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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

輪廻から外して貰えるなら

この輪廻から外して貰えるなら……彼目線

作者: 夏本香柚

彼目線



 何度目かわからない。確か前回はルミネリアが身籠ったせいで、亡くなったんだった……


 ならば、彼女にはそばで笑ってくれているだけでいい。


 そうそうに赤ん坊を作らないと。



 ルミネリア、光輝く髪と、その光が通り抜けるような肌。瞳は榛色で…… くちびるは薄い桜いろ。


 何度生まれ変わっても、彼女は私より先に逝ってしまう。取り残された私は…… よく覚えてないが、たぶん後を追っているんだろう。




 今度こそ、そばで笑っていて欲しい。



 そんなある日、ルミネリアに似た女に出逢った。

 彼女より、幾分かは劣るがルミネリアに出来ない欲望を押し付けるにはちょうどよい。

 そうだな、ベッドで喘ぐところは彼女をそうさせているみたいでいとおしかった。


 

 子供ができたときいて、嬉しかった。

 これでルミネリアは子供を産まないですむ。

 婚約の準備も調った。彼女の両親も弟妹たちも、喜んでいる。彼らは相変わらず何も知らないようだ。

 今回は領地の飢饉がこの婚約の引き金になった。これで愛人は不問になったのだ。

 毎回、何かしらの問題がありお互いの家の結び付きでその問題に対応している。不思議なものだ。





 今日はルミネリアに婚約が調った事の報告なため、会いに行ける。何故か中々会えないのだ。

 今日はきっと会ってくれるはずだ。







 何故、知っている。何故、受け入れてくれないんだ。

 おもわず頬をはたいてしまい…… 冷たい瞳で責められた。


 馬車で帰ろうと思ったが、ふとあれを思いだしそちらに馬車を向かわせた。

 家に入ってみると、あちらこちらに壊された物が散らかっている。


 まさかっ!



「お前、彼女に、何を、言ったんだ」


 しなだれかかって、何事も無かったようにするが、視線は泳いでいる。

 こいつは身分もわきまえず何を言っているんだ。

 結婚? するわけが無いだろう。


 やはり、見た目だけだったか……

 気持ちが失せていくのがわかる。


 少し考えるためにも、家に戻ろう。






 夜明け近く…… 門前がざわついているようだ。

 何事かと起きて待っていると、声の中に『ルミネリア』という言葉が聞き取れた。

 慌てて部屋をでると、こちらに向かってくる執事がみえた。




「何があった」


「ルミネリアさまがお亡くなりに……」


「嘘だ! 昨日会った時は元気そうだったぞ」


「庭で心の臓の発作に襲われたようで…… 見つかった時はすでに……」


「馬車をだせ。すぐ向かう」


「はっ」




 何があったというのだ。

 信じない。まだ、愛してると告げていないのだ。

 まさか……





 ルミネリア付きのメイドが丁度応対にでてきた。


「昨日あれから何があったのだ」


「お嬢様はあの時着替えをされて、庭の散策にでられたのです。そばについていれば……」


「何故お前は付いていなかったんだっ」


 メイドはこちらをキッと睨んで言った。


「あなたさまの愛人に踏み込まれ、詰られ。そのうえ、暴力をふるわれたお嬢様が一人になりたいとおっしゃられたからです」


「あっ。それは」



「なんで、すって? 暴力に愛人? どういう事ですの?」


 真っ赤に泣きはらした目をこちらに向け、問いかけて来たのはルミネリアの母親だった。


「あ、いや。暴力を ふるったわけでは……」


「いえ、奥様。お嬢様が婚約は嫌だと、愛人に子供までいるひとに嫁ぎたくないといったら、この男はお嬢様に我儘をいうなと。そして頬を叩いたのです」


「なんですって」


「それは我儘をいさめる……」


「お前があの子を殺したのだわ! あまり強くない身体を持っているあの子を打つなんて。きっとその衝撃に耐えられなかったのだわ」


「そんな……」


「帰って。 あの子を返してぇ……」


 泣き叫ぶ母親に帰れと言われるとそれ以上は居られるわけもなく、帰らざるをえなかった。



 最後にもう一度、会いたかったが……


 私に向けられた軽蔑の顔が脳裏にちらつく。




 何故こうなった。


 そうだ、あいつがルミネリアに会わなければ……




「彼女が死んだぞ。嬉しいか……」


「おかえりなさい。どうしたの? 顔色が悪いわ」


「ルミネリアが死んだ…… もう……」

 

 嬉しいか? おまえのせいで死んだんだぞ。

 お前が、お前が追い詰めたんだ。

 涙がでて止まらない。靄でかすんでいるみたいだ。


「大丈夫よ、あなた……」

 

 彼女が私を掴んでそう言った。


「何が大丈夫なんだ……」

 

 お前のせいだ。お前が彼女のところへいって、要らない事を言わなければ、こんな事にはならなかったんだ。 



 お前のせいだ。おまえのせいだ。オマエノセイダ。



 気づくと、動かない人形がそこにいた。


 ルミネリア、ルミネリアはどこだ……





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