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第1話 ブレイブテイル オンライン

初投稿ということで短めなお話です。

文才無いですが生暖かい目で見てやってください


「遅っせーよ温人」


自分の部屋に飛び込んだ途端にそう言葉を投げかけられたのは俺、橘 温人(あひと)

黒髪で顔面レベルも普通の高校1年生だ。

そんでもって部屋の主より先に部屋で寛ぎ愚痴をこぼしたのは、幼馴染で同い年の東堂 海斗(かいと)

家が隣で親同士仲も良く、腐れ縁であり親友だ。

こちらもまあフツメンで、眼鏡に茶髪の青年である。


「悪い悪い。ちょっとコンビニ行くだけのつもりが、近所の婆さんが目の前で倒れて…家まで担いで行ったら昔話に2時間くらい付き合わされちゃってさ」


「いやそれ話し相手欲しさに死んだフリするあの婆さんだろ?わかってて律儀に相手してやるのなんてお前ぐらいだぞ」


相変わらずお人好しだな…と言いながら呆れたように半目で見てくる海斗。

だって仕方ないじゃないか。

万が一本当に具合が悪かったらどうするんだ。

いや確かに、倒れながらも明らかに元気そうにチラチラ様子を伺ってきてはいたが。


モゴモゴと声にならない反論をする俺を前に、海斗は軽く息を吐くと切り替えるようにVRゲーム用のヘッドギアを手にした。


「とにかく、遅れた分取り返すぞ!BTO5もあと1週間でサービス終了だしな」


BTOとは、フルダイブ型VR MMORPG『ブレイブテイル オンライン』の略称だ。

20年前から続いている大人気シリーズで、俺たちは最終章の5作目を中1の頃から一緒にプレイしている。

そんなBTOもついにその歴史に終止符を打つらしく、1週間後にはサービス終了してしまうのだ。

長年愛されたゲームだけに惜しまれる声も多いが、ストーリーとしてしっかり完結している為に文句を言う人は案外少なかった。

サービス終了の直ぐ後に新作ゲームが配信される予定なので、そっちに意識が向いたというのもある。


てな訳で、サービス終了に伴ってプレイする人も減っている中、敢えて残りの期間を最後まで全力で満喫しよう派が俺達だ。

ちょうど夏休みに入ったので、俺の家でガッツリ遊び倒そうと計画していた。

いきなり遅刻したが。


「もうすぐ終わりって考えるとやっぱ寂しいな。残りの1週間何する?」


「んー…取り敢えず中入ってから考えようぜ」


「そうだな、じゃあログインするな」


そう言いながらいそいそと自分のヘッドギアを取り出し、自分専用の座椅子に座る。

ベッドに横になってやる人が多いが、男同士で一緒に寝るのは気持ち悪いと俺たちは横並びで座椅子に座りながらプレイしていた。

早速頭に装着し、2人で同時にゲームを起動する。


《ブレイブテイル オンラインへのダイブを開始します》


という音声が流れ、直後に意識がゲームの中へと吸い込まれていく。

いつも通りの事なので何とも思わずに景色が変わるのを待っていた。


が、ここで突然いつもとは違う事が起こった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ★特別クエスト★

 あなたの助けが必要です!

 ロジピースト城をサービス終了

 までにクリアしてください!


 ※注意※

 参加された場合クリアするまで

 そのエリアを出られません。


 参加されますか?[YES][NO]

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「!?」


ロード中の真っ黒い空間に突如映し出されたクエスト画面に驚く。

クエストとはゲームをプレイした際に受けられる課題で、クリアすると内容ごとに様々な報酬を貰う事ができる。

それこそ3年ほどこのゲームをやっていて、ワールド内で散々受注してきたが、完全にログインする前にクエストが出るのは初めての事だ。


(ロジピースト城?初めて聞く名前だな…。もしかして、サービス終了前に運営が特別に用意したダンジョンか?)


サービス開始から1年遅れで始めたけれど、それなりにやり込んでいるので既存のダンジョンなども全てクリア済みである。

それなのに聞いた事が無いとなると、新たに用意されたものと考えるのが自然だ。


新たなクエストを前に、ついついワクワクとした気持ちが湧いてくる。

エリア制限が付いてしまうようだが、ストーリーも全クリして適当に自由に遊んでいる状態なので移動できないからといって特に困ることもない。

あと、「助けが必要」って言われるとメッチャ断りづらい。


(別に相談しなくても、海斗なら速攻食いついて受注するよな。どうせやる事も決めてなかったし、受ける一択だろ!)


そう考え、殆ど迷う事なくYESボタンを押す。

するとその刹那、ブワッと何かが身体中を駆け巡っていったような感覚がした。

一瞬戸惑ったが直ぐにいつも通り光が広がり始め、気付いた時には見慣れた街の地面に降り立っていた。


「ん…?」


そう、見慣れた街だ。

ファンタジーで定番の昔のヨーロッパっぽい建物が建ち並び、変わった服装のプレイヤーやNPCが行き来している。

いつもの活気ある街で何も変わった所は無い。

けれど、何か感じる違和感。

肌を撫でる風や鼻をくすぐる香り…感覚がどこか違うように感じるのだ。


けれどその違和感は、背後から掛けられた声で霧散した。


「おーアヒト、珍しくロード時間長かったな。一瞬来ないかと思ったぜ?」


「カイト」


聞き慣れた親友の声に、振り返りながらなんとなくホッとする。

因みにこのゲームは容姿も声も現実の姿と殆ど変わらないようになっている。

その為、より現実の延長のような感覚で遊べるのだ。

変化をつけるとしても、精々髪や瞳の色を変えたり肌荒れなどが消えてるくらいのものだろう。

名前は好きなように変えられるが、見た目そのままで名前だけ違うのが逆に恥ずかしく感じ、俺達はそのまま『アヒト』『カイト』と表記だけカタカナにしている。


「てか逆にお前はログイン早くないか?どんだけ速攻でクエスト受注…」

♪ポーーーーーン


言いかけた時、セリフに被るように聞き慣れた音が辺り一帯に鳴り響いた。

運営からのお知らせの際の音だ。

周りにいたプレイヤーも言葉を噤み、空から聴こえる音声に耳を傾ける。


【運営からのお知らせです。サービス終了までに皆様に少しでも楽しんでもらえるよう、統一世界エリアに新ダンジョンをご用意しました。その名も『ロジピースト城』です。ご興味のある方は是非挑戦してみてください】


やはり、俺の予想は当たっていたらしい。

もう一度同じ言葉が繰り返される中、ここに来ての新たなダンジョンにそこら中から歓喜の声が上がった。

中には「俺まだそこ行けないから挑戦できねぇ…!」と嘆く声も混ざっていたが。

というのも、統一世界エリアというのはストーリーを全クリして初めて行ける場所なのだ。

無論、既にクリア済みの俺達は行けるわけで、隣のカイトはキラキラと目を輝かせていた。


「新ダンジョン!?しかも城!?絶対面白いやつじゃん!やるしかねぇ!」


「やっぱカイトならそう言うよな」


俺は色んなクエストを受注してクリアしていくのが割と好きなのに対し、カイトはダンジョン攻略が好きでよく周回している。

やはりあのクエストを受けておいて正解だったようだ。


あれ?

けどなんかカイトの反応…まるで初めて聞いたみたいな…


「こうしちゃいれん!早速ダンジョン用に装備とか整えてくるわ!」


そのカイトの声にハッとする。

そうだった、俺も準備しないと!


「じゃあ俺も…あ!けどその前に」


「あぁ、いつものデイ爺だろ?わかってるわかってる。俺も片付けたい半端なクエストとかあったから、一旦別行動な」


俺の言葉に慣れた様子でヒラヒラと手を振るカイト。


デイ爺とは、『デイリークエスト発注爺さん』を略して愛称にしたものである。

このゲームのクエストは、基本的に一度クリアしたら同じクエストを受ける事は出来ないのだが、唯一毎日同じクエストを出す爺さんが居るのだ。

その内容は、ボケて徘徊していて帰れなくなった爺さんを家に送り届けるというもの。

『はじまりの街』のどこかに居るので、それを見つけて家まで連れて行けば30ライビ(このゲームの通貨)を貰えるのだ。

因みに初級ポーションで100ライビなので、かなり微々たる報酬である。


初めの内は唯一のデイリークエストという事で何かあるのではと勘繰り毎日こなしてみるプレイヤーも居たのだが、100日続けても何の変化も無かったことから初心者救済措置だろうと結論づけられた。

ある程度ゲームを進めたプレイヤーには微々たる金額でも、始めたばかりのプレイヤーには戦わずしてお金を貰えるこのクエストはとても助かるのだ。


てな訳で、俺も別にこのクエストをやる必要なんて全く無いのだが………気になってしまうのだ。

モンスターと戦闘中にも、頭の片隅で「あの爺さん、今日も帰れなくなってんだよな…」と。

探索中にも、「爺さん、今日はどこら辺ウロウロしてんだろう…」と。

度々上の空になる為、ついにキレたカイトが「そんなに集中できなくなるなら、そのクエスト先にこなしてくりゃ良いだろ!」と言ったのが切っ掛けで、ログインした時には必ずデイ爺を送り届けてから続きをやるのが日課になったのだ。

これでスッキリしてゲームに集中できるし爺さんも助かるし一石二鳥だ!

カイトには、「NPC相手にそんな心配する奴なんてお前くらいだぞ…」と呆れられたが。


「悪いな、集合場所はどうする?」


「ダンジョンが統一世界エリアだから…ファーストタウンの英雄像のとこにしようぜ」


「了解」


ファーストタウンとは統一世界エリアにある唯一の街だ。

待ち合わせ場所も決め、それぞれやる事をこなすべく歩き出す。

一度行ったことのある街には各街に設置してある『転移の石碑』というものを使うと一瞬でその街の石碑まで飛ぶ事ができる。

早速俺は石碑に近付くと、行き先を『はじまりの街』に設定して転移を開始した。


(ん?そういやあのクエストに、クリアするまで他のエリアに行けないって書いてたような…)


と、重要な事に気付き焦ったが、無用な心配と言うように何故かアッサリと転移が始まった。



「お、無事着いた」


見慣れた街の風景にホッと胸を撫で下ろす。

たぶんまだダンジョン攻略を始めていないからセーフだったのだろう。


「んーとデイ爺は…」


常に歩き回っている為デイ爺のいる場所はランダムなのだ。

ある程度ルートは決まっているので、居そうな所を探しまわる。


「お、居た!」


少し離れた所に発見した、つるりとした頭にモフっとした真っ白い髭を讃えたお爺さんことデイ爺。

早速そのデイ爺の元まで走った。


「ふぉぉ…そこの君。悪いんじゃがワシを家まで送ってくれんかのう?どうにも道に迷ったようでな」


「あぁ、いいよ」


近付くと出る決まり文句に、イエスと答えればクエスト受注完了だ。

この後はデイ爺の「確か大ぉ〜きな木があってのぅ…」といったヒントを元に家の場所を一緒に探す。


「ほら、こっちこっち」


がしかし、毎日毎日送り届けている俺はいちいちヒントなど聞かなくとも最短距離で辿り着く事ができる。


「おぉ〜そっちじゃったか?こっちな気がするんじゃが…」


「大丈夫大丈夫。俺を信じろって」


戸惑うデイ爺を促して迷う事なく歩を進め、10分くらいでデイ爺の家がある村まで辿り着いた。

地味に距離があるので、道順が違ったとしても家まで着ければクエスト完了扱いになるとわかった時は嬉し涙を流したものだ。


「いやぁ〜見ず知らずのワシに親切にありがとうなぁ。助かったわい。これはほんのお礼じゃ」


全然見ず知らずではないのだが。

NPC特有の決まり文句だから仕方ない…と自分に言い聞かせて寂しい心を慰めよう。


「じゃあ爺さん、またなー」


報酬を受け取り、急いでまた転移の石碑に向かった。

今度はダンジョン用に装備やらアイテムやらを選別する為だ。

自分の倉庫がある街に転移し、未知のダンジョンという事で取り敢えず万能型の装備で整える。

アイテムも多めに準備し、一先ずこれで良いかなという所で今度はファーストタウンに転移した。


そして街の様子を見て思わず苦笑する。


挿絵(By みてみん)

まじめに描くと10時間以上掛かるのでザカ描きイラストw


服考えるの苦手なので誰か考えて…w

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