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駄菓子屋でのひと夏の偏愛  作者: テツヤ
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飯山家のお風呂

「私は、お姉ちゃんが飯山さんとこで寝てると聞いたから迎えにきたんだよ」

 飯山商店の座敷で5か月ぶりの再会をした、姉の愛菜と妹の純菜。愛菜にしてみれば、本来来るはずのない場所で身内に再会した不思議があったのだが。

「聞いたって、誰に? いや、・・なるほどね」

 純菜は、妹の純菜がここに来ている理由がわかった。兄ちゃんが、飯山吾郎が家に連絡したということだ。

「よけいなことを・・」

「何がよけいだよ!」

 純菜が怒ったような声を出す。自分がわざわざここに迎えに来た事がよけいだと取ったようだ。

「いやいや、そうじゃなくてさ。私を起こせばそれでいいのにってことね。何考えてんよ兄ちゃんってば」

「兄ちゃん? ・・それ、飯山さんのことでしょ」

 純菜は、愛菜のことを探るような目でじっと見てくる。愛菜は昔に返った気で、吾郎のことをついつい”兄ちゃん”と呼んでしまう。怪訝そうに見られるのは当然だった。

「あ~、私は昔、この店の常連でさ。そんときにあの人を”兄ちゃん”って・・」

「ふうん・・」

 純菜はなおも怪訝そうな表情を変えない。それでも、『まあ、いいけどさ』といった感じになる。歳がそこそこ離れた妹の純菜は、今年で小学5年生になった。顔は姉に似ていないと言われるが、純菜は愛菜から見ても愛らしい顔をしていると思う。

 ただ、純菜は姉に対して懐く感じではない。生意気とも言えないのだが、あえて姉を喜ばせる妹でもない。そして、たまに容赦がない。

 純菜はいきなり、愛菜へ核心をつく質問をしてきた。

「お姉ちゃん、ついにクニオに捨てられたんか?」

「な! なんで!? 何で、そ・れ・を!?」

 純菜は愛菜の恋の破局を言い当てた。愛菜はそれを誰にも言ってないつもりなので、びっくりしてしまう。

「飯山さんが、『彼氏となんかあったみたい』ってね。そしたら、クニオとハメツしたとか考えるのが自然じゃね?」

 愛菜は自分が泣いてしまった経緯を思い出す。吾郎に彼氏の存在を問われて、それで抑えていたモノが溢れてしまった。あろうことか吾郎の前で、いや、吾郎の前だったから?

 それにしても、純菜が、交際相手の名前を出している事が気になった。それも吾郎に漏らしてしまったような気がする。

「純菜さ、なんで国男の名前まで知ってるの? それも兄ちゃんが・・?」

「何、言ってんの! 私に『クニオが・・、クニオが・・』って、散々ノロケ話を聞かせたのは、お姉ちゃんでしょうが!」

「そうだっけ・・?」

 愛菜は照れ笑いをした。

「・・ったく! ノロケなんて聞かされる側は面白くねーんだよっ」




「お風呂沸かしたから、お二人さんで入っていきなよ」

 吾郎が愛菜達にそんなことを言ってきた。冗談とも取れるが、愛菜は本気と取った。

「いえ、これ以上お邪魔するわけにも・・」

 愛菜は社交辞令的に丁重に断る。だが、内心ではスケベオヤジに怒鳴ってやりたかった。そこは妹の手前でこらえる。


「入っていっても良かったんじゃないの?お姉ちゃん。うちに帰っても今日はお風呂無い日だよ」

 母、愛菜、純菜3人の十時家は現在、アパート住まいだった。父が亡くなって以来、家賃の安い所に移り住み、倹約生活が続いている。

「そ~れは、さすがにお風呂まで頂戴するわけには・・」

「む~、私はヨソの家のお風呂に入るの、けっこう好きなんだけどぉ」

「友達ン家じゃないの! それに、兄ちゃんとこは昭和作りの古いタイル風呂なんだよ。純菜はがっかりするだけだよ。今度、スーパー銭湯連れっててあげるからさ」

 純菜はそれには答えず、じっ、と黙って姉を見つめている。そして、自分の疑問を口にする。

「お姉ちゃんはさ、飯山さんとこのお風呂に入ったの?」

「・・・ん?・・・えと」

 愛菜は”なんで!?”と、思い直す。私は、あの駄菓子屋の、飯山家の風呂を知っている、覚えている? 古めかしいタイル作りの風呂が脳裏によみがえる。

 8年前の小学生のとき、私は吾郎に言われるままに従った。私は、吾郎にハダカにされて風呂に連れ込まれたことがあったかもしれない。そこで吾郎と私で何があったのか? 二人でハダカになって、楽しく入浴したのか? それですら問題行動なのだが、吾郎は私に何かしたかもしれない。

 思い出したくもないよ・・!、といった感じで愛菜は首を振った。純菜は、そんな姉を怪訝そうに見つめる。





 8年前の飯山商店。時は夕刻になり閉店時間になる。だが、季節は7月下旬であり外は陽の光があり、今が児童が帰宅をかされる時刻だと思えない明るさだった。

 29歳の吾郎は店のシャッターを降ろす。彼には残念な理由があった。可愛がっている愛菜が今日は店に来なかったのだ。

「ま~、昨日はあんなことしちゃったからねえ・・」

 吾郎は昨日、店の奥の座敷で10歳の愛菜にTシャツを脱がせ、上半身ハダカのままでいるように命じたのだ。

 もう、あの子は二度とウチには来ないかもしれない。

 そう思うと、やりすぎたという反省の念が吾郎に浮かぶ。それでも、スクール水着の白い日焼け跡を見つめられて恥ずかしそうにする愛菜の姿を心の中で反芻する。

(あの良心がチクチクする感覚がたまんねえ・・!)

 『オメエに良心なんかあんのかよ!?』、と自分自身にツッコミを入れて、思わずニタリと笑う吾郎。

 昨日、吾郎は愛菜の幼く白い肌を堪能して、最後にTシャツを返してあげた。羞恥に顔を赤くした愛菜は、自分のTシャツをひったくるように取り戻すと身に着ける。そして、逃げるように家に帰っていった。

 店じまいを済ました吾郎は風呂の支度をする。そして、吾郎は独り入浴を始める。


・・カタン


 風呂の中から自宅の中でかすかに物音が聞こえた気がした。しかし、吾郎は裸で入浴中ということもあり、気のせいということで片を付ける。

 吾郎は湯船から出て風呂椅子に腰かけて頭を洗い始める。


「だ~れ~だ?」


 誰かが吾郎の背中から抱きついて吾郎の目を両手で覆う。吾郎はさすがに驚いて。


「誰!?」

「だ~か~ら! だ~れだ?、って聞いてるでしょ」


 吾郎の背中にぺちゃりと当たる身体つきからも小柄な女の子だとわかる。その女の子は声色を使っている(つもり)が、吾郎がこれに思い当たるのは一人しかいない。

「とときんか?」

「ウフッフフ、せ~いかい!」

 やはり、とときんか!と思った吾郎だった。イタズラにしても自宅に潜入するとは度が過ぎる!、と思いつつも、愛菜が再びこうして会いに来てくれたのがうれしかった。

「今日はどうしたの?」

「ん~、今日はずっとプールで遊んでたのぉ」

「そうなんだ~。それより、なんで君がお風呂に入って来ちゃってるかってことなんだけど」

「ん~、兄ちゃんが昨日私にしたこと忘れちゃったのぉ~? 夕方まで私をハダカにして遊んでくれたことぉ」

 愛菜はわざと妖艶ぶった声で話している。媚びている感じではなくて、子供ながらに挑戦的な口ぶりだ。

「今日はさ、フクシュウに来たんだよ。フクシュウに。兄ちゃんさ、女にイタズラしてタダですむと思ってんのぉ」

「いや・・、そのぉ~。それより、とときんさ。目のコレどけてくれない?」

 愛菜は、最初の”だ~れだ”の体勢から動いてないわけで、吾郎の目は愛菜の手で覆われたままなのだ。

「え~、だってぇ~、恥ずかしいよお。だって私、今、マッパだもん。手をどけたら見られちゃうじゃな~い」

「嘘ぉ、とときんが水着つけてるのはわかるよ。背中に冷たいのが当たってるし」

「ちぇ! ばれたか!」

 愛菜はようやく吾郎の目から手をどける。そして、シャワーから湯が出るのを確かめてそれを吾郎の頭にかける。

 背中から密着する体勢はそのままで良かったんだが、と吾郎は残念に思ったが言わなかった。

 愛菜はプールで泳いだ水着を脱がずにそのまま来たのであろうことがわかる。スクール水着が冷たく水に濡れている。

「ほら、貸しなよ。かけてあげる」

 吾郎はシャワーの湯を愛菜の身体にかけてあげる。プールから上がってからそのままで体が冷えたのか、愛菜の腕や太ももの鳥肌が痛々しい。

 吾郎は愛菜の身体に湯をかけながら、その腰や太ももに触れる。愛菜は気持ちよさそうに、吾郎のされるがままにしている。

「頭にもかけるね。目をつぶって・・」

 吾郎は愛菜の水に濡れた髪に、シャワーの湯をかけてあげる。愛菜はシャワーの温かいしぶきを顔にあびると、そのあどけない顔を恍惚とした表情に変える。

「ん~~~、あぶぶぶぶぶぅ~~。これ、気持ちいい~~~」

 吾郎は気持ち良さそうな表情の愛菜に対してやましい考えが浮かんでくる。この雰囲気的にごくごく自然に愛菜を脱がせられないかと考えた。

「ん~、じゃあ、とときんさ、その冷え切った水着脱ごうか? 身体もキレイキレイにしてあげる」

 吾郎がそう言うと、愛菜は途端に表情を固くする。

「また兄ちゃんは、そんなに私のハダカが見たいのか! ちがう!私はフクシュウに来たのだ! 今度は兄ちゃんが見られる番なんだよ」

 愛菜ははしゃぎながら吾郎の身体中にシャワーの湯を当ててくる。

 吾郎はそんな愛菜に喜んでつきあいながらも、残念に思っている。愛菜のスクール水着を脱がせられたら、もっと触れ合えたんだがなと。

 吾郎の中に元からある歪んだ性癖が頭をもたげてくる。年端もいかない少女の身体に対する、歪んだ欲望だ。時間をかけて慣れさせていけば、愛菜を手に入れられるのではないかと考える。

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