」
「いやいや、逆になんでそんなに普通でいられるのかわかんないんだけど」
「そりゃ、戸惑ってるよ。でも、こんなん慌てても意味ないし、いきなり形変わって襲いかかって来るかもだし、早く離れないといけないけど、ここは先に場を和ませた方がいいかもって、、」
「落ち着け、キリトス。まずはその粘液から離れろ。それから考えよう」
「わかった」
キリトスが立ち上がり、一歩移動しようとしたその時、粘液がアメーバのように波打ちゆっくり移動する。
「うわっ、動いた。動いてる。こっちきてる」
「落ち着けキリトス。パニックになるな。深呼吸しろ」
キリトスが大きく息を吸い、吐く。落ち着きを取り戻す。五人が警戒しつつ、ゆっくり後退りする。
「動きはあまり速くないですが、先ほどのように変形して、襲い掛かる可能性は十分あります。皆さん警戒しつつ、分散しましょう」
「わかった。ハスマはとりあえずマーキュリーさんを守りながら離れて」
「はい」
ハスマが返事をしたところで、粘液に変化が起こる。二手に分かれたキリトス達を追うようにその粘液が分かれる。
(何を感知して追いかけてるんだ。二手に分かれたチームの共通点は?なんだ。考えろ、考えろ。あっ、そうだ。一つあった。粘液との接触だ。俺はさっき、マーキュリーは寝てる間に触られた可能性があるだが不確定要素が多いな)
「トオル、確かめたいことがある。俺と逆側に走ってくれ」
「ん?わかった」「ラプター、行こう」
「...んっ」
(やっぱりだ。俺についてくる。触れた人を追ってる何か理由があるのか?とりあえず、、、)
そんなことを考えていると、粘液が波打ち始め動きがだんだん速くなる。
「ハスマ。速くなってるから、急いで話すぞ。多分あの粘液は俺とマーキュリーを追ってる。追う条件はおそらく接触だ。触らないようにしつつ、マーキュリーさんを抱えて、逃げてくれ」「俺は試したいことがある」
「わかりました。行きますよマーキュリーさん」
「はっ、はい」
ハスマが速度を上げ、粘液を一気に引き離す。キリトスが速度を粘液に合わせて、皆が屋敷から出たのを確認した。
(これでも俺のみを追ってくるってことは一定範囲のふれたことのあるものを追う。もしくは1番近いやつを追うの二択か)(あれ、なんか小さくなって)
キリトスが前に向き直るとそこには分裂した粘液が向かってきていた。
(おいおい、マジかよ。いつ分裂したんだ。まずい、この廊下は一方通行逃げ場が、、、)
キリトスが咄嗟に窓から飛び出る。そして、窓を閉じて粘液を屋敷に閉じ込めた。キリトスがトオル達と合流する。
「なんかわかった。キリトス」
「試したかったことが試せなかった。あいつ結構頭いいかもしんない」
「何があった?」
「しばらく俺を真っ直ぐ追いかけて、目を離した隙に分裂して、挟み撃ちにしてきやがった」
「それって、結構やばくね」
「現時点までの情報をまとめると、一定時間経過するとスピードが上がる。分裂する。触れると触れたものと同じ形をとる。かなりの知能を持ち合わせているという感じですかね」
「どうする?っていうか、キリトスが試したかったことって?」
「どうやって殺そうかと思って、分裂できるみたいだし、斬撃はなし。矢も同じ理由でなし。それで1番手取り早い火で燃やそうと思って、いい感じの場所探してたら挟みこまれた」
「とりあえず、両親を探すために探索をしないといけない。マーキュリーさん、この屋敷以外に何か手掛かりがありそうな場所ってない?」
「すみません。ここ以外には...」
「うーんどうすっかね?」
「一旦あの粘液の危険性を調べる必要がある」
「触った感じ、変な感じはしなかったぞ」
「とりあえずもう一度入って、追いかけてくるなら逃げる。追いかけこないなら捕獲して燃やしてみよう」「ハスマはここでマーキュリーさんを守っていてくれないか?」
「わかりました」
「じゃあ、一度準備を整えよう」
しばらくして5人が集まる。
「トオル。捕獲用の袋とぶっ殺す用にマッチと油取ってきた」
「オッケー。それじゃあ、みんな準備はいいよな?」
「おうよ」
「...ん」
「あ、あの。今兄が今家を空けているので、兄の部屋も調べてみてください」
「わかった。このキリトスに任せろ」
「調子のんな」
キリトスがゆっくりドアを開け、覗く。音はしない。ゆっくりと屋敷へと入る。それから、念のためにと3人で屋敷を回るがしかし、先ほどの粘液はどこにもいない。
「いないな」
「そうだね。でも油断しちゃダメだ」
「わかってるよ」
二人がマーキュリーの兄であるアルフレッドの部屋に向かう。
「鍵は空いてるな」
「誰もいないしね」
部屋はとても静かで薄暗く、とても昼とは思えないほどに。トオルがカーテンを開けると、部屋には液体の入った瓶に先ほどの粘液のようなものや見たことのないような大きな昆虫が入った瓶がいくつも棚に保管されている。そして、その部屋はまるで何年も使われていないかのように埃がかぶっている。
「ここって、ほんとに人が住んでんのか」
「住んでるとは思うけど、ほとんど使ってないんだろうね」
「それにこれってさっきの粘液みたいなやつなのか」
「そうだとしても、これがあるってことは何かありそうだね」「ラプター、何か感じない」
「...何か聞こえる。この棚の裏空洞」
「動かしてみっか」
キリトス、トオル、ラプターが力を合わせて、棚を動かす。その裏には引き戸があった。
「この本棚、クッソ重いな」
「ハスマのこと連れてこればよかったかな」
「...疲れた」
キリトスが疲れた体に鞭を打って、引き戸を開けるとそこには階段があった。
「どうせ降りるだろうけど、誰が先頭行く?」
『...』
「俺か」
キリトスを先頭にラプター、トオルの順で進む。下へと進むほど、空気は生暖かくなってゆき、カビ臭い匂いが広がる。そして、1番下へと着くとそこにはいくつかのガラスケースがあった。その中には漆黒の玉虫色に光る粘液状生物が表面に無数の目を浮かべている。それは不定形で決まった姿を持たず、さまざまな器官を形作っているそれは何匹かおり、1mから3mまでさまざまな大きさのものがいる。さらにそれは「テケレ・リ、テケレ・リ」と独特の鳴き声で泣いている。
「なんだこれ。まるでタールでできたアメーバ見てぇーだ」
「キリトス。何かの資料みたいなのがあるぞ」
ガラスケースに隣接されるように設置されているデスクの上には無数の資料が無造作に置かれていた。そのうちのメモがあるが、ところどころ擦れていて読めない。
[やっと、こいつらを に成功した。 させなかったら、 は大したことはない。こいつら すれば 他の 生物 し、 救うことが出来るかもしれない。これでやっと俺も認められて 集中できる]
「このメモだと、この粘液が敵か味方かわからないな」
「キリトス。この資料、上は擦れてるが経過観察や粘液の能力が書かれているっぽい」
[この はショゴス 呼ぶと、 が言っていた。 両親 使用した実験から、触れたものを遺伝子レベルでコピーし、正確、特技、記憶までも全て分かるらしい。そして、四肢がちぎれても、別個体または欠損した部位を近づけると元に戻る。また、ショゴスの肉体に切り落とした人の首を繋げると意識はそのままでショゴスの肉体を手に入れることができるが、ショゴスに適合しなければならない]
キリトスとトオルが夢中になって資料を読んでいるとノック音が聞こえる。
(この地下にドアはないつまり存在を知らせるためにわざとノックしたなぜ?)
キリトスがそう考えながら振り返ると、そこには自分と全く同じ見た目をした髭面で癖っ毛の男がこっちに手を振っていた
「よっ」
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ショゴスの説明はオリジナルと違いますのでご注意を