四人集合
初投稿なので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
ある辺鄙な酒場で一人の大男が酔いつぶれていた。
「お客さん、お客さん。起きてください」酒場のマスターが不機嫌そうな顔をしながら男を起こす。その男は癖っ毛で茶髪の髪を後ろにまとめた髭面の男だ。
「ん、んー。なんだ」
「飲まないなら帰ってくださいよ」
「飲んでんじゃんかよ」男があくびをしながらジョッキを見せる。すると、マスターがため息をつく。
「少し残して、ずっとカウンターにいついてるじゃないですか」
「いいだろ別に傷心中なんだよ。ほっといてくれ」
マスターが呆れた様子で、男から離れる。
男の背後で扉が開く音がする。
「いらっしゃいご注文は?」
「牛乳とそこの酔っ払いに気付の水を」
といったところで男が振り返る。
「よっ、キリトス」
「トオルじゃんか。久しぶりだな」
そこにいたのは黒髪で深い青色の目した右頬に傷のある男だった。マスターが水と牛乳を持ってくる。
「はいよ。お客さん」
「ありがとうございますマスター」
「なんで来たんだ。傷心中の親友をバカにしに来たのか」
キリトスが自虐混じりに言う。
「ハハっ、流石に情報通の俺でも親友が気になってる女に振られたなんて知ってるはずがないだろ」
「知ってんじゃねか。はぁなんで、モテないんかね」
「そのダッセェヒゲ剃れば、多少はモテるんじゃないか」
「はあっ‼︎俺のチャームポイントをバカにしてんのか」
と言いながらキリトスがトオルの牛乳を一気飲みする。
「あっ、俺の牛乳」
「ぷはっ、相変わらずまっずいなこれ。なんでこんなもん飲んでんだ」
「あぁあ、勝手に飲みやがってよ。今日の楽しみだったのに」
「わりぃ、わりぃ。それで本題は」
「ああ、そうそうやっと話せる」
「新しい依頼が入ったから協力してくれないか」
「まぁ、お前が持ってくるんだから、情報はあるだろうけど、お前の依頼協力は報酬ほぼゼロの上ハードだからな」
「そういうと思ってたよ。だから今回はお前がここに貯めてるツケを払ってあげるよ」
トオルの発言と同時にキリトスがかしこまり、トオルの方を見る。
「そうですか。それでは、依頼内容を私めにお教えになっていただけないでしょうか」
トオルが手を口に当てながら笑う。
「笑える。けど依頼内容はここでは話せないから、注意事項だけ言っとく」
「をん」
「一つ目は依頼内容の口外は禁止だ。二つ目はあいつと新人が一人来る。三つ目は1番重要だ。勢いででも、絶対例の力を使うなよ」
「あい、わかった。任せとけって」
「じゃあ、明日10時に俺の事務所で」
トオルが席を立つ。
「マスター、あいつのツケも一緒に払えるか?」
「いいんですか?彼結構貯めてますよ」
トオルを一瞬考える。
「まぁ、大丈夫でしょ」
「じゃあ、これです」
マスターが伝票を見せる。
「はあっ、どんだけつけてんだよ」
翌日キリトスは約束通りの時間にトオルの事務所前につく。
「はぁ〜、疲れた」「トオルの事務所ってマジでクッソ遠いわ」
キリトスが息を切らしながら辺りを見回す。すると、扉に挟まっている一枚の紙を見つける。
[鍵は開いてる。俺は遅れるから部屋入ってて]
「はぁ〜〜〜、呼び出しといてなんなんだよ」「まあいいや。先入ろ」
キリトスが音を立てて扉を開けるとそこには黒髪に一本の金髪メッシュの入った女のような可愛らしい容姿をした男がケーキを食べていた。
「お久っ」
「...んっ」
「聞こえねぇって、もっとはっきり喋れよ」
二人の間に沈黙が流れる。特に接点のない二人は目も合わせない。男はスイーツを楽しみ、キリトスはソファーに腰掛け天を仰ぐ。
(ほんと気まずい。この空気感どうにかしたいけど、こいつと会うの久しぶりだし、こいつのことあんま知らねぇ。友達の友達と二人きりになってる空気感だわ)
キリトスがそう考えてからしばらく経った頃、事務所の扉が開く音が聞こえる。
「いやぁ〜、ごめんねほんと。合流するの時間かかっちゃってさ」
トオルが悪びれる様子もなく入ってくる。その後ろには白髪と吸い込まれるような金色の瞳をした男がいた。男が身につけている黒い手袋は彼にどこか神秘的な印象を与える。
「彼は新人だし、みんな自己紹介しようか」
キリトスは待ってましたと言わんばかりに食い気味で答える。
「じゃ、俺からだな。俺はキリトス。騎士学校卒業から早6年24歳の傭兵だ」
「こいつこんなんだけど俺より頭切れるっていうか、鋭いからと寄ってみるといいよ。俺はトオル。一応みんなを集めたって、みんな知ってるからいいか。じゃっ、次ラプター」
「...んっ、ラプター」
「こいつは基本無口だが困ったら甘いもの渡してくれ。喜んで協力してくれるよ」
それを聞いたキリトスが目を丸くした。
「そりゃ、俺も初めて知ったわ」
皆が自己紹介を終えると、トオルの後ろにいた男が一歩前に出る。
「僕はハスマ。僕は完璧なものが大嫌いだ。壊して、踏みにじって、唾を吐き捨てたくなるほどに。その点、僕は欠点まみれの君たちが大好きだ」
「ハスマって意外と辛辣だよね」
「そうだぞ。俺らのどこが欠点まみれなんだ」
「そうですか、では僕があなた方の好きなところをお教えしましょう」
「まずキリトスさん、あなたは気さくで強くて、一定層に刺さりそうな顔をしている。だが酒癖、女癖共に悪いという良い点がある」
それを聞いたキリトスは口角を落とし、眉間にしわを寄せる。
「喧嘩売ってんのか。買うぞ」
「物はいいようだね」
「トオルさんは一見優しくイケメンで、金も稼げると来た。けれど、交流してみれば人に嫌なところをつつき回し、その様子を見て笑うような人間だ」
キリトスが満面の笑みで言う。
「おお、トオルのことよく分かってんじゃん」
「ハハッ、俺のことよく見てるね」
「...」
「そして、ラプターさん。あなたは女にも男にも受けそうなほど極端に顔がいいけれど、絶望的なほどのコミュ症の上、甘いものが絡めば平気で仲間を裏切ると思えるほどの甘い物好きと言う大きな欠点を持ち合わせている」
「...」
ラプターがジトッと下目でハスマを見つめる。
「聞いての通りあなた方は魅力しかありません」
ラプターがそのジトッとした目をトオルに向ける。
「...トオル、俺のこと知らないやつと一緒にバカにした」
「誤解だよ。俺がそんなことすると思う」
「...うん」
トオルは少し笑いながら答える。
「あっ、うん。そうだね。ごめんって、ほらこれ前食いたいって言ってたやつ」
トオルが落ち込んでいるラプターにあえて選ぶことがないと断言できるほどに小さいスイーツを出す。
「...んっ、許す」
(トオルってラプターのこと、ペットだと思ってんのかな)
キリトスがそんなことを考えていると、ハスマが顔を近づけてくる。
「あれっ、キリトスさん。あなた魔術ってご存知ですよね」
「はぁ、なんだよそれ。頭おかしいのか」
キリトスがキレ気味で答える。
「あれっ、知らないんですね。魔術の残穢的なのを感じたんですが」
「それがなんなのかは知らないがトオルの依頼に協力してるから、その時に触ったなんかについてたんじゃねぇか?」
「そうかもしれないですね」
二人の話が人区切りついた辺りにトオルが割って入る。
「まぁまぁ、落ち着け二人とも。明日から四人で依頼をこなすんだ。ここは情報の擦り合わせも合わせて」
『乾〜〜〜杯』
キリトスがギア全開でエールを流し込む。
「なんで依頼前なのになんで飲むんだ。仕事に支障出るだろ」
ハスマはそれに軽い感動を覚える。
「そう言いながら飲んでいる。それでこそキリトスさんです」
「四人集合を祝っての無礼講みたいなもんさ」
トオルの回答に対し、キリトスが注文をしながら質問を投げかける。
「まぁ、俺はいいけど、依頼内容の擦り合わせは?あっ、店員さん唐揚げとエールを1つずつ」
「実はハスマと合流前に依頼人に会う約束してたんだけど、それが今日は行けないからってドタキャンしたんだよ。だから、依頼内容は明日確認することになったんだ」
「何なんだよ。じゃあ、さっきの擦り合わせとかって何なだよ」
「そりゃ、ラプターを事務所から連れ出すための口実に決まってんじゃんよ」
「相変わらずの性格で、ラプターに対する同情で涙を禁じ得ないね」
「はっ、嘘クセェ」
「僕トイレ行きます」
そこでキリトスがハスマを警戒しつつトオルに近く。
「ハスマって信頼できるの?」
「以外とできるよ。彼の行動理念に反しなければ」
「そこ重要だろ。まぁお前が信頼してるならいいか」
「えっ、嬉しい。そんなに俺のことが」
「万に一つもない勘違いをするな」
「俺はお前じゃなくて、お前の疑り深さを信用してんだよ」
二人が話していると、トイレから戻ったハスマがキリトスの後ろから話しかけてくる。
「何のお話を?」
ハスマの突然の問いかけに対し、キリトスは動じずに答える。
「なぁーに、お前が信用できんのかなって話」
「そんなことより、ハスマは飲まないのか」
「僕は大丈夫です。下戸なので、それよりラプターさんはどこに?」
「ああ、ラプターならトオルに渡されたボンボンと人混みで酔っちまって、トイレでゲロってる」
間違った表現をしていたら、教えていただければ幸いです。ブックマーク登録、感想、イチオシをお願いします




