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三話 ロリータ・ワーキング

おけおめ

地味に一話に挿絵が追加されてます

「じゃーな」

「うん、またね」


 慣れない体に戸惑いつつ、なんとか大学講義を済ませて、小野田は自宅、俺はバイト先に行くことになった。

 バイト先は大手コンビニエンスストア。

 この不思議な現象がバイト先にも及んでいるとは思うが、疲労感の募る今の状態でまともに働けるか不安だった。


 しかも今日に限って客多いし。


「お疲れ様でーす……」


 レジで忙しい同僚に軽く挨拶しながら、バックに入る。すでに1人制服に着替えて待っていた人がいた。

 今日同じシフトの同僚の伊澤さんだ。

 俺よりも若干先にこのバイトに勤めていた女子高生で、冴えない俺にも気軽に話しかけてくれてた人だ。

 まぁ会話一切なく仕事するのもそれはそれで辛いだけだからだろうが。


「あ、朝野さんお疲れ様です」

「お疲れ様です」


 今の自分を見てもなんの反応もない。やはり自分は最初からこの姿だった、ということになっている。

 そういえば制服はどうだろう……?うわ自分のサイズに合わせたやつだ。めっちゃ小さい。sサイズだろうか。

 今や見上げるくらいには身長差がある伊澤さんの隣で着替える。


「今日肉まんセールなんでどんどん作って売っちゃってーって店長言ってたよー。がんばろー」

「そいつぁてーへんだぁ。頑張るぞー」


 コミュ障というほどではないが、あまり会話をしない自分でも軽口を言えるくらいには会話できる。相手のコミュ力高いせいだろうが。


「ちょっともう一回さっきの言ってくれる?」

「ふぇ?」


 いつも通り返したつもりだが、伊澤さんの様子が少しおかしい。


「そいつぁてーへんだ!」

「ありがとう。いくらほしい?」

「なんの話?」









 私は伊澤優佳。コンビニで忙しく働くしがない女子高生だ。

 私は可愛いもの、子供が好きだ。変な意味ではなく、純粋に子供が好きだ。

 夢は小学校教師。それに向けて日々勉強中だ。


「そいつぁてーへんだ!」

「ありがとう、いくらほしい?」

「何の話?」


 バイトの同僚である朝野さん。見た目小学生くらいの幼女にしか見えない二十歳の女子大生。

 こくんと首をかしげてとぼけた仕草はもはや殺人級。舌っ足らずで子供が使うと妙に可愛い言い回しにきゅんとしたのでお礼にお金を払おう。

「見た目小学生くらいの幼女にしか見えない二十歳の女子大生」というパワーワードの塊でできている合法ロリータ。同じバイト先になれたことをこの世の全てと大いなる神様に感謝しつつ隠し撮りに専念する職場である。あ。若干ロッカーが高くて背伸びしてる可愛い。

 朝野さんがロッカーに荷物を詰めながら会話する


「でも近くの高校の人たちが大量に来るから売るのはできても忙しくなりそうだねー」

「そだね。朝野さんが売ってくれるなら私だったら朝野さんごと何個でも買う」

「まったまたー……ん?」


 いけない、最近本音がよく出る。


「ま、まぁ、とにかくがんばろう!」

「おー!」


 可愛らしく万歳をして乗ってくれる朝野さん。


「あ、鼻血出てるよ伊澤さん!?」


 私は子供が好きだ。変な意味ではなく、純粋に子供が好きだ。

 本当だ。








 基本的にコンビニバイトというのは仕事が多い。

 FFファーストフード作成、管理、接客、公共料金、掃除、etc……


 何がいいたいかって、つまり忙しい時はすごく忙しいのだ!(小並感)


「温めはいかがいたひましょうか?」

「温めて」


 いつも通り接客しているというのに、幼い体のせいか呂律が若干怪しい。毎回噛みそうだ。まぁ普段でも言えてるか怪しい時があるのだが。


 弁当と飲み物をレジに通し、レンジで温めている間に清算。物が少ないのですぐに済む。


「ポイントカードはお持ちですか?」

「ない」

「かしこまりました。756円になります」

「はい、1000円からでよろしいですか?」

「ええからはよして」

「はい、申し訳ありぇません」


 また噛みそうだ。

 レジ袋を用意し、後はレンジ待ちなのだが。


「……」


 レジ清算は終わっているから、横に避けてもらって、並んでる他のお客さんの対応をしたいのだが、先程のおじさんはスマホをいじっている。


「申し訳ありませんが、よけてお待ちになってもらえますか?」

「あ?」


 うへえ、なんでそんな怖い声だすんだよぉ……

 ギロリと睨むようにこちらを見るおじさん。こっちの身長が縮んだせいで見上げる位置からのひと睨みは恐怖倍増だ。

 そのままスマホに目を落とす。こういう時の30秒は永遠のように感じてしまう。


「お客様」


 伊澤さんがいつのまにかそばに寄っていた。

 となりのレジはどうしたの伊澤さん。


「横でお待ちになってください」

「俺は今待ってん……」

「お待ち下さい」


 笑顔で接客してるのに目が笑ってない。


「……」


 無言で横にずれるおじさん。

 それを見た伊澤さんはすぐさまレジに戻っていった。

 よし他のお客さんの対応をするぞ。


 ピーッ


 ……温め終わったようだ。








「さっきはありがとうございます」

「いやいやーわざわざ言わなくていいよー」


 やっとお客さんの波が去り、話ができるくらいには余裕ができた。

 先ほどのお礼を言うとニコニコと変わらぬ笑顔を向けてくれる伊澤さん。

 先程の怖い笑顔とは大違いだ、

 本当によくできた優しい子だなぁ。


「……あのクソ客、命拾いしたな、でも涙目の朝野さんむちゃくそ可愛かったしそこだけは褒めるべきなのかいやしかし……」


 すっごく小さい声でボソボソ言ってるがよく聞き取れない。FFの鮮度管理の計画でも考えてるのかな?真面目な人だなぁ。


 定時になり、ナイターの人と交代する時間になった。

 今日も忙しかったが、伊澤さんが優秀であまり大変な感じはしなかった。


「お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様でーす」


 退勤し、着替え終わって後は帰るだけとなったが、バックで少し雑談していた。


「うちは給料入っても口座番号知らないからあんまり使えないんだよねー、おねーちゃんは高校の頃から自由に使ってたのにさー」

「でも今から自由にお金使えるってなるとお金遣い荒くなると思うよ。欲に勝つ心が必要じゃよ」

「やっぱり大学生はいいなー」


 そんな他愛のない雑談をしていて一つ気になった。


「お姉さんいたんだね。しっかりしてるからてっきり長女かとおもったよ」


 何気なく言ったつもりだったが。


「いやいや、このおねーちゃんがまただらしなくてさぁ? ずぼらだし片付けできないし、そのくせ都合のいい時は姉づらするし……」

「た、大変そうだね……」


 自然としっかりとしてしまう環境のようだ。

 いつも笑顔の彼女らしからぬ愚痴に少し驚く。


「朝野さん妹いるんでしょ? いいなー。私も可愛い妹が欲しかったなー」

「いやいや、可愛いのは本当子供の時だけだよ。今は生意気で仕方ないから……」


 隣の芝は青く見えるというやつだろうか。


「そう私もこれくらいの妹が一番いいかなーって……」


 身長差でちょうど手を置ける位置にあった自分の頭に伊澤さんが手を乗せる。


「……!」

「お?」


 伊澤さんがしまったという顔をした。自分も自然な流れで一瞬わからなかったが、頭を撫でられているようだ。そういえば自分今幼女だったな。

 まぁちょっとした冗談だろう。こっちも冗談で返して和ませよう。


「もー、やめてよおねーちゃん!」


 怒ってないことを伝えるために笑顔を見せて、見た目相応の甘えた声で頭に乗せられた手を掴む。

 じゃれているつもりで返したんだけど。


「なーんて冗だ……」


 伊澤さんに抱きしめられていた。


「ごめんねぇぇぇぇぇ! おねーちゃんがわるかったよぉぉぉぉぉ!」








 私の名前は伊澤遥。子供が大好きな至って普通の(ry


 バイト終わりのちょっとした雑談で、自分でも無意識に、一応年上の人の頭を触ってしまった。


「……!」

「お?」


 やばいやばい。流石にこれは怒られる。あぁでもめっちゃ髪の毛サラサラで柔らかいし気持ちいいもっと触っていたい。


「もう、やめてよおねーちゃん!」


 そのちっちゃなおててで手を掴まれる。その笑顔はもはや天使か。あぁ神さま私のお迎えなのですね。感謝致します。


「ごめんねぇぇぇぇぇ! おねーちゃんがわるかったよぉぉぉぉぉ!」


 人は考えなくても本能で行動してしまう悲しき生き物である。

 私がそうである。

ことよろ

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