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ブラッド・チルドレン  作者: フミナベ
8/12

水の国・アクアドリーム国

エルク達は、【水の国・アクアドリーム国】にいる聖剣の【水の巫女】と呼ばれている雫から竜神祭の招待によって【水の国・アクアドリーム国】に行くことになった。

【水の(くに)・アクアドリーム(こく)


エルクとアリス、それに国王(こくおう)であるジニール、(きさき)のアリーナ、騎士団(きしだん)隊長(たいちょう)のベルの5(にん)は、アリスと(おな)聖剣(せいけん)で【(みず)巫女(みこ)】の二つ()(さず)かっている(しずく)招待(しょうたい)により(みず)(くに)アクアドリーム(こく)(おとず)れていた。


(みず)(くに)アクアドリーム(こく)は、世界(せかい)では(めずら)しい和風(わふう)建造物(けんぞうぶつ)()(なら)んでいることで有名(ゆうめい)(くに)だった。


国内(こくない)には、あちらこちらに(かわ)(なが)れており、それぞれの(かわ)沿()(よう)建物(たてもの)(さくら)()灯籠(とうろう)()(なら)んでおり、建物(たてもの)(まえ)には石積(いしづみ)(つく)られた(はば)(ひろ)水路(すいろ)()び、()(とお)綺麗(きれい)(みず)(なが)れて水車(すいしゃ)がゆっくりと(まわ)り、水中(すいちゅう)には(こい)気持(きも)()さそうに(およ)いでいる。



(とく)観光(かんこう)有名(ゆうめい)になっている場所(ばしょ)国内(こくない)中央(ちゅうおう)にある(みず)()(とお)った(おお)きな(みずうみ)中央(ちゅうおう)()てられている神社(じんじゃ)だった。


この(みずうみ)には(むかし)から(ふる)()(つた)えがあった。


その()(つた)えとは、よくある身分差(みぶんさ)のある禁断(きんだん)(こい)(はなし)だ。


人類(じんるい)二番目(にばんめ)精霊(せいれい)宿(やど)した(くに)(ひめ)幼馴染(おさななじ)みの下民(げみん)(こい)(おちい)っており、その二人(ふたり)関係(かんけい)()った国王(こくおう)激怒(げきど)し、騎士団達(きしだんたち)命令(めいれい)して幼馴染(おさななじ)みの下民(げみん)(つか)まえた。


そして、国王(こくおう)自分(じぶん)(むすめ)である(ひめ)()(まえ)幼馴染(おさななじ)みの下民(げみん)処刑(しょけい)したのだ。


その()(ひめ)幼馴染(おさななじ)みの下民(げみん)(かく)れて(ひそ)かに()っていた(おも)()(みずうみ)(まえ)()(つづ)け、数日後(すうじつご)(ひめ)幼馴染(おさななじ)みの(あと)()うかの(よう)(みずうみ)()()げた。


その(さい)(ひめ)宿(やど)していた精霊(せいれい)マーメイドが暴走(ぼうそう)大津波(おおつなみ)()国内(こくない)にあらゆる(もの)()(なが)多大(ただい)被害(ひがい)をもたらした。


その()から(みずうみ)から大量(たいりょう)(みず)()()(よう)になり国内(こくない)(おお)くの(かわ)()まれたのだ。


(いま)(おお)きな(みずうみ)には(おお)きな(はし)()かっており、(ひめ)幼馴染(おさななじ)み、そして精霊(せいれい)マーメイドの(かな)しみと(いか)りを(しず)めるため(みずうみ)中央(ちゅうおう)神社(じんじゃ)()てられ、毎年(まいとし)、その()(おとず)れると竜神際(りゅうじんさい)(おこな)っている。そういう身分(みぶん)()のある禁断(きんだん)(こい)()(つた)えがあり、平日(へいじつ)でも(おお)くのカップルが(おとず)れ、神社(じんじゃ)背景(はいけい)記念写真(きねんしゃしん)()りに()人達(ひとたち)行列(ぎょうれつ)ができるほど大人気(だいにんき)場所(スポット)になっていた。


(いま)竜神際(りゅうじんさい)(ちか)く、出店(でみせ)(おお)出店(しゅってん)しており盛大(せいだい)(にぎ)わっている。


中央(ちゅうおう)(なが)れている(おお)きな川沿(かわぞ)いをエルクとアリスは(よこ)(なら)んで(たの)しそうに会話(かいわ)しながら(ある)いており、その二人(ふたり)(うし)ろにジニール(たち)(つづ)いて(ある)いていた。


相変(あいか)わらず独特(どくとく)雰囲気(ふんいき)のある(くに)だけど、(なん)だか(こころ)()()くから不思議(ふしぎ)だな」

エルクは、(さくら)(はな)びらが水路(すいろ)()ちて(なが)れる光景(こうけい)()(ほお)(ゆる)める。


「そうね、エルク」

あまり()せないエルクの表情(ひょうじょう)を見て、アリスは微笑(ほほえ)んだ。


そんな(とき)(おお)きな(かわ)上流(じょうりゅう)から木製(もくせい)小型(こがた)手漕(てこ)ぎボート3(そう)()えてきた。


それぞれの小型(こがた)手漕(てこ)ぎボートには、カップルや家族(かぞく)()っており(たの)しそうに笑顔(えがお)()かべていた。


「ねぇ、エルク」

アリスは、(となり)一緒(いっしょ)(ある)いているエルクの(そで)指先(ゆびさき)でちょこっと(つか)(かる)()()る。


「ん?どうした?アリス」


「あ、あの…私達(わたしたち)も、そ、その、せっかく()たのだから…そ、その、ボートに()ってみない?」

アリスは、()ずかしそうに(かお)()()()めながら上目遣(うわめづか)いでエルクを()る。


(べつ)()いけど。でも、あの(おお)きさだと流石(さすが)に5(にん)()るのは無理(むり)なんじゃない?」


「だ、だから、そ、その…そのね…。わ、(わたし)と…二人(ふたり)で…」

(かお)()()()めているアリスは、(うつむ)いて左右(さゆう)人差(ひとさ)(ゆび)指先(ゆびさき)をくっつけたり(はな)したりしてモジモジする。


「ねぇ、エルク(くん)。お(ねが)いがあるのだけど」

アリーナは、エルクに(はな)()けた。


「はい?(なん)でしょうか?アリーナ(さま)

(あし)()めたエルクは、()(かえ)(あたま)()げる。


私達(わたしたち)観光(かんこう)しているから、(もう)(わけ)ないけど、エルク(くん)はアリスと二人(ふたり)一緒(いっしょ)にボートに()ってきて()しいのだけど()いかしら?」

アリーナは、(むすめ)のアリスに()かってウィンクする。


「わかりました」


「ありがとう!エルク、お母様(かおさま)。そうと()まれば、(はや)()きましょう!エルク」

「うぁ!?ちょっと、アリス」

アリスは、エルクの(うで)()んで(はし)()す。



ジニールとアリーナ、ベルの3(にん)は、そんな二人(ふたり)(うし)姿(すがた)()微笑(ほほえ)みながら見送(みおく)った。


「あなた、ここに()本当(ほんとう)()かったわね。アリスが、あんなに(よろこ)んで、はしゃいでいる姿(すがた)()るのは(ひさ)しぶりだわ」

「そうだな」

アリーナは口元(くちもと)()()てて笑顔(えがお)()かべ、ジニールも笑顔(えがお)()かべて(うなず)いた。


突然(とつぜん)(もう)(わけ)ありません。1つお()きしたいのですが、(よろ)しいでしょうか?」


(なん)だ?ベル」


「もし、アリス(さま)がエルク(くん)と、その婚約(こんやく)したいと(おっしゃ)った場合(ばあい)はどうなされるおつもりですか?」


「そんなことは()まっている」


「やはり、ご反対(はんたい)されるつもりなのですか?」

ベルは、(かた)()として落胆(らくたん)する。


(なに)()っているんだ、ベル。(わたし)(みと)めるつもりだぞ。エルクなら信頼(しんらい)して愛娘(まなむすめ)(まか)せられる。(へん)上級(じょうきゅう)貴族(きぞく)偏屈(へんくつ)聖剣(せいけん)(たち)より信頼(しんらい)している」


(わたし)もそのつもりよ。エルク(くん)なら、(こころ)から信頼(しんらい)できるわ」

ジニールとアリーナは、(まよ)わずに即答(そくとう)(こた)えた。


「そのお言葉(ことば)()いて、(わたし)安心(あんしん)しました。ですが、もうご存知(ごぞんじ)だと(おも)いますが、大臣(だいじん)であられるベネゼブラ(さま)納得(なっとく)しないかと(おも)われますが」


「そうだろうな…。しかし、まだ時間(じかん)はある。ベネゼブラも、気持(きも)ちの整理(せいり)ができるだろう。そして、いつか納得(なっとく)もしてくれると(わたし)(しん)じている」

ベネゼブラがエルクを(うら)んでいるのことに気付(きづ)いていたジニールは、複雑(ふくざつ)面持(おもも)ちになった。


アリスがエルクと出会(であ)(まえ)は、ベネゼブラの息子(むすこ)長男(ちょうなん)ローマンがアリスの婚約者(こんやくしゃ)となっていた。


しかし、アリスがエルクと出会(であ)い、アリスはエルクと(せっ)していくうちにアリスはエルクに好意(こうい)(いだ)(よう)になっていき、(いま)まで(さか)らわずに素直(すなお)両親(りょうしん)()いつけを(まも)っていたアリスだったが、(はじ)めて自分(じぶん)意思(いし)両親(りょうしん)であるジニールとアリーナに婚約破棄(こんやくはき)(もう)()てをしたのだった。


(はじ)めは(まよ)ったジニールとアリーナだったが、愛娘(まなむすめ)のアリスがエルクと(せっ)している姿(すがた)()て、本当(ほんとう)(こころ)(そこ)から()きなんだとわかったので、大臣(だいじん)のベネゼブラに婚約破棄(こんやくはき)(もう)()ることにしたのだ。


そのため、ベネゼブラはエルクを(にく)んでいた。



ジニール(たち)、3(にん)複雑(ふくざつ)面持(おもも)ちになっていた(とき)(かわ)からアリスの(こえ)()こえてきた。


「お父様(とうさま)、お母様(かあさま)、ベル~!」

ジニール(たち)は、(こえ)がした(かわ)視線(しせん)()けると、そこには手漕(てこ)ぎボートに()ったエルクとアリスの姿(すがた)があった。


エルクは左右(さゆう)()(かい)(水をかいて(ふね)(すす)める道具(どうぐ)別名(べつめい)オール)を(にぎ)って()ぎ、一緒(いっしょ)()っているアリスはとても(しあわ)せそうな表情(ひょうじょう)でジニール(たち)()かって()(おお)きく()っていた。


ジニール(たち)笑顔(えがお)()かべてアリス(たち)()()った。


「アリス(さま)!【(みず)巫女(みこ)】であられる雫様(しずくさま)との面会(めんかい)時間(じかん)まで、あと3時間(じかん)しかありませんので、それまでには(もど)って()(くだ)さい。私達(わたしたち)は、お(さき)宿屋(しゅくや)水鈴邸(すいりんてい)()っていますので」

ベルは右手(みぎて)(おお)きく()り、左手(ひだりて)口元(くちもと)()てて(おお)きな(こえ)(はな)す。


「わかったわ、ベル」

アリスは笑顔(えがお)()かべたまま、両手(りょうて)筒状(つつじょう)にして口元(くちもと)()てて(おお)きな(こえ)了承(りょうしょう)した。


「ねぇ、エルク。あっちに綺麗(きれい)(はな)沢山(たくさん)()いているわ!(ちか)くまで()せて!」

アリスは、(うれ)しそうに(はな)()いている場所(ばしょ)(ゆび)()す。


「わかったよ、アリス」

エルクは、(ひさ)しぶりに(うれ)しそうなアリスを()て、笑顔(えがお)()べて(オール)()いでボートを(はし)らせる。


その()、エルクとアリスは出店(でみせ)(みず)精霊(せいれい)のマーメードとウンディーネのお(めん)()ったり輪投(わな)げや金魚掬(きんぎょすく)いをしたり、人形(にんぎょう)カステラやはし()き、たこ()き、わたがし、りんご(あめ)()って()(ある)きながら出店(でみせ)をまわった。




(みず)(くに)・アクアドリーム(こく)宿屋(しゅくや)水鈴邸(すいりんてい)


()()ちて満月(まんげつ)(ほし)(くに)()らしている(なか)、アリスとエルクは着物(きもの)着替(きが)えており(はし)っていた。


アリスの着物(きもの)全体(ぜんたい)白色(しろいろ)で所々(とこどころ)に(さくら)()(はな)模様(もよう)(はい)っている。

一方(いっぽう)、エルクはグレーの(はかま)(うえ)黒色(くろいろ)でアリスと(おな)(さくら)()(さくら)(はな)模様(もよう)(はい)った着物姿(きものすがた)着替(きが)えていた。


「ほら(はや)(はし)りなさい、エルク。このままだと()()わないかもしれないわ」

アリスは、エルクの()()()って(はし)っていた。


「え!?アリスが、その台詞(せりふ)()うの?大体(だいたい)さ、俺達(おれたち)はここに三日間(みっかかん)滞在(たいざい)するのだから、わざわざ、今日(きょう)着物(きもの)()わなくても()かったと(おも)うけど」


「うっ、エ、エルク、あなた馬鹿(ばか)なの?きょ、今日(きょう)購入(こうにゅう)しとかないと、明日(あす)には()()れて()くなっていた可能性(かのうせい)があるのよ!店員(てんいん)さんも()っていたでしょう。どちらもオリジナルで、ここにあるこの一着(いっちゃく)しかないって」

アリスは(かんが)えなしに本能(ほんのう)のまま(うご)いていたので、図星(ずぼし)()かれギクッと(からだ)(ふる)わせながら(かお)()()る。


「そう()っていたけどさ、予約(よやく)をしとけば()かったと(おも)うけど?それにさ、(いそ)がないといけない状況(じょうきょう)なのに、(なん)で、わざわざ(はし)りにくい下駄(げた)着物(きもの)着替(きが)えたのかが不明(ふめい)なんだけど」


「な、(なに)()っているのよ!そ、そう、着物(きもの)なんて、中々(なかなか)、()機会(きかい)(すく)ないのよ。だから、()れる(とき)()るのは(ごく)()たり(まえ)のことでしょう!」


「そ、そいうもの?」


「そういうものよ!」


「よ、よく()からないけど、そうなんだ。(うたが)ってごめん、アリス」

アリスの気迫(きはく)()けたエルクは、自然(しぜん)(あやま)った。


「わ、わかれば()いのよ!わかれば!それより、(はや)(いそ)ぎましょう」


「そうだね」

アリスとエルクは、(はし)速度(そくど)(さら)()げた。



そして、エルクとアリスは無事(ぶじ)時間内(じかんない)水鈴邸(すいりんてい)辿(だど)()いた。


水鈴邸(すいりんてい)は、広大(こうだい)敷地(しきち)擁壁(ようへき)(かこ)んでおり、擁壁(ようへき)漆喰(しっくい)()られている。


(もん)(まえ)着物(きもの)()仲居(なかい)さん(旅館(りょかん)料亭(りょうてい)などでお客様(きゃくさま)接待(せったい)給仕(きゅうじ)などを(おこな)(ひと))3(にん)待機(たいき)していた。


「お()ちしておりました、アリス(さま)、エルク(さま)

仲居(なかい)さん(たち)は、一斉(いっせい)(あたま)()げた。


「お出迎(でむか)え、ありがとう」

アリスは笑顔(えがお)()かべてお(れい)()った。


「お()にしないで(くだ)さい、アリス(さま)。お部屋(へや)まで私達(わたしたち)3(にん)が、お二人(ふたり)をご案内(あんない)させて(いただ)きます。では、ついて()(くだ)さい」

アリスとエルクは、仲居(ない)さん(たち)についていく。



敷地内(しきない)(はい)ると灯籠(とうろう)一定(いってい)間隔(かんかく)設置(はいち)され、左手側(ひだりてがわ)には絶壁(ぜっぺき)があり(うえ)から(みず)(なが)(たき)になっており(した)からライトアップされている。


その(たき)真下(ました)には、ライトアップされた(おお)きな(いけ)があり、所々(ところどころ)に(かた)まって植物(しょくぶつ)のハスが(はな)()かせて()かんでおり、(はし)には鹿威(ししおど)しが設置(はいち)されていて静寂(せいじゃく)(なか)鹿威(ししおど)しの甲高(かんだか)(おと)(ひび)き、(いけ)(なか)には(こい)(およ)いでいた。


中庭(なかにわ)中央(ちゅうおう)には、枯山水(かれさんすい)((みず)使(つか)わずに(いし)高低(こうてい)地形(ちけい)などによって山水(さんすい)(あらわ)した庭園(ていえん))が(つく)られており、右手側(みぎてがわ)には間伐(かんばつ)(木を切ってまばらにすること)が(ほどこ)された整備(せいび)がされた竹藪(たけやぶ)()えていた。


エルク(たち)石畳(いしたたみ)通路(つうろ)(ある)き、(おお)きな玄関(げんかん)辿(たど)()きジニール(たち)がいる部屋(へや)案内(あんない)された。


「アリス(さま)とエルク(さま)をご案内(あんない)して(まい)りました。失礼(しつれい)します」

仲居(なかい)さんの一人(ひとり)がノックをしてドアを()ける。


「「ただいま(もど)りました」」

アリスとエルクは、お辞儀(じぎ)をする。


「お(かえ)りなさいませアリス(さま)、エルク(くん)


「おお、アリス、エルク()っていたぞ。あまりにも(おそ)いから(なに)かのトラブルに()()まれたかと心配(しんぱい)しておったぞ」


「いえ、(とく)にトラブルとかはありませんでした」


「それなら、()かったわ。お(かえ)りなさい、アリス、エルク(くん)何事(なにごと)もなく無事(ぶじ)()かったわ」


「ジニール(さま)、アリーナ(さま)、ご心配(しんぱい)をお()けさせた(よう)大変(たいへん)(もう)(わけ)ありません」

エルクは、(あたま)()げて謝罪(しゃじい)をした。


「では、私達(わたしたち)失礼(しつれい)します。(なに)か、ご用事(ようじ)があればお気軽(きがる)にお(こえ)()けて(くだ)さい」

仲居(なかい)さん(たち)は、一度(いちど)(あたま)()げて退出(たいしゅつ)して仕事(しごと)(もど)っていった。


「どうして(おそ)くなったのか、その格好(かっこう)()ればわかる。どうせ、アリスが着物(きもの)執着(しゅうちゃく)したのだろう」


「うっ…」

図星(ずぼし)()かれたアリスは、ギクッと反応(はんのう)して狼狽(ろうばい)した。


「フフフ…。二人共(ふたりとも)、とても似合(にあ)っているわ、その着物姿(きものすがた)。それに、お(そろ)いだから恋人(こいびと)同士(どうし)()えるわよ。ねぇ?あなた、ベル」

アリーナは、口元(くちもと)()()てて笑顔(えがお)()かべたままアリスとエルクを()ながら(たず)ねる。


「そうだな」

「はい、どこから()ても、とてもお似合(にあ)いのカップルです」

ジニールとベルは、笑顔(えがお)(うなず)いて肯定(こうてい)した。


「こ、こ、こ、こい、恋人(こいびと)!?かっ、カップル!?」

エルクは無反応(むはんのう)だったが、アリスは瞬間湯沸(しゅんかんゆわか)()(よう)一瞬(いっしゅん)湯気(ゆげ)()そうなほど(かお)()()()めた。


アリーナ(たち)は、アリスの反応(はんのう)()(おだ)やかに微笑(ほほえ)んだ。


それから1時間(じかん)()ち、3(にん)仲居(なかい)さん(たち)がエルク(たち)がいる部屋(へや)(おとず)れた。


柳水(りゅうすい)国王様(こくおうさま)が、【水蓮華(すいれんか)()】にてお()ちしております。私達(わたしたち)がご案内(あんない)(いた)しますので、ご一緒(いっしょ)同行(どうこう)をお(ねが)いします」

()(なか)にいる仲居(なかい)さんが説明(せつめい)し、仲居(なかい)さん(たち)一斉(いっせい)にお辞儀(じぎ)をする。


こうして、エルク(たち)仲居(なかい)さん(たち)案内(あんない)されて【水蓮華(すいれんか)()】に辿(たど)()いた。




水蓮華(すいれんか)()


水蓮華(すいれんか)()】の部屋(へや)(ひろ)く、中央(ちゅうおう)には(おお)きな長方形(ちょうほうけい)テーブルがあり、中央(ちゅうおう)紺色(こんいろ)(かみ)()()()げした男性(だんせい)柳水(りゅうすい)国王(こくおう)、その(りょう)サイドには背中(せなか)までスラッと青髪(あおがみ)()ばした女性(じょせい)(きさき)瑞希(みずき)、そして、(おな)じく青髪(あおがみ)(かる)いボブカットをした少女(しょうじょ)(ひめ)(しずく)(せき)()いていた。


柳水達(りゅうすいたち)は、全員(ぜんいん)(あお)水色(みずいろ)強調(きょうちょう)した着物姿(きものすがた)だった。


壁際(かべぎわ)には(おお)きな(まど)一定(いってい)間隔(かんかく)設置(せっち)されており、その(ちか)くには銀色(ぎんいろ)青色(あおいろ)装飾(そうしょく)(ほどこ)されている(よろい)()(まと)っている騎士団達(きしだんたち)30(にん)一定(いってい)間隔(かんかく)()けて()って待機(たいき)している。


ジニールとアリーナ、それにアリスの3(にん)はメイド(たち)椅子(いす)()いて()っていたので、中央(ちゅうおう)にジニール、左側(ひだりがわ)にアリーナ、右側(みぎがわ)にアリスが(すわ)った。


エルクとベルの(せき)にも用意(ようい)されておりメイド二人(ふたり)椅子(いす)()いて待機(たいき)しているのだが、二人(ふたり)護衛役(ごえいやく)なので(せき)()かずに騎士団達(きしだんたち)(おな)じく壁際(かべぎわ)移動(いどう)していた。


「ベルさん、エルク(くん)。そ、その、せっかくですから(せき)()いて(いただ)けませんか?」

オドオドしながら(しずく)は、(くる)(まぎ)れの笑顔(えがお)()かべながら二人(ふたり)(はな)()ける。


「いえ、お気持(きも)ちだけで十分(じゅうぶん)です。私達(わたしたち)のことは、お()にしないで(くだ)さい。私達(わたしたち)はジニール様方(さまがた)護衛役(ごえいやく)()なのですので」

ベルは、お辞儀(じぎ)をして丁寧(ていねい)(ことわ)った。


二人共(ふたりとも)、そう(かしこ)まるな。今回(こんかい)君達(きみたち)はゲストとして私達(わたしたち)が、ここに()んだのだから()にせずに堂々(どうどう)としていれば()い。(だれ)文句(もんく)()わせない」

国王(こくおう)柳水(りゅうすい)は、(つま)瑞希(みずき)(むすめ)(しずく)、そして騎士団(きしだん)(たち)視線(しせん)(おく)る。


「ええ」

「はい」

瑞希(みずき)(しずく)は、笑顔(えがお)(うなず)いた。


「ベル、エルク、柳水殿(りゅうすいどの)がそう(おっしゃ)っているのだ。ここは、お言葉(ことば)(あま)えて(せき)()いたらどうだ?」

ジニールも賛同(さんどう)する。


「はい、(かしこ)まりました」

「わかりました」

ベルとエルクは、(せき)()くことにした。


ベルはアリーナの(となり)(せき)に、エルクはアリスの(となり)(せき)()かう。



壁際(かべぎわ)()っている騎士団達(きしだんたち)は、エルクを注視(ちゅうし)しながら警戒(けいかい)(つよ)める。


「あれが、聖剣(せいけん)四宝(しほう)様方(さまがた)よりも(つよ)いと(うわさ)をされている【(しろ)死神(しにがみ)白夜叉(しろやしゃ)】なのか?」


「そうだ、間違(まちが)いない。去年(きょねん)一昨年(おととし)()ていたからな」


(うそ)だろ?どう()ても、ただの子供(こども)だろ?(いま)(すき)だらけで、我々(われわれ)でも簡単(かんたん)(たお)せそうだぞ」


「まぁ、所詮(しょせん)噂話(うわさばなし)だからな。実際(じっさい)(つよ)いとは(かぎ)らないだろ?そもそも、聖剣(せいけん)()られる(しずく)(さま)やアリス(さま)(かな)(もの)がいるとは(しん)じられん。よりによって、聖剣(せいけん)四宝様(しほうさま)(がた)より(つよ)(もの)など存在(そんざい)するはずがない」

()(まえ)(とお)るエルクを一目(ひとめ)()騎士団達(きしだんたち)は、柳水達(りゅうすいたち)()こえない(よう)にコソコソと(はな)す。



しかし、騎士団達(きしだんたち)(はな)(こえ)は、聖霊力(せいれいりょく)(つよ)柳水達(りゅうすいたち)丸聞(まるき)こえだった。


エルクは()こえていないかの(よう)無視(むし)していたが、(となり)にいるアリスは激怒(げきど)して()(ちから)(はい)聖霊力(せいれいりょく)(たか)まっていき、アリスの(からだ)(まと)(よう)(かぜ)発生(はっせい)し、金色(こんじき)(なが)(かみ)()がフワッと()いている。


「ちょ、ちょっとアリス…」

(アリス!?ここで聖霊力(せいれいりょく)解放(かいほう)したら部屋(へや)()()んでしまうから、本当(ほんとう)()(かえ)しがつかなくなるから)

(あわ)ててエルクは、激怒(げきど)しているアリスを(なだ)めようと(こえ)()けた。


「あ、あの…アリスちゃん…」

アリスと(おな)聖剣(せいけん)である(しずく)は、オドオドしながら(はな)()ける。


「ゴホン、お前達(まえたち)(しず)かにしろ!()こえているぞ!」

わざと(せき)をして騎士団達(きしだんたち)(にら)()けながら注意(ちゅうい)する柳水(りゅうすい)


アリスは冷静(れいせい)さを()(もど)し、()()れそうになった聖霊力(せいれいりょく)制御(せいぎょ)し、発生(はっせい)していた(かぜ)()えた。


「「も、(もう)(わけ)ございません」」

騎士団達(きしだんたち)一斉(いっせい)謝罪(しゃざい)をし、それからは(なに)(しゃべ)らなくなった。


「こちらの者達(ものたち)が、大変(たいへん)失礼(しつれい)をした。非礼(ひれい)()びる。(もう)(わけ)ない」


「わかった。だから、もう()にする必要(ひつよう)はない柳水殿(りゅうすいどの)。アリスもそれぐらいでな」

ジニールは、左手(ひだりて)(かる)()げる。


「はい、お父様(とうさま)(おっしゃ)るのであれば。それに、(わたし)はそこまで()にしていませんので」

アリスは、微笑(ほほえ)みながら(こた)えたが()(わら)っておらず威圧感(いあつかん)があった。


「そ、そうか…」

ジニールは、(むすめ)のアリスの威圧感(いあつかん)がある笑顔(えがお)()(ほお)()()った。


アリスが(はな)っている威圧感(いあつかん)は、(みんな)()(だま)らせるには十分(じゅうぶん)だった。


()雰囲気(ふんいき)()えるため、エルクは(はな)(すす)めることにした。


柳水(りゅうすい)様、毎年(まいとし)竜神祭(りゅうじんさい)という神聖(しんせい)(まつり)(おとず)れる(たび)に、ジニール(さま)やアリーナ(さま)、アリス(さま)だけでなく、(わたし)にもお(こえ)()けて(いただ)き、(まこと)にありがとうございます。ところで、今回(こんかい)竜神際(りゅうじんさい)のことだけではありませんよね?おそらく、()めてきた【ブラッド・チルドレン】9番隊(ばんたい)隊長(たいちょう)【ゴーレム・マスター】のゴンザレスの(けん)のこともあるのでしょう?」


流石(さすが)、エルク殿(どの)だ。エルク殿(どの)()(とお)り、今回(こんかい)は、その(けん)(くわ)しく即急(そっきゅう)()きたかったのだ。どうだろうか?ジニール殿(どの)食事(しょくじ)をしながらでも」


「フッ、わかった。()いだろう」

柳水(りゅうすい)肯定(こうてい)しながら提案(ていあん)し、ジニールは(うなず)いて了承(りょうしょう)した。


(たす)かる。では」

満足(まんぞく)そうに(うなず)いた柳水(りゅうすい)は、数回(すうかい)()(たた)くとドアが(ひら)きメイド(たち)が様々(さまざま)な料理(りょうり)()せたワゴン・カートを()して部屋(へや)(はい)ってきた。


メイド(たち)は、テーブルに次々(つぎつぎ)と料理(りょうり)(なら)べていく。


エルク(たち)食事(しょくじ)()りながら、ジニールだけでなく、(じか)(たたか)ったアリス、エルクが説明(せつめい)する。


「ふむ。まさか、あの【ブラッド・チルドレン】9番隊(ばんたい)隊長(たいちょう)【ゴーレム・マスター】のゴンザレスが奇襲(きしゅう)仕掛(しか)けてくるとはな。ところで、ジニール殿(どの)(だれ)手引(てび)きをしたのか把握(はあく)、または検討(けんとう)はついているのだろうか?」


「いや、それは、わからないままだ。(なん)せ、アスカ(さま)がゴンザレスだけでなく、この(けん)首謀者(しゅぼうしゃ)(おも)われる上級(じょうきゅう)貴族達(きぞくたち)始末(しまつ)してしまい、これ以上(いじょう)捜索(そうさく)は、お手上(てあ)状態(じょうたい)なのだ。(あと)から気付(きづ)いたことが2つある。まず、1つ()首謀者(しゅぼうしゃ)(おも)われる者達(ものたち)とゴンザレスの接点(せってん)はなく、首謀者達(しゅぼうしゃたち)との交友(こうゆう)があった者達(ものたち)調(しら)()くしたがゴンザレスとの接点(せってん)がある(もの)(だれ)()なかった。2つ()設置(せっち)していた国内(こくない)防犯(ぼうはん)カメラがあるのだが、首謀者達(しゅぼうしゃたち)(あつ)まっていた(いえ)付近(ふきん)設置(せっち)されている防犯(ぼうはん)カメラは何者(なにもの)かに工作(こうさく)されていてな。意図的(いとてき)に、その時間帯(じかんたい)だけの録画(ろくが)()されていたのだ。おそらく、その時間帯(じかんたい)工作(こうさく)した何者(なにもの)か、もしくは組織(そしき)(もの)首謀者達(しゅぼうしゃたち)()っていた可能性(かのうせい)(たか)い」

ジニールは、(ふか)いため(いき)()く。


だが、ジニールはゴンザレスを(まね)()れた人物(じんぶつ)心当(こころあ)たりはあったが証拠(しょうこ)がなく、(しん)じたくはなかった。



「アリスちゃん、エルク(くん)、もし()かったら食事(しょくじ)()わったら(わたし)部屋(へや)()てくれないかな?」

オドオドしながら(しずく)(たず)ねる。


「もちろん、()いわよ」

アリスは笑顔(えがお)(うなず)き、エルクも無言(むごん)(うなず)いた。


「ありがとう!アリスちゃん、エルク(くん)

(しずく)は、(うれ)しそうに(わら)った。



こうして、(さき)食事(しょくじ)()えたアリスとエルクは、(しずく)一緒(いっしょ)(しずく)部屋(へや)へと()かった。



アリス(たち)退出(たいしゅつ)したのを確認(かくにん)した柳水(りゅうすい)は、真剣(しんけん)面持(おもも)()わる。


ジニールは、お(ちゃ)一口(ひとくち)()んで、湯飲(ゆの)みをテーブルに()いた。


「で、柳水(りゅうすい)殿(どの)大切(たいせつ)(はなし)があるのだろ?」


流石(さすが)ジニール殿(どの)、お見通(みとお)しだったか。(じつ)はな、1つ(たの)みたいことがあるのだが…」




(しずく)部屋(へや)


(しずく)一緒(いっしょ)に、(しずく)部屋(へや)(はい)ったエルクとアリス。


(しずく)部屋(へや)は、水色(みずいろ)(つくえ)やベッド、大小(だいしょう)様々(さまざま)なテディベアが(かざ)ってある年相応(としそうおう)(おんな)()らしい部屋(へや)だった。


()かった、()かったよ…。二人(ふたり)無事(ぶじ)で、本当(ほんとう)()かったよ…」

(しずく)は、自分(じぶん)部屋(へや)(はい)ると()きながらアリスとエルクに()きついた。


心配(しんぱい)してくれてありがとう、(しずく)私達(わたしたち)は、大丈夫(だいじょうぶ)だから()かないで(しずく)。それに、(わたし)とエルクは、そんな簡単(かんたん)()なないわ」

アリスは、片手(かたて)(しずく)(あたま)(やさ)しく()でる。


「ほら、エルクも(なに)()いなさいよ」

「わかったよ、アリス。なら、(しずく)

「ぐずっ、(なに)?エルク(くん)

(しずく)は、(やさ)しくって心配性(しんぱいしょう)なところは()わらないけど、()ないうちに随分(ずいぶん)成長(せいちょう)しているよ」

「ぐずっ…そうかな?う…」

「うん、こうして()きつかれて、(しずく)成長(せいちょう)していることを確信(かくしん)したんだ。(とく)(むね)がね」

エルクは笑顔(えがお)()かべて(はな)して(しずく)胸元(むなもと)()る。


「ぐず…。ありがと…?え?きゃっ」

(しずく)は、すぐにエルクが()った言葉(ことば)意味(いみ)理解(りかい)できずにお(れい)()いそうなった(とき)言葉(ことば)意味(いみ)理解(りかい)した瞬間(しゅんかん)一瞬(いっしゅん)(かお)()()()めてその()(かが)()んで両腕(りょううで)(むね)(かく)した。


エルクの(となり)にいるアリスは、眉間(みけん)青筋(あおすじ)()かべながら右拳(みぎこぶし)(にぎ)って(うで)軸捻転(じくねんてん)(くわ)え、エルクの横腹(よこばら)渾身(こんしん)のコークスクリューブローを()れた。


「ぐはっ」

エルクは両手(りょうて)(なぐ)られた横腹(よこばら)()さえながら、その()(ひざ)をついて(うずくま)って悶絶(もんぜつ)する。


「エ~ル~ク~!」

威圧感(いあつかん)(あらわ)にするアリス。


「ぐっ、ちょ、ちょっと()って、アリス。仕方(しかた)ないことなんだ。(おれ)(おとの)なんだからさ。思春期(ししゅんき)って(やつ)だし。つい、本音(ほんね)()ても…仕方(しかた)ないことだと…そう(おも)わない…かな…?あのアリス…アリス(さま)…」

エルクは(うずくま)ったまま、(かお)()げて片手(かたて)()ばして苦笑(にがわ)いを()かべて誤魔化(ごまか)そうとする。


「……。」

アリスは、無言(むごん)でゴミを()(よう)()でエルクを見下(みお)ろす。


「し、(しずく)(たす)けてくれ!(たの)むよ。このままだと、(ころ)される。だから…」

「む、無理(むり)だよ、エルク(くん)。ごめんね」

「そ、そんな…うぁ…」

エルクは(しずく)(たす)けを(もと)めたが、(しずく)はオドオドしながら謝罪(しゃざい)をして(ことわ)った(とき)、エルクはアリスに(かお)鷲掴(わしづか)みされ()()げられて(あし)(ゆか)から(はな)れる。


アリスは、(すご)みのある()みを()かべたまま徐々(じょじょ)にエルクの(かお)鷲掴(わしづか)みしている()(ちから)(いれ)れていく。


「アリス、ギ、ギブ!本当(ほんとう)にギブアップだから!ぐぁぁ~」

エルクは、悲鳴(ひめい)をあげた。


「フフフ…相変(あいか)わらずだね、アリスちゃんもエルク(くん)も」

(しずく)は、左手(ひだりて)人差(ひとさ)(ゆび)(なみだ)()()りながら笑顔(えがお)()かべる。


「そんなの当然(とうぜん)よ。だって、(ひと)は、そんな()ぐには()わらないんだから。それよりも、(しずく)。その着物姿(きものすがた)、とても似合(にあ)っているわよ。ねぇ、エルクもそう(おも)うでしょう?」


()たた…そうだね、とても可愛(かわい)いと(おも)うよ(しずく)


「そ、そうかな?ありがとう。アリスちゃんもエルク(くん)も、その着物姿(きものすがた)がとても似合(にあ)っているよ」

(しずく)は、エルクの笑顔(えがお)()(ほお)(あか)()める。


アリスは、以前(いぜん)から(しずく)態度(たいど)()て、(しずく)がエルクのことが()きなのだと気付(きづ)いた。


「ありがとう、(しずく)

(しずく)とは幼馴染(おさななじ)みであり親友(しんゆう)なので、アリスは()にした様子(ようす)もなく、お(れい)()った。


それから、アリス(たち)昔話(むかしばなし)最近(さいきん)のあったことなどの(はなし)会話(かいわ)()()がった。



「ねぇ、ところで(しずく)。あなた、(なに)私達(わたしたち)(かく)しているわよね?」

アリスとエルクは、(しずく)普段(ふだん)とは(ちが)(わず)かな変化(へんか)気付(きづ)いていた。


エルクも気付(きづ)いていたが、(しずく)から相談(そうだん)してくるのを()っていた。


「ハハハ…。やはり、アリスちゃんとエルク(くん)(かく)(ごと)無理(むり)みたいだね…」

(かわ)いた笑顔(えがお)()せる(しずく)だったが、次第(しだい)表情(ひょうじょう)(くら)くなり(なみだ)(あふ)れていく。


「このままだと、モラビニス(こく)戦争(せんそう)(はじ)まってしまうの…。それで、(わたし)不安(ふあん)で…」


「「え!?」」


「ちょっと()って、(しずく)。その話は、可笑(おか)しくないか?(たし)か、聖剣(せいけん)(みんな)は、不可侵(ふかしん)条約(じょうやく)(むす)んでいるはずだろ?」


「そういえば、まだエルクには(つた)えていなかったわね。(やく)一ヶ(いっかげつ)(まえ)のとこだけど、聖剣(せいけん)の【四宝(しほう)】の一角(いっかく)()られる【女帝(じょてい)のルージュ】(さま)聖剣(せいけん)のメンバー全員(ぜんいん)召集(しょうしゅう)して、その()不可侵(ふかしん)条約(じょうやく)破棄(はき)したの。だから、(いま)聖剣(せいけん)同士(どうし)(あらそ)っても問題(もんだい)にならないのよ」


「はぁ?(ほか)聖剣達(せいけんたち)は、それで納得(なっとく)したのか?」


(なか)には賛同(さんどう)する聖剣達(せいけんたち)もいたけど、(わたし)(しずく)だけでなく、(ほか)数名(すうめい)聖剣達(せいけんたち)納得(なっとく)していなかったわ。だけど、(だれ)もルージュ(さま)には(さか)らえないの」


「【女帝(じょてい)のルージュ】か…。(おれ)は【女帝(じょてい)のルージュ】とは一度(いちど)()ったことはないけど、聖剣(せいけん)(なか)でトップの【四宝(しほう)】みたいだからアリス(たち)聖剣達(せいけんたち)(さか)らえないのはわかるけど、【四宝(しほう)】なら(ほか)にもいるだろ?【炎帝(えんてい)のアスカ】や【雷帝(らいてい)のジオ】、【氷帝(ひょうてい)のファーネ】が。その三人(にん)は、(だれ)反対(はんたい)しなかったのか?」


「アスカ(さま)他人事(たにんごと)かの(よう)にあっさりと「どうでもいいわ」っと()って()ぐにその()から()って()ったわ。ジオ(さま)は「反対(はんたい)することはない。(むし)ろ、賛成(さんせい)だな」と賛同(さんどう)し、ファーネ(さま)相変(あいか)わらず無言(むごん)だったわ。それに、ルージュ(さま)は【四宝(しほう)】の(なか)でも1(ばん)(つよ)いから(だれ)(さか)らえないのよ。もしかしたら、エルク、あなたや、あなたがいたレジスタンスの()(ふだ)【ブラッド・チルドレン】の総隊長(そうたいちょう)であり(もと)帝国(ていこく)最強(さいきょう)であった【(せい)なる女神(めがみ)】と()われたジャンヌ・ミネルヴァ・ナーバスと同等(どうとう)か、それ以上(いじょう)実力者(じつりょくしゃ)だと()われているわ」


「へぇ~、そんなに(つよ)いのか。でも、モラビニス(こく)か…。モラビニス(こく)()えば、聖剣(せいけん)のトップが【四宝(しほう)】じゃなく、【九頭竜(くずりゅう)】と()われていた(ころ)。【九頭竜(くずりゅう)】の一頭(いっとう)だった【武帝(ぶてい)のジノ】がいた(くに)だったよな。【武帝(ぶてい)のジノ】は、(おれ)(たお)したから、(いま)(おとうと)のバダカルしか聖剣(せいけん)はいないはずだよな。あの(ころ)のバダカルは、(すで)聖霊(せいれい)()宿(やど)して聖剣(せいけん)だったが【ブラッド・チルドレン】の部下達(ぶかたち)数人(すうにん)相手(あいて)苦戦(くせん)するほど(よわ)かったけど、あれからバダカルは(つよ)くなっているのか?」


「ええ、(つよ)くなっているわよ。(つよ)さはわからないけど、(いま)は【(いくさ)大魔王(だいまおう)】のバダカルって()われているほどだわ。噂話(うわさ)()いたのだけど、(あに)(ころ)した貴方(あなた)復讐(ふくしゅう)するために、【ブラッド・チルドレン】などを勧誘(かんゆう)して(くに)武力(ぶりょく)底上(そこあ)げをしているみたいよ。ほら、この(まえ)、ララが学院(がくいん)()って()たパンフレットを()たでしょう?」


「あ~、これって、【女帝(じょてい)のルージュ】のせいだけでなく、(おれ)のせいでもありそうだな」


「そうよ、というよりも、元々(もともと)のこの問題(もんだい)元凶(げんきょう)は、どう()てもエルク、あなたじゃない」


「アハハハ…だよな。ごめん、(しずく)(おれ)私情(しじょう)()()んでしまって。このことをジニール(さま)(はな)して、(おれ)責任(せきん)()って解決(かいけつ)するよ。で、()いですよね?ドアの()こうで、先程(さきほど)からずっと(いき)(ひそ)めて(かく)れているジニール(さま)柳水様(りゅうすいさま)。それに、アリーナ(さま)瑞希(みずき)(さま)、そして、ベルさん」

エルクは、ため(いき)()きながら(あき)れた表情(ひょうじょう)でドアに視線(しせん)()ける。


「「え!?」」

アリスと(しずく)気付(きづ)いておらず、エルクの(はなし)()いて驚愕(きょうがく)した表情(ひょうじょう)でドアに視線(しせん)()ける。


「いやいや、エルク殿(どの)(すご)いな。いや、流石(さすが)()うべきだな。(しずく)やアリス(ひめ)は、(まった)気付(きづ)いていなかったのに。私達(わたしたち)は、この最新型(さいしんがた)聖霊力(せいれいりょく)気配(けはい)完全(かんぜん)遮断(しゃだん)するこのマントで()(かく)していたんだが。(おそ)()った」

柳水(りゅうすい)は、苦笑(にがわら)いを()かべて(あたま)()く。


(もう)(わけ)ありません、アリス(さま)(しずく)(さま)

「ごめんね、アリス、(しずく)ちゃん」

「ごめんなさい、(しずく)、アリスちゃん」

ベル、アリーナ、瑞希(みずき)は、謝罪(しゃざい)をした。



「どうして、お父様(とうさま)(がた)此処(ここ)()られるのですか?」

(しずく)は、(あたま)(かし)げながら(たず)ねる。


「いや、夜遅(よるおそ)くに(おんな)()部屋(へや)(おんな)()二人(ふたり)(おとこ)一人(ひとり)()たら、どうなっているのかなっと(おも)って()になってな。仕方(しかた)なく、こうして様子(ようす)()()たのだ。ワハハハ…」

ジニールは、盛大(せいだい)(わら)いながら説明(せいつめい)をする。


「なっ!?」

「ほぇ!?」

ジニールの(はなし)()いたアリスと(しずく)は、(おどろ)きの(こえ)をあげて(かお)()()()まった。


「この()親密(しんみつ)になってくれれば()かったのだが」

ジニールは、ニヤニヤとしながらエルクを()つめる。


「はぁ、そんなことしたら間違(まちが)いなく自分(しぶん)死刑(しけい)確定(かくてい)じゃないですか…」

エルクは、(かた)()としながら(ふか)いため(いき)(こぼ)す。


「ん?(なに)()っているんだエルク。アリスの相手(あいて)が、お(まえ)ならば(べつ)(かま)わんぞ。なぁ?アリーナよ」


「ええ、そうね、あなた。(むし)ろ、私達(わたしたち)応援(おうえん)しているのよ」

アリーナは、両手(りょうて)()わせて右側(みぎがわ)(ほほ)()てて(うれ)しそうに微笑(ほほえ)む。


「お父様(とうさま)!お母様(かあさま)!な、(なに)を!」

(かお)(あか)()めて(こえ)(あら)げるアリス。


「ちょっと()(いただ)きたい、ジニール殿(どの)、アリーナ殿(どの)(なに)()()けと。このことは、内密(ないみつ)にしてエルク殿(どの)自身(じしん)()めて(いただ)くという約束(やくそく)したではないか!」

柳水(りゅうすい)は、(まえ)盛大(せいだい)(わら)っているジニールの(うし)ろから()()ばしてジニールの(かた)(つか)んだ。



「「なっ!?」」

「ほぇ!?」

流石(さすが)に、その(はなし)()いてエルクも今度(こんど)(おどろ)きの(こえ)をあげる。


「お母様(かあさま)…」

(しずく)は、(はは)である瑞希(みずき)本当(ほんとう)なのかどうかを確認(かくにん)するかの(よう)()()きながら(たず)ねる。


「ええ、そうよ。もし、エルク(くん)()いのなら(しずく)とアリスちゃんの二人(ふたり)(めと)って(もら)えれば(すべ)ての問題(もんだい)解決(かいけつ)するのだけどね。だから、(しずく)。あなたは、アクアドリーム(こく)巫女(みこ)とか(ひめ)だからと()にしているみたいだけど、()にしないで自分(じぶん)自身(じしん)気持(きも)ちに素直(すなお)になって()いのよ」

瑞希(みずき)は、()ている着物(きもの)右袖(みぎそで)口元(くちもと)()てて微笑(ほほえ)んだ。


「お母様(かあさま)…お父様(とうさま)…」

(しずく)は、(うれ)しさのあまり(なみだ)(こぼ)した。

次回、竜神祭です。

もし良ければ、次回もご覧下さい。

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