愛菜とアダルトなゲーム
現在、大学1年生の十時愛菜は小学生の時に、当時、兄のように慕っていた(?)飯山吾郎に自分の写真を撮らせた。それは、お遊びのようなコスプレのような写真が多かったのだが、問題なのは裸の写真もかなり撮らせてしまっていることだ。
(なぜ・・!!)
なぜ、調子に乗ってしまったというのか。
吾郎は愛菜を都合よく誘導した。そして、幼い愛菜は吾郎の下心に気付きながらも、誘いに乗った。愛菜に、肌を男に見せる事への恥じらいが無かったというわけではない。その恥じらいを楽しんだ。両親にも、クラスメイトにも知られてはいけない遊びを愛菜は楽しんだ。
そして、その遊びを共有できるただひとりの相手が『兄ちゃん』こと飯山吾郎だった。
(相手を考えてよ! 相手はコンマ以下のロリコン親父なんだよ!)
その遊びも長くは続かなかった。夏休みが終わる頃、愛菜の父が交通事故で急死したのだ。突然、一家の大黒柱を失った十時家。愛菜と母、幼い妹の純菜の母子家庭は新築の一軒家を手放すしかなかった。小学生の愛菜はそれまでの幸せな生活を失い、吾郎とのただれた遊びも消滅した。
(私は昔の遊びを、ただ忘れることで終息させた。でも、こんな形で凝りが残ってしまって・・!)
「ど~こに隠してるんですか? 吾郎さん?」
場所は飯山商店の店舗を兼ねている飯山宅の部屋。愛菜は吾郎のパソコンの中を漁っている。吾郎は、『君の写真は全部処分した』と言ったのだが、愛菜はそれを真に受けなかった。
と、いうことで、愛菜は自分を撮影した画像を必死に探している。それは、愛菜自身は見たくもない物なのだが、速やかに発見して自分自身の手で消去しなければならない。
吾郎に、所有しているデジカメを出させて中身をチェックし、次に吾郎のパソコンの中身を調べている。
「だから、言ってるじゃん。写真は全て処分したって。無い物は出しようがないよ」
と、言う吾郎。その吾郎をキッ!と睨む愛菜。
「あなたが! 自分からソレを消すわけないじゃないか! あなたはソレらをきっとどこかに持っていて、ソレを眺めては・・・」
愛菜は自分が言ったその光景を、自分で想像してゾワッ、と嫌悪した。愛菜が小学生の頃には想像できなかったそれ。吾郎は忌まわしくも汚らしい行為に写真を使っているはずだった。
「だから、今はそんなことやっていないよ」
『今は!?』、愛菜は吾郎のその言葉に耳が腐りそうだった。
「俺は君と別れてから反省したの。色々と惜しい気持ちもあったけど、君との記録は消去したんだよ」
「嘘、言わないでよね」
愛菜は取り合わず、パソコンのディスクにあるフォルダーを次々に開いていく。
「まったくどこに隠したのよ、私はパソコンなんて使ったことないんだから・・。兄ちゃんみたいなオタクにややこしい事されてたら私わかんないよ・・」
「は!?」
愛菜のボヤキに吾郎が意外そうな声をあげる。
「は?って何なの、兄ちゃん」
「いや、君が”パソコンを使ってない”などありえない!」
愛菜はそれについて考えた。確かに、今、自分はパソコンを使用しているわけで。
「そりゃあ、学校の授業で習うもん。しかたがなく覚えるわよ。でも私は、コンピューターとかゲームは好きじゃないの」
愛菜のこの発言に対しても、吾郎は意外そうな顔をする。
「愛菜ちゃんは子供の頃、俺のパソコンを勝手に使ってたの。・・丁度、今みたいにな・・」
「私がそんな事するか~! 兄ちゃんのパソコンに用事なんかないですよ!」
「違う! 俺のパソコンでゲームをしていた。・・色々とな」
愛菜は思い出そうとする。座敷で色々とテレビゲームをしていた記憶はあるのだが・・。
「そりゃあWiiとか遊んでた記憶はあるけどさ、私がパソコンで何をやってたって言うんだよ」
「それは・・、エロゲ・・じゃなくてギャルゲーみたいなもんを」
「私がギャルゲーなんかやるか~!」
「だから! 俺が『良くない』って言っても勝手にやってたんだって!」
8年前の飯山商店。29歳の吾郎は店じまいを済ませて、奥の座敷へと上がる。
「とときん、もういい時間だから、お家に帰ろう・・って、いないな」
座敷には愛菜の姿は無い。吾郎には愛菜の行先に当たりがある。吾郎は自室に向かうと、案の定、愛菜はパソコンに向かって遊んでいた。
「とときん、何を遊んでるんだい? ・・って、それ『俺の妹は狩猟系彼女』じゃねえか!」
「ああ、うん。また新しいの買ったんだねえ」
愛菜が遊んでいるのはいわゆるエロゲー。幼い外見の少女が登場して、その彼女達と仲良くなっていくというアドベンチャーゲームの類だ。ただし、問題なのは登場する少女たちは作中で裸になり、主人公の男と性行為をするという内容で、18歳未満の子供は遊んではいけないものだ。
「それってディスク入れないとプレイできないヤツじゃん・・」
「ムフフ、テキトーなとこにかくしといても私にはわかるのだよ」
「いやだから、それは子供が遊んじゃダメなのよ!」
「ダメなのぉ? なぁ~んで?」
「いや、それはだね・・」
言葉を濁している吾郎。その吾郎に愛菜はにっこりと笑う。
「何をいまさら。つまりこういうことでしょう」
愛菜はマウスをクリックすると、遊んでいるゲームのBGMが変わり、雰囲気は一変する。ヒロインの少女は淫らに主人公の男に迫っていく。
「こんなもの見ちゃだめだ。とときんにはまだ早い」
「いい子ぶらないでよ兄ちゃん。私をハダカにしてしゃしんとってるヘンタイさん」
吾郎は気まずそうに目をそらす。パソコンの画面ではゲームが勝手に進行している。愛菜がそれをオートモードにしたからだ。ヒロインの少女は実の兄である主人公に淫らな行いをしようとしている。
「私がなぜ、兄ちゃんにだけハダカをとらせているのかわかるぅ?」
「なぜなの? とときん」
「それはね、兄ちゃんのことが好きだからだよ」
しばし向き合う愛菜と吾郎。だが、愛菜はおかしそうに笑う。
「プッ! 何を真に受けてんだよ! ウフフフフ、ハハハハ」
「あのねえ、大人をからかうんじゃありません」
ひきつった苦笑いしている吾郎。パソコンの画面ではヒロインが兄を押し倒していた。ヒロインは兄のことを『アニキ』と呼んで性的に弄んでいる。
「兄ちゃんもベッドの上で横になって」
愛菜の吾郎への唐突な要求。明らかにエロゲーに触発されている。
「でも・・」
「遊びだって、遊び」
仕方がなくという感じでベッドに仰向けになる吾郎。その上に、ポフンという感じで乗っかる愛菜。
「ちょ、ちょっととときん」
「ウフフ、声がうわずっちゃってんよ。アニキ♪」
「あ、”アニキ”より”兄ちゃん”の方がいい」
「遊びを解さない奴め! まぁいいや、あのゲームやってわかったんだけど、兄ちゃんって”妹モエ”ってヤツなんでしょー」
「え!? ああ・・うん」
吾郎にしてみれば、ちと違うなというのがあったが、合わせたような答えになる。
「やっぱり! 兄ちゃんはヨメも妹もいないもんねー。で、私には兄がいない。ちょうどいいじゃん、私が兄ちゃんの妹になるよ!」
「ああ、そう。ありがと・・」
ひきつった笑顔の吾郎に、不満なご様子の愛菜。
「もっと喜べ! ったく!」
ベッドの上で吾郎は愛菜の小さな身体を抱きしめる。吾郎にしてみれば望んでいたモノ手に入ったのだ。それでいて、罪の意識、良心の痛みが歪んだ男の心をさいなむ。
吾郎は迷いはしたが、愛菜と堕ちることを選ぶ。
その日から、愛菜と吾郎はただれた関係になった。