1-1 夢を追う青年
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陽の光がかろうじて少し届くくらい深い森の中を僕は歩いていた。春だというのに、光が届きづらいためか、心なしか肌寒く薄暗い。背の高い木々が僕を囲み、そんなに人が通らないのであろうとわかる、少し踏み慣らされた細い草道を行く。
「なぁティア、お前せっかく魔法が使えんだから、空でも飛んできゃいいじゃねぇか。わざわざこんな森の中歩く意味あんのか?」
少し低い男の声が、乱暴そうな口調で僕にそう言った。
彼はネル。僕が目覚めた時、近くにあった一本の黒い杖で、世にも奇妙な喋る杖だ。普段は彼に乗り、空を飛んで移動するところだけど、今は森の中を歩いて移動中だ。
「いつもネルに乗って移動しているから、たまには歩くのもいいと思ったんだよ。それに、上から覗けないってことは、中に何かあるかもしれないでしょ?なんか勿体無くて。」
「そうかねぇ…」
あまり納得のいかない様子でネルはそう言った。
(…多分、ネルは早くこの森から抜けたいんだな。)
そんなやり取りをしながら歩いていると、遠くに微かに家の明かりが見えた。
「あっ…ほら、やっぱり何かあったよ」
「みたいだが…こんなとこに家とは物好きなやつもいるな」
近づいてみると、小さなログハウスのような家だった。
家の正面にはダークブラウンの扉があり、その横にはランタンがかけられている。おそらく、僕らが見たのはこのランタンの明かりだろう。
また、家の右側には木の柵に囲まれたウッドデッキがあり、そこには小さなウッドテーブルとチェアが一人分置いてあった。
「…ちゃんと人は住んでそうだね」
「だな、こんな陽もあまり差さないような森にウッドデッキがあるのは気になるけどな」
ネルがそう言うと、突然それに答えるように声が聞こえた。
「それはね、休むというより様子を見るためさ」
その声の方を見ると、正面の扉を少し開けて、中から半身を出している儚げで優しそうな青年がこちらを見ていた。
彼は微笑みながら僕らを見て続けてこういった。
「お客さんが来るのは久しぶりだな…どうだろう、少しお茶でも」
「おっ!いいな!俺らも疲れてたんだ、それにここは気が滅入るぜ」
「ネル、勝手に決めないでよ。…すいません、じゃあお言葉に甘えて」
「あぁ、いいよ。少し散らかってるけど…どうぞ入って。」
そう言って彼は、僕らを中に招き入れた。
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