第5話 ♯6
〈2122年 5月7日 11:14PM 第一次星片争奪戦終了まで残り約1時間〉
―ネルケ―
『――それじゃあそっちは任せるぜ、ネルケ』
「ええ、グラウもね。あっ……一ついいかしら?」
『手短に頼む』
『手短に』って、そんなにわたしとの会話を早く終わらせたいのかしら――?グラウのイケズ!そんなに急ぐ必要もないじゃない!!
「重々承知しているとは思うけれど……あなたの支払いは完済どころか、一割も済んでないからね!それに今は利息倍増キャンペーン実施中だから、それなりの覚悟をしておいてね!!」
『勘弁してくれよ……はぁ。切るぞ?』
「ちょっと!……って、もうっっ!!」
むぅ~~~っ!一方的に通信を切られちゃったわね。
ついさっきグラウにのし掛かった時は、結構手応えを感じたのだけれど……完全にたらし込むには、まだまだ時間が必要なようね。
でも、大丈夫よ!わたしなら、必ず彼の心を鷲づかみにすることが出来るはず!!そのためならわたしは何だって……。
「――彼氏さんとの最期の通信は楽しめましたか、クリーム髪の美人さん?」
「あら、敵の子にまで褒められるなんて……自分の魅力はなんて恐ろしいのかしらね」
上方向に水を噴出するから“噴水”――というのは少し違いがある。噴水は人工的、あるいは天然の泉の意味も含んでおり、必ずしも上方向に水を噴射しなければならないというわけではない。ブリュッセルの小便小僧や、シンガポールのマーライオンも噴水に分類される。
私の目の前にある噴水は、その中心部分にギリシア神話の海神が三叉槍を威風堂々と構えており、その槍の穂先から八方向に水が噴射されている。遊園地内の噴水らしい、なかなか幻想的な意匠が施された噴水といった感想ね。
そして噴水の淵――小柄な少女がちょこんと座っている。そして彼女は快晴の空の様な水色の髪をくるくると人差し指に絡めながら、わたしに無機質な視線を送ってくる。
「あなたが、で間違いないわよね?」
「はい――そうですね。私が星片を預かっております」
“何を、どうしているか?”と敢えて言葉にしなくても、少女は先んじて答えてくれた。
「と言うことは……あなたは異能力者ね?」
「そういう美人さんも……高速移動の異能力者、そうですよね?」
肯定。今更隠しようがないもの。彼女は――わたしが兵士を蹂躙していく光景を傍観していたのだから。
わたしと少女との間には、無数の屍が散乱している。それはもちろん、白の装甲服を着た世界防衛軍の兵士たち。わたしに挑んだ哀れな大人たち。
残念ながら彼らは、わたしに傷一つつけることすら叶わなかった。銃弾の速度なんて、わたしからすれば鈍足過ぎて話しにならない。接近して、頸を切りつけて。また別な兵士に近寄って、頸を切りつけて。繰り返している内に、兵士たちは壊滅していった。
血溜まりが石レンガの上に広がっていく。正に死屍累々の惨劇。でも、わたしは――何も感じない。これだけ多くの人を殺したことに申し訳なさなんて感じないし、このグロテスクな深紅の世界に立っていても吐き気を催したりはしない。
わたしは狂っている。正常じゃない。普通、人を殺せば自責の念に駆られるはずなのに。一般的に、こんな屍山血海に立てば、悲鳴を上げても仕方ないのに。
それでも、わたしの心は明鏡止水の境地にある。
けれどね、狂っているのはわたしだけではないでしょう――?仲間の兵士たちが殺られても一切動じない、あなたもわたしの同類よ。
「ねぇ、あなたに一つ訂正しなければならないことがあるの」
「なんですか?」
少女はかくんと小首をかしげてきた。
「わたしが通話していた相手、グラウはね……赤い糸で結ばれていることは確かだけれど、まだ彼氏じゃないの」
「あんなに親しそうに話されていたのにですか?」
「ええ。あんなに頑張って色仕掛けをしているというのに、彼は首を縦に振ってはくれないの。わたしは、今すぐに彼氏彼女の関係以上だってオッケーなのに、ほんと手強いわよね」
「……美人さんのアタックをスルーするなんて、そのグラウさんはとても禁欲的な人なのですね」
「うふふ……本当はそうじゃないことも、わたしは知っているのだけれどね」
さて、「あなたののろけ話になんか興味ないです」と目で訴えかけられたことだし――そろそろ、お喋りは終わりにしましょうか。
右の太ももに括り付けたホルダーから、サバイバルナイフを引き抜く。刀身に彫られた“燃えるような愛”は赤い撫子の花言葉。
ええ、まさにわたしを体現している言葉よ。わたしはいつだって、グラウへの愛の火を心に燃やしているのだから。
「ようやく彼と再会したの。だから、彼にカッコいい所を見せたい。もちろん、この場に彼はいないけれど……快勝だったってアピールしたいの。そう、一分一秒でも早く彼の近くに行って、彼の顔を目に焼き付けたい。だから――直ぐに終わらせてしまいましょう?」
少なくとも、新たな恋敵よりは早く決着したいわね。だって、ソノミの向かった劇場の方が、グラウの向かったサッカーアリーナに近いのだもの。
ソノミは強敵もいいところ。わたし、彼女の様に料理なんて上手くないし、未だわたしは“あんた”呼びされる。そして何より――わたしは彼女と違ってP&Lの正規メンバーではない。この争奪戦が終われば、わたしとグラウはただの他人に戻ってしまう。
だからこそ、頑張らないといけない。少しでも、グラウにわたしを刻みつけることが出来るように、もう二度とわたしのことを忘れることが出来ない様に。
「直ぐに終わらせる、ですか……別に構いませんよ。でも――決着をつけるのが、美人さんの方だとは限りませんよ?」
「私があなたを殺してしまうこともありますよ」、とでも言いたげね。うふふ……張り合いがあるじゃない。
うん?少女が急に立ち上がったわ。そして噴水の方を向いて……右足からチャポンと噴水の中へと入っていく。何のつもりかしら――嫌な予感がするわ。
「敵に背後を見せるなんて愚かな行為、咎められないとでも思った?」
速さを歪ませることを思念し――異能力を発動。
少女の動きが鈍くなる。けれど、わたしは通常の速度で行動することが出来ている。
“世界の鈍化”。それではなんだか語感が悪いでしょ?だから高速移動。うん、我ながらカッコ良いと思うわ!
わたしの異能力が発動した時点で、もう誰も逃れられない――少女へと詰め寄って、その細い首へとナイフを突き立てる。
呆気ない。でも、これがわたしの戦い方だから。わたしの前に立ち塞がったあなたが悪いの。
安心して。そう苦しむことはないわ。痛みを感じるのはほんの少しの間だけ。直ぐに意識が飛んで、あなたは楽に逝くことが出来る。
頸にナイフを3cm食い込ませ、思いっきり引き――えっ?
「なっ、何よ……この感覚!?」
違和感を覚えた。わたしは頸動脈を守るための肉を切り裂いた。そのはずなのに――あの生々しくて、身体を這うような気持ち悪さを感じない。
これではまるで――固さのない無形物を切らされたかのよう。
「――美人さんの異能力、既に見ていましたから」
「っ!?」
先程と変らない抑揚のない少女の声――ありえない!だって、わたしは今こうしてあなたの頸を……えっ!!?
わたしが手にかけたはずの少女は、透明な水となり石レンガへと飛び散った。その代わりに少女の亡霊が海神の後ろから現れ――いいえ、違うわね。ちゃんと二本足で立って、言葉まで話しているのだもの。彼女は亡霊ではなく、生きた人間そのものね。
「水で自分の姿を模した像を作り上げた、とでも言うの?」
「すみません、美人さん……お答えできません。ですが、その代わりとして――私の本気をお見せしましょう!」
少女がしゃがみ、両掌を水面に付けると――そこに、一匹の神獣が現界した。
それは8つ頭の巨蛇と似て非なる姿。頭には、鹿に似た、先端が複数に別れた角。口元からは、左右それぞれ二本の硬質の髭。まるでわたしの全てを見透かすような鋭い眼光。胴体の上皮からは繊毛が密集し、側面は鱗で覆われている。
そう――龍。噴水の水により顕現した、無色透明の龍だ。
「……………っ!」
言葉を失った、
だって目の前に現れたのは、まさしく本物の龍なのだから。そんなものを前にして、唖然とせずにいられる方がおかしいくらいよ!
「美人さん。私、これでも世界防衛軍にスカウトされた異能力者なんです。ですから……たぶん、得体の知れない美人さんなんかより、ずっと強いと思いますよ?」
世界防衛軍のやり方は知っている。各国の軍部に諜報部隊を送り込み、優秀な異能力者を厳選しスカウトしてくる。
彼女はまだ……10代の前半位だと思う。でも――異能力者に年齢など関係ない。その力に目覚めたことが世間に明らかになった時点で、裏社会の手から免れることは出来ない。
「そう……ならば、試してみる?」
まったく、今日は散々な日よね。大蛇の次は龍だなんて。わたしの業も、随分深くなってしまったわね――
初めて人を殺した時のことなんて、もう覚えてはいない。果たしてそれが男性だったか、女性だったか、年配の人だったのか、子供だったのか。
確かに、その時は感じていたのだと思う――罪悪感という名の偽善心を。
一人、また一人とわたしは命を奪っていった。それにつれて、亡者たちの怨嗟の声は、より大きく鮮明に聞こえてくるようになっていった。
「五月蠅い。黙って!」。彼らはそんな命令を聞いてはくれない。だからわたしは――耳を塞いだ。
それから先は楽になった。殺人に、躊躇いなど感じなくなった。
でも、わかっている――自分がどんどん穢れていっていることぐらい。
わたしは咎人。だから神様は、こうしてわたしの前に絶望の化身を立ち塞がらせるのだろう。
でもね、間抜けな神様――この程度で屈するほど、わたしのグラウへの愛は小さくないのよ!
「では美人さん――死んでください!」
少女が手を天高く掲げると――彼女の命令に従うように、龍は咆哮した。
そして口元に集結していく、激水の球。宝玉の様な輝きを放ちながら、それは肥大化を続けていき――
「やれッッ!!」
少女の合図と共に――光線のような水の激流が、わたし目掛けて放たれた。
「くっ!!」
でも、目に見える攻撃を躱せないほど、わたしは弱者ではない。
右方向へと全力で駆け出す。
轟轟轟轟轟ッッ!!わたしの残影を追いながら、水光線は石レンガを破壊していく。
異能力者は打たれ強い?そんなことはない。身体の脆さは、同じ人間である非異能力者と同じ。
故に、あの激流に少しでも飲み込まれれば――わたしは、二度とグラウに会うことが出来なくなるでしょうね。
「美人さん、異能力を使わないのですか?」
「ふっ……使いたいのはやまやまなのだけれど、そう連続で使えないのよ!」
わたしの異能力は、本来一回で全てを終わらせることに特化している。連続で使用することはあまりにも負担が大きすぎて、その制御が効かなくなってしまうこともある。
「そうですか。ならば――このまま終わらせてしまいましょう」
「えっ――はっ!?」
追いかけてくる水光線ばかりに気を取られ、わたしは気が付かなかった――もう一匹の龍が出現し、わたしを虎視眈々と狙っていたことを。
放たれた二本目の激流。回避することは叶わず、わたしは吹き飛ばされていた。そして宙へと放り出され、受け身を取る間もなく石レンガの上へと――
「ぐうっぅ!!?」
背中から叩きつけられた。
衝撃が身体全身に伝播していく。まるで臓器がひっくり返ったような感覚――
「げふっ、ごほっ、ごほ………ううっ!」
胃酸が逆流し喉を焼き付け、わたしは堪えられなくなってそれを口の外へと吐き出した。
汚い色……血まで混ざっていたみたいね。複雑な臭い。これがわたしから出た液体だなんて信じられないわ。
「ふうっ、うう………」
頭がクラクラする。背中はもはや感覚すらない。腕や脚は痙攣をし、わたしの脳からの「動け!」と言う指令を受け取ってはくれない。
ほんと、無様なものね。避けることくらい簡単だと思っていたのに、結局直撃しちゃうんだもの。こんなの、グラウが見ていたら笑われちゃう。
被服はびしょびしょ。5月の夜には少し肌寒い。
水溜まりに映るわたしに、嘆息せざるを得ない。集合時間に遅れるぐらいに、今日は張り切ってメイクをしてきたのに……洗い落とされちゃったわね。それに髪だって頑張って整えてきたのに……悲惨なことになっているわね。
「はあっ………」
嫌になっちゃう。こんなボロボロの姿、グラウに見えたくはない。
だって、彼の前では完璧なネルケ・ローテでいたいもの。
けれど――
「生きているなら……それが一番よね」
悲鳴をあげる身体を意思で従わせて、なんとか起き上がる。
こうして立っているのもやっとのこと。一瞬でも気を抜けば、わたしは失神してしまうのでしょう。
「よく生きていましたね、美人さん」
遠くから少女の声が聞こえてきた。
「わたしもそう思うわ。一瞬……死を覚悟したもの」
石レンガを破壊するだけのエネルギーが、一匹目の龍の水光線にはあった。けれど――二匹目が出現した時点で、理屈はわからないけれどその威力は少し落ちていたのだと思う。わたしの身体がこうして動いてくれているということは。
「あなた……わたしをこんな目に遭わせた罪は重いわよ?」
「そうですか。それでは、そのグラウさんに謝らなければいけませんね。将来の彼女さんを傷つけてしまったことを」
皮肉のつもりかしら?でも、それはわたしを傷つける言葉には成り得ない。
わたしの身体……もう少しだけもってね。
これが終わったら、ゆっくりと休ませてあげるから。
「可愛い女の子――でも、あなたは喧嘩を売る相手を間違えたわ」
挑発するように、ナイフの先端を少女へと向ける。
「この状況で啖呵を切るのですか?というか、そもそも喧嘩を売ってきたのは美人さんの方じゃないですか?」
それもそうね。初めに兵士たちを葬ったのはわたしの方だったわ。
「美人さん。次で決めます」
二匹の龍が、少女の傍らに塒を巻いて鎮座する。いつでも、わたしのことを狙えるといった様子ね。
「良いわよ。その前に、わたしが決めるから」
もう一度あの攻撃を喰らえば、今度こそわたしの身体は持たないだろう。
だから、二匹の水流を躱しつつ少女を仕留める。それがわたしの唯一の勝ち筋。
でも――きっとそういう作戦の方が、より確実よね。
「ふう……」
わたしは負けられない。絶対に勝たなければならない。
わたしのグラウへの愛はこんなところで潰えるわけがない。わたしは必ず、グラウと添い遂げるんだ。
だから――全力で駆け出した。少女を目指して、遮二無二走る!
「まだ異能力を使わないんですか?」
一応、異能力はもう再発動することが出来る。
でも、今はまだその時ではない。それに、わたし、足の速さには自身があるのよ。最近は……少し揺れが気になるけれど。いっそソノミの慎ましさが羨ましく感じるわね。
「そう簡単に近づけると思わないでください!」
二匹の龍が少女の指示に従い――一斉に水光線を噴射してきた。
皮膜の裂け目から漏れる青白い光が激流に反射し、煌めいた。
「くっ、きついわね!」
水光線に挟撃されないように二匹の龍を交互に確認しつつ、なんとか少女へと近づいていく。
もう少し、もう少し近づけばきっと見え――あった!あそこね!!
「これでも――喰らいなさいっッ!!」
右腕を振り上げて、思いっきりナイフを投げつける!!
「っ!って……いったい何処を狙っているのですか?」
ナイフは、少女に届くよりもかなり前の方へと落ちた。
大暴投――?いいえ、はじめから少女のことなど狙ってなどいない。
――うん、上手くいったみたいね。
「どうしてしたり顔を……まさか!?」
海神の三叉槍から相変わらず水は噴き出ている。けれど――どうやら減っていく量の方が多いみたい。
少女を守護せし二匹の龍は、その威厳を失っていく――その尻尾から、メッキが剥がれ宇がごとく鱗が削ぎ落とされていく。胴体、そして頭部へと崩壊は進み、ついにその姿は完全に消滅した。
うふふ、まさに奇跡の一投ね――ナイフで排水溝の蓋を開いたのだから。
「くっ、このォっッッッッ!!」
少女の顔が怒りと焦りで歪んだ。不安よね。大事な大事な龍がいなくなって。
あなたは水が捌けきってしまえば、攻防の手段を完全に失ってしまう。だから、その前になんとかわたしを仕留めようと、龍にも満たない水柱をこしらえて迎撃しようとしているみただけれど――もう、遅いわ!
「わたしを吹き飛ばした時に、ちゃんと死んだかを確認しておくべきだったわね。あのタイミングなら、確実にわたしのことを殺せていた――」
異能力の発動を思念――時が鈍化する。
わたしはね、あなたを確実に仕留められるタイミングを狙っていたのよ。だから、そこに至るまで異能力を使うつもりなんて毛頭なかった。
あなたの異能力は、脅威だったわ。二匹の龍に水光線を吐かせていれば、きっと非異能力者なら為す術はないでしょう。
でも、ごめんなさいね。わたしは異能力者なのよ。
わたしより強いなんて言っていたかれど――そんな妄言、許しはしないんだから!
「――終わりね」
噴水の水は、ブーツの底の高さにも満たなくなった。
少女は立ちすくんでいる。わたしはその背後を取り、彼女の首筋にナイフを突きつける。
「あっ、あぁぁぁぁっ!!」
絶望は、時に人の人格を破壊してしまう。
きっとあなたは、こうして命の危機に瀕するのはこれが初めてなのね。いつも勝っていれば、負けたときのことなんて考えなくて良い。だから無理もないのかもしれないわね。
けれど……どうしようかしら。初めは容赦などかけるつもりはなかったけれど……目的さえ果たせば、あなたの様な若い子の命を奪う必要もないわね。
「聞いて」
その小さな肩を掴んで、わたしの方へと振り返らせると……少女のすまし顔は何処かに消え、目を白黒させて顔面蒼白といったところ。
「星片をちょうだい。そうしたら、あなたのことを助けてあげる」
わたしの要求に――少女は首を猛烈な勢いで横に振ってきた。
「そっ、そんなもの……私程度の異能力者に託されるわけがない………。ほら、これ!偽物です……」
少女が軍服のポケットから取り出したのは紫色の結晶。当然そこら辺に転がっている石とは格が違うけれど……これ、ただのアメジストに小細工をしただけのものみたいね。
天下の国際秩序機関も呆れたことをするものね。くだらない。
「そう。それじゃあ、これは一応もらっておくわ」
「あっ、はい………」
わたしが離れると、少女はその場に崩れ落ちた。そして泣き出して……可愛そうだけれど、わたしはあなたに構ってなどいられないわ。
でも、これで勉強になったでしょう――戦場はそんな甘い所じゃないのよ。
「ふぅっ……よし!」
一度自分の頬を叩いて、気を入れ直す。
本当は何処かでおめかしをしてからグラウの所へ行きたいけれど……そんな余裕はないわね。時間が圧しているもの。
それに、そろそろあなたも、決着がついた頃かしら?
「グラウ――今すぐにあなたの元へ行くからね♪」
小話 ネルケの自己紹介
ネルケ:はい!今回はわたしの番ね!ちゃんと聞いててよねっ、グラウ!!
グラウ:いや、だからこれは俺たちを見てくれている……まぁ、あんたの好きにしてくれ
ネルケ:了解!それじゃあ――わたしの名前はネルケ・ローテ。ネルケは撫子、ローテは赤色。だから、わたしの名前は“赤い撫子”という意味ね!
ソノミ:お前は撫子よりも、むしろ薔薇の方がお似合いだけれどな
ネルケ:うん?どういう意味?
グラウ:あんたは薔薇の花の様に美しいが……同時にトゲが生えている、という意味だな
ネルケ:トゲって……どういう意味よ、グラウっ!!わたし、グラウを傷つけたりなんてしてないわよっ!
グラウ:そういう意味じゃないんだが……話が長引きそうだから、自己紹介の方を続けてくれ、ネルケ
ネルケ:むう~~っ!えっと……年齢は、ぴっちぴちの20歳!武器はナイフで、異能力は高速移動ね!
ソノミ:正確には鈍化なんだろ?
ネルケ:高速移動って言ったほうがカッコいいからこれでいいんですぅっ!えっと、好きな食べ物は――グラウ!
グラウ:前もやっただろそのネタ!真面目に自己紹介してくれ
ネルケ:ええっ、真面目にぃ?そうね……一番好きな食べ物って、考えてみると凄く迷ってしまうけれど……プリンかしらね。固めじゃなくて柔らかめの!
グラウ:ブリュレとかはどうだ?あれ、めっちゃ美味しくないか?
ネルケ:確かに、わたしもブリュレが好き!でも、そんなグラウの方が大好き!!
グラウ:……俺をからかうのは止めてくれ
ネルケ:正真正銘本当の気持ちですぅ~~っ!もうっ!!(でも、良い情報を得たわね。今度グラウにプレゼントして上げましょう!)特技は、う~んとね……りんごを握り潰すことかしら?
ソノミ:なっ!?お前っ!そんなに握力があるのか!!?りんごを握り潰せるって、最低でも握力60kgは必要なんだぞ?
ネルケ:――という感じに人を騙すことが得意だわっ!
ソノミ:お前……!斬るぞ?
ネルケ:(それが本当かどうかなんて、わたししか知らないけれどね!)最後に――わたしが戦うのはグラウのため。それ以上でも、それ以下でもないわ。あなたの命令なら何だってしてあげるわよ、グラウ!
グラウ:以上、ネルケの自己紹介でした。次回は俺だな。それじゃあ次回もお楽しみに――
ネルケ:完全にスルーは酷くないかしら!?(もちろんそうやって軽くあしらってくる所も好きだけれどね、グラウ♡)
∇ネルケ・ローテ (Nelke Rote)
○基本情報
年齢:20歳
身長:161cm
武器:サバイバルナイフ
異能力:高速移動(周りの時間を鈍化させる)
○詳細
本作のメインヒロインの一人。一人称はわたし。仲間からはネルケと呼ばれている。
絶世の美女、佳人、物言う花、傾国……etc。“美しい”、“綺麗”系よりも、むしろ“可愛い”系の顔立ちをしている。
瞳の色はアメジストの紫色で、小動物のようにくりっとした目をしている。鼻は小さく形が良い。唇は官能的なピンク色。髪の色はクリーム色で、セミロングの髪をロープ編みのハーフアップにしている。
“鼓膜を慰撫する”ような甘い声の持ち主。奥ゆかしく仄かに甘い、撫子の香りをしている。
スタイル抜群。出るところは出ていてへっこむ所はへっこんでいる。グラウ曰く“D以上、E以下”。女性らしい柔らかそうな身体をしているが、しかししなやかな体躯をしており、脚も腕も引き締まっている。
着用しているのは艶めかしく肌を見せる黒のボディストッキング。その上に、ハイレグ型の紺色のライトプレートを着用。膝丈のブーツを履いている。
異能力は高速移動。「自分以外の時を遅くし、自分のみ通常の速度で動ける」というのが本来の能力であるのだが、それが他者からすれば「彼女が高速で動いているように見える」ということから、高速移動と自称している。異能力発動中は、銃弾ですらスローモーションに見え、音も間延びして聞こえる。彼女はこの異能力発動中に相手に接近し、頸を切りつけることで相手を即死させるという戦法を好んでいる。
“立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花”と言える程の女性ではあるが、主にグラウの事に関して残念な所が目立つ。グラウをその気にさせるために手練手管を弄するも、それがかえってグラウの悩みの種となっている。
○余談 (前回に引き続けはっちゃけ注意です)
・ボディストッキングが何かって?検索するとR18画像が表示されるので注意!
・でもその上にハイレグアーマーを着ているから、結果としてR18じゃないよね!
・髪色は金髪ではなくてクリーム色! (#fff3b8を参考)
・現在のネルケの雰囲気を表す曲といえば、"Paramore"の『misery business』ですね。
・ネルケの保護者視点の立場からすれば、彼女のせいでR15を越えるのではないかと不安です……
・「好物がグラウ」は、「美味しく頂きたい」という意味ですな。
・これでも初期設定では、男の指をしゃぶりだすような真似は決してしない健全極まりない子でした(どうしてこうなったのか……)
・彼女について不明なことは、おいおい明らかになっていくかも?
・グラウ、ソノミの頭の回転が速い二人に比べて、ネルケはアホの子気味?だって彼女の栄養は全ておっぱ……おや、今日も誰かが来たようだ




