#05
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「和泉、今日何時まで?」
「ラストまで」
「で、この量?」
「…冷静に考えておわらなくね?」
とある土曜日の夕方、和泉と2人でアルバイトしていると良いところに来た!と言わんばかりに社員さんが仕事を頼んできた。
目の前に積まれたのは、今度高校で配ったり、イベントで配ったりするための配布用案内冊子。明日使うのにバイトにやらすのを忘れていたらしい。
『ごめーん、とりあえず500部作ってくれないかな?』なんて無茶を言う社員さんにNOとは言えず、組み作業をやらされることになった。
私たちのシフトが現在時刻18時、ラストが21時、残り3時間で500部。
「神田、組み作業最短でどれくらい?」
「最短で2時間150部」
「理論上は可能か…!?」
「いや、待ってもう15分も過ぎてる」
「神田、半分よろしく」
そう言うと和泉は自分のやりやすい環境を整え始めた。私も、仕方ないと高を括り、経験上やりやすいように場を整えていく。
作業の内容は3種類の冊子をまとめて袋に入れて、消しゴムを入れ、封をする。単純作業の繰り返しは、無心でやるしかない。とはわかっていても、目の前で作業する音や時計の秒針が進む音が気になって、途中で集中力が切れてしまう。
会議室の一角で無言で作業して1時間が立った頃、和泉がふぅと一息ついてどこかに行ってしまった。
現段階での進捗は、僅かに和泉が上。あまり集中できていないからか、私の進捗が良くない。
スピードアップを図ろうと作戦を考えていたら、和泉が帰ってきて、私の積み上げた山を見るなり、鼻で笑った。
「クソ真面目にやるところが神田らしい」
「だって、」
「バカ真面目に封をするところとか、手を抜けよって言いたくなる」
どうせ中の消しゴムだけ抜いて、捨てられるんだから、と愚痴を言うけど、そう言う和泉だって、なかなか丁寧に作業をしているんだから、人のことを言えないと思う。
「なぁ、」
「ん?」
「どっちが早く終わるか競争な?」
「え?」
「はい、スタート」
「は!?!?」
そう言っていきなり、手を早める和泉。無意識のうちに私も手を早めてしまう。だんだんコツを掴んでくると静かな空間はさほど気にならなくなった。
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