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『おなか』 ─嘘のような本当のおはなし─  作者: 赤木 爽人
第2章 もりのなか
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第1話 もりのなか(2)

 ──と思ったら、出口が見えてきた、よーし!

 出口に向かって更に速度をあげてゴールイン! と思いきや、そこは池だった。どこかで分岐を間違えて戻ってしまった。

「げーーーー」

 再び来た道を戻る。

 みんな必死で遊歩道を進む、進む、なんだか分からない、どこをどう走っているか分からない。

 ただひたすらセミドロップハンドルにしがみつき、よろよろ不安定ながら必死にペダルを回す、回す、回す…回す回す回す回す回す…。

「母ちゃんに怒られる」

 それだけを考えて、泣きそうだ。と、先頭を走っていた一人が落ちてる枝に引っかかって転んだ。

 ずざざざ…。

 すんでのところで私ともう一人も止まった。

 発電式の自転車ライトは止まると消える。

 三人は真っ暗闇の中に取り残された感覚を全身で味わう。

 不安と恐怖はピークに達した。と、その時、ホーホー…フクロウかミミズクの鳴き声が何重にも聴こえてきた。

「ひええええ…」

 転んだ友だちも痛みなんてなんのその、我に返って自転車を起こすと一目散にこぎ出した。私たちも我に返って必死にペダルを回す。

「もう嫌だ、母ちゃんに怒られる」

 半ベソで、ペダルを回す、回す、回す…回す回す回す回す回す…。と、その時、遊歩道の先が白く光っていた。

「あ、出口だ」

 誰もがそう思って光を目指して自転車を走らせるが、ちっとも光は近づかない。

 進んでも、進んでも、近づかない。でも、光に向かって進むしかない、何故だかそう思った。

 どれくらい走っただろう、ようやく出口が見えてきた、月明りが住宅街の外れを照らしている。それとともに光は消えた。

「やったー助かった」

 三台は本当の出口に飛び出た、間違いないそこは池じゃない。

 そして自転車を止めた。

 三人が安堵して顔を見合わせていると、何かの気配がした。

 振り返る。

 そこには、白装束のおばあちゃんが笑顔で立っていた。

 そして、真っ暗な遊歩道にゆっくり歩いて行くと暗闇に──


 き・え・て・い・っ・た


 私は咄嗟に思った──主だ森のヌシだ。助けてくれたんだ。


 今も忘れない嘘のような本当の・お・は・な・し──

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