表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/27

19

またちょっと間が空きます。すみません。





廊下に座り込んで頭を抱えていた俺は、気を取り直して向かい側の扉も調べてみる事にした。今度は嫌な予感がしたので鍵穴から中を覗いてみる。


真っ白な部屋の中、何かの動物がグルグルと動き回っていた。

どう見てもゾンビですね。

扉は開けないでおこう。隣の部屋も鍵穴からのぞくと今度は人型のゾンビが徘徊していた。やっぱり開けないで扉を離れる。


手元の鍵束を見る。

これで閉じ込めちゃえばいいんじゃないかな。

でも音がするとまずいかも。さっき鍵をかけた時は小さな音しかしなかったけれど、どうしようかな。


扉の外に立って考える。

足元を見降ろすと綺麗な絨毯があって、どおりで足音がしない訳だと今更ながら感心した。


その絨毯が汚れていない事に気付く。

つまり、ゾンビたちはこの部屋の外に出たことはないって事だ。

…鍵はブラフかな。

扉を開けなければ出て来ることはないんじゃないかな。それを鍵を開ける音で刺激すると逆に出て来るとか。


まだ鍵は掛けずに、最後の部屋を覗いてみる。

鍵穴からのぞくと、この部屋だけは薄桃色の色がついていた。

…ん?

ずっと覗いていると、色が動く。濃淡が変わっていく。

あれ?この色何だか円形な気がする。

これって。


瞳孔?


俺が何だか怖い考えに到った時に、その色がすっと鍵穴から無くなった。

それから鍵穴を覗いている俺に目線を合わせている人物が見えて、あろうことか手招きをしている。


敵陣の中でまた残滓っぽい姿の人がいるのだけど。動きがどう見ても残滓じゃない。手招きをされても入っていいのかどうか。

迷っている俺の眼の前で、扉が内側にすうっと開いた。


廊下に膝を着いている俺を、扉の隙間から顔を出した女性が見ている。

うん。この人の瞳、桃色だわ。

じゃあさっきのはやっぱり、両側から覗いていたんだよね。


ドアノブに手を掛けたまま、女性が俺を小さく手招きする。

…入るか。

俺が隙間から身体を滑り込ませると、扉を閉めてから女性はにっこりと笑って口を開いた。


「初めまして、シロ君でいいのかな?」


見知らぬ人にまで、その名で呼ばれるのはかなり悲しい。

だいたい、何で俺の名前を知っているのか。


「…あなたは?」


残滓と同じような姿をしているけれど、残滓ではない。

こんな魂魄が丸々あるような気配の残滓があるはずがない。


「うーん。…イレギュラーかなあ」

「は?」


自ら名乗りを上げるイレギュラーなんて聞いた事がないぞ?


改めて女性と向き合う。

眼鏡を掛けて長い巻き髪にミニスカートの出で立ちの上に白衣を着ていて、色っぽい保健室の先生的な雰囲気だ。

その瞳は半透明だからか桃色をしている。

髪の毛は普通に茶髪に見えるのだけれど。


「どうしてもシロ君と話したかったのよね。だから時間をこじ開けてみた」

「は?」


時間をこじ開けるって何ですか?


「話すと長くなるから超訳すると、このフロアを私達が乗っ取って時間を止めてるのよ」

「…そんな事実だけ言われても…」


なんでとか、どうやってとかをすっ飛ばして説明されても、納得が追いつかない。


「ええと、つまり?」

「時短で駆けつけたのよ、手っ取り早く対応できる私が」


聞きたくない。聞きたくないけど聞かなければいけない気がする。


「…どちら様?」

「あ、ごめんねシロ君。自己紹介忘れていたわね。私はアルヴィト」


………外つ国の神様ですか…。




幾分白くなりかけている自分の頭を振って、この事態に対応してみる。


何だか大変な事態になってきている事は分かるけど。

そもそも、何で俺のいるこの国に来ているかって事で。

だって、他の国にもいるよ?死神。


「…あの、何で俺の所に来たんですか?北欧なら、別の子がいましたよね?」

「いたわよ?だけど、戦えなかったから」

「え?」

「…年頃の女の子だもの。自分の使命より彼氏護っちゃっても仕方ないよ」


あいつーーーーー!?

もう起こった事象に腹立てても仕方ないけど。どおりで連絡が無い訳ですよね。俺としては海外組から連絡が入って来るのを結構期待して待っていたんだけどなあ。


「…もしや、俺以外は全部人間社会満喫しちゃってる感じですか?」

「そうねえ。家族や恋人大事って良い事だと思うわよ?」

「…普通なら全然構わないんですけど…」

「あら。いざという時に行動できるのはあっぱれよ?」

「…日本語上手いですね…」


俺が言うと、北欧の女神はにっこりと笑った。


その微笑みに癒されてはいけない。

つまり、手の内だったカードは全部無くなったのだから。

これで本当に、この事態に俺一人という訳だ。


……マジですか。





2017.02.27文章追加

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ