序章
一昨日、父が帰って来なかった。
今朝、父の変わり果てた姿と面会した。王家のお家騒動に警邏していた父が巻き込まれたらしい。
そして、今。隊長さんに連れられて、殉死した兵士や騎士の葬列に並んでいる。
墓地に埋められて行く棺たち。司祭様や助祭様が祈りを捧げるのに倣い、黙祷を捧げる。
兵士や騎士が退場し、遺族達もまばらに帰って行った。
肩に手が添えられる。若い神職様に促され、神殿の中へと入った。
墓地が解放されると墓地へと向かい、神職様――司祭様の側に仕える侍祭らしい――に挨拶をして、墓地を整えていた聖騎士様に家へと送られる。
本当は、そろそろ働きに行かなきゃいけないのだけど……
「ごめんなさい」
「気にするな。頼られて嬉しい」
聖騎士様を見上げる。初めて声を聞いた。
「ようやっと目が合ったな」
聖騎士様は穏やかに笑う。彼は思いの外若かった。
「夕餉を買って帰ろう」
息をのむ。
朝も昼も抜いて、夕食を聖騎士様にいただき、寝かしつけられた事に思い至った。
墓地から家に帰ると、大家さんがやって来た。
「悪いけど。今月のお家賃を払うか、出て行ってもらえる?」
父が亡くなって、およそ半月が経過したことを知った。