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これが僕らの異能世界《ディストピア》[リメイク版]  作者: 多々良汰々
第1章 第一次星片争奪戦~日本編~
13/60

第2話 ♯2

〈2122年 5月7日 2:01AM 第一次星片争奪戦終了まで残り約22時間〉

―ソノミ―


「まったく。グラウのやつ、だらしのない顔を……お前もそう思わないか、ゼン?」


「えっ、ソノミ先輩あの人に嫉妬しているんですか――ひぃっ!?」


 無意識とは怖いものだ。気が付けば私は左腰の鞘に手をかけていた。


「すっ、すいません……」


 ゼンがへこへこと謝罪するまでものの数秒。こいつ、謝ればなんでも許されると勘違いしているのではないだろうか――だが今は、こいつなんかよりも……あの女、そしてグラウに対してムカムカとしている。


 あの女――ネルケ・ローテ。高速移動の異能力、か。確かに彼女が見せたグラウへ肉薄したあの移動、私の目には瞬間移動をしたかのようにしか捉えることが出来なかった。


 だが、しかし!どうして刃を交えてもいないのに、グラウは「彼女には勝てない」などとほざいた?普段なら相手が誰であろうが屈することはないあのグラウがだぞ――?

 グラウ・ファルケは、私が知る異能力者の中で、兄様の次に優れた異能力者。冷静沈着で、どんなことが起ころうとも動揺しないような不動の心を持つ男。その男がどうして…あの女に限って……。


「ソノミ、ゼン」


「ん?」


 何やら怪しげな密談を終えたグラウが渦中の女を傍らに連れて、拝殿の縁側で待機していた私たちの方へと戻ってきた。

 気のせいだろうか?この二人、ただ並んでいるだけで様になる。お似合い、とでも言うべきなのか?くそっ……グラウのやつ、まんざらでもないと言わんばかりの表情をしやがって。やはり、そういうことか……?


「お前たちはその仲を、私たちに見せつけようとしているのか?」


「いや、そんなわけはな――」


 グラウは首を横に振り否定してくる。うむ、そうだろう。やはり私の気のせい――


「ええ、そうよ!」


「はぁ!?」


 頭の中で何かがプチンと切れた音が聞こえ――私は眉間に皺を寄せ、女の紫の瞳を睨みつける。グラウは狼狽した様子で「俺はそんなつもりじゃない」と否定してくるが……対して、女の方は自分が宣うた台詞を誇らしく思っているのか、したり顔。

 どうも虫の居所が悪くて仕方がない。


「ソノミ先輩、やっぱり嫉妬しているんじゃ――うっ!?」


 悪いな、ゼン。今の私は考えるよりも先に拳が出てしまうぐらいにいらついているようだ。少しの間そこで静かにしていてくれ。


「グラウ。私は今、お前のことすら信用して良いのか疑い始めている。私には、お前がこの女の色香に惑わされて、冷静な判断が出来ていないように思える」


 私の気持ちを包み隠すことなく、直球でぶつける。申し訳なげなグラウの表情。そんな顔をしないで欲しい……これは、お前を思っての言葉のつもりだから。

 一方、諸悪の根源である女はと言うと――私を挑発するかのように、「おほほ」と高笑いをしている。


「当然よ!あれだけ頑張ったのだから……じゃなくて!グラウは一切悪くないわ!!イケないのは、このわたしの方」


 自信げにその二つの丘を突き出しやがって……初対面じゃなければ、もう既にお前のことをぶん殴っていただろうな!


「そんな苦虫を噛み潰したような顔をするなよ、ソノミ。美人が台無しだぞ?」


「あんっ!?どうしてお前はこんな状況で、そんな歯の浮くような台詞を言える!?お前、火に油を注いでいることがわかっているのか!!?」


 と、烈火の如く怒るが……同時に私はそっぽを向いた。何故か頬が熱くなってしまったのを悟られないようにだ。

 グラウは、私をおちょくるために“美人”なんて心にもないことを言ったに違いない。それなのに……どうしてだ?どうして私はその言葉に、喜びを見いだそうとしてしまった?


「と……おい、大丈夫か、ゼン?」


 グラウが、吹き飛ばされ仰向けになっていたままのゼンの存在を思い出し、その元へと駆け寄っていく。


「大丈夫っすけど……はぁっ、これ、全部グラウ先輩のせいってこと、わかってます?」


「俺のせい?いや、俺はどう考えても被害者じゃないか?」


 そして男二人何か話しているようだが、私の知ったことではない。


「これで二人きりね、ソノミ…ちゃん?」


「ふんっ!」


 何が二人きりだ。最悪だ、こんな状況!


「胸襟開いて、なんて堅っ苦しいことを言うつもりはないけれど……女同士、もう少し親しくしない?」


「お前と、この私が?」


「そう!折角お仲間になったんだから、同性同士仲良くやりたいじゃない。というわけで――」


 にこぉっという笑みを浮かべて……何をするつもりだ、この女――?


「えいっ!」


「うぐっ!?」


 頭を両手で強引に掴まれ、そして女は自らのおでこと私のおでこをピッタリとくっつけてきた。急いでその手を払いのけようとするが……こいつ、見かけによらずかなり腕力があるじゃないか!


「何のつもりだ、このアマぁっッ!」


「流石にその言葉遣いはお下品じゃないかしら?ソノミちゃ…はぁっ……やっぱり、“ちゃん”付けなんてわたしのガラじゃないわね。ソノミ。あなたもいい加減、わたしの名前を呼んでくれてもいいんじゃないのかしら?」


 名前を呼べだと……?いいだろう、呼んでやるよ――!


「今すぐ離せよ、ネルケ・ローテ!斬る(kill)ぞっっッ!?」


「物騒ね、もう……それに、フルネームなんて面倒くさいでしょ?ネルケ、そう呼んで?」


 この私に、そうも連続して要求を突きつけるなどいい度胸だな……まぁ、いい。それで満足するというのなら――


「ぐうっ……わかった。だから一度手を離せ、ネルケっ!」


 そしてようやく、彼女の両手が私の頭部から離れていった。そして私は急ぎ、彼女から一定の距離を取る。油断ならない女よ。完全に私のペースが崩されてしまっている。

 しかし彼女はまた、私の方へといけしゃあしゃあと近づいてきて……私は逃げるが、彼女もまた距離を縮めてきて。そして――


「ソ・ノ・ミっっ!」


「くっ!卑怯じゃないか、お前の異能力っ?」


 今度は彼女に抱きしめられ、私はもう、抵抗する気が削がれてしまった。

 よくよく考えれば、今まで彼女が異能力を行使しなかったこと自体、ある意味彼女なりの慈悲だったのかもしれない。彼女が異能力を発動してしまえば、私がどれだけ遠くへ逃げたところで彼女は追いついてくる。そして現にそれをされてしまっては、もう私には、彼女をどうすることも出来ない。


 彼女の身体と私の身体とが密着して、彼女のことを意識せざるを得ない状況。複雑な思いだ。私とネルケとでは、女としての魅力が違いすぎる。ネルケは瞳が大きくて、色白で、そして……きょうい(・・・・)的な差が存在する。それに愛嬌ある彼女と違って、私はグラウの言う通り無愛想。何もかも、私はこの女に負けている……。


「可愛い子。羨ましいわ、この長くて綺麗な濡れ羽色の髪が……」


「可愛い……?」


 ネルケが私の髪を、まるで母様がそうしてくれていたのと同じように優しく撫でてくる。妙に、慣れた手つきじゃないか。


 いや、そんなことよりもだ!可愛い、だと?この私が?その言葉が似合うのは私なんかより、むしろ――


「お前の方がよっぽど可愛いだろうが」


「あら、わたしのことを褒めてくれるの?嬉しいわ!」


 にかっとはにかんだその表情の前では、つい先ほどまでこいつに楯突こうとしていたこと愚かしく思えてきてしまう。


「わたしが可愛いのは当然のことだけど、あなただってわたしに負けず劣らず。でもね、ソノミ。あなたも恋をすれば、もっと美しくなるわ」


「恋、だ……?そんなこと、私はっ!!」


 私は!私は、そんな感情を抱かない。この腰に据えた刀を握ったその時から、私は一人の鬼として生きていくと決めた。故に人に憎まれることこそが本懐。誰かに好かれることも、誰かを好きになることも私は許されない。だから決して、そんなこと――


「じゃあ、一つだけ予言してあげる――あなたはわたしと同じで、間違いなくグラウのことを好きになる。それも遠い未来の話じゃない。もう、ほんの少ししたらね」


「っっッ!?お前、いきなり何を言い出す!?」


 この私が、グラウのことを――?ありえない!!

 あいつのことは一人の異能力者として、私の先輩として尊敬はしていても、男としてどうとか、そういう感情は露もない。だから、あいつに惚れるなど――


「わたしがデタラメを言っていると思うでしょう?でも、絶対そうなるはずよ。あなたも気が付くはず、彼の良さに」


 まるでグラウのことを全て知ったような口ぶりを……。

 グラウはネルケのことを知らないと言っていた。しかしネルケはネルケでグラウのことを知っているというが……どちらかを信じるなら、私はグラウの言い分を信じる。

 だから出会って数分の彼女よりも、私の方がよっぽどグラウのことを理解しているはず。


「はっ!もしもそうなれば、私とお前とは敵同士になるだろうがなっッ!!」


 抱きつくネルケの手を払って、グラウに一瞥をくれる。

 確かにあいつはいいやつだ。でも、私には兄様がいる。だから……。


「ええ、そうなるわね。だからその時、改めてあなたにこう言うわ。“グラウは譲らない!”ってね!!」


 しかしこのネルケ・ローテという女は、出会って数十分と経たない間に、私たちの関係を好き放題引っかき回してくれた。ある意味すごいやつだ。いきなりグラウに……接吻したことを象徴として。


 でも、今ならなんとなくわかるかもしれない。あのグラウが、こいつの前でいつもと違う表情をしていたその理由が。

小話 初めての3人揃って


グラウ:これにてこの小話を仕切るメンバーは揃った、ということだな


ネルケ:話は聞いているわ!これからこのコーナーはわたしたちの愛を見せつけていく場所になるのよね、グラウ!


ソノミ:私のことをを忘れるな。まったく……お前(グラウ)、本当にこの女のことを何も知らないんだよな?


グラウ:知らない。ソノミ、立場を入れ換えて考えてみろ。こんなにも人のことを好きだ好きだと言ってくる人間のこと、忘れられるか?


ソノミ:うむ、そう言われると……同じ立場になったら脳裏に染み付いきそうだな、こんな女


ネルケ:ちょっとソノミっ!人のことを“こんな女”って、酷くないかしら?


グラウ:自分の胸に手を当ててよく考えてみてくれ……そして恥じろ、自分の行いを


ネルケ:自分の胸……柔らかいわよ?グラウも触る?


ソノミ:お前のそういうところが私に“こんな女”扱いされる所以なんだよっッ!


グラウ:(少し心が揺らいだなんて言ったら……ソノミに怒られそうだな)



グラウ:と、本来今回の小話はここで終わるはずだったんだが……作者から読者の皆様にお伝えしたいことがあるようだ。


ネルケ:えっと……「リメイク前と比べて、Remake版は1Partあたりの文字数が増えており、前は平均3000字程度だったのに関わらず、こちらは5000字超えになっております。ですがあくまで平均文字数3000字ちょっとを目指して書いていくつもりなので、その点はご了承ください」だそうね


ソノミ:作者はそこまで1Partを長ったらしくしたくない方針、ということみたいだな


グラウ:そのようだ。だから今回のPartぐらいが作者の目指す文字量なのであって、今までは全部エラーだったというわけだな


ネルケ:文字量少なくしたいくせに、なんで小話なんてしているのかしらね?


ソノミ:「こういうコーナーを前からやってみたかったから……というよりか、リメイク前に突発的に初めて以降、本人が楽しくなってしまったからやっている」だそうだ。気分屋だからな、作者


グラウ:時々このように、作者のくだらない話を俺たちが代わってする時もある。今回は以上だ、では――

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