#06
#06
「終わった!」
時刻は20:55。紙袋に100部ずつ入れていくと私が270部作った計算になって、多く作った私の勝ち。
「さすが神田」
「最初、負けてたから勝つなんて思ってもなかったよ」
そこで、ハッと気がつく。
途中経過で勝ってた和泉がこんなに差をつけられて負けるわけがない。
こいつ、図った…?と思い、ムッと睨むと、ふって笑われた。
「バカ真面目なんだもん、俺の分までありがとさん」
単純に引っかかった私が馬鹿なのはわかるけど、ムカつく。
ムスッとしたまま、早く帰ろって言って足早にタイムカードを切った。
私はそのまま更衣室でスーツを脱ぎ、私服に着替える。簡単に化粧を直し、出てくると、和泉が塾長と話していた。私に気がつくと手招きしてきたので、近寄ってみる。
「神田、28日空いてる?」
「28?」
スケジュール帳を出して確認すると、特に予定は無かった。
「空いてるけど」
「社員との忘年会、来ない?」
「私も?」
「そう」
「今まで、ずっと和泉だけだったじゃん」
『今日無理させたし、飲み代奢るから来ないか?』と柔和な塾長は笑みを浮かべた。
社員さんたちとは仲良くやってるから、別に行くこと自体は苦ではない。それに飲み代タダと言われたら、断る理由も無いだろう。
タダ飲みに心躍らせ、私はスケジュール帳に忘年会と書き込んだ。
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