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vol.8
おお、一香、さっきあったことなんだけど聞いてくれ。兼言は、合流するなり堰を切ったように話始めた。
一香と分かれてから、しばらくして小さい男の子と女の子に出会ってな、聞けば両親は採掘現場で亡くなって、あるものといえば、両親が所有してた採掘場だけなんだと。なんとかその採掘場を再開させたいっていうじゃないか。
身なりもみすぼらしい格好だし、腹もすかしている。俺にできることといえば、なけなしのお金を渡してやることぐらいだと思ったんだよ。でも二人は受け取らない。施しは受けないっていうじゃないか。
余計になんとかしてやりたくなってな、だからこのお金は拾ったものだからとっておきなさいって、無理やり渡してやってきたんだ。
そうか、兼言、そういう詐欺の手口もあるという話をさっき聞いてきたところなんだよ。
どことなく満足げな顔をしている兼言を冷めた目で一香は眺めた。