第4話 Nくん(1)
N君は仕事仲間だった。
私は演出部、彼は制作部でアシスタントをしていて年齢も経験もほぼ同じくらいだった。
私は会社に入ってない、いわゆるフリーランスという立場で作品毎に参加していたが、N君は社員総勢5人くらいの小さな制作会社の社員だった。
二十代後半だった2人は性格も仕事の進め方も全く違ったが、何故だか馬が合って制作費を誤魔化して飲みにいったり、カラオケで日頃の鬱憤を晴らしたり──N君はアニメソングを歌わせるととまらなかった。
付かず離れずではあったが、顔を合わせると楽しく時間が流れたものだ。
演出部のアシスタントは台本に沿って、必要な物を選定したり、出演者と打ち合わせをしたり、現場を仕切ったりする立場だったが、制作部のアシスタントは進行が遅れないように、台本やスケジュール表をコピーしたり、絵コンテをコピーしたり、はたまた打ち合わせのコーヒーや弁当の用意まで、なにかと雑用だらけの仕事だ。
N君の仕事ぶりは寡黙で正確だった。黙々と作業を進め、キチンとやるべき事をこなし徹夜しても文句一つ言わなかった。そのため周りからは信頼の厚い男だった。
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ある時私は鬱病になった事がある。
その原因が一人のフリーランスのディレクターのアシスタントを一年間に渡ってした事にある。N君の会社の仕事ではなかったが、そのディレクターが精神的に少しおかしい人で、それを表面に出して仕事を押し付け、私の成果を自分の物にしてしまうような信じられない人物だった。




