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『おなか』 ─嘘のような本当のおはなし─  作者: 赤木 爽人
第2章 もりのなか
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第3話 ゆきむし(2)

 お互いの顔を見合わしながら数十回「UFOこーい」を連呼していると、ドテチンがふと森の上空を見て、ポカンと口を開けた。

 本当に驚くと子どもは声が出なくなる。

 その表情を見てみんなは動きを止めると、一斉に森の上を見た。すると青空の遠くに、お米みたいな光輝く発光体がぷかぷか浮いていた。

 誰もが呆気にとられて一言も口をきかない。

 その発光体はやがて三つに分かれて、各々ふわふわ飛んでいるのだ。まるで私たちに呼び寄せられたかのように、現れ、そこに浮かんでいる。

 やがて回ったり再び一つになったり、別れたり、繰り返す。私の家はさくら公園のそばにだったので、咄嗟に走りだすとみんなに言った。

「カメラ持ってくる!」

 そして父のカメラを持って戻ると、発光体はいなくなっていた。

 今だったら携帯電話で写真が撮れるのにそんな物はなかった時代だからしょうがない。

「あーあいなくなった」

「ざんねん」

「でも見たよ、俺たち見たよ」

 ──間違いない、あれは『UFOだ!』

 そんな興奮の絶頂だった時──


 ふ・わ・り


 無数の白い小さなものが突然現れ、私たちを取り囲んだ。そしてすぐに、まるで雲の中に腰まで浸かっているような状態になった。

「うわぁ雲みたいだ、俺たち浮いてる」

 驚きととともに最高に嬉しくなった。公園中が雲の中に包まれているみたいだ。

 誰もが笑顔になった。

 泳いでいる格好をする奴がいたり、羽ばたく奴だっていた。頭が白くなったって構わない、手が背中が足が、みんな白くなっていく。

 そして、きゃっきゃっ、いいながらはしゃいだ。

 それは何かって? ──道産子(どさんこ)ならすぐ分かる、ゆきむしが一斉に沸いたのだ。

 毎年ゆきむしは飛ぶ、だけど、雲のように沸いた経験はそれまでなかった。その後しばらくして、20人を取り巻いたゆきむしは、パッと散っていなくなった。


 ゆきむしが飛ぶと一週間ほどして初雪が降る。その年もUFOを見てから丁度一週間後に、白いものが空から贈られてきた。


 雪遊びは楽しい、だけど、雪が積もると寒いし雪かきをしなけりゃいけないし、吹雪の中登校したり…毎日凄く大変だ。

 でも辛ければ辛いほど春の雪解けが嬉しい…だからこそ初雪はいつも嬉しかった。


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