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ブラッド・チルドレン  作者: フミナベ
7/12

大人の階段と天国の階段は紙一重

エルクは国王ジニールに報告し、どうにか無罪になった。

【ライティア(こく)・ライティア学院(がくいん)教室(きょうしつ)


アリスとエルクのクラスメイト(たち)は、エルクに(あつ)まっていた。


「なぁ、エルク。俺達(おれたち)剣術(けんじゅつ)武術(ぶじゅつ)(おし)えてくれないか?」

イルダは、エルクの(かた)(うで)(まわ)す。


(べつ)(かま)わないけど、(きゅう)にどうしてだ?イルダ」


今回(こんかい)(けん)で、痛感(つうかん)したんだ」


痛感(つうかん)?」


「ああ、そうだ。俺達(おれたち)能力(のうりょく)使(つか)えたのに(なに)もできなかった。それに(くら)べ、エルクは能力(のうりょく)使(つか)えないのに俺達以上(おれたちいじょう)活躍(かつやく)、いや、俺達(おれたち)(たす)けてくれた。そういえば、お(れい)はまだ()ってなかったな。ありがとう、エルク。ありがとうございます、アリス(さま)

イルダの隣にいるアルダは、笑顔(えがお)()かべてお(れい)()った。


「それに、アリス(さま)(まえ)()っていた(とお)り、武器(ぶき)()()よりも自身(じしん)実力(じつりょく)が1番大切(ばんたいせつ)だと(おも)()らされたわ。(とく)剣術(けんじゅつ)武術(ぶじゅつ)大切(たいせつ)さをね。だから、時々(ときどき)で()いから(ひま)(とき)私達(わたしたち)剣術(けんじゅつ)武術(ぶじゅつ)(おし)えて()しいの。どうかな?エルク(くん)

ララは、両手(りょうて)()わせながらウィンクしてお(ねが)いする。


「そう()われてもな…」

(あたま)()きながらエルクは、(こま)った表情(ひょうじょう)()かべてアリスに視線(しせん)()けた。


(べつ)(かま)わないわよ、エルク。(わたし)だけエルクと訓練(とっくん)しているのも(わる)()がするから。あと、エルク一人(ひとり)だと大変(たいへん)そうだから、時々(ときどき)で()いのなら(わたし)参加(さんか)して(おし)えてあげるわ」


「ということで」

エルクは、笑顔(えがお)()かべる。


「「やった…」」

クラスメイト(たち)は、(よろこ)()った。


「ありがとうございます。アリス(さま)、エルク(くん)

ララは感謝(かんしゃ)した。


こうして、エルクとアリスは、クラスメイト(たち)(おし)えることとなり、次第(しだい)()のクラスにも(ひろ)まっていき人数(にんずう)()えていった。




【ライティア(こく)・ライティア学院(がくいん)東側(ひがしがわ)(おか)(うえ)


エルクとアリスの特訓(とっくん)(しゅう)三日(みっか)で、あれから1ヶ(かげつ)()とうとしていた。


生徒達(せいとたち)は、エルクが(つく)ってくれた自分達(じぶんたち)能力(のうりょく)武器(ぶき)(かたち)重量(じゅうりょう)(まっ)(おな)木製(もくせい)模型(レプリカ)使(つか)訓練(くんれん)をしている。


学院(がくいん)()わり、学院(がくいん)東側(ひがしがわ)にある(おか)でエルク(たち)(あつ)まって訓練(くんれん)をしていた。


「オラ!」

「ハッ!」

(おか)(うえ)では、イルダとアルダがエルクが(つく)ってくれた木刀(ぼくとう)()()ろして鍔迫(つばぜ)()いになりお(たが)いに()()う。


「やるな!アルダ」

「それは、こっちの台詞(せふり)だ。イルダ」

アルダとイルダは、(たが)いに()みを()かべる。


「「ハッ!」」

アルダとイルダは、同時(どうじ)にバックステップをして一旦離(いったんはな)れて(おな)方向(ほうこう)(はし)り、(ふたた)接近(せっきん)する。


「ヤッ!」

「ルァ!」

(たが)いに木刀(ぼくとう)()り、(はげ)しい連撃(れんげき)()(ひろ)げ、アルダの木刀(ぼくとう)はイルダの首元(くびもと)に、イルダの木刀(ぼくとう)はアルダの腹部(ふくぶ)手前(てまえ)()まった。


「お(つか)(さま)二人共(ふたりとも)。はい、タオルと()(もの)よ」

ララは、アルダとイルダに(あゆ)()りタオルとミネラルウォーターを(わた)す。


「ありがとう、ララ」

「サンキュー、ララ」

アルダとイルダは、お(れい)()いながらタオルとミネラルウォーターを()()った。



「なぁ、ところでララ。どうだった?(おれ)とアルダ、どっちの攻撃(こうげき)(はや)(さき)()まっていた?」

イルダは、タオルで(かお)()きながらララに(たず)ねる。


同時(どうじ)だったわよ。だから、()()けよ」


「ちぇっ、また()()けか」


「だけど、二人共(ふたりとも)見間違(みまちが)えるほど(つよ)くなっているわよ」


「それは、自分自身(じぶんじしん)でも実感(じっかん)しているけど、(つよ)くなればなるほど、エルクやアリス(さま)実力(じつりょく)俺達(おれたち)とかけ(はな)れているというよりも次元(じげん)(ちが)うという(こと)()にしみるほど()かるよな」

アルダはため(いき)をしながら、(おか)(うえ)から(はな)れた(おか)(した)訓練(くんれん)をしているエルクとアリスを()る。


「だな」

「そうね」

イルダとララは、肯定(こうてい)しながらエルクとアリスに視線(しせん)()けた。




(おか)(した)


(おか)(した)では、エルクとアリスが手合(てあ)わせをしていた。


エルクとアリスの(まわ)りには、大勢(おおぜい)生徒達(せいとたち)観戦(かんせん)している。


「ヤッ!ハッ!ハッ!」

アリスは木製(もくせい)のレイピアで、(かぜ)()()くほどの高速(こうそく)(するど)()きを(はな)つが、エルクは(からだ)(あたま)(かたむ)けながら(すべ)てを()けていく。


「ハァッ!」

アリスは、(なが)れる動作(どうさ)(かわ)された()きから(よこ)()ぎはらいに()げる。


エルクは、上半身(じょうはんしん)()らして()けながらバク(てん)して距離(きょり)()ろうとしたが、アリスが()()(よう)距離(きょり)(ちぢ)めて()きや斬撃(ざんげき)()()して攻撃(こうげき)()(ゆる)めない。


「トリプル・スピア」

アリスは3(だん)()きを(はな)つ。

アリスが放った3(だん)()きは、3(ぼん)のレイピアを同時(どうじ)()きを(はな)っているかの(よう)()える。


「くっ」

エルクは(あたま)(かたむ)けて1つの()きを()け、(にぎ)っている木刀(ぼくとう)使(つか)って(のこ)りの2(ほん)()きの軌道(きどう)()えて攻撃(こうげき)()(なが)した。



アリスは、攻撃(こうげき)()を止めて一息(ひといき)()いた。


相変(あいか)わらず常人離(じょうじんばな)れした回避力(かいひりょく)ね、エルク。予想(よそう)はしていたけど、やはり、()(ふだ)の3(だん)()きでも攻撃(こうげき)()たらなかったわ。()たらないと()っていても、とても(くや)しいわね」

(あき)れた表情(ひょうじょう)()かべるアリス。


「いや、正直(しょうじき)(おどろ)いたよアリス。(とく)最後(さいご)()せた3(だん)()き、トリプル・スピアだっけ?あれは見事(みごと)だったよ。アリスの能力(ちから)()わったら(ふせ)ぐことができず、()たっていたかもしれない」


「そ、そうかな?」

エルクに()められたアリスは口元(くちもと)(ゆる)んだ。



生徒達(せいとたち)は、水筒(すいとう)やタオルを()ってアリスとエルクに()()る。


「お(つか)(さま)です!アリス(さま)!」

「お(つか)(さま)!エルク(くん)

アリスの(ところ)(おお)くの男子達(だんしたち)(あつ)まり、エルクの(ところ)には(おお)くの女子達(じょしたち)(あつ)まった。


「ごめんなさい。私達(わたしたち)は、自分(じぶん)のがあるから大丈夫(だいじょうぶ)だから。はい、エルク」

アリスは、ベンチに()いていたタオルと水筒(すいとう)をエルクに(わた)して(たお)れている巨木(きょぼく)腰掛(こしか)けた。


「ありかとう、アリス」

タオルと水筒(すいとう)()()ったエルクは、タオルを(かた)()けてアリスの(となり)(すわ)る。



「エ、エルク(くん)、もし()ければ、この(あと)(わたし)訓練(くんれん)してくれないかな?」

アリスとエルクの(まわ)生徒達(せいとたち)(あつ)まっている状況(じょうきょう)(なか)女子(じょし)一人(ひとり)緊張(きんちょう)した(こえ)懇願(こうがん)した。


(たしか)か、ミーナさんだったかな?(おれ)()ければいいよ」


「は、はい!ありがとう、エルク(くん)


「あ、()いな。(おれ)も」


(わたし)も」

エルクとアリスの(まわ)りにいた生徒達(せいとたち)は、次々(つぎつぎ)に(こえ)をあげる。



「じゃあ、そろそろ(くら)くなるし、最後(さいご)にいつもの多数戦(たすうせん)しようか。アリス、これ(たの)むよ」

エルクは、水筒(すいとう)(せん)()めてアリスに(わた)して()()がった。


頑張(がんば)って、エルク」

水筒(すいとう)()()ったアリスは、()()りながら笑顔(えがお)でエルクを見送(みおく)った。




あれから、30(ぷん)()()()ちて(そら)(つき)(ほし)がうっすら()える(はじ)める。


今日(きょう)は、三日月(みかづき)か…」

(つき)見上(みあ)げているエルクの(まわ)りには、多数戦(たすうせん)をした50人以上(にんいじょう)生徒達(せいとたち)疲労(ひろう)(たお)れたり、地面(じめん)にへたり()んでいた。


(きみ)(うで)(ちから)だけで(けん)()っているから、意識(いしき)して体全身(からだぜんしん)使(つか)うこと。(きみ)(けん)(にぎ)(ちから)(むら)があるから一定(いってい)にすること。そこの(きみ)()()みする(とき)歩幅(ほはば)をもう(すこ)(おお)きくすれば威力(いりょく)()がるから」

エルクは、一人一人(ひとりひとり)丁寧(ていねい)にアドバイスしていく。


こうして、1(にち)訓練(くんれん)()わった。




【ライティア学院(がくいん)教室(きょうしつ)


「「おはよう」」

エルクとアリスは、挨拶(あいさつ)しながら教室(きょうしつ)(はい)ると教室(きょうしつ)は、クラスメイト(たち)がララの(まわ)(あつ)まっていた。


「ん?」

(なに)かあったのかしら?」

エルクとアリスは、(あたま)(かし)げた。


「これを()()しいの」

ララはアルダに1(まい)のパンフレットを(わた)し、イルダ(たち)がアルダの(よこ)(うし)ろからパンフレットを(のぞ)く。


「おいおい、これって、エルクが()れば優勝(ゆうしょう)できるんじゃないか?」

(わた)されたパンフレットを()(とお)したアルダは、驚愕(きょうがく)した表情(ひょうじょう)(ふる)えた。


「だよね。(わたし)も、パンフレットを()瞬間(しゅんかん)、そう(おも)ったよ」


「「おはよう」」

エルクとアリスは、(あつ)まっているララ(たち)(あゆ)()る。


「おっ!(うわさ)をすればエルクが()たぞ!」

イルダがエルクとアリスに気付(きづ)いた。


「「おはようございます、アリス(さま)、エルク(くん)」」

クラスメイト(たち)は、エルクとアリスに挨拶(あいさつ)する。


(なに)かあったの?」

「あのコレなのですが…」

アリスは(たず)ねるとアルダは、()っていたのパンフレットをアリスに(わた)した。


「ん?何々(なになに)…」

パンフレットをアルダから()()ったアリスは、()(とお)す。


パンフレットには、王者決定戦(おうじゃけっていせん)(つど)え、強者達(つわものたち)よ。

参加条件(さんかじょうけん)(とく)になし。

武器(ぶに)()()みあり((じゅう)使用(しよう)はありだが、爆弾(ばくばん)禁止(きんし))、能力(のうりょく)使用(しよう)あり。

(いのち)()とす可能性(かのうせい)あり。

死亡(しぼう)しても自己責任(じこせきにん)

勝利条件(しょうりじょうけん)は、相手(あいて)降参(こうさん)、または気絶(きぜつ)死亡(しぼう)など戦闘続行不可(せんとうぞっこうふか)場合(ばあい)

(ちから)戦闘(せんとう)自信(じしん)がある者達(ものたち)だけを募集中(ぼしゅうちゅう)


報酬(ほうしゅう)一千万(いっせんまん)トールと特殊合金製(とくしゅごうきんせい)(たて)王直属護衛部隊(おうちょくぞくごえいぶたい)所属(しょぞく)(希望者のみ)。


なお、王直属護衛部隊(おうちょくぞくごえいぶたい)になれば、地位(ちい)やお(かね)()()った異性(いせい)自由(じゆう)できる権利(けんり)などを進呈(しんてい)する。


イベント会場(かいじょう)は、モラビニス(こく)のモラビニス城内(じょうない)記載(きさい)されていた。




「ありかとう、ララ。それにしても、参加者(さんかしゃ)安全(あんぜん)確保(かくほ)していない以前に、この記載(きさい)している(かん)じだと、わざと殺害(さつがい)(ほの)めかせて助長(じょちょう)させているわね。本当(ほんとう)物騒(ぶっそう)なイベントだわ。こんなイベントが(くに)()げてのものだなんて、(いま)だに(しん)じられないわ。ううん、(しん)じたくないわ」

アリスは、パンフレットをララに(かえ)して(いきどお)った。


「モラビニス(こく)…。ん?どこかで()いたことのある(よう)な…。ああ、(おも)()した。(いま)聖剣(せいけん)上位達(じょういたち)(もの)(いま)四宝(しほう)と言われているけど、その(まえ)は【九頭竜(くずりゅう)】と()われていた(ころ)一頭(いっとう)だった聖霊(せいれい)【マクスウェル】を宿(やど)していた【武帝(ぶてい)のジノ】がいた(くに)だったな。ジノは本当(ほんとう)(つよ)かっ…」

「ちょ、ちょっと!エルク!」

(あわ)ててアリスは、エルクの(くち)()(ふさ)いだ。


「「え!?」」

エルクの(はなし)()いたララ達は、(おどろ)きの表情(ひょうじょう)(こえ)をあげてマジマジとエルクを()る。


「あ、あの、エルク(くん)は、あの【武帝(ぶてい)のジノ】(さま)(たたか)ったことがあるの?」

ララが(おそ)(おそ)(たず)ねる。


「い、いや、(たたか)っている姿(すがた)()たことがあるんだ…アハ、アハハハ…」

エルクは、苦笑(にがわ)いを()かべて(くる)(まぎ)れに(こた)えた。


「「ん?」」

あまりにも不自然(ふしぜん)なエルクの態度(たいど)にクラスメイト(たと)(あたま)(かし)げながら(あや)しむ。


「た、(たし)か、(いま)はモラビニス(こく)は【武帝(ぶてい)のジノ】(さま)弟君(おとうとぎみ)であるバダカルがいたわね」

アリスは、誤魔化(ごまかす)すように(はなし)(すす)める。


「そうですね、バダカル(さま)(あに)である【武帝(ぶてい)のジノ】(さま)宿(やど)していた聖霊(せいれい)【マクスウェル】と(おな)能力(のうりょく)()った聖霊(せいれい)【オーディン】を宿(やど)していて、(いま)は【(いくさ)大魔王(だいまおう)】と()われてますね」

説明(せつめい)するララ。


「バダカルは、【武帝(ぶてい)のジノ】(さま)(おな)支配力(しはいりょく)(つよ)性格(せいかく)だから、正直(しょうじき)()うと苦手(にがて)というより(きら)いなのよね。生理的(せいりてき)無理(むり)だわ」

バダカルを(おも)()したアリスは、ため(いき)()く。



「なぁ、ところで、エルクは出場(しゅつじょう)しないのか?エルクなら能力(のうりょく)使(つか)えなくても優勝(ゆうしょう)できるんじゃないのか?」

イルダはエルクに(たず)ねる。


「イルダ!お(まえ)は、自分(じぶん)(なに)()っているかわかっているのか!友達(ともだち)(いのち)保証(ほしょう)がない危険(きけん)大会(たいかい)()ろと()っているんだぞ!」

アルダは、激怒(げきど)しながら大声(おおごえ)()した。


「ご、ごめん、エルク。(おれ)(かる)気持(きも)ちで()ってしまった…」

イルダは、(かた)(すく)めて()()として謝罪(しゃざい)する。


「いや、()にしないで()いよイルダ。(おれ)は、そもそも出場(しゅつじょう)するつもりは(まった)くないから」


「そうなのか?エルクのことだから、()きな(おんな)子達(こたち)とイチャイチャできるから、これを(おし)えたら出場(しゅつじょう)するかと(おも)っていたんだけどな」


「あっ!」

パンフレットの内容(ないよう)(おも)()したエルクは、つい(こえ)()てしまい、アリスから(にら)まれた。


「エ、ル、ク?(いま)の「あ!」は、どう意味(いみ)のなのかしら?」

微笑(ほほえ)みながら(たず)ねるアリス。


「い、いや、その…。ゴホン、と、ところで、(なん)でララが(はな)れているモラビニス(こく)のパンフレットを()っているんだ?」


(わたし)のお父様(とうさま)貿易商(ぼうえきしょう)しているの。このパンフレットは、モラビニス(こく)周辺(しゅうへん)(くに)にも配布(はいふ)されていて、偶々(たまたま)モラビニス(こく)隣国(りんこく)との貿易(ぼうえき)偶然(ぐうぜん)()(はい)ったの」


「あ~、なるほど」

(うなず)きながら納得(なっとく)するエルク。


「まぁ、(わたし)とエルクは【(みず)巫女(みこ)】から竜神際(りゅうじんさい)招待(しょうたい)されているの。だから、どのみちモラビニス(こく)へは()けないわ」

アリスは、自分(じぶん)(かばん)から(りゅう)絵柄(えがら)刻印(こくいん)(きざ)まれた招待状(しょうたいじょう)()して()せた。



「そういえば、アリス。竜神際(りゅうじんさい)は、(たし)(みず)神様(かみさま)感謝(かんしゃ)する(まつり)だったかな?」


「ええ、そうよ。エルク」


「エルク、マジで(うらや)ましいな!竜神際(りゅうじんさい)は、貴族(きぞく)(なか)でも上級貴族(じょうきゅうきぞく)しか拝見(はいけん)ができないほど大人気(だいにんき)儀式(ぎしき)だぞ」

イルダは、興奮気味(こうふんぎみ)説明(せつめい)する。


儀式(ぎしき)か…。そんなこと()われても、(まった)興味(きょうみ)がないな」


「エルク、お(まえ)(なに)勘違(かんちが)いしてないか?【(みず)巫女(みこ)】で()られる(しずく)(さま)()うんだぞ」


「な、()だと!?あの糞婆(くそばば)じゃないのか?」


「エルク、お(まえ)な。巫女様(みこさま)()かって糞婆(くそばば)って、あんまりじゃないか。去年(きょねん)から、(しずく)(さま)世代交代(せだいこうたい)したんだぞ」


「そんな大事(だいじ)なことは、(はや)()ってくれイルダ。(くそ)(おれ)(いま)から練習(れんしゅう)準備(じゅんび)をしないとな」


練習(れんしゅう)準備(じゅんび)だと?おい、お(まえ)はいったい(なに)想像(そうぞう)しているんだエルク」


「イルダ、お(まえ)こそ(なに)()ぼけたことを()っているんだ。巫女(みこ)()うんだぞ。これは、(ちょう)()くほど、お()まりのアレをしないとな」


「アレだと?」


巫女(みこ)()えば、「よいではないか、よいではないか」っと()いながら巫女(みこ)(おび)(まわ)して()がすのが常識(じょうしき)だろ?」


「お(まえ)は、何処(どこ)ぞの悪代官(あくだいかん)か!」


「フッ、(ねた)むなよイルダ。(おれ)は、お前達(まえたち)よりも一足(ひとあし)(さき)大人(おとな)階段(かいだん)(のぼ)ってくるぜ。そのためにも、(マムシ)やすっぽんなどの精力剤(せいりょくざい)準備(じゅんび)(ととの)え…ん?どうしたんだ?(みんな)(きゅう)(しず)かになって…」

(みんな)自分(じぶん)(まわ)りから(とお)ざかっていくのに気付(きづ)いたエルクは、背後(はいご)から殺気(さっき)(かん)じると(とも)(かた)(つか)まれ、(おそ)(おそ)()(かえ)ると般若(はんにゃ)(かお)をしたアリスがいた。


「ねぇ、エルク。あなた(しずく)()()すつもりなのかしら?」


「あ…。そ、そんなことするわけないじゃないですか。(しずく)(さま)は、アリス(さま)大切(たいせつ)幼馴染(おさなじみ)ですから…」


「エルク、覚悟(かくご)できているわよね?」


「アハハ…。た、(たす)けてくれ!イルダ~!」

苦笑(にがわ)いを()かべたエルクは、本能(ほんのう)(たす)からないと最大限(さいだいげん)警告(けいこく)()らしていたので、(わら)にもすがる(おも)いでアリスの(うし)ろにいるイルダに()()ばして(たす)けを(もと)める。


しかし、無情(むじょう)にもアリスの右手(みぎて)がエルクの恐怖(きょうふ)(ゆが)んだ(かお)(おお)って鷲掴(わしづか)む。


「エルク、(いの)りは()わった?まぁ、()わっていなくても()たないけどね、制裁(せいさい)!」

アリスは、エルクにアイアンクローして片手(かたて)でエルクを()()げる。


「ぐぁぁ、これじゃあ、(おれ)大人(おとな)階段(かいだん)じゃなくて、(けっ)して(のぼ)ったらいけない天国(てんごく)階段(かいだん)(のぼ)ってしまう…ああぁ~」

アリスの(ゆび)がめり()んでいき、エルクは悲鳴(ひめい)をあげながら意識(いしき)(うしな)った。


「もう、だらしないわねエルクったら。仕方(しかた)ないわ、エルクが()(うしな)ったから、(わたし)はエルクを()れて早退(そうたい)して(かえ)るから。先生(せんせい)(つた)えてくれないかしら?」


「「は、はい」」

ララ(たち)は、ビクッとして背筋(せすじ)をピーンっと()ばして返事(へんじ)をする。


アリスは、()(うしな)って人形(にんぎょう)(よう)手足(てあし)がだらりとなっているエルクを(つか)んだまま教室(きょうしつ)()帰宅(きたく)するであった。

やっと、話が進みます。

次回、水の国アクアドリーム国編に入ります。


もし宜しければ、次回もご覧下さい。

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