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ブラッド・チルドレン  作者: フミナベ
11/12

動き出すモラニビス国

雫の舞が始まる。

【アクアドリーム(こく)竜神祭(りゅうじんさい)


竜神祭(りゅうじんさい)(かなめ)の【(みず)巫女(みこ)】の(まい)を、まだかまだかと観客達(かんきゃくたち)()(のぞ)んでいた。


「ただいまより、雫様(しずくさま)竜神祭(りゅうじんさい)儀式(ぎしき)(まい)(おど)りますので、お(しず)かにお(ねが)(いた)します」

ざわめく(なか)、アナウンスが(はい)ると()一瞬(いっしゅん)(しず)まり(かえ)った。


アクアドリーム(こく)中央(ちゅうおう)にある(おお)きな(みずうみ)中央(ちゅうおう)神社(じんじゃ)建設(けんせつ)されており、その神社(じんじゃ)両端(りょうはし)には(はし)()かっている。


その左側(ひだりがわ)(はし)には、青色(あおいろ)(はかま)()いた巫女姿(みこすがた)(しずく)(はし)(わた)り、一礼(いちれい)して鳥居(とりい)(くぐ)って神社(じんじゃ)にまつわられているマーメイドの石像(せきぞう)一礼(いちれい)した。


(しずく)は、ゆっくりと観客達(かんきゃくたち)(ほう)へと()いて(ふたた)一礼(いちれい)をする。


そして、(しずく)(こし)()けてある扇子(せんす)()って(ひろ)げて(まい)(おど)()す。


扇子(せんす)から(みず)発生(はっせい)し、扇子(せんす)軌道(きどう)沿()う。

(みず)地面(じめん)落下(らっか)することなく、まるで(みず)妖精(ようせい)(しずく)(おど)っているかの(よう)()えた。


(しずく)は、(まい)(おど)りながら両親(りょうしん)からエルクとの恋愛(れんあい)(みと)めて(もら)った(とき)(おも)()して気持(きも)ちが(たかぶ)る。


そして、(しずく)はチラッとエルクを()る。

(エルク(くん)(わたし)()ている。マーメイド(さま)(いま)だけで()ので(わたし)のこの(おも)いを(とど)けて(くだ)さい)


水龍(すいりゅう)!」

(しずく)は、膨大(ぼうだい)聖霊力(せいれいりょく)制御(せいぎょ)しながら扇子(せんす)(うえ)()()げると(しずく)()(まえ)(みずうみ)から巨大(きょだい)(りゅう)(かたち)をした水龍(すいりゅう)(あらわ)れた。


「「おおお…!」」

巨大(きょだい)水龍(すいりゅう)()観客達(かんきゃくたち)水龍(すいりゅう)迫力(はくりょく)驚愕(きょうがく)する。


水龍(すいりゅう)は、(しずく)()(まえ)()まり(こうべ)()れた。


(しずく)微笑(ほほえ)みながら水龍(すいりゅう)下顎(したあご)(やさ)しく()でて()()り、()っている扇子(せんす)(うご)かすと巨大(きょだい)水龍(すいりゅう)(しずく)(したが)い、神社(じんじゃ)周囲(しゅうい)観客達(かんきゃく)間近(まぎわ)()(まわ)る。


そして、水龍(すいりゅう)(しずく)()せたまま、(くも)()()けて夜空(よぞら)へと(のぼ)姿(すがた)()した。


水龍(すいりゅう)姿(すがた)()した直後(ちょくご)霧状(きりじょう)のミストが国内(こくない)()(そそ)いだが、すぐにおさまると月明(つきあ)かりによって(おお)きな(にじ)(あらわ)れた。


そして、上空(じょうくう)から(おお)きく(えん)何度(なんど)(えが)きながら、ゆっくりと(しずく)()せた水龍(すいりゅう)()()りて()る。


(しずく)は、途中(とちゅう)でジャンプして水龍(すいりゅう)から()()りて神社(じんじゃ)着地(ちゃくち)した。


(しずく)扇子(せんす)(した)()けると、水龍(すいりゅう)(あたま)から(みずうみ)(もぐ)っていき姿(すがた)()した。


(しずく)は、()っている扇子(せんす)(たた)んで観客達(かんきゃくたち)にお辞儀(じぎ)をする。


「「……。うぉぉ!」」

「「ブラボー!」」

観客達(かんきゃくたち)言葉(ことば)(うしな)って呆然(ぼうぜん)としており、静寂(せいじゃく)(おとず)れたが、すぐに拍手(はくしゅ)歓声(かんせい)(こえ)()(ひび)く。


(無事(ぶじ)成功(せいこう)したよ!エルク(くん)、アリスちゃん!お婆様(ばあさま)()(くだ)さったかな?)

ミスなく(まい)(おど)れた(しずく)はホッと(むね)()(おろ)ろし、(あたま)()げてエルクに()かって満面(まんめん)笑顔(えがお)()かべて微笑(ほほえ)んだ。



(しずく)(まい)(すご)かったわねエルク」

アリスは、拍手(はくしゅ)しながらまるで自分事(じぶんごと)(よう)(うれ)しそうにエルクに(たず)ねる。


「そうだね、アリス。水龍(すいりゅう)発動(はつどう)去年(きょねん)より(はや)くなっていたし、水龍(すいりゅう)(おお)きさも一回(ひとまわ)(おお)きくなっていた」

((おれ)()なくなった(とき)も、練習(れんしゅう)(おこた)らずにしていたんだな)

エルクも拍手(はくしゅ)しながら、去年(きょねん)(しずく)から(たの)まれて水龍(すいりゅう)制御(せいぎょ)仕方(しかた)のコツを(おし)えていた(とき)(おも)()していた。


そして、(しずく)右側(みぎがわ)(はし)(わた)り、姿(すがた)()えなくなるまで拍手(はくしゅ)()まることなく()(ひび)くほど絶賛(ぜっさん)だった。



「ねぇ、あなた…」

瑞希(みずき)は、愛娘(まなむすめ)(しずく)(まい)()感動(かんどう)して(なみだ)(ほお)(つた)わり、ハンカチで()く。


「ああ、大成功(だいせいこう)だ。流石(さすが)私達(わたしたち)(むすめ)だ」


「そんな()(かた)()くないわ、あなた。(しずく)毎日(まいにち)コツコツと練習(れんしゅう)()(かさ)ねて頑張(がんば)った結果(けっか)よ」


「そうさね、瑞希(みずき)()(とお)りだよ、柳水(りゅうすい)。あんたは、(なに)もわかっちゃいないよ。しかし、(わたし)(まい)()える()が、こんなにも(はや)()るとは(おも)わなかったよ。()(まい)()えれて()甲斐(かい)があったもんさ」

柳水(りゅうすい)母親(ははおや)である水乃(みずの)(あらわ)れた。


「み、水乃様(みずのさま)!?()ておられなくって大丈夫(だいじょうぶ)なのですか?」


本当(ほんとう)体調(たいちょう)があまり()くないからね。今年(ことしも)自室(じしつ)寝込(ねこ)んでいるつもりだったんだけどね。だけど、普段(ふだん)自分(じぶん)意見(いけん)()わない大人(おとな)しい性格(せいかく)(しずく)ちゃんが(めずら)しく、どうしてもだと()うのから()()たんだよ。本当(ほんとう)()甲斐(かい)があったよ。この()(しずく)ちゃんの成長(せいちょう)()れて()かった()かった」


「きっと、水乃様(みずのさま)(おし)えが()かったのですよ」


同意(どうい)ですね。それに、(しずく)母上(ははうえ)(ため)頑張(がんば)ったのだと(おも)います」

柳水(りゅうすい)は、微笑(ほほえ)みながら瑞希(みずき)同意(どうい)する。


「お世辞(せじ)はいいよ、二人共(ふたりとも)(しゃく)だがあの()(おし)えで(しずく)ちゃんは飛躍的(ひやくてき)格段(かくだん)上達(じょうたつ)し、(しずく)ちゃんはあの()(ため)(まい)(おど)っていたことは()ていたらわかるよ」


「あの()って、エルク(くん)のことですか?」


「そうさね」


「やはり、母上(ははうえ)は、(いま)でもエルク(くん)のことが(きら)いなのですか?」


「そうさね。(いま)まで、(わたし)(かか)わってきた相手(あいて)なら大体(だいたい)だけど相手(あいて)思考(しこう)やどんな性格(せいかく)なのかがわかるんだけどね。あの()は、わざと馬鹿(ばか)行動(こうどう)をしていて(まった)(こころ)(うち)()めないし、一体(いったい)(なに)(かんが)えているのかがさっぱりでわからないんだよ。それに、レジスタンスだったというだけでも問題(もんだい)なのに、【ブラッド・チルドレン】であり、その(なか)でも【ブラッド・チルドレン】の総隊長(そうたいちょう)である【(ひかり)巫女(みこ)】と(おな)(もっと)警戒(けいかい)しないといけなかった人物(じんぶつ)なんだよ。尚更(なおさら)不気味(ぶきみ)でしかたないんだよ。それに…いや、これは私個人(わたしこじん)感情(かんじょう)だからね…」

水乃(みずの)は、最後(さいご)(なに)かを()いかけたが(あたま)左右(さゆう)()って()(とど)まった。


水乃様(みずのさま)(おっしゃ)っていることはわかりますが、(いま)はレジスタンスは壊滅(かいめつ)解散(かいさん)しておられますし、ジニール国王様(こくおうさま)契約(けいやく)でエルク(くん)はアリスちゃんとの聖霊力(せいれいりよく)封印(ふういん)だけでなく、(さら)制約封印(せいやくふういん)(ほどこ)し、二重(にじゅう)聖霊力(せいれいりよく)封印(ふういん)することの条件(じょうけん)(なに)()わず了承(りょうしょう)して自身(じしん)(ちから)完全(かんぜん)封印(ふういん)してます。今更(いまさら)反乱(はんらん)()こすことはないかと(おも)われますが」


「それでも、絶対(ぜったい)ということはないからね。それに、あんた(たち)やジニールは実際(じっさい)()()ていないで(うわさ)でしか()らないからね。あの()実力(じつりょく)を…いや、(おそ)ろしさを()らないから、簡単(かんたん)信用(しんよう)するんだよ」

エルクと(たたか)った(ころ)(おも)()した水乃(みずの)は、(くちびる)()()める。


「ですが、エルク(くん)(たたか)ったことのあるアリスちゃんや(しずく)(こわ)がっていません。(むし)ろ、恋愛感情(れんあいかんじょう)が…」


「それが、一番(いちばん)問題(もんだい)さ。もし(かり)(しずく)ちゃんが、あの()結婚(けっこん)した場合(ばあい)国王(こくおう)が【ブラッド・チルドレン】ということは(おおやけ)になるだろ?(まわ)りの反応(はんのう)(かんが)えたことがあるのかい?それに、封印(ふういん)はどうするんだい?完全(かんぜん)解除(かいじょ)して(もら)うのかい?」


「「それは…」」


「お(ひさ)しぶりですね、先代(せんだい)の【(みず)巫女(みこ)】いや、元聖剣(もとせいけん)水蛇(すいじゃ)】の水乃様(みずのさま)

エルクは、笑顔(えがお)()かべて(あゆ)()る。


(ひさ)しぶりだね、【(しろ)死神(しにがみ)】!」


「アハハ…。殺気(さっき)はおさめて(くだ)さいませんか?(おれ)は、水乃様(みずのさま)(あらそ)()(まった)くありませんので」


「よくもまぁ、ノコノコと(わたし)(まえ)(かお)()せたものだよ。(わたし)は、絶対(ぜったい)にあんたを(ゆる)さないよ【(しろ)死神(しにがみ)】。あんたは、(わたし)(おっと)、【九頭竜(くずりゅう)】の一頭(いっとう)だった【ポセイドン】の緑水(りょくすい)殺害(さつがい)したことを」


本当(ほんとう)(わる)かったと(おも)いますし、謝罪(しゃざい)だけでは(ゆる)されないことだとわかっています。だから、一人(ひとり)水乃様(みずのさま)にお()いに()たのです」


()覚悟(かくご)じゃないか!あと、それ以上(いじょう)(わたし)(はなし)()けるんじゃないよ!【(しろ)死神(しにがみ)】!」

水乃(みずの)は、(おっと)【ポセイドン】の緑水(りょくすい)言葉(ことば)(おも)()す。



神社(じんじゃ)(まえ)水乃(みずの)緑水(りょくすい)(すわ)っており、()()わせてたままマーメイドの石像(せきぞう)(なが)めていた。


戦争(せんそう)は、どんどん(はげ)しくなってきているね、水乃(みずの)

緑水(りょくすい)(かお)に影が差す。


「ええ、そうね。だけど、きっと大丈夫(だいじょうぶ)よ。ねぇ、緑水(りょくすい)(わたし)(おも)うの。あなたと(わたし)()めば、【ブラッド・チルドレン】の(だれ)相手(あいて)でも()けることは(けっ)してないわねって」

水乃(みずの)笑顔(えがお)()かべながら両手(りょうて)で、緑水(りょくすい)()(やさ)しく(おお)った。


「それは、(ちが)うよ水乃(みずの)。どんなに強者(きょうしゃ)でも戦場(せんじょう)()れば、いつかは(いのち)()とすことになる。(たと)え、【九頭竜(くずりゅう)】になった(わたし)でもね。でも、水乃(みずの)のお蔭で不安(ふあん)(やわ)らいだよ、ありがとう。もし、(わたし)(たお)されても復讐(ふくしゅう)(とら)われないで()しい。水乃(みずの)には、いつまでも笑顔(えがお)()やさず(わら)っていて()しいからね。約束(やくそく)だよ、水乃(みずの)

緑水(りょくすい)は、水乃(みずの)(あたま)(やさ)しく()でる。



「わかっているさ!だけど、(あたま)でわかっていても(こころ)が…。この気持(きも)ちは、どうしようもないのさ!だから、(いま)から(わたし)があんたを(ころ)してやる!」

「「な、(なん)だ!?」」

水乃(みずの)膨大(ぼうだい)聖霊力(せいれいりよく)解放(かいほう)すると余波(よは)周囲(しゅうい)(ひろ)がり、観客達(かんきゃくたち)驚愕(きょうがく)し、その()から()げる。


「あらゆるものを()(なが)せ!レヴィアタン」

水乃(みずの)は、殺気(さっき)(はな)ちながら能力(のうりょく)(けん)召喚(しょうかん)した。


母上(ははうえ)!お()(くだ)さい」

柳水(りゅうすい)は、水乃(みずの)とエルクの(あいだ)()()んで()めようとする。


「エルク(くん)(いま)のうちに()げるのよ!」

瑞希(みずき)は、エルクの()()いて水乃(みずの)から()げようとする。


しかし、エルクは無言(むごん)のまま(まった)(うご)かず、()げなかった。


「エルク(くん)!?(なに)しているの!(はや)く!」


柳水様(りゅうすいさま)瑞希様(みずきさま)。お気持(きも)ちは有難(ありがた)いのですが、これは、私自身(わたしじしん)問題(もんだい)ですので。お二人(ふたり)()げて(くだ)さい」


()覚悟(かくご)じゃないか。柳水(りゅうすい)、【(しろ)死神(しにがみ)】が()っているんだい、そこを退()きな!」


(もう)(わけ)ありませんが、ここを退()きません!」


柳水(りゅうすい)!あんた、正気(しょうき)かい?父親(ちちおや)(ころ)した相手(あいて)(かば)うなんて理解(りかい)できないよ!」


(たし)かに、(わたし)(つま)もエルク(くん)完全(かんぜん)には(ゆる)すことはできてません。ですが、エルク(くん)()った(とお)りだと(おも)います。エルク(くん)は、一人(ひとり)()(こう)から父上(ちちうえ)母上(ははうえ)に正々堂々(せいせいどうどう)と(いのち)()けて(たたか)ったのです。それで、父上(ちちうえ)(いのち)()としました。エルク(くん)は…」


「お(だま)り!水蛇(すいじゃ)

水乃(みずの)(けん)(よこ)()()く。


水乃(みずの)(けん)から(みず)(へび)が3(びき)(あらわ)れ、エルクに(おそ)()かる。


「……。」

エルクは(まった)(うご)かず、まるで他人事(たにんごと)かの(よう)()(まえ)まで()ってくる(みず)(へび)(なが)める。


そんな(とき)…。

「エア・スラッシュ!」

アリスの(こえ)同時(どうじ)に、エルクの背後(はいご)から(かぜ)(やいば)(とお)()けて(みず)(へび)切断(せつだん)した。


「アリス」

エルクは、背後(はいご)にいるアリスに()(かえ)る。


「ハァハァ、()()ったわ。(たと)え、(しずく)のお婆様(ばあさま)であろうと(だれ)であろうとエルクに危害(きがい)(くわ)えるなら容赦(ようしゃ)しないわ」


「【疾風(しっぷう)のヴァルキュリア】かい。小娘(こむすめ)が、よく()うじゃないかい。(わたし)(もと)とはいえ、あんたと(おな)聖剣(せいけん)であり、【九頭竜(くずりゅう)】にはなれなかったけど、【九頭竜(くずりゅう)】であった【ポセイドン】の部隊(ぶたい)副隊長(ふくたいちょう)(つと)めていたこの(わたし)()てると(おも)っているのかい?」


正直(しょうじき)()って、あなたが(とし)をとって全盛期(ぜんせいき)より聖霊力(せいれいりよく)(おとろ)えているとは(おも)いますが、それでも()てるとは(おも)っていないわ。だけど、()てるからとか()けるから(たたか)わないとか、そんな勝敗(しょうはい)のことなんて(かんが)えてないわ。ただ、どうしても(まも)りたいから(たたか)うのよ。この(いのち)()けてもね。あなたも、そうだったでしょう?あの(とき)(くに)よりも一人(ひとり)(おっと)【ポセイドン】を(まも)るために全力(ぜんりょく)(いのち)()けて必死(ひっし)にエルクと(たたか)ったのでしょう?」


「お、お(だま)り!小娘(こむすめ)(なに)がわかるんだい!水龍(すいりゅう)!」

水乃(みずの)は、(くる)(まぎ)れに(けん)()()ろす。

(けん)から巨大(きょだい)水龍(すいりゅう)(はな)たれた。


「お()(くだ)さい!お婆様(ばあさま)!」

(しずく)は、両腕(りょううで)(ひら)いて水乃(みずの)(まえ)()()した。

水龍(すいりゅう)()(まえ)(せま)るが、(しずく)()(つむ)ることなく水龍(すいりゅう)から()()らさなかった。


「し、(しずく)ちゃん!?」

(しずく)気付(きづ)いた水乃(みずの)は、(あわ)てて水龍(すいりゅう)()めた。


(もう)(わけ)ありません、お婆様(ばあさま)(わたし)は、お婆様(ばあさま)一方的(いっぽうてき)(わたし)気持(きも)ちを(つた)えたことでお婆様(ばあさま)不愉快(ふゆかい)にさせたのなら(あやま)ります。(もう)(わけ)ありませんでした。もっと、お婆様(ばあさま)気持(きも)ちを(かんが)えるべきでした。そこまで、お婆様(ばあさま)がエルク(くん)のことをお(きら)いなのでしたら、(わたし)は、これ以上(いじょう)…エルク(くん)と…」

(しずく)最後(さいご)まで()おうとしたが、(なみだ)(あふ)れて()えなかった。


「……もう()いよ、(しずく)ちゃん。(しずく)ちゃんの気持(きも)ちは(つた)わったからね。だから、もう()かないでおくれ」

水乃(みずの)は、()いている(しずく)(やさ)しく()()せて微笑(ほほえ)みながら()()めた。


「お婆様(ばあさま)…」


「【(しろ)死神(しにがみ)】!(しずく)ちゃんに(めん)じて特別(とくべつ)(ゆる)してやっても()い。ただし!条件(じょうけん)があるよ。【(しろ)死神(しにがみ)】、(しずく)ちゃんを()かすようなことはしないとここで約束(やくそく)しな!」


「わかりました。約束(やくそく)(まも)ります」

エルクは、深々(ふかぶか)と(あたま)()げた。


母上(ははうえ)…」

水乃様(みずのさま)…」

()かったな、(しずく)

「はい…」

柳水(りゅうすい)瑞希(みずき)(うれ)しそうに微笑(ほほえ)みながら愛娘(まな)(しずく)(かた)()()いた。


「お婆様(ばあさま)…ありがとうございます…」

(しずく)は、右手(みぎて)人差(ひとさ)(ゆび)(なみだ)(ぬぐ)って()みを()かべてお(れい)()った。


「フン、(わたし)()るから(かえ)るよ」

(緑水(りょくすい)(わたし)今日(きょう)から笑顔(えがお)()やさずに、あなたの(ぶん)まで()きてみるよ)

()ずかしそうに()()水乃(みずの)だったが、口元(くちもと)()みを()かべていた。


夜空(よぞら)花火(はなび)が次々(つぎつぎ)に()()がり、国内(こくない)色鮮(いろあざ)やかに()らす。


「ねぇ、エルク」

「エルク(くん)

()くわよ!」

()きましょう!」

アリスと(しずく)は、笑顔(えがお)()かべてエルクの()()って(はし)()す。


ジニール、柳水(りゅうすい)(たち)は、微笑(ほほえ)みながらエルク(たち)見送(みおく)った。




【モラビニス(こく)・モラビニス(じょう)大広間(おおひろま)


大広間(おおひろま)には、巨大(きょだい)長方形(ちょうほうけい)のテーブルに、屈強(くっきょう)部隊(ぶたい)隊長(たいちょう)である戦士達(せんしたち)勢揃(せいぞろ)いしており、()空気(くうき)()りつめており(おも)かった。


そんな(なか)(とびら)(ひら)き、聖剣(せいけん)の【(いくさ)大魔王(だいまおう)】のことバダカルと国王(こくおう)のヤビニス、(きさき)のミアンが(あらわ)れた。



「お前達(まえたち)(いそが)しい(なか)、よく(あつ)まってくれた」

バダカルは、(まえ)()大声(おおごえ)()した。


「すまないが、(となり)一席(いっせき)空席(くうせき)だが?」

岩男(いわお)(よう)屈強(くっきょう)な40(だい)(おとこ)は、()()げて(たず)ねる。


「はぁ…。また、あいつか…。()にしないでくれ」

バダカルは、右手(みぎて)(てのひら)自身(じしん)(かお)()さえながらため(いき)()く。


その(とき)(とびら)(いき)()(ひら)いた。


「ちょり~っす!(お世話(せわ)になっております)。お()たぁ(お()たせ)~」

【ブラッド・チルドレン】7番隊(ばんたい)隊長(たいちょう)である【クレイジー・ピエロ】のことドロシーは、右手(みぎて)()げて笑顔(えがお)()かべて部屋(へや)(はい)る。


(だれ)だ?」

「さぁ?」

「それよりも、何故(なぜ)こんな場所(ばしょ)にギャルが…」

隊長達(たいちょうたち)は、どよめく。



「おい、遅刻(ちこく)だぞ【クレイジー・ピエロ】」

バダカルは、激怒(げきど)した。


「あ、あれが、殺人狂(さつじんきょう)で恐れられている【ブラッド・チルドレン】の【クレイジー・ピエロ】だと!?」

「ただのギャルじゃないか…」

(うそ)だろ?(しん)じられん…」

ドロシーが【クレイジー・ピエロ】と()った隊長達(たいちょう)は、(しん)じられない表情(ひょうじょう)()かべて(つぶ)く。


「マジめんご((まこと)(もう)(わけ)ございませんでした)」

ドロシーは、左拳(ひだりこぶし)自身(じしん)(あたま)にコツンっと()てながら右手(みぎて)をピンっと()ばして(かお)(まえ)()してウィンクした。


(なに)をしていた?【クレイジー・ピエロ】」

ドロシーの対応(たいおう)()たバダカルは苛立(いらだ)ったが、(ひたい)青筋(あおすじ)()かべながら(いか)りを(おさ)えながら(たず)ねる。


「まぁ、なんつ~かアレだね(つまり)。時間(じかん)一杯(いっぱい)まで、マニキュアを()っていたんだけどぉ~。ほら、()()てかわうぃ~(可愛(かわい)い)でしょう?まぁ、(わたし)もガンダ((ちから)(かぎ)(いきお)いよく全力(ぜんりょく)(はし)ること)したんだから(ゆる)してちょ」

ドロシーは、左手(ひだりて)(つめ)()せつけ、右手(みぎて)自身(じしん)(かみ)(いじり)りながら説明(せつめい)した。


「ふざけるな!」

バダカルは(いか)りが爆発(ばくはつ)し、大声(おおごえ)()した。


「はぁ、とりま今回(こんかい)リアルがちめんご((あらた)めまして、この(たび)本当(ほんとう)(もう)(わけ)ございません)」

ドロシーは、ため(いき)()きながら(あたま)()き、最後(さいご)面倒(めんどう)くさい(よう)態度(たいど)(あたま)()げて謝罪(しゃざい)をした。


「~っ!」

バダカルは、激怒(げきど)しながら殺気(さっき)(はな)ち、膨大(ぼうだい)聖霊力(せいれいりよく)解放(かいほう)する。


「「~っ!!」」

解放(かいほう)された膨大(ぼうだい)聖霊力(せいれいりよく)殺気(さっき)は、大広間(おおひろま)にいるドロシー以外(いがい)者達(ものたち)恐怖(きょうふ)(あた)(ひる)んだ。



「はぁ~、ガン()え(やる()がなくなった)なんですけどぉ~」

ドロシーは、興味無(きょうみな)さげにバダカルを一瞥(いちべつ)して、ため(いき)()く。


貴様(きさま)!」


「お、()()け、バダカル。わざわざ、会議(かいぎ)参加(さんか)してくれて(たす)かる。さぁ、(せき)についてくれ【クレイジー・ピエロ】」

バダカルは、父親(ちちおや)のヤビニスから注意(ちゅうい)されて殺気(さっき)聖霊力(せいれいりよく)をおさめた。


ドロシー以外(いがい)者達(ものたち)は、ホッと(むね)()()ろした。


「りょ!(了解(りょうかい))。あ、(わたし)、アイコ(アイス珈琲(こーひー))ね。あと、(わたし)、ケツカッチン((はや)移動(いどう)しないといけない)だから(はや)めに(たの)むね」

隊長達(たいちょうたち)視線(しせん)がドロシーに集中(しゅうちゅう)する(なか)、ドロシーは()にせずにマイペースのまま(せき)についた。


「~っ!!くっ…」

自分勝手(じぶんかって)でマイペースなドロシーに、バダカルは(こぶし)(つよ)(にぎ)()めて(いか)りを必死(ひっし)()(ころ)して(おさ)える。


「わかった。バダカル、(はなし)を」


「くっ、わかったよ親父(おやじ)俺達(おれたち)時間(じかん)準備(じゅんび)(ととの)った。予定通(よていどお)りに、明日(あす)、アクアドリーム(こく)奇襲(きしゅう)()ける。()いな?」


「その言葉(ことば)()っていたぜ!」

「「うぉぉ!」」

隊長達(たいちょうたち)は、盛大(せいだい)()()がる。



「バダカル、確実(かくじつ)()とせるのだろうな?お(まえ)(しん)じるぞ」


「ああ、もちろんさ。心配(しんぱい)はない。相手(あいて)に【疾風(しつぷう)のヴァルキュリア】が加勢(かせい)しようとな。なぁ、【クレイジー・ピエロ】さんよ」


「ちゃけば((じつ)は)、メンディー(面倒(めんどう))なんだけど~。でも、安心(あんしん)しなよ。仕事(しごと)は、ちゃんとすっから(きっちりとするから)さ~。その()わり、あんた(たち)もちゃんと約束(やくそく)(まも)ってよね」


「ああ、もちろん約束(やくそく)(まも)る。あと、どうだろうか?【クレイジー・ピエロ】。うちの息子(むすこ)結婚(けっこん)してくれないか?」



「あ~、それは、マジめんご((まこと)(もう)(わけ)ございません)。ガチばな(本当(ほんとう)(はなし))(わたし)自分(じぶん)より(よわ)(おとこ)はアウト・オブ・眼中(がんちゅう)なんですけどぉ~。マジ、ありえんてぃ(ありない)なんですけどぉ~」


「ふん、(おれ)もだ。親父(おやじ)(おれ)(まえ)から()っているが【(みず)巫女(みこ)】である(しずく)(よう)なおしとやかな(おんな)(この)みだ。こんなギャル丸出(まるだ)しの(やつ)は、こっちからお(ことわ)りだ!」


「そうか…」

(かた)()として落胆(らくたん)するヤビニス。


「あなた、安心(あんしん)して。今回(こんかい)作戦(さくせん)成功(せいこう)したら【(みず)巫女(みこ)】が()(はい)るから大丈夫(だいじょうぶ)よ」

(きさき)のミアンは、微笑(ほほえ)む。


「ああ、そうだな…」


「じゃあ、お前達(まえたち)(ただ)ちに(いくさ)準備(じゅんび)をしろ!明朝(みょうちょう)進軍(しんぐん)する!」

「「うぉぉ!」」

バダカルの(げき)によって隊長達(たいちょうたち)一斉(いっせい)()()がり士気(しき)(たか)まり()()がった。

次回、開戦です。


もし宜しければ、次回もご覧下さい。

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