#17
「神田さーん」
「はーい!」
大きくも小さくもない不動産の隅っこで営業を始めて、早2年。
それなりに頑張って、自分のテリトリーを築いたし、なかなか居心地も良くなった。
「明日、合コンどう???」
「うーん、、、」
「お願い!来てよぅ!
大学時代の男友達に雪乃見せたら、紹介してって言われたんだもの!」
「それ聞いたら余計行きたくないなぁ?」
「じゃあ、奢りで!
でも、たぶんそもそも払う必要無さそうだけど」
「お相手はどこなの?」
「実は…四菱なの!」
ドキッとした、和泉がいるのではないかと期待した。
「ねぇ、誰が来るかって名前聞いてる?」
「え?まぁ、名前だけは」
「和泉って人いる?」
「うーんと…あ、いるよ、和泉陵くん」
久しぶりに聞く名前に、脈が不規則になる。
まさかとは思ったけど本当にいるとは…
「ごめん、それ行けない」
「なんで?」
「予定あったの思い出しちゃった、その日」
その時だった、
和泉≫来いよ
和泉≫誘われてるだろ?合コン
何年振りかに来た連絡に驚くしか無くて。
思わず周りを見渡したけど、さすがにその姿はなかった。
それにしても、こいつはエスパーか?
和泉≫話したいことあるから
「…ごめん、やっぱ行く」
「え?」
「…えっと、、、日付勘違いしてたみたい!たまには行こうかな!」
「無理してない?大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫!」
震える手でLINEを開く。
『わかった』と返信するだけなのに、何度も何度も読み返した。
_和泉に、会う。
送信ボタンを押す手が震える。
_ちゃんと向き合うために。
深呼吸をして、親指を動かす。
画面から指が離れた瞬間、私のコメントに既読が付いた。