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駄菓子屋でのひと夏の偏愛  作者: テツヤ
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禁断の撮影会

 時は8年前。10歳の愛菜は、少女たちの写真集を飯山吾郎から借りた。当人には悪気は無いのだが、兄ちゃんこと吾郎の持ち物を漁っては、面白いと感じた物を強引に借りるのだ。

 当時、愛菜が住んでいたのは父が建てた一軒家であり、愛菜は個室を与えられていた。

「な~んか、兄ちゃんってば色々もってるからタイクツしないよね~」

 愛菜は本をめくりながら少女たちの裸を眺める。

「キミたちはハダカでしゃしんとられてさ・・、いったいいくらお金もらえんの? マンガどころかさ、ゲームも好きなだけ買えちゃうくらいのお金もらえんの?」

 愛菜はモデルの少女に対して、悲壮感や同情心は持たなかった。今の18歳の愛菜が知れば怒りそうだが、当時はまだまだ子供なのだ。

「愛菜~、ご飯ですよ~」

「は~い!」

 夕飯の支度ができて母親の呼ぶ声。愛菜は愛菜は少女写真集を、とっさに『小学五年生』の雑誌に挟み、それを本棚につっこんだ。愛菜は少女の裸が載っているこの本が、親に見つかると危ない代物だとはわかっていた。



 愛菜は夕食を済ませたあと、一家の一番最後に風呂に入る。そして、湯船につかりながら今日読んだ少女写真集のことを考えている。

(あの写真の女の子たちは、ハダカとられてどんな気持ちになったんだろう?)

 愛菜は湯船から上がって、モデルの少女の姿を思い出しながら、鏡の前でポーズをつけて自分の姿を映してみる。

 愛菜には鏡に映った自分の姿が妙につやっぽく見えた。湯煙の中でしずくに濡れる自分の姿が子供心にも色っぽく見えてしまったのだろうか?

「私って、もしかしてキレイ? それともカワイイ? 言われるとしたらぁ、私はどっちが言われたいかなぁ?」

 これが愛菜とって初めての”自惚うぬぼれ”だった。



 とある日曜日、飯山商店に遊びに来た愛菜の姿を見て、吾郎は少し驚いた。

 なんというか、少女ながらに精一杯のおめかしをした感じの姿を愛菜がしていたからだ。服装はフリルの付いた白いワンピースで、髪には細い赤いリボンがふたつ結んである。

 なんとも”よそ行き”とも何ともつかない姿の愛菜ははにかみながら吾郎に問う。

「兄ちゃん、コレどうかな?」

「え、ああ、うん。これからどっか行くの?とときん」

 吾郎のその回答に、愛菜は『ハァ!?』といった表情になる。

「違うよ! なんていうか! 兄ちゃんから見て・・、その・・、私はどう見えるかなあ、ということであって」

 愛菜にしては歯切れが悪い。吾郎は愛菜が女としておしゃれに目覚めた、と解釈した。吾郎は、この場合ほめとけと思った。

「ああ、うん。カワイイよ、すごくカワイイ」

 すると意外にも愛菜は落胆した顔になり。

「あ、そっちになるのね。・・・ううん、なんでもない」

 吾郎は笑ってそんな愛菜の頭を撫でまわした。愛菜は父親にも見せない笑顔でそれに応える。

「とときんさ、リップクリーム付けてるだろ。母さんのでしょ」

「あ! それ気づいちゃうんだ。う~、子供には早いって言いたいんでしょ!」

 愛菜は母の化粧品を勝手に使って薄化粧をしていたのだが、吾郎に見透かされた。愛菜は今更ながらに恥ずかしくなって顔が熱くなってくる。

「ううん、とときんはそんな化粧しない方がずっとカワイイ」

「あ・・うん・・」

 愛菜はそんな言葉を言う吾郎にだけに感じる”幸せ”に似た感情にひたった。そして、キレイではなく、カワイイと言われるのも良いと思った。

「兄ちゃんさ、デジカメもってるでしょ。私をとってよ」


 愛菜と吾郎は飯山商店に場所を移して、内緒の撮影会をした。まだ何もやましい行為をしているわけでもないのに、禁断の遊びをしているような雰囲気を愛菜は楽しんだ。

「ハイ! とときん、笑って~。ん、なんでムッとしてんの?」

「兄ちゃんさ、なんでそんな床にはいつくばってから、下からのアングルをねらうわけさ」

「え! いや~、変かなあ? 特に意味は無いんだが・・」

 吾郎は苦笑いして下心をごまかそうとする。

「まったく・・、何かイヤラシイんだよなあ」

「いや、さっき撮った画像見てみ、悪くねえぜ」

 愛菜は吾郎に見せられた画像を見て、悪い気はしないのか否定の言葉は無かった。

「じゃあ、とときん。ソックスを脱いで」

 わずかにためらいの態度を見せたが、愛菜は吾郎の言いなりになる。愛菜は靴下を脱ぐ姿も吾郎に撮られてしまった。

「じゃあ、とときん。今度は床に仰向けにねそべって・・、って違う!それは”うつぶせ”。・・ん、そうそう。そのまま、視線はコッチに・・」

 吾郎は愛菜が色っぽい表情になったのをいいことに一枚撮影。

「とときん、胸のボタンを外して、・・胸元をちょっと広げる感じで」

 愛菜は吾郎の言われるがままにする。そして一枚ずつ艶姿を吾郎に撮られる。

「じゃあ、とときん。スカートをちょっとまくってみようか~、キレイな太ももを・・」

 吾郎はそこまで言ったとき、愛菜がついに反発した。

「いいかげんにせんか~!」

 愛菜は顔を真っ赤にして跳ね起きる。

「兄ちゃんは、あのエロ本の女の子みたいに私をぬがすつもりだろうが! 私はそんなつもりはないんだかんね!」

 愛菜は怒りながら、服装を整えて帰ろうとする。

「あ! いや、とときん! やりすぎたって!」

「兄ちゃん、今日とったしゃしんはゲンジュウにホカンするように。だれかに見せたら、そんときはコロス!」

 愛菜は吾郎にそう命じると、ズカズカと駄菓子屋を出ていった。

 顔のほてりと動悸が収まらない愛菜。

「まったく! あのエロオヤジが! もうちょっとで気をゆるすとこだったろうが・・」


 愛菜と吾郎の禁断の撮影会はその日だけでは終わらなかった。何度となく吾郎に撮られていくうちに愛菜は少しずつ気を許していく。そして、愛菜は吾郎のいいなりに振る舞い、吾郎に自分の裸を喜んで撮らせるようになった。





 時は8年後の現在に戻る。

 『愛菜ちゃんが今日も来ねえかなあ』と考えながら飯山商店で店番をしている吾郎。店内には珍しく客の小学生がたむろしている。

 そんな吾郎の元へ、愛菜が血相を変えて飛び込むようにやってきた。

「吾郎!・・さん」

「何・・? 愛菜ちゃん」

 愛菜は店内にいる子供たちをはばかって、言葉を飲み込んでいるが必死になっているのはすぐわかる。

「今・・、ここではちょっと。大事な話があるんですけど!」

「ごめん、俺、今動けないんです」

「・・クッ!」

 愛菜は子供たちが店内から消えるまで小一時間、吾郎の前にいた。吾郎は愛菜の雰囲気から、とてもにこやかに談話などできなかった。

 やっとこ二人きりになったときに、愛菜が”大事な話”を切り出す。

「吾郎さん・・、アンタ、私の裸を持ってるでしょうが! それも一枚二枚じゃない数の!」

 愛菜は怒りを必死になってこらえているご様子。こぶしを握り締めてプルプルと震えている。

「あ~・・、愛菜ちゃん、それ、ついに思い出しちゃったんだね。言っとくが『写真は厳重に保管しろ』って言ったのは君・・・」

 ズドーンと吾郎の机を叩く愛菜。”そんなことはいいから”とでも言いたげだった。今の18歳の愛菜は身長167cmであり、女性としては大柄である。その迫力に吾郎は震えた。

「あ~ゴメンゴメン。その、君の写真なんだけど全部処分している」

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