兵舎の雑用係 2
艶やかな鹿毛を丹念にくしけずる。
「鬣に艶がでてきたねぇ。オズワルド。すごいねぇ。きれいねぇ。とんでもないねぇ」
皮膚病にかかった馬まで綺麗にする聖水。とんでもない。……お値段がきけない!
初対面でも甘えた声で鼻を伸ばして押し付けてくるオズワルドがかわいすぎる!
「待って、浮く!」
お腹に顔をつっこまれて悲鳴を上げる。助けて! 助かった!
昼寝を終えて、夕飯までは自由時間だ。墓地に向かう。
「聖水、ありがとうございました」
「どういたしまして。見違えましたよ、デイヴィッド。こんな顔立ちだったのですね」
汚れているとぼやけるものね。
「ちょうどいいので、聖句を覚えましょう。お父さんも喜びますよ」
聖水がアレだから聖句で喜ぶと言われたら、信じちゃうじゃないか!
「この際、神音もやっちゃいましょう!」
さあさあ、と背を押され、神殿に入る。壁際にはパイプオルガンがあった。
抱き上げられて、膝にのせられる。
「初めは音に慣れましょうね」
目の前で演奏されるオルガンをじっと見つめた。
夕食後、洗い物をしている最中にふと思った。
「なんであそこまで世話してくれたんだろ」