第10話 響け!鈍色の咆哮!
トウカの初バトルシーン!
「ホムラくぅーん!それじゃあ、遊ぼっか!!」
ビビアンがホムラの方に歩いて向かいながら話す。
彼女のタックルの衝撃で思いきり吹き飛ばされたホムラだったが、なんとか体制を立て直し戦闘態勢に入る。
黄金の瞳は邪神に使えない事は、桃色硬貨の邪神との会話で分かっている。
どうにかして相手の弱点を見つけなければ!!
「蒼い炎よ!奴を焼払え。」
ホムラの掌から解き放たれた蒼炎がビビアンの体を包み込み、燃え盛る。
「やったか?」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ
そこには傷一つ無い状態で拍手をするビビアンの姿があった。指の間に青色の花を一輪挟んでいる。
「いっやぁー、凄いねホムラくん!こんな炎を出せるなんて、ウチびっくりしちゃったよー。」
彼女は笑いながら褒め称える。
純粋に褒められているようにも感じるが、バカにされているようにも感じたホムラ。
「全く効いていない......だったらこうだ!黒い翼よ!奴に向かって突進するぞ!」
ホムラの背中から黒い翼が生え、彼の指示通りに羽ばたく。ビビアンに向かって突進する!追突まで、その間0.001秒!
バイーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
何!?
ビビアンの付けている浮き輪がこの一瞬、大きく膨らみ、ホムラの体を思いっきり弾き飛ばす!
「これ程のスピードでぶつかっても、浮き輪が破裂しないだなんて......どう言う事なんだよ!」
さっきとは比にならない飛距離で飛んでいく。何千キロメートルろうか?
飛んでいった先は、海だった。
同刻 トウカとブラーパの戦い。
「こんな人食い花みたいなやつ、すぐに倒しちゃうんだから!」
トウカがブラーパの方に両手を向ける。
「いっけー!空色の風!」
彼女の掌から風と言うよりは、かまいたちの様な空気の刃がいくつも解き放たれ、ブラーパに向かってとんでいく。
そのまま全ての刃がブラーパに命中。
少し傷を付ける事が出来たが、ほとんどダメージが無いようだ。
「パクパクパクパクパクパクパクパクパクパク!!」
俺は元気だぞ!と言いたげに口を開け締めする。
「ちっくしょー!全く効いていないじゃん!ねぇハクーどうすればいいのよー?」
自分の中の白竜に話しかけ始めるトウカ。
「ん?私頼み!?うーん、あ、そう言えばさっきの神龍器の儀式で私の力が少し開放されたから、今まで出来なかった技が撃てるようになってるかもしれないわね。」
「それだ!で、何が出来る様になったの?」
「私の喉のあたりがスッキリした感じがするから、白銀の息吹でも撃てる様になったのかしらね?」
「白銀の息吹!?龍のブレスみたいな感じね!分かった!」
ブラーパの方向にトウカは全身を向ける。
「白銀の息吹!出てこーーーーーーーい!!」
「......」
何も起きない。
「なんでー!!!???」
「パクパクパクパクパクパクパクパクパクパクwww」
嘲笑うかのようにブラーパが口を動かす。
わさわさするトウカに白龍が話しかける。
「息吹が出ないって事はあっちね、鈍色の咆哮ね。 鈍色の咆哮って唱えた後に、思いっきり叫ぶのよ。」
「今度こそ大丈夫なんでしょうねー?鈍色の咆哮!うおおおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああああ!!」
トウカの声が辺り一面に響き渡る。
「パァ!パクパクパクパクパァ!パァ!」
その爆音による振動で苦しむブラーパ。
その末に小さくしぼんでいき、枯れてしまった。
「ゼェゼェハァハァ......倒した......わね。」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
「トウカちゃん、すごいねー!声がこっちまで聞こえて来たよ。しかもブラーパをこんなに早く倒しちゃうなんてさ!」
疲れはてたトウカの目の前に、浮き輪の邪神ビビアンが現れる。
「ビビアン、どうしてここに!?もしかして、ホムラ!?ホムラは!?」
「大丈夫だよー。ホムラくんはウチの浮き輪に弾かれてどっかに飛んで行っちゃっただけだから!いずれ帰って来ると思うよ!」
「そうなのね、良かった。」
ビビアンの話を聞いて安心するトウカ。
その姿を見て微笑むビビアン。
「じゃあ、ウチ帰るねー。」
「え?私と戦わないの?」
帰ろうとするビビアンに対しトウカが問う。
「うん、ちょっと遊びに来ただけだし、そもそもウチに君たちをを殺せる様な能力も度胸も無い。だから帰るよーまったねー。」
そう言ってビビアンはどこかへと飛んで消えてしまった。
「へぇーああ言う邪神さんもいるんだねー。みんな悪いやつなんだって思ってたけど、違うみたい。私あの邪神さんと友達になりたいって......ちょっと思っちゃったよ。」
ビビアン、また会えたらいいな。