表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『おなか』 ─嘘のような本当のおはなし─  作者: 赤木 爽人
第2章 もりのなか
12/22

第1話 もりのなか(1)

 小学四年生くらいの頃、北海道に住んでいて、家の裏にあった広大な森のなかに中ぐらいの大きさの池があった。

 私は、友だちと毎日のようにその池で釣りをしていたのだが、遅く帰ると怒られるので、キチンと5:00には家に帰りつけるようにその池を出るようにしていた。もちろん腕時計はつけている。

 ──移動手段は自転車だ。

 セミドロップハンドル自転車なんて知ってる人います? ──中途半端な曲がりのドロップハンドルに座席の前のフレームに仰々しい変速機がついてるやつ。ブレーキランプやウィンカー付きなんて種類もあったけど──知っている人は相当なおじさん、もしくは淑女です。

 その日はみんな釣れなかった、だから時間が経つのも忘れてやっきになっていた。いつもだってメダカに毛が生えたような稚魚か、たまーに10センチくらいの鮒がかかるぐらいなので、そうやっきになる事もなかったなぁと今になって思うが、その頃は友だちと競い合ったり、どんな魚だろうと釣れた達成感が嬉しかったものだから、夢中になっていた。

 気がつくとあたりは真っ暗だった。

 腕時計を見ると6:00はとうに過ぎていた。

「やべぇ」

「帰らなきゃ」

「母ちゃんに怒られる!」

 その日は三人で来ていたが、口々にそういうと、釣り道具を片付け、セミドロップハンドルの荷台に括りつけると、一列になり颯爽とこぎ出した。

 来る時と同じ遊歩道に入っていった。

 池は遊歩道が四つ合流した中心にあったが、どの道も、大人が三人どうにか並べるくらいの幅の土の道だ。

 それに出口までには何箇所か分岐していたから入り口を間違えると大変だ。もちろん木でできた案内板が設置されていたが、遊歩道の周りを覆う鬱蒼とした木々は月明かりすら遮り真っ暗だ。

 セミドロップハンドル自転車は妙な体制で運転するので、オフロードには全く向いてない。

 土を覆った砂利や木の枝につまずき体制を崩しながらも、頼りない自転車のライトをつけてひた走る。

 誰もが必死だった。

 ライトの届かない先には本当の闇がある。それだけではなく四方八方闇だらけだ。それに夜行性の動物の鳴き声が聴こえてきたり、突然木々が騒ついたり、小動物がライトの光に目を光らせて道を横切ったり、子どもにとっては肝試しやそれ以上の恐怖を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ