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駄菓子屋でのひと夏の偏愛  作者: テツヤ
16/33

気持ちのいいこと

 十時愛菜は今日も飯山商店の座敷に上がり込んで飯山吾郎と”逢引き”をしている。

 愛菜は今では18歳の大学生なのだが、やっていることは小学生の頃に吾郎とした事と大差はない。

「ウフフフ、吾郎さん。せっかくだから一枚撮ってよ~」

 愛菜から、そうねだられた吾郎はニヤニヤしながら喜んでデジカメを用意する。

 愛菜は新しい夏服を買ってきて、それを吾郎にみせびらかしているのだ。

「それじゃあ、愛菜ちゃん、ちょっとポーズつけてみようか」

 吾郎からそんなことを言われた愛菜は苦い顔をして。

「それだ! 兄ちゃ・・吾郎さんはそうやって、いやらしい方向にすぐ持っていくんだ! でも、そういう昔と変わってないところは嫌いじゃないんだけど」

「いやらしくないって、愛菜ちゃんがいやらしくなくて可愛いポーズを取ればいいんだよ」

 愛菜は照れくさそうにして、自分なりに色っぽいポーズを取ってカメラに視線を向ける。吾郎はうれしそうに一枚撮った。

「なんかこの感じ、久しぶりというか。子供の頃もこうやって・・」

 愛菜は雑誌のモデルの姿を思い出しながら、腕でポーズをつけてみる。その姿はニヤついた吾郎にカメラで撮られる。

「いやらしくないポーズをしても、アンタの顔がいやらしくなってんだよ吾郎さん!」

 いやあ・・、という感じで頭をかく吾郎と、少々照れくさそうに笑う愛菜。

「今度は吾郎さんがポーズを指定してよ」

「それじゃあ、胸元のボタンを外してみようか」

 ポーズを指定しろと言えば、それが胸元のボタンを外す話になる。愛菜は黙ってそれに従った。

「じゃあ、膝立ちして・・、そう。それから、畳に両手をついて・・、顔はカメラに向けて・・」

 愛菜が吾郎に命じられたままに動くと、やはりというかいやらしいポーズになってしまう。愛菜は『やっぱりね』と思いながら、吾郎から撮られることを楽しむ。

 愛菜はわくわくしながら次の命令を待った。服を脱げと命じられるかもしれない、と恐れながらもそれを期待した。だが、吾郎は。

「じゃあ、この辺にしとこうか。けっこう楽しめたよ愛菜ちゃん」

 『なんで!?』と思った愛菜は。

「・・もっとしていいんだよ吾郎さん」

「ん~、この前からだけど、どうかしちゃったの? 愛菜ちゃん」

 愛菜は正直、カチンときた。このところ吾郎から、この「どうかしちゃったの?」を何回も言われてる気がする。真人間から、バカな行動を諭されているようなそんな言葉。

 確かに、自分でもおかしい気はするのだが、この吾郎ならば喜んで食いついてくると確信をしていた。

 相手が吾郎だからかまわない。そういうことだった。昔からイカれてはいるが、悪いことまではしてこない。二人が互いに楽しめる遊びをしてくれると信用をしている。8年間も断絶していても吾郎の側から構ってはこなかったわけだから、このあとに後腐れのある付き合いにはならないなどと考えた。ところが、愛菜が露骨に誘っても反応は薄い。

(なんか、壁を作られている!?)

 愛菜は小学生の頃には無かったものを、18歳の今では持っている。それは女のプライドだった。

「どうかしてるのは吾郎さんの方でしょう?」

 愛菜は胸元のボタンをもう少し外す。自分のブラジャーが吾郎から見えても構わないという範囲で。この行動だけで自分の顔が熱くなるほどの羞恥があるのだが、愛菜は自らを奮い立たせる。

 愛菜は力づくで吾郎をひざまずかせて、彼の頭を抱く体勢になる。そして、吾郎の目の前に自分の胸を近づけた。

「ええっと、愛菜ちゃん・・?」

「いいじゃないの、昔みたいに遊びましょうよ。アンタらしく食いついてきなさいよ!」

 吾郎はさすがに愛菜のこの行動に驚いていた。

 男は女から迫られる状況に憧れるが、実際自分がそうなればどうなるだろう。

 吾郎は愛菜の真意を探るような目つきになっていた。しかし、目の前に18歳の娘になった愛菜の乳房に視線が移る。独身男の吾郎からすれば金銭を払ってでも欲しいもののはずだが。

「よそう、愛菜ちゃん」

「あ・・、ホモになったの? アンタ」



 しばらく二人の間に気まずい空気があった。いたたまれなくなった愛菜が声を出す。

「ごめん、さすがにホモは言い過ぎだった。だけどさ」

「いや、君が・・、国男君だったけ、彼と別れてから疲れているのはわかっているんだ。だからといって、俺とアレしても問題なんだな」

「違う!」

 愛菜は首を振る。

「それはもうふっ切れた。国男は国男で別の恋に進んでいる。失恋で疲れたというのは本当なんだけど、吾郎さんとこに来ているのは単純な理由なんだよ」

 吾郎は単純な理由と言われて、”何それ”という顔になる。愛菜は、その理由を話すように促されることになって、少しためらったあと話す。

「私はね、吾郎さんにしてもらったのが今までに一番気持ち良かったんだよ」

 愛菜の淫靡な発言に吾郎は目を丸くしている。

「小学生なんだからエッチな学習なんかしてない。その前に体験で知ったんだよ。8年前の私は吾郎さん無しで生きられなくなったんだ」

 愛菜が8年ぶりにこの飯山商店の前を通りかかった時、飯山吾郎との関係を思い出して恐怖し、嫌悪した。それでもその時に、その場から逃げ出すのではなく、この店に入ってしまったのはその忘れられない快楽が理由だと愛菜は思う。

 確かに、国男との関係が壊れていなければそこまではしなかったのだろうが。

「吾郎さんと別れた私は、自分で慰めたり、年下の国男を使って遊んだりした。それはそれで良かったけど、吾郎さんが与えてくれたモノには及ばなかった。満たされない私が、子供の頃と同じ体験を望んでもそれは悪いことじゃないでしょう?」

 吾郎は首を縦には振らない。でも、なにやら幸せそうな顔をしている。

「大人の吾郎さんと、もう18歳の私が合意の上でエッチなことをしても悪いことじゃないでしょう。誰かにバレても問題じゃない。遠慮なんかしなくてもいいんだよ」

 吾郎は身体をビクビク震わせている。明らかに強く葛藤している。

 愛菜はもうひと押しだと思って、ニィと笑う。愛菜は吾郎にとどめの言葉をぶつけることにした。

「好きにしていいんだよ♪ 兄ちゃん」

 愛菜が耳元でそうささやくと、吾郎はガバッ、と立ち上がる。キャッ!、と小さく叫んで愛菜が身構えるのだが。

「家まで送るよ。夕菜さんが心配するから」

 吾郎は愛菜の母の名を出して拒絶する。拒絶というか紳士的な対応というのか。愛菜はここにきて懇願する態度になってしまう。

「待って、待って! 面倒な女だって思ってるわけ!? あなたにつきまとうつもりはない! この夏が終わったら私は消える。ここにだって二度と来ないし」

 吾郎は愛菜の発言を聞くと、ハタと動きを止めた。

「・・・いや、それは困る。俺は愛菜ちゃんが嫌いなわけじゃないんだ」

 愛菜は吾郎の思考が理解できなくなっていた。吾郎は8年前と変わって真人間になったというのか? しかし、それも違うと感じた。そして、自分が先ほど取った懇願的な態度を恥じた。

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