第2話 君が僕の、友達になる
強さって、なんのため?
「だ、誰?」
「私は神龍。」
「しん......りゅう......?あの伝説の?」
どこから話しかけられているのか、ホムラは辺りを見渡す。
「内側からだ。私は貴様の中にいる。」
「神龍が僕の中にって、どういう事!?」
意味が分からず胸の辺りを見つめる。
「貴様は遥か太古に生きていた私、【神龍】の末裔だ。」
「なんで僕なんかが!?嘘でしょ?」
「本当だ。証拠を見せてやろう。」
ホムラの身体から炎が湧き出る。
そして、背中からは黒い翼が生え、瞳は金色に輝く。
「何!?何これ!?」
「この炎は邪を滅ぼし、人を痛みから守る。」
「その翼で飛べば、何処にでも行くことが出来る。」
「その瞳は万物をうつす。」
困惑するホムラに、神龍は問いかける。
「お前は、何を望む?」
ホムラはぐっと拳を、握って答える。
「世界を、救いたい!!」
「そうか、ならばこの力、存分に使うがよい!!」
降り注ぐ無数の狂巨人たち。
まずはこれを止める方法を探す!!
「答えを教えてくれ!!金色の瞳!!」
その瞳が見たものは神話に登場する最悪の邪神「ダルセロス」いや、物語の中で描かれた風景そのものだった。
宇宙にはダルセロスの姿。
彼によって星に落とされる無数の狂巨人。
破壊される街と食われる人々。
これはダルセロスの神話の再現だと悟った。
「何をやれば良いのかは、分かったよ。」
ホムラは腕をあげ、掌を開いて叫んだ。
「蒼い炎よ!!この星を包みこみ、悪しき者を滅ぼし、悲しむ人々を救いたまえ!!どりゃああああああああああああ!!」
彼の言葉に従い蒼い炎はこの星にやってきた狂巨人を全て焼き払い、人々の傷を癒し、狂巨人によって理不尽に死んだ人間を蘇らせた。
「よし、これで一安心だ!後は宇宙にいるダルセロスを止める!」
ホムラが黒い翼を広げようとした、その時。
「そうはさせないよ。」
何者かがホムラを蹴り飛ばした。
「ぐっはぁ!!なんだよ、アイツ!」
「やあ、ワタシはこの世界を憎むもの、モンズ。ダルセロス様を復活させ、破滅を導く邪魔をしないでくれるかな?キミ。」
怒っているのか笑っているのか分からない表情で話す。
立ち上がるホムラ。
「お前が......どうしてこんなふざけた事を!」
「言っただろう?この世界を憎んでいるって。それほどまでにどうして憎んでいるのか?って顔をしているね。君のその瞳でワタシを見ればすぐに分かるんじゃないかな?」
「そうだな。金色の瞳よ、彼の真実を見ろ。」
そこには泣き叫ぶモンズと消えていく人々が見えた。
彼に近づいた人間は突然パッと消滅する。
モンズは無表情になりこう呟いた。
「全て、失くなってしまえばいい。」
ホムラは彼の孤独を感じた。
「そう、ワタシは9才の時に、関わった人間を消し去る、拒絶のミラージュが発現してしまったんだ。誰とも触れあう事ができない。会話も、見つめ合うことさえも出来ない。だったらこんな世界、消えてしまった方が良いと。」
モンズは悲しげな表情で話した。
「久しぶりだよ、人と話したのは。君はその蒼い炎の力で拒絶のミラージュの力を防いでいる。初めて見たよ、そんな人間。」
ホムラは笑った。
「ハハッ!!だったら尚更止めなきゃだよ。そして、君が僕を邪魔する理由も全くないじゃないか!!」
モンズは首をかしげる。
「何を言っている?」
ホムラは手を伸ばした。
「この戦いが終わったら、僕が君の友達になる。」
モンズの瞳からは自然と、涙が流れていた。
「僕は、君を知ることが出来た。話すことも、触れあう事も出来た!触れ合うって言っても、蹴られただけだけどね!!」
「ありがとう......えっと、名前は?」
「ホムラ=クリムガル。ホムラって呼んでよ!」
「あぁ、ホムラ!!」
「それじゃあ、行ってくるね!」
微笑むホムラ。
「行ってらっしゃい!待ってるよ!」
笑顔で手をふるモンズ。
「黒い翼よ!邪悪の根源、ダルセロスの元へ、羽ばたけ!」
ホムラの背中から黒い翼が生えてきた。
翼で羽ばたいた瞬間、光の速さでホムラが空へと飛んでいく。
大気圏へと突入した。
「蒼い炎よ、僕を守れ!」
炎がホムラの身体を包む。
その力で無重力の影響を受けず、呼吸も出来るようになった。
「ミラって、こんなにも青かったんだ!!」
宇宙から自分が住む星を眺めるホムラ。
「今から僕が、この星を救うんだ!」
ついに邪神、ダルセロスの元へとたどり着いた。
ダルセロスは約2kmほどの大きさで、紫色のマントをしている黒い人のような姿をしていた。
狂巨人を今もミラに降らせ続けている。
「ダルセロス!!お前を止めに来た!」
ダルセロスはホムラの方に顔を向けて、ニチャアとやらった。
「ロウドウ......ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、ロウドウ、シャ。」
セミのように鳴き続けるダルセロス。
どうやら会話は通じないようだ。
「金色の瞳よ!奴と意思疎通をする方法をうつせ!」
何も見えない。
目の前が真っ黒だ......
「あぁ......そうか、仕方ない。」
力でねじ伏せるしか無いとホムラは理解した。
ダルセロスの方に掌を向ける。
「蒼い炎よ!邪神ダルセロスを焼き払え!」
炎が邪神の身体を覆い、燃えさかる!
「倒した......のか?」
「シャシャシャ!ロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウロウドウ!!」
ビクともしていない。
諦めずに炎を放ち続ける。
「蒼い炎よ!蒼い炎よ!蒼い炎よ!」
蒼い炎よ......
もう、何日たっただろうか。
何度攻撃してもダルセロスは怯んだ様子すら見せない。
「クソッ!蒼い炎の力を使っても倒せないなんて!一体どうすればいいんだ!?」
「だったら!金色の瞳よ!邪神ダルセロスを倒す方法を示せ!倒せないのなら、封印する方法、動きを止める方法を!」
真っ暗だ......何も無いって言うのか?
ホムラは考えた。
今、自分が出来る事を。
「蒼い炎、金色の瞳、黒い翼......分かったぞ!」
「黒い翼よ!ダルセロスを復活させる前の、モンズの元へ羽ばたけ!!」
黒い翼はどこへでも行くことが出来る。
それは過去も例外では無い。
時を越えるホムラ。
スンッ
過去の世界、神殿の中を歩くモンズの姿が見える。
とっさに、悲しげな表情のモンズに抱きつくホムラ。
「絶望から救いに来たよ。」
カッコつけた表情でホムラは話す。
「君、誰?」
モンズは問う。
「君の、友達さ。」
未来が改編され、ダルセロスは復活していない事になった。
今の時間軸に奴を止める方法が無いならば、過去を変えるしか無いと、ホムラは考えたのだ。
過去に戻ってから半年
本当にこんな終わり方でいいのか?
本当にこんな終わり方でいいのか?
本当にこんな終わり方でいいのか?
ホムラは自分に問い続けていた。
モンズと二人で過ごす日々は楽しい。
そして僕たちがこうやって過ごす事で、ダルセロスによる星の滅亡の未来は無くなっている。
しかしどうだ?ダルセロスが現れないからと言って、未来を救えていると言うのだろうか?
それは違うだろう。
今でも世界には、何かに涙を流す人間、誰かを怒り、憎み、恨む人間はたくさんいるのだ。
本当の平和ってなんだ?
皆が笑顔でいれる未来を作りたい。
僕が倒すべき本当の敵は一体何?
ホムラの新しい戦いが、始まる。
一人って、寂しいからさ。