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時計と指輪  作者: 憂花
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#01

#01


始まりはいつだったのか記憶にない。


知らないうちに話すようになって、最初は妙に頭の回るやつ、そんな感じで。同じ中学の同級生って言われても、同じクラスでもなかったから記憶に無いし。

だから、仲良くなったのは今のバイトを始めてからっていうのが私たちの共通認識だと思う。



「和泉、このプリントどこだっけ?」


「あっち」



大手の進学塾でアルバイトを始めて3年目。古参になりつつある。

私が和泉 陵と出会うきっかけになったのは、ここで働き始めたことだった。



「神田」


「ん?」


「これやっといて」


「…これ、めんどくさいやつじゃん、やだ」


「でも、やってくれるっしょ?」


「…貸し1ね、」



仕方ないと、生徒の解答用紙と模範解答と照らし合わせ、採点を始める。一方、和泉はというと生徒との面談、と見せかけて話してる様子だった。


うちの塾長は和泉に多大なる信頼を寄せている。

恐ろしくキレが良く、聞かれたことは全て答えられるし、生徒の評判も良い。だけど、それは表向きの評価で、私に向けては、口が悪いし、ちょっと横暴。


私が採点の合間に盗み見ると、質問対応に追われているようだった。

和泉は都内の有名国立に合格し、センター試験で使った科目なら答えてくれる。これが生徒が懐くにはワケであって、そこら辺の学校の教師よりは数段教え方が上手いのだ。



採点が終わって、息をつくとすぐ背後から終わった?と声が聞こえた。



「和泉の分は」


「感謝」


「今度奢り」


「それは嫌」



こういった仕事は私にしか頼まない、私が断らないって知ってるから。いいように使われているのはわかってる。



『神田さん、聞いてもいいですか?』と後輩がプリントを持ってきた。斯くなる私もサブリーダーだったりと、下から頼られる立場なのだ。

後輩に指導してると、自分の仕事が遅れる。思ったよりも時間がかかってしまって、上がりの時間は近づいていた。


「あれ」


並び替えなきゃと思ってたプリント類。それがきっちり順番通りになっている。


「貸しは返したから」


ポンと背後から頭に手を乗せられた。


ほらみんな上がるぞーっと後輩に声をかける和泉。

私は慌てて揃えてもらったプリント類を仕舞うと荷物をまとめた。


私だけを信頼してくれる、仕事の波長が合う、これが私がやつを嫌いになれない理由の一つである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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