騎士団とエルク
【戦の大魔王】のバダカルが動き出す。
【アクアドリーム国・夜・水鈴邸】
雫の儀式の舞も無事に終わり、次々(つぎつぎ)に花火が夜空に打ち上がり、国内を色鮮やかに照らす中、エルク、アリス、雫の三人は屋台を回っていた。
エルクの右手にアリス、左手に雫と手を繋いでおり、雫は恥ずかしそうに頬を赤らめて歩いている。
エルク達とずれ違う人達は雫だと気付いて驚いた表情を浮かべたり、微笑んだりしていた。
特に男達は、雫の信者が多いので涙を流したり、放心したり、羨ましいそうにエルク達を見ながらすれ違う。
「ねぇ、エルク、雫。あっちの屋台に、はしまきが売っているわ。せっかくだし、食べてみない?」
アリスは、はしまきを売っている屋台を指差した。
「うん、行こうアリスちゃん、エルク君も」
「そうだな、小腹も空いてきたころだし、行こうか」
エルク達は、はしまきを売っている屋台に向かった。
「らっしゃい!って、し、雫様!?」
頭にハチマキをした店主は雫に気付き、驚愕した声をあげた。
「あの、はしまき3本お願いします」
「へい!じゃなかった。は、はい、畏まりました。少々(しょうしょ)、お待ち下さい」
店主はハチマキを締め直し普段とは違い緊張した面持ちで、はしまきを焼き始める。
店主は炭火を真剣な面持ちで見ながら団扇で扇ぎ、はしまきはジューっと音を立てながら、お好み焼きみたいな香ばしい香りとソースの甘い香りが屋台の周囲に広がっていく。
店主は、青海苔やマヨネーズを掛けてトッピングしていく。
「美味しそうな、香ばしい匂いだな」
「ええ」
「はい」
アリスと雫は、エルクに同意し笑顔を浮かべた。
「へい!じゃない、はい。お待ち…いえ、お待たせ致しました。どうぞ、雫様。あの、雫様のお口に合えば良いのですが…」
店主は、はしまきを雫達に一本ずつ渡す。
「「フーフー」」
「あ、熱っ…」
アリスと雫は髪を掻き上げながら、はしまきに息を吹き掛けて少し冷まし、エルクはそのまま口に咥えた。
店主は緊張した面持ちで唾を飲み込み、雫の反応を見守る。
「美味しいです」
「ええ、美味しいわ」
「うん、美味い!」
雫とアリスは手で口元を隠して笑顔を浮かべ、エルクは大胆にかぶりつく。
「よ、良かった…」
店主は、胸元に手を当ててホッと胸を撫で下ろす。
「ねぇ、エルク」
「ん?」
アリスはエルクの袖を軽く引っ張り、ヨーヨーすくいの屋台を指差した。
「あ、そうだ。せっかくだし、雫にも取ってあげるよ」
「え?何をですか?」
「祭りと言えば、定番だろ?ヨーヨー」
「じゃあ、私は二人の分のリンゴ飴を買ってくるから、二人は先に行ってて」
アリスは、少し離れた場所にあるリンゴ飴の屋台に指を差した。
「ありがとう、アリス。でも、一人で大丈夫?」
「あの、アリスちゃん。私も一緒に行こうか?」
「もう!二人共、心配し過ぎなんだから!私一人でも、大丈夫に決まっているわよ」
「なら、良いけど」
「で、でも、そ、その…心配してくれて、あ、ありがとう…」
アリスは、頬を赤く染めて恥ずかしそうに視線を逸らしてお礼を言った。
エルクと雫は、お互い顔を合わせてクスクスと笑った。
「な、何よ!二人して!もう!二人は、先に行っててよね!」
恥ずかしくなったアリスは、顔を赤く染めて大声を出して誤魔化す。
「うん、わかったよアリスちゃん。ありがとう」
「それは、良いけど。集合場所は何処にする?」
「そ、そうね…。集合場所はヨーヨーの屋台で良いわよ」
アリスは、口元に手を当てて考えて場所を指定した。
「わかった。じゃあ、気を付けてアリス」
「もう、心配性なんだから。まぁ、私に任せなさい!あ、そうだ。ねぇ、雫」
「何?アリスちゃん」
「私に気を使わなくって良いわよ。自分の気持ちに素直になって良いからね」
アリスは雫とすれ違う時に小声で囁き、リンゴ飴を販売している屋台に駆け足で向かった。
アリスの囁きを聞いた雫は顔が真っ赤に染まり、顔を伏せた。
「じゃあ、雫。俺達も行こう」
エルクは雫に振り返り、雫の手を握る。
「う、うん」
エルクからキュッと手を握られた雫は、顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
「ん?どうした?雫。何か良いことでもあった?」
「フフフ…さぁ、どうでしょう?エルク君には内緒ですよ。フフフ…」
雫は、指を動かして恋人繋ぎ(お互いの指を交互に絡ませる)をした。
「何それ?物凄く気になるんだけど。教えてくれよ、雫。良いだろ?」
「エルク君だけには、秘密です」
雫は、人差し指を口元に当ててウィンクする。
「ん~。物凄く気になるけど、まぁ、雫が嬉しいなら良いか」
エルクは空いている手で自身の頭を掻き、雫は笑顔を浮かべたままエルクに寄り添いながら一緒に歩く。
エルクは雫と一緒に、午前中にアリスと一緒に訪れたヨーヨー釣りの屋台に辿り着いた。
「ん?午前中に可愛いお嬢ちゃんと一緒に訪れた坊やか。って、おい!今度は雫様とデートだと!?」
「デ、デートだなんて…」
恥ずかしそうに頬を赤く染める雫。
「こ、これは、大変、失礼しました。坊やは案内人だったのですね。私、多大なる勘違いをしてしまい、大変、申し訳ありませんでした。どうか、お許し下さい」
「……。」
屋台のおじさんは慌てて言い直して、雫の表情が一変して暗くなり雫の周囲の空気がビリビリと張りつめる。
「お、おじさん、今回も一回分だけど頼むよ。はい、お金」
雫の変化に気付いたエルクは、慌ててお金を取り出して屋台のおじさんに渡した。
「お、おう…」
屋台のおじさんも雫の変化に気付いて戸惑っていたが、エルクに紙の紐に釣り針がついた紐を渡す。
「し、雫、どれが良い?」
「え?」
雫は、エルクに声を掛けられて我に返り、張り詰めた空気が霧の様に霧散した。
「え?って、俺は、ただ、どのヨーヨーが欲しいのか聞いているのだけど。教えてくれたら、俺が取ってやるよ」
表情に出さずにエルクは、ホッと胸を撫で下ろす。
「え~っと、そうですね…。あっ、あの全体が水色小さな金魚が沢山描かれているのが良いかな」
悩んだ雫は、右端にある金魚の絵柄の全体が水色ヨーヨーを指差した。
「わかった。じゃあ、移動しよう。ほいっと…」
エルクは雫の手を握ったまま右側に移動して、腰を落として雫が選んだヨーヨーをすくい上げた。
「はい、雫」
エルクは笑顔を浮かべて、隣にいる雫にヨーヨーを渡した。
「あ、ありがとう、エルク君。大切にするね」
ヨーヨーを受け取った雫は、頬を赤く染めながら大切そうにヨーヨーを両手で優しく持って微笑んだ。
「お、俺も、そんなに喜んでくれると嬉しいよ。それに、去年プレゼントした髪止めを使ってくれてありがとう、雫」
雫の笑顔に見とれたエルクは、去年渡した髪止めに話を変えた。
「う、うん…。とても気に入っているから大切に使っているよ」
雫は、嬉しそうに頭に着けているエルクから貰った雪の結晶の形をした髪止めに触れる。
「良かった、気に入って貰えて。あ、アリスだ。こっちだ、こっちアリス」
恥ずかしくなったエルクは、偶然、アリスを発見してアリスに向かって手を(て)振って誤魔化す。
「ごめん、お待たせ。待たせた?」
アリスは、エルクと雫に駆けつけた。
「ううん、大丈夫だよアリスちゃん。丁度今、取って貰ったところだから」
「そうなの?良かったわ。そうだ。はい、二人の分のリンゴ飴」
アリスはホッとし、買ってきたリンゴ飴をエルクと雫に渡した。
「ありがとう、アリスちゃん」
「ありがとう、アリス」
雫とエルクはお礼を言い、三人は、屋台の近くにあったベンチに腰かけてリンゴ飴を食べた。
「食べ終えたし、じゃあ、次、行こうか」
「ええ、そうね」
「うん」
アリスと雫はエルクと手を繋ぎ、三人は歩き出した。
「羨ましいぜ、坊や。両手に花だなんてよ」
「何だ?あの美少女二人は…?」
「ねぇ、あの子って、雫様じゃない?」
「まさか…」
屋台のおじさんは呟き、道中にエルク達を見た男達は羨ましいそうにし、女性達は雫だと感づいたが誰もエルク達に声を掛けずに見送った。
エルク達が暫く歩いていると、エルクとアリスが午前中に金魚すくいの屋台で出会った父親と娘に遭遇した。
「あっ!金魚すくいのお兄ちゃんだ!」
「また会ったな。イエーイ」
エルクは、腰を落として両手を前に出した。
「いえーい!」
少女は、エルクに駆け寄って嬉しそうに無邪気な笑顔を浮かべて両手でエルクの両手にタッチした。
「そうだ、せっかくだし、面白いものを見せてあげるかな」
「面白いもの?」
娘は頭を傾げる。
「うん、そうだよ。ちょっとした手品を見せてあげる。ところで、名前は?」
「幸美だよ。パパは義也って言うんだよ」
「娘が紹介した通り、私は義也と言います。」
「改めまして、よろしくお願いします義也さん、幸美ちゃん。俺はエルクです。右にいるのがアリスで、左にいるのが雫です」
エルクに紹介されたアリスと雫は、会釈した。
「よろしく!エルクお兄ちゃん、アリスお姉ちゃん、雫お姉ちゃん」
「じゃあ、俺は少し準備してくるから、ここで待っていてくれ」
「うん!」
「わかったわ」
「はい」
「あの失礼ですが、雫様はこの国の【水の巫女】であられるあの雫様ですよね?それに、そちらのアリス様は、もしや、ライティア国の姫の【疾風のヴァルキュリア】であられるアリス姫でおられますか?」
「ええ、そうだけど」
「はい、合ってます」
アリスと雫は、頷いた。
「……。」
「わぁ~。お姉ちゃん達、お姫様だったんだ!良いな~!」
義也は呆然と立ち尽くしていたが、一方、幸美は目を輝かせてはしゃぐ。
「それにしても、エルク君って、手品もできるなんて意外だね。アリスちゃん」
「ええ、私も知らなかったわ。まぁ、私が手品のトリックを見破ってみせるわ」
「ハハハ…」
アリスのギラギラと燃えている目を見た雫は苦笑いを浮かべた。
「お待たせ!じゃあ、始めよう。レディ&ジェントルマン。さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、夢はないけど、種も仕掛けもある手品の始まり始まり~」
「わ~」
「「ハハハ…」」
幸美は嬉しそうに瞳を輝かせながらパチパチと拍手し、アリスと雫は苦笑いを浮かべた。
周りにいた人々(ひとびと)も、エルクの場所に続々(ぞくぞく)と集まってくる。
「ではまず、ここにクジのハズレ賞で手に入れた透明な変哲もないプラスチック製の使い捨てコップが1つあります。皆に渡すから何も細工されていないか、回して確認してくれ」
エルクは右手でコップを持ち上げて幸美に渡し、幸美はアリスに渡してアリスは雫にと次々(つぎつぎ)に渡して全員に確認させる。
「では、次にこれもまたクジのハズレ賞の景品のプラスチック製のミカンの模型があります。これも、何も細工されてないか確認してくれ」
コップを受け取ったエルクはコップをテーブルに置いて、右手でミカンの模型を持って再び幸美に渡してアリス達に回して見せていく。
「最後に使うのは、これも同じくクジのハズレ賞の未開封のミネラルウォーター2リットル。はい、確認してくれ。そして、最後に確認した人はキャップを開けて俺に返してくれ」
エルクは、再度、幸美に渡して確認させていき、最後に受け取った雫がペットボトルのキャップを開けてテーブルに置いた。
「では、準備が整ったところで、おまちかねの手品を始めます。まずは、このコップにミネラルウォータを注ぎます。そして、右手でミカンの模型を握ってミカンのエキスのパワーを絞り出します。そして、ミカンの模型を握った右手でコップの周りを時計回りに回し、次に左手でコップの縁を掌を押えてシャッフルすると、何ということでしょうコップの中のミネラルウォーターは、どんどんオレンジ色に変化していくではありませんか」
エルクがコップをシャッフルしていくと透明だったミネラルウォーターがオレンジ色に変化していった。
「凄い!どうして?何で?何で?」
瞳を輝かせてコップを間近で見る幸美。
「フフフ…。まだ驚くのは早いよ。これは、ただ色が変化しただけじゃないんだよ。幸美ちゃん、少し舐めて」
「うん。す、凄い!ミカンの味がする!凄い!凄い!」
「嘘!?本当だわ。ねぇ、エルク。あなた、どうやったの?」
「わ、私も知りたいです」
「チッチッチッ!企業秘密だから残念ながら無理。何せこれぞ、ハンドパワーですから」
「もう、教えくれたって良いじゃない。何が企業秘密なのよ、エルクのケチ」
「アハハ…。わからないから、楽しいんだよアリス。じゃあ、次いくよ」
「うん!」
幸美は、ワクワクしながら返事をした。
「今度は、このクジのハズレ賞で手に入れたトランプを使う」
エルクは、トランプの箱からトランプを取り出して、ダイアとスペードのAを取り出して脇に置き、持っているトランプを表向きに広げて混ざっているかを見せてトランプをまとめた。
「じゃあ、俺がテーブルにカード一枚ずつ裏向きに重ねて置いていくから、幸美ちゃんは好きな時にストップと言ってくれ。そしたら、俺は置くのを止めるから、幸美ちゃんが、そこのA一枚を表向きに置いて重ねて欲しい」
「うん、わかった」
「じゃあ、始めるよ」
エルクは、テーブルにトランプを裏向きに一枚ずつ置いて重ねていく。
「ストップ!」
幸美は手を前に出して大声を出し、エルクは手を止めた。
「じゃあ、幸美ちゃん。脇に置いてある好きな方のAを一枚取って、テーブルに置いてある裏向きのトランプの上に表向きで置いて」
「うん!わかった。はい、置いたよ!エルクお兄ちゃん」
「ありがとう、じゃあ、テーブルの上のトランプを持っているトランプの下に重ねるよ。そして、また同じようにトランプを裏向きで置いていくから好きな時にストップと言ってくれ」
「うん!わかった!」
幸美が返事をしたので、エルクは再びトランプを一枚一枚重ねていく。
「ストップ!」
幸美の合図で、再びエルクはトランプを重ねていくのを止めた。
「じゃあ、幸美ちゃん、また同じ様にトランプを置いてくれ」
「はい、置いたよ」
「ありがとう。じゃあ、また同じようにテーブルのトランプを持っているトランプの下に重ねます。そして、人差し指でトランプの上を円を描くように三回まわしてトランプの表面をトントンっと三回触って1、2、3!はい!」
エルクは、テーブルの上のトランプを持っているトランプの下に重ねて左手で持ち、右手の人差し指でトランプの上を三回円を描いた後、三回トントン…とタッチしながら数えて最後に右手で指を鳴らした。
「じゃあ、トランプを見やすく一列伸ばすよ」
エルクは、右手で持っているトランプをテーブルの左側に置いて右側にスライドさせる。
トランプは、綺麗に横一直線に広がり、一枚一枚が半分が見える様に並んだ。
そこには、幸美が置いた表向きのダイアとスペードAの二枚以外は全て裏向きのままだった。
「これから、不思議なことが起こります。何と、先ほど指を鳴らした時に、Aが他のAを呼んで来ています。さぁ、幸美ちゃん。君が表向きに置いた好きな方のAの上に重なっているトランプを捲ってみて」
「うん!わかったよ。う~ん、じゃあ、ダイアの上のトランプのカードを捲るよエルクお兄ちゃん」
「良いよ」
幸美は、ゆっくりとトランプに手を伸ばし、ダイアのAの上に重なっているトランプを捲るとハートのAだった。
「う、嘘…!?何で!?何で!?」
幸美は、驚愕しながら自分が表向きに置いたもう一枚のスペードのAの上に重なっているトランプを捲るとミツバのAだった。
手品を見ていたアリス達も驚愕した表情を浮かべる。
「エルクお兄ちゃん、他のトランプも見ても良い?」
「良いよ」
幸美は、テーブルに置いてある残った全のトランプを手に取り、他にAがないか確認する。
アリスや雫、それに周りに集まった人達も幸美の周りから覗き込んで確認したが、Aは一枚もなかった。
「何で!?何で!?どうやったの?エルクお兄ちゃん」
「ごめんね、幸美ちゃん。これも企業秘密」
「え~!また~」
「ごめんね、幸美ちゃん。じゃあ、次いくよ」
「うん!」
その後、エルクは幸美やアリス、雫が選んだカードを当てたり、トランプのテレポートなどを披露した。
「俺の手品は以上です。お付き合いありがとうございました!」
「とても楽しかったわ~」
「坊主、来年も祭に来て手品を披露してくれ!絶対、見に行くからな!」
エルクは右手を胸元に当ててお辞儀をすると、エルクの手品を見ていた人達は笑顔を浮かべながら拍手をし歓声の声が飛び交い盛大に盛り上がった。
「どうだった?幸美ちゃん」
「うん!とても面白かった!ありがとう、エルクお兄ちゃん」
「娘だけじゃなく、私も楽しませて貰いました。ありがとう、エルク君」
「楽しんで頂けて良かったです」
「う~。悔しいわ。どれもネタがわからなかったわ」
「私もです。それにしても、エルク君。クジでハズレを引き過ぎです」
「それは、言えてるわね」
雫に肯定するアリス。
二人は、口元に手を当ててクスクスと笑った。
「~っ!」
「「アハハ…」」
エルクは苦笑いを浮かべながら頭を掻き、アリスと雫は口元に手を当ててクスクスと笑い、周りの人達は盛大に笑った。
「もう、こんな時間か。エルク君、ありがとう。とても楽しかったよ。幸美、もう遅いから帰ろう。お母さんが心配するから」
「うん!じゃあね、エルクお兄ちゃん、アリスお姉ちゃん、雫お姉ちゃん。バイバイ!」
「では、私達は失礼させて頂きます」
義也は頭を下げ、幸美は義也と手を繋いでエルク達に手を振りながら人混みに紛れていった。
「「幸美ちゃん、バイバイ」」
エルク達は、幸美と義也の姿が見えなくなるまで手を振って見送った。
「さてと、これからどうする?」
アリスは、振っていた手を下ろして尋ねる。
「ん~。せっかくの祭りだし、雫と遊べる時間も限られているから、もう少しだけ回って帰ろうか」
「わかったわ」
「うん、ありがとう、エルク君アリスちゃん」
それから、エルク達は屋台を回り、輪投げや射的をしたり、わたあめ、焼きそば、お面など購入した。
祭りを満喫したエルク達は、川原の側にあるベンチに腰掛けていた。
「う~ん…今日は随分と遊んだな。とても楽しかった」
エルクは、両手を上に伸ばし背伸びをする。
「ええ、あっという間に一日が過ぎたわね」
「うん、そうだね。とても楽しかったよ。ありがとう、エルク君、アリスちゃん」
「お礼を言うのは、こっちだよ。ありがとう、雫」
「そうね、雫が私達を竜神際に招待してくれたもの。ありがとう」
「そんな、私は大したことしてないよ」
「そんなことないよ、とても感謝しているよ雫。俺達もこれ以上、遅くなるとジニール様や柳水様、他の皆に心配させるから、そろそろ帰ろうか。アリス、雫」
「ええ、そうね」
「あ、あのね…。エルク君、アリスちゃん」
「ん?」
「何?雫」
エルクとアリスは、雫に振り向く。
「少しだけ寄って…」
雫は、顔を赤らめながら下を向いたままモジモジする。
「ここに居られましたか!雫様、アリス様」
雫が話そうとした時、騎士団達が駆けつけて雫達の前で片膝を地面について敬礼をした。
「何かあったのですか?そんなに慌てておられますが」
モジモジしていた雫の表情が一変し、今は一国の姫の顔に変わっており尋ねる。
「は、はい、それが、モラビニス国に潜入させていた諜報員の者達から、聖剣の【戦の大魔王】であられるバダカル様が【ブラッド・チルドレン】7番隊の隊長【クレイジー・ピエロ】とその部隊、他に傭兵の猛者を引き連れて出陣したと報告がありました。予想なのですが、三日後にこのアクアドリーム国に奇襲を行うであろうと思われます。ですので、直ちにお戻り下さい。国王様方が、お待ちしておられます」
「わかりました。あなた方は、先に戻って下さい。私達も、すぐに戻りますので」
雫は、表情を変えずに了承し指示を出した。
「「ハッ!」」
騎士団達は、その場から立ち去った。
「ごめんね、エルク君、アリスちゃん。巻き込んでしまって。どうしよう…」
雫は、騎士団達の姿が見えなくなると不安な表情に変わった。
「不味いな。思っていたよりも、随分と進展が早いな。まぁ、大丈夫だ」
エルクは、顎に手を当てて作戦や今後のことを考える。
「ええ、そうね。雫、大丈夫よ。私達がいるもの」
「うん。ありがとう、アリスちゃん、エルク君」
「ここで、考えても意味がない。とりあえず、俺達も早く戻ろう」
「ええ、そうね」
「うん」
エルク達は、急いで水鈴邸へ戻ることにした。
【水鈴邸・水蓮華の間】
部屋には、柳水、瑞希、ジニール、アリーナ、ベルだけでなく、アクアドリーム国の騎士団の各部隊の隊長達が険しい表情で席についていた。
「アリス、エルク、雫姫、待っていたぞ」
ジニールは腕を組んだまま、エルク達を一瞥する。
「ごめんなさいね、三人共。せっかく楽しんでいたのに」
アリーナは、申し訳ない様な表情を浮かべて謝罪をした。
「いえ、構いません。それよりも、今は時間がありませんので話し合いましょう」
エルクは、提案してアリス達と一緒に空いている席に向かう。
「ああ、そうだな。三人共、まずは席についてくれ」
柳水は頷き、エルク達に席につく様促す。
「では、申し訳ありませんが、できるだけ今の状況を詳しく話して頂けないでしょうか?」
エルクは、今の状況が気になっていたので尋ねる。
「貴様!なぜ、貴様が仕切る!」
騎士団の総隊長であり雫の従兄の千水が激怒し、テーブルを力強く叩いて立ち上がった。
「そうだ!納得できん!」
「そうだ、そうだ」
各隊長達も声を荒げる。
「落ち着け!お前達…」
柳水は、困った表情で場を落ちつかそうとした。
「はぁ~、今は、争っている場合じゃないだろ?理由が必要ならば言ってやる。この中で、【ブラッド・チルドレン】の思考を読めるのは元【ブラッド・チルドレン】の俺だけだからだ」
「生意気な!我々(われわれ)の警備に隙は一切ない!」
「そうだ!自意識過剰にもほどがあるぞ!餓鬼の癖に!そもそも聖霊力もない無能がここにいること事態が、お門違いだ!調子に乗るなよ!」
千水は自信満々(じしんまんまん)に答え、隣にいる隊長は同意しながらエルクを侮辱する。
「聖霊力か…。確かに、今の俺は聖霊力は全くないに等しい。だが、1つ断言してやる。俺の封印が1つでも解除されたら、この中で一番強いは俺だ」
「貴様!聖剣であられる雫様やアリス様の御前で、ぬけぬけと!」
千水は、声を荒げる。
「嘘か真か。ここで試してみるか?お前達、隊長クラスぐらいなら聖霊力が全く使えない状態でも勝てることを証明してやろうか?」
エルクは瞳の輝きが消え、まるで底が見えない闇の様な瞳に変わり、エルクから放たれる圧力により周囲の空気が重く息苦しくなった。
「「うっ…」」
千水や隊長達は息を呑み、エルクの瞳を見て本能が危険を察して恐怖で体の芯から震え出す。
「「くっ…」」
ジニール、柳水、ベル達もエルクの圧力によって動悸が速くなり冷や汗を掻(か
)いていた。
「エルク君…」
「もう!何やっているのよ!エルク。今、味方同士で争っても不毛よ!それに、時間の無駄よ!無駄!」
エルクの右側に座っていた雫は言い淀み、エルクの左側に座っていたアリスは右拳で軽くエルクの頭をこっつく。
アリスは普段通りを装っていたが、雫と同様に握っている手には冷や汗を掻いていた。
「あ、ごめんアリス、雫。僕としたことが、つい熱くなってしまった。皆様にも大変ご迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした」
エルクは、立って頭を下げる。
「エルク、頭を上げて座って欲しい。こちらも態度が悪かった。それに、私は始めからエルクに指揮を取って貰っても構わないと思っている」
「「柳水様!?」」
各隊長達が声を荒げる。
「申し訳ありませんが、私は反対です。納得ができません。この者は柳水様、あなた様のお父上であり、我々(われわれ)帝国軍の聖剣の中でも最強と謳われた【九頭竜】の一頭でもあり先代の国王様で在られた緑水様を手に掛けたのですよ。なぜ、この者を肩を持つのですか!それに、なぜ、この者を今すぐにでも処刑をなされないのですか?」
千水は立ち上がり、エルクを指差して柳水に訴えかける。
「「そうだ!そうだ!直ちに処刑だ!」」
各隊長達も、大声を出して賛同する。
「……。」
アリスは拳を強く握り締め、眉間に皺を寄せて我慢する。
「お前達、落ち着け!それには無論、明確な理由がある。エルクは、かの【ブラッド・チルドレン】の四番隊の隊長【白き死神の白夜叉】と恐れられた人物だ。お前達も忘れてはいないだろ?誰もが能力者の人数が多い帝国が優先と言われ思っていた。しかし、すぐに決着がつくかと思った争いは苦戦を強いられ、我々(われわれ)、帝国軍はレジスタンスの【ブラッド・チルドレン】の戦略に良いようにあしらわれ、多大な被害を被った。そう…聖剣の中でも、帝国の誰もが最強と認めた帝国の9人の聖剣【九頭竜】が半分以上が倒され、残った4人が今【四宝】と言われている。今は、元【ブラッド・チルドレン】だからとか敵討ちの対象だからとか、今はそんなことを気にするよりも、一番大事なのは国民の安全だ。違うか?お前達」
柳水は、鋭い眼光で千水や隊長達を見渡す。
「そうですが…」
千水が言い淀み、隊長達も静まり返り渋々(しぶしぶ)と肯定するしかなかった。
「それに、エルクに頼りきって全てを任せる訳ではない。少しでも、勝利率を上げるために我々(われわれ)も意見を出し合いながら協力する。良いな?」
「……わかりました」
「エルクも、それで良いか?」
「はい」
「では、打ち合わせを始めよう。もう時間が余りないからな」
柳水は一度、目を瞑り、深呼吸をして話を進める。
「では、まず相手の大体の戦力を知りたいのですが」
「千水総隊長、説明を頼む」
「ハッ!相手の主に警戒すべき人物は、聖剣の【戦の大魔王】と言われていますバダカル様と【ブラッド・チルドレン】7番隊の隊長である【クレイジー・ピエロ】の二人だと思います」
千水は、その場で立ち上がり、まとめてある資料を読み上げながら説明した。
「うむ。やはり、その二人か…」
柳水は、納得しながら頷く。
「だな。だが、こちらには聖剣である愛娘【疾風のヴァルキュリア】のアリス、柳水殿の娘である【水の巫女】である雫、それに【白き死神の白夜叉】であるエルクが居る。戦力的にこちらが有利だ」
ジニールは、肯定しながら戦力を分析する。
「そうね」
「ええ」
アリーナと瑞希は肯定し、アリスと雫は無言で力強く頷いた。
しかし、この場いる中で一人だけエルクが否定する。
「いや、その二人だけじゃない。もっとも厄介な相手がいる」
「それは、誰だ?傭兵の中にいるのか?千水総隊長、他に誰がいる?」
「いえ、そんな情報は一切入ってきていませんが」
千水は、慌てながら持っている資料を巡りながら確認する。
「エルク、お主が警戒しているのは誰だ?」
ジニールは、エルクに尋ねる。
「7番隊の副隊長のナーヤです。ナーヤは他のどの部隊の副隊長と比べたら弱いのですが、味方の身体能力を向上させて強化するサポーターの能力者で、とても厄介な人物ですので、最も警戒する人物だと思います」
「「~っ!」」
「なるほどね、納得したわ。だから、【クレイジー・ピエロ】の部隊だけ、明らかに他の部隊より強かったのも頷けるわね」
「そうですね」
右手を右頬に当てながら深刻な表情で思い出しながら話すアリスに、雫は肯定した。
「あと、ドロシー。いや、【クレイジー・ピエロ】の相手は俺がするつもりです」
「おい!なぜ、貴様が相手をするんだ!さては、わざと負けたり、こちらの情報を横流したりするんじゃないのか?」
千水は、納得できずに声を荒げる。
「あなたねぇ!さっきから…」
我慢ができなかったアリスは、不機嫌な表情を浮かべながら千水を鋭い眼光で睨みつけた。
「まぁ、落ち着けアリス。理由は簡単です。【クレイジー・ピエロ】の武器が剣や槍、大剣とかじゃなく、珍しい鞭なので、戦い方が他の者達と比べたら特殊です。なので、鞭との戦闘経験の少ないアリスや雫では苦戦を強いられると判断したまでです」
「おい!貴様!雫様とアリス様に無礼だぞ!今、この場で今の発言を取り消し、謝罪をしろ!それに、武器のリーチのことを言っているなら何も問題ない!特に雫様は、相手がリーチの長い槍や大剣を使用していることを想定して日々(ひび)訓練をしている!」
「「そうだ!そうだ!」」
各隊長達が千水に同意して声を出す。
「おい、鞭を槍や大剣と同じと思っている時点で三下確定だな。三下は、大人しく黙っていろ。お前達のせいで話が進まない」
堪忍袋が切れたエルクは、喧嘩腰になる。
「「何だと!」」
「はぁ、仕方ない。事実を言っただけなんだが。それに、言葉で説明しても頭に血が上っている今のお前達三下には無意味だろうから、この機に体に教えてやる」
ため息を吐きながら提案するエルク。
「ちょっと、エルク!」
「エルク君!」
アリスと雫は、声を荒げる。
「言わせておけば、ぬけぬけと。ふん、良いだろう!この国を守護する我ら騎士団の力を見せてやる!」
千水は、右手の人差し指を前に出してエルクを指差す。
「千水総隊長!」
「あなた達ねぇ、いい加減に…」
「雫様、アリス様。大変、申し訳ありませんが、ここは譲れません。これは、我々(われわれ)のプライドの問題です。我々(われわれ)を、三下、三下と愚弄した、この愚か者に天誅を与えなければ気が収まりません。柳水様、ジニール様、私に死神との決闘をさせて頂けないでしょうか?」
雫とアリスは止めようとしたが、千水は頭を左右に振って拒否して謝罪をした。
「総隊長!俺達も加勢させて貰うぜ」
「そうだ!俺もだ!」
「いや、待て、お前達。気持ちはわかるが、これは私と死神の決闘だ。私一人で…」
「別に何人いようと俺は構わない。それで、納得してくれるならな。だが、俺が勝ったら、これからは文句を言わずに素直に従って貰う」
「良いだろう。だが、我々(われわれ)が勝利した場合、貴様は即刻このアクアドリーム国から出て行って貰う。だいたい、お前みたいな【ブラッド・チルドレン】の者の手を借りずとも我々(われわれ)だけで十分なのだ。それに、アリス様も力添えをして下さる。負ける要素など何一つもない!柳水様、ジニール様。何卒、決闘の許可を…」
「……。仕方あるまい、お互いの実力を知るのも大切だ。その決闘を認めよう。日時はどうする?」
柳水はジニールに視線を向けると、ジニールは頷いたので柳水は決闘を承認した。
「私共は、今すぐでも構いません」
「エルク、お主は?」
「私も今すぐでも構いませんが、この着物はおろしたてですので着替えたいと思います。なので、30分ほど時間を頂きたいのですが」
「わかった。では、30分後に訓練場にて決闘を開始する。良いな?」
「「ハッ!」」
エルクと千水、それに隊長達は立ち上がって敬礼をした。
【アクアドリーム国・闘技場】
闘技場は、年に2回ある騎士団入隊試験の実技試験、年に1回行われる騎士団達の昇格や降格する実技試験などに使われている。
今回、審判をするベルとエルクと戦う千水など各騎士団の隊長達10人が腕を組んでエルクが現れるのを待っていた。
闘技場の上層部には高価な装飾を施され見渡しの良い場所には、ジニール、柳水、アリーナ、瑞希が豪華な椅子に座って見守っている。
観客席には、今回は国民が一人もいないが、代わりに席を埋めつく様に騎士団達が椅子に腰かけている。
「隊長達も大人気ないよな。相手は、子供一人だぞ」
「だよな。ハハハ…時間の無駄だよな」
「いや、俺は隊長達の判断は正しいと思う。相手は子供だからと侮らない方が賢明な判断だと思う」
「だな、子供って言っても相手は、あの【ブラッド・チルドレン】だ。しかも、あいつは、【白き死神の白夜叉】だぞ」
騎士団達の見解は見事に分かれた。
「ああ、勿論それは知っているさ。だが、聖剣【疾風のヴァルキュリア】であられるアリス様とライティア国の二重の制約封印によって、死神は今は全くと言って良いほど聖霊力が使えない状態なんだぞ。そんな状態で勝てる訳がない。そこまで言うんなら、賭けようぜ?隊長達と死神、どっちらが勝つかをな。勿論、俺は隊長達に五千賭けるがな」
「俺も隊長達に二千!どうした?お前達。怖じ気ついたか?」
「気乗りはしないが、俺は死神に千だ」
「じゃあ、俺も死神に二千!」
「なら、俺は隊長達に三千!」
「ところでさ、死神は武器は何を選ぶんだ?聖霊力がないから能力で武器が召喚できないだろ?だから、倉庫にある武器を選ぶか近くの武器屋に置いている武器になるよな?」
「死神なんだから大鎌だろ?」
「いやいや、普通に考えてみろ。この国に、大鎌なんかないぞ。おそらく無難に剣だろ」
「だな」
「おっ、やっと死神が来たぞ。な、何だ!?」
騎士団達が賭けに盛り上がっていた時、騎士団の一人がエルクに気付いたがエルクが持っている物に驚愕した。
エルクは剣や大鎌を持っておらず、その手には数枚のタオルをタオルの端と端を結んで大蛇の様に長くした一本のタオルを左右の手に持っていた。
「すまん、悪いが、死神に千を賭けていたが隊長達の方に賭けなおさせて貰う」
「お、俺も」
エルクに賭けていた騎士団達は、エルクの姿を見て続々(ぞくぞく)と隊長達の方に賭け直していき、気が付けば誰一人エルクに賭けている者はいなかった。
「おいおい、全員が隊長達に賭けたなら、賭けにならないだろ!」
「仕方ないだろ。死神の武器が剣や大鎌じゃなく、まさかタオルで戦うなんて知らなかったんだから。そもそも、誰も予想できないだろ?」
「まぁ、確かにな。おそらく、死神は端から隊長達に勝てないと踏んで、負けた時の口実にするんだろうな」
「やはり、時間の無駄だったな」
「ああ、そうだな」
騎士団達は興味が無くなり、立ち上がって帰ろうとする。
「フフフ…。じゃあ、私はエルクに勝つ方に1万賭けるわ!」
「「え!?」」
アリスの声が聞こえたので、騎士団達は後ろに振り返るとアリスと雫が居た。
「ア、アリス様、それに、雫様」
騎士団達は、慌ててその場で片膝を地面につけて敬礼をする。
「お忘れですか?あなた方は、この国の誉れ高き騎士団なのですよ。騎士団の第51条、騎士団に入隊した者は賭けなど賭博は御法度です」
「「た、大変、申し訳ありません!」」
「賭け事をやめるのでしたら、今回だけは多目に見逃します」
「「あ、ありがとうございます」」
「雫、今回だけは賭博を許してあげたら?」
「アリスちゃん、駄目だよ。法律で決まっているから」
「相変わらず頭が固いわね、雫は。でもまぁ、そこが雫の良いところなんだけど。だけど、勿体無いわね。せっかく、確実に勝てる賭け事だったのに」
大袈裟に落胆するアリス。
「ハハハ…」
雫は苦笑いを浮かべた。
「「え?」」
「あの、アリス様と雫様は死神が勝つと思われておられるのですか?」
「はい」
「そんなの当たり前でしょう。エルクは、あなた達が思っている以上に強いわよ。そうじゃなきゃ、既に【炎帝のアスカ】様や【氷帝のファーネ】様など【四宝】様方がエルクを倒しているわよ」
迷うことなく雫が即答し、アリスは当たり前かの様に手を腰に当てて説明する。
「「~っ!」」
アリスの説明を聞いた騎士団達は、息を呑む。
「そうですね、あなた方も帰らず、これから始まる死神と呼ばれたエルク君の戦いを観戦すれば多少なり強くなれると思いますよ」
雫はニッコリと笑顔を浮かべ、騎士団達は再び席に着きリングの上にいるエルクを真剣な眼差しで見つめる。
次回、騎士団とエルクが戦います。
もし宜しければ、次回もご覧下さい。