#14
#14
言葉として伝えられなかった想いはどこに行くのだろう。
口に出したら後悔するのに、抱えきれない気持ちはどう処理すべきだろうか。
解決方法が見つからないまま、和泉とバイトで顔を合わせなきゃいけなくなった。
何も無かったことにしたい。
現状維持したい。
それは和泉も同じだったようで、そこに忙しかったのも相まったらしい。
他にも複数人いたからっていうものあるだろうし、至って普通に仕事をできた。
定時に上がって、着替える。給料日だったというのもあって、みんなでご飯食べに行くことになった。
男子が何人か先に待っているところに合流すると、行くお店を話し合っているようで。
「ちょっとコンビニ寄って来るわ」
神田行くぞって言うから、ついていかないわけにもいかず、先に歩く和泉の後をついていく。
コンビニに立ち寄るのかと思いきや、その1個前の角で曲がった。
「これ、返すわ」
和泉の財布から出て来たのは1万円札。この前、私が残していったもの。
「、要らない」
「俺も受け取れねーよ」
強引に手に握らされたお札。風によってピラピラと煽られた。
「付き合わせて悪かった
…今後、関わらないようにするから」
手に戻ってきた一万円札。
もう関わるなってことだろうか。
間違って伸ばした手は無かったことにされた。
それを私は望んでいたはずなのに、なんだか虚しい。
ごめん。と和泉が言う。
受け取った一万円札を見ていた私は、和泉がどんな顔しているのかわからなかった。