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ブラッド・チルドレン  作者: フミナベ
10/12

竜神際

アリスとエルクは、アリスの両親・ライティア国王のジニールと妃のアリーナから2人で竜神際を楽しんで来なさいと言われる。

【アクアドリーム(こく)街中(まちなか)


街中(まちなか)竜神際(りゅうじんさい)で、昨日(きのう)よりも屋台(やたい)()(なら)び、頭上(ずじょう)には(ひも)(みち)平行(へいこう)()びており、提灯(ちょうちん)一定(いってい)間隔(かんかく)()るされている。



そんな街中(まちなか)を、着物(きもの)()たアリスは笑顔(えがお)()かべながら自分(じぶん)とお(そろ)いの着物(きもの)()ているエルクの(うで)()んで(ある)いていた。


「そこの(ぼう)や、可愛(かわ)いお(じょう)ちゃんのためにヨーヨーすくいはどうだ?」


「そうだな。ヨーヨーは(まつり)定番(ていばん)だし、せっかくだからやるよ」

エルクはアリスと一緒(いっしょ)にヨーヨーすくいの屋台(やたい)(あゆ)()る。


(おとこ)は、そうこなくちゃな!」


「じゃあ、おじさん。一回分(いっかいぶん)

エルクは、屋台(やたい)のおじさんにお(かね)(わた)した。


毎度(まいど)!」

(かね)()()った屋台(やたい)のおじさんは、()(ばり)()いた紙製(かみせい)(ひも)をエルクに(わた)す。


エルクとアリスの()(まえ)には、プラスチック(せい)のピンク(いろ)のタンスの(よう)容器(ようき)()かれており、その(なか)には(みず)八割(はちわり)ぐらい(はい)っており様々(さまざま)な(いろ)のゴム(せい)(なか)(みず)(はい)っているヨーヨーが()かんでいる。


「アリス、どれが()しい?」


「う~ん。じゃあ、そこの(さくら)模様(もよう)(しろ)(ほう)

左手(ひだりて)人差(ひとさ)(ゆび)口元(くちもと)()てて(なや)んだアリスは、左手(ひだりて)人差(ひとさ)(ゆび)全体(ぜんたい)白色(しろいろ)(さくら)模様(もよう)のヨーヨーを(ゆび)をさした。


「わかった。(まか)せて!」

エルクは(そで)(まく)り、()っている(ひも)をゆっくりヨーヨーのゴムでできている(ひも)()(うえ)位置(いち)移動(いどう)させて持っている紙製(かみせい)(ひも)()とし、()(ばり)()()っかけて()()げる。


エルクは、(ひも)()らずヨーヨーをすくい()げることに成功(せいこう)した。

「よし!はい、アリス」


「ありがとう、エルク」

アリスは、ヨーヨーのゴムの(ひも)()っかになっている部分(ぶぶん)右手(みぎて)中指(なかゆび)(とお)して(すこ)しだけヨーヨーを(はず)ませる。


「おじさん、これ(かえ)すよ」

エルクは、屋台(やたい)のおじさんに(ひも)(かえ)した。


「ん?まだ(ひも)()れていないから(つづ)けてできるぞ」


()っているよ。でも、これ以上(いじょう)必要(ひつよう)ないから」


「そうか、わかった。それにしても、(ぼう)やは()わっているな。普通(ふつう)(ひも)()れるまで(つづ)けるんだがな」


「そうなんだ。まぁ、(おれ)遠慮(えんりょ)するよ。さっきも()ったけど、これ以上(いじょう)必要(ひつよう)ないし、()こうかアリス」


「ええ」

エルクは()()がり、アリスの()()って屋台(やたい)から(はな)れた。



「お!アリス。あっちにリンゴ(あめ)()っているから()こう」


「ええ」

アリスは、エルクに()()られながらリンゴ(あめ)屋台(やたい)()(あし)()かう。


「おばさん、リンゴ(あめ)2つ(たの)むよ」


「あいよ、ん?可愛(かわい)いお(じょう)ちゃんにプレゼントかい?(やさ)しいね。特別(とくべつ)に、この(おお)きなリンゴ(あめ)をあげるよ」

屋台(やたい)(おもて)()いている(ちい)さな(ひめ)リンゴではなく、普通(ふつう)のリンゴを(あめ)でコーティングし(くし)()したリンゴ(あめ)()()した。


「い、いや、気持(きも)ちだけで十分(じゅうぶん)なので」

苦笑(にがわ)いを()かべるエルク。


子供(こども)遠慮(えんりょ)するもんじゃないよ。それに、大丈夫(だいじょうぶ)安心(あんしん)しな。値段(ねだん)(おな)じで(かま)わないからね」


「いや、値段(ねだん)問題(もんだい)じゃないんだけど…」


「じゃあ、なんだい?」


普通(ふつう)に、そんなに(おお)きいのは()べきれないし、(まつり)なんだから(ほか)のも()べたいからね」


「なるほど、そう()われたらそうだね。それなら、仕方(しかた)ないね。だから、(いま)まで(だれ)()()ってくれなかったんだね」

おばさんは、()をポンっと(たた)いて納得(なっとく)した。


「ありがとう、おばさん」


毎度(まいど)!あ、そうだ1つ忠告(ちゅうこく)してあげるから、よく()くんだよ。この(さき)にある金魚(きんぎょ)すくいは、()めとくことだね。ぽい(金魚(きんぎょ)をすくう道具(どうぐ))の紙製(かみせい)(あみ)は、(みず)()けたらすぐに(やぶ)れる(かみ)(あみ)使用(しよう)しているから、(だれ)も1(ぴき)()れないからね。お(かね)無駄(むだ)だよ」


情報(じょうほう)ありがとう、おばさん」


彼女(かのじょ)大切(たいせつ)にするんだよ!」


「ああ、勿論(もちろん)わかっているよ」


「なら、()し!彼女(かのじょ)()たせたらダメだよ。ほら、(いそ)いで彼女(かのじょ)のもとへ()きな。ほら、()(あし)!」


「わかったよ」

エルクはリンゴ(あめ)を2つ()ったまま、ため(いき)()きながらアリスに()(あし)()かった。



エルクと屋台(やたい)のおばさんの会話(かいわ)()いていたアリスは、(かお)()()になっていた。


「はい、アリス。リンゴ(あめ)()きだったよな?ん?(かお)(あか)いけど、風邪(かぜ)でも()いた?」


()いてないわよ!それより、ありがとう。(おぼ)えてくれていたのね」



「まぁね」


「フフフ、(なん)だか、とても(うれ)しいわ」


「それにしても、あの(おお)きなリンゴ(あめ)には(おどろ)いたよ」


「だね」


エルクはヒョットコの仮面(かめん)、アリスはウンディーネの仮面(かめん)購入(こうにゅう)してエルクがヒョットコの仮面(かめん)()けた姿(すがた)()たアリスはクスクスと(わら)い、その(あと)射的(しゃてき)輪投(わな)げをし、途中(とちゅう)綿飴(わたあめ)()って()(ある)きしながら(いろ)んな出店(でみせ)(まわ)って竜神祭(りゅうじんさい)満喫(まんきつ)していた。



その(とき)(ちか)くの出店(でみせ)から大人(おとな)(おとこ)大声(おおごえ)()こえた。


(くそ)(なん)だよ!この(あみ)は!(みず)()かると、すぐに(やぶ)れるじゃないか!」

子連(こづ)れの父親(ちちおや)は、大声(おおごえ)出店(でみせ)のおじさんに文句(もんく)()った。


「うう…全然(ぜんぜん)()れないよ…」

5(さい)ぐらいよ(むすめ)は、()()っている(かみ)(やぶ)れたぽいを(かな)しげな表情(ひょうじょう)()つめる。



エルクは、(とお)くから(かな)しげな表情(ひょうじょう)()かべる(むすめ)姿(すがた)()()()(しば)った。


「そう()えば、アレかな?おばさんが()っていた、ぼったくりの金魚(きんぎょ)すくいの屋台(やたい)は」


「そうみたいね」


「アリス、ごめん。ちょっと()ってて」


「ちょっと、エルク。(なに)をするつもりなの?ここは、(わたし)(かお)()かないわよ」


()っているさ。ただ、合法的(ごうほうてき)にあのおっちゃんを()らしめて()るだけだから」


合法的(ごうほうてき)()らしめるって()っても、すぐに(あみ)(やぶ)れるならどうしようもないわよ」


「まぁ、()ててよ」


「もう、仕方(しかた)ないわね。わかったわ」


「おっちゃん、(おれ)一回(いっかい)やりたいんだけど」


「おう、()いぞ。坊主(ぼうず)


(きみ)、やめた(ほう)()い。この(みせ)(あみ)は、(みず)()けるとすぐに(やぶ)れて()れないぞ」


「そうだよ、お(にい)ちゃん。パパの()(とお)りだよ…」


「おいおい、旦那(だんな)自分達(じぶんたち)金魚(きんぎょ)()れないからと()って(あみ)のせいにするなよ。これは、立派(りっぱ)営業妨害(えいぎょうぼうがい)だぞ」


「くっ」


「あのさ、おっちゃん。する(まえ)に1つ()いても()いか?」


(なんだ)だ?坊主(ぼうず)


(あみ)(やぶ)れたら、そこで()わりになるのか?」


「いや、坊主(ぼうず)無理(むり)だと(おも)うまで()きにすれば()いぞ。(さき)()っとくが、お(わん)()ですくったり、聖霊力(せいれいりょく)(あみ)強化(きょうか)するのは禁止(きんし)だぞ。もし、(かく)れてこっそりと聖霊力(せいれいりょく)使(つか)ったら(あみ)がボロボロになって(くだ)ける仕様(しよう)になっているからな」


「わかっているよ。そんな小細工(こざいく)はしないから大丈夫(だいじょうぶ)(ほか)()いんだよね?」


「ああ、()いぞ。頑張(がんば)れよ、坊主(ぼうず)

不敵(ふてき)()みを()かべる屋台(やたい)のおじさん。


「エルク、本当(ほんとう)大丈夫(だいじょうぶ)なの?」


「まぁ、()ててよ」

(はし)にいる(おお)きな出目金(でめきん)(ねら)いを(さだ)めたエルクは、ぽいを(かたむ)けて紙製(かみせい)(あみ)をそっと(みず)()けると(あみ)はすぐに(やぶ)けた。


「やっぱり、無理(むり)だったわね…」

アリスは(となり)にいる(むすめ)一緒(いっしょ)(かた)()とす。


しかし、エルクは(あみ)(ふち)出目金(でめきん)(すく)()げて(ちゅう)()かして、(みず)(はい)っているお(わん)(なか)()れた。



(すご)い!お(にい)ちゃん!」

「「(うそ)…」」

(むすめ)両手(りょうて)()わせてして(よろこ)んだが、アリスと父親(ちちおや)(しん)じられない表情(ひょうじょう)()かべたまま唖然(あぜん)とする。



「な、(なん)だと!?」

驚愕(きょうがく)する屋台(やたい)のおじさん。


「まだまだ!」

エルクは、(さき)ほどと(おな)要領(ようりょう)で次々(つぎつぎ)に金魚(きんぎょ)をすくいあげてお(わん)(なか)()れていく。


「おじさん、そのお(おわ)()して」

エルクは、()っていたお(わん)金魚(きんぎょ)一杯(いっぱい)になったので(ゆか)()き、()いた()父親(ちちおや)()()す。


「あ、ああ…」

父親(ちちおや)は、唖然(あぜん)としたまま()っているお(わん)をエルクに(わた)した。


「ねぇ、お(にい)ちゃん。(わたし)のも、お(ねが)い!」


「わかった!お(にい)ちゃんに(まか)せな!」

エルクは、次々(つぎつぎ)に金魚(きんぎょ)をすくい()げていく。


エルクのすくい()げるスピードが、徐々(じょじょ)に()していく。


「ちょ、ちょっと()って!坊主(ぼうず)!それは、ルール違反(いはん)だ!」

(われ)(かえ)った屋台(やたい)のおじさんは、(あわ)てて()めようとする。


可笑(おか)しなことを()うな、おっちゃん。(おれ)聖霊力(せいれいりょく)どころか、()やお(わん)ですくってないけど?(おれ)は、(はじ)めにおっちゃんに()いたら(ほか)()いって(たし)かめたけど?」


「ぐっ、それはだな…」


「アリス、()いているお(わん)()ってくれないか?」


「ええ!わかったわ」

アリスは、(うれ)しそうに(ちか)くにあったお(わん)()()ってエルクに(わた)す。


(くそ)!もう、すくうんじゃねぇ!餓鬼(がき)が!」

屋台(やたい)のおじさんは、エルクを()めようと両腕(りょううで)でエルクを(つか)まえようとする。


「よっと」

エルクは、ヒョイっと(かわ)す。


「な、(なん)だと!?うぁ」

屋台(やたい)のおじさんは、()けられるとは(おも)わなかったので(いきお)いよく金魚(きんぎょ)(はい)っている(おお)きな(おけ)上半身(じょうはんしん)から()()んだ。


(おけ)(なか)(およ)いでいた数匹(すうひき)金魚(きんぎょ)が、(おけ)から()()る。


「よっと、と」

エルクは、()()金魚(きんぎょ)(すべ)()っているお(わん)素早(すばや)(うご)かして(なか)()れた。


「おっちゃんには(わる)いけど、全部(ぜんぶ)()らせて(もら)うから」


(くそ)!やめろ!やめろっと()っているだろうが!」

()()がった屋台(やたい)のおじさんは、右拳(みぎこぶし)(にぎ)()めてエルクに(なぐ)()かる。


「せっかくの着物(きもの)()れるだろ。よっと、これぐらいかな?」

エルクは身体(からだ)(かたむ)けて屋台(やたい)のおじさんの(こぶし)(かわ)し、屋台(やたい)のおじさんの(ひたい)右手(みぎて)中指(なかゆび)聖霊力(せいれいりょく)()めてデコピンをした。


「がはっ」

屋台(やたい)のおじさんは盛大(せいだい)(うし)ろに(ころ)がり、(さくら)()にぶつかり(おお)きな(おと)()(ひび)く。


屋台(やたい)のおじさんは、白目(しろめ)()いて気絶(きぜつ)した。


(さくら)()は、()れることはなかったが衝撃(しょうげき)(おお)きく()(はな)びらが()()る。


「ちょ、ちょっと、エルク!あなた、(なに)をやっているのよ!」


「あれ?可笑(おか)しいな。手加減(てかげん)したんだけど。アハハ…」

(あたま)()きながら苦笑(にがわ)いを()かべるエルク。


「~っ!?」

「お(にい)ちゃん、(すご)い!」

父親(ちちおや)驚愕(きょうがく)しており言葉(ことば)(うしな)っていたが、(むすめ)はエルクに()()(いきお)いよくエルクに()きついた。


「わぁっと」

突然(とつぜん)()きつかれたエルクは(おどろ)き、お(わん)(はい)っている金魚(きんぎょ)(こぼ)さないように必死(ひっし)()えた。



「あ、そうだ。はい、これあげるよ」

エルクは、金魚(きんぎょ)()れる専用(せんよう)のビニール(ぶくろ)(みず)金魚(きんぎょ)(うつ)して(むすめ)(わた)す。


「ありがとう、お(にい)ちゃん」

金魚(きんぎょ)(はい)ったビニールを(もら)った(むすめ)は、(うれ)しそうにお(れい)()微笑(ほほえ)んだ。



(とお)くから大勢(おおぜい)足音(あしおと)が徐々(じょじょ)に(おお)きく()こえてくる。

(おお)きな(おと)がしたぞ!何処(どこ)だ?」


(たし)か、この(さき)から()こえたぞ!」

この(くに)警備隊(けいびたい)(おお)きな(おと)気付(きづ)き、エルク(たち)(ほう)へと()(あし)()()る。



「ありがとう。だが、君達(きみたち)、ここから(はや)()げた(ほう)()い」

父親(ちちおや)は、(あわ)てて(むすめ)()()って()げる。



「ほら、私達(わたしたち)(はや)()げるわよエルク」


「ちょっと()って、アリス」


「こんな(とき)に、()をしているのよ!」


「これで、()しっと」

エルクは、(おお)きな(つくえ)()いていたテーブルクロスに黒色(くろいろ)のマジックで金魚(きんぎょ)すくいセルフ!無料(むりょう)!その(した)(だん)(ただ)し、お一人(ひとり)1(ぴき)から3(びき)までと()いて看板(かんばん)(うえ)(かぶ)せた。


「エルク、あなたって…」

アリスは、テーブルクロスを()微笑(ほほえ)んだ。


「ほら、アリス。()げないと!」

エルクは、アリスの()()る。


「あなたから()われたくないわよ!もう!」

アリスは、(ほお)(ふく)らませた。


エルクとアリスは()(つな)いだまま、その()から(はな)れた。


「ハァハァ…。ここまで()れば…大丈夫(だいじょうぶ)…」

アリスは前屈(まえかが)みになり、両膝(りょうひざ)両手(りょうて)()てながら(かた)(おお)きく上下(じょうげ)させて呼吸(こきゅう)(ととの)える。


「アハハ…。(たの)しかったな。スッキリした」

アリスの(となり)にいるエルクはアリスと(ちが)い、(そら)見上(みあ)げて(わら)った。


「もう!(なに)(わら)っているのよ!エルク。あなたのせいで大変(たいへん)だったじゃない」

アリスは、左右(さゆう)(こし)()()てて(おの)る。


「あれ?アリスはスッキリしなかった?あの、おっちゃんの(あわ)てたり(おこ)った表情(ひょうじょう)()て」


「まぁ、正直(しょうじき)()ててスッキリしたけど。最後(さいご)のデコピンは、やり()ぎよ。そのせいで、騒動(そうどう)発展(はってん)したんじゃない」


「ごめん、アリス。()()んでしまって。でも、どうしても、あの金魚(きんぎょ)すくいのおっちゃんを()らしめたかったんだ」

(あたま)()きながらエルクは、苦笑(にがわ)いを()かべて謝罪(しゃざい)する。


「まぁ()いわ、今回(こんかい)特別(とくべつ)(ゆる)してあげる。(わたし)も、あの(ひと)行為(こうい)(ゆる)せなかったもの。でも、エルクのお(かげ)(わたし)もスッキリしたわ。フフフ…」

アリスは、口元(くちもと)()()ててクスクスと(わら)った。


「アリス、()こうには()ってないから()ってみよう」

「そうね」

エルクはアリスの()()り、お手玉(てだま)()げゲーム、水中(すいちゅう)コイン()とし、ピンポンカップイン、ペットボトルボウリング、()(かん)()りゲームなど次々(つぎつぎ)に屋台(やたい)(まわ)った。


屋台(やたい)(まわ)っていたエルクとアリスは、()()けば()()ちており、街中(まちなか)にある提灯(とうろう)(とも)されて街中(まちなか)色鮮(いろあざ)やかに()らされていた。


提灯(とうろう)(あか)りって、(なん)だか(やさ)しい(かん)じがするわね」


「そうだね。ん?あっ、もう、こんな時間(じかん)になっているんだ。(たの)しい(とき)は、あっという()時間(じかん)()つな」


「ええ、そうね。そろそろ、(しずく)(まい)(はじ)まるわ。(はや)く、()きましょう。エルク」


「わかった」

エルクとアリスは、竜神際(りゅうじんさい)儀式(ぎしき)()(しずく)姿(すがた)()るため神社(じんじゃ)がある中央区(ちゅうおうく)へと()かった。



【アクアドリーム(こく)中央区(ちゅうおう)神社(じんじゃ)


エルクとアリスは、(あわ)てながら()(あし)でジニール(たち)がいる神社(じんじゃ)一望(いちぼう)できる特別席(とくべつせき)()かっていた。


随分(ぶいずん)(おく)れたな。国王様(こくおうさま)約束(やくそく)した時間(じかん)()()わなかった…」


仕方(しかた)ないわよ、エルク。去年(きょねん)(ちが)い、(おも)ったよりも人混(ひとご)みが(ひど)かったから。でも、(しずく)(まい)には()()ったわ」


国王様達(こくおうさまたち)謝罪(しゃざい)しないと…。はぁ、連続(れんぞく)約束(やくそく)(やぶ)ることになるなんて…」

エルクは、(ふか)いため(いき)()いた。


(わたし)も、あなたと一緒(いっしょ)(あやま)るから大丈夫(だいじょうぶ)よ」


「いや、そんな問題(もんだい)じゃなくて…」



「おい!アリス、エルク!こっちだ!(おそ)いから心配(しんぱい)したぞ」


「ごめんなさい、お父様(とうさま)


(もう)(わけ)ありません、国王様(こくおうさま)(ふただ)び、約束(やくそく)(まも)れず(やぶ)ることになってしまい…」

エルクは、その()片膝(かたひざ)地面(じめん)について謝罪(しゃざい)する。


「あなた、意地悪(いじわる)するのはやめましょう。二人共(ふたりとも)、そんなに()にしないで()いわよ。だって、開始(かいし)まで、まだ45(ふん)もあるのだから大丈夫(だいじょうぶ)よ」


「アリーナよ、お(まえ)(ぎゃく)(やさ)()ぎだ。(わたし)だって、()(この)んで意地悪(いじわる)がしたい(わけ)ではない。しかし、約束(やくそく)(まも)るのが()たり(まえ)常識(じょうしき)だろ?ここで、(しか)るのも二人(ふたり)のためだ」


「それは、そうだけど。でも、あなたは(あたま)固過(かたす)ぎなのよ。せめて、15分前(ふんまえ)とか30分前(ぷんまえ)(もど)って()るようにすれば(わたし)納得(なっとく)ができますけど。いつも、1時間前(じかんまえ)や1時間半前(じかんはんまえ)とか、随分(ずいぶん)(はや)(もど)って()るようにするとか普通(ふつう)あり()ないわ」


「そ、そんなことないぞ。(けっ)して愛娘(まなむすめ)(すこ)しでも一緒(いっしょ)(なが)()ごしたいだけで自分勝手(じぶんかって)理由(りゆう)で1時間前(じかんまえ)とか2時間前(じかんまえ)(もど)(よう)約束(やくそく)している(わけ)ではなくってな…。な、(なん)だ?その()は」

エルクとベルは苦笑(にがわら)いを()かべていたが、アリスとアリーナは(うつが)(よう)なジト()()になって(あわ)てるジニール。



「む、無論(むろん)、こ、これには、ちゃんとした理由(りゆう)があるのだ…。」

(あわ)てているジニールは、(あせ)った表情(ひょうじょう)()(わけ)をしようとしたが()ぐには(おも)()かばずが()(よど)む。


「「……。」」

アリスとアリーナは、(つめ)たい目線(めせん)でジニールを()る。


「あの、国王様(こくおうさま)…」

エルクは、ジニールに(はな)()けた。


「ええい!エルク!お(まえ)のせいだ!(いま)、お(まえ)(はな)()けてきたから(わす)れたじゃないか!」


「え!?その、(もう)(わけ)ありません」


「まぁ、()い。わかれば()いのだ、わかればな」

(エルクにはすまないが、これで誤魔化(ごまか)せることができた。(われ)ながら上出来(じょうでき)だな)

ジニールは、(あご)()()ててホッと(むね)()()ろした。


「もう、あなたったら…。ごめんなさいね、エルク(くん)


「エルク、ごめんなさい。()にしないで()いから」


「そうよ、エルク(くん)


「なっ、アリーナ、アリス…。べ、ベル、お(まえ)はどう(おも)っているのだ?無論(むろん)(わたし)味方(みかた)だよな?」


「え!?そ、それは…その…」

苦笑(にがわら)いを()かべて見守(みまも)っていたベルは、突然(とつぜん)(はな)()られて戸惑(とまど)う。


「ほら、あなた。そんなことよりも、そろそろ(しずく)ちゃんの(まい)(はじ)まるわよ」

アリーナは、戸惑(とまど)っているベルを()(たす)(ぶね)()した。


そして、(みずうみ)中央(ちゅうおう)にある神社(じんじゃ)両端(りょうはし)()かっている(はし)左側(ひだり)から着物姿(きものすがた)(しずく)(あら)れた。

もし宜しければ、次回もご覧下さい。

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