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第五話

 空戦型部隊がたった一機に手も足も出せず無力化されたちょうどその頃、イルアは無心で森を走っていた。

「イルア!!どこに行くのよーっ!!」

 後ろから追いかけるレノアの声も聞こえず、胸に宿った恐怖の赴くままに足を進めるイルア。やがてイルアはあの洞窟にたどり着いていた。

 このままではダメ。今動かなかったら、この島の全てが失われてしまう。

 理由はわからない。だけど、このまま目の前で大切な人たちが死んでいくと分かっていて何もしないのはいけないはずだった。

「来たぞ…俺を、呼んだんだろ!?」

 頭の中で響いた声に促されるままにここまで来た。思えば、今までは気が付いていなかっただけで、この洞窟に来るたびにその声が聞こえていたのかもしれない。

「やっと追いついた…イルア、役場に戻ろうよ。まだ敵が来るかもしれないんだから…」

 レノアがイルアの手を取ろうと手を伸ばす。しかし、その手は届かなかった。謎の力場が二人の間に発生していたのだ。

「イルア!?どうしちゃったのよ!?」

「レノア…?俺、一体…」

 ようやくレノアに気づいたイルアが振り返る。しかしレノアはその背のむこうに赤い輝きを見つけ、その輝きがイルアを飲み込まんと迫っているのに気づいた。

「イルア!!早くこっちにきて!!」

 どんどん強く広がっていく謎の力場に阻まれながらも、光の中に飲み込まれていくイルアを取り戻そうと、必死になって手を伸ばす。しかしイルアは完全に光に飲み込まれ、レノアもまた謎の力で弾き飛ばされ意識を失ってしまった。

「イ、ル、ア…」

 意識を手放すその瞬間まで必死に伸ばしたレノアは、一瞬優しく手を掴んでくれた気がした。




 接近してくるミサイルを撃ち落とした後、ヘラ達は単機で攻め込んでくる敵機に向けて銃を撃つ。しかし敵機はそれらを危なげなく回避するとそのまま戦闘機形態のまま一気に接近し、そのまま人型に変形してヘラ達の背後を取る。

「散開!!一度距離を取らなきゃ…」

「遅い!!」

 ヘラが咄嗟に指示を出すも、敵機は手持ちの銃で正確に陸戦部隊機の膝関節を撃ち抜いていく。陸戦型の要である脚部を損傷し、一瞬で最新鋭機からただのお荷物に成り下がる陸戦部隊。しかしヘラの乗る隊長機はアストラル防衛部隊の全機体とほぼ同じポテンシャルを持つ万能機であり、咄嗟に空中に逃げて唯一まだ戦える状態にあった。

「強い…もしかしたら、この機体に乗ってるのは連合のヴァルキュリアかな…」

 思わず弱音を吐くヘラ。敵の正体が分かったからといって有利になることなど無いし、ましてや相手が世界トップクラスのエースパイロットではにわか仕込みのヘラに勝ち目があるとは思えない。現にヘラを除いて六機があっという間に制圧されたのだから。

「でも、やるって決めたんだからぁ!!」

 ジーナ機の銃弾を辛うじて避けつつヒートナイフを一本投げつける。高熱を発するヒートナイフは銃弾で撃ち落とせず、ジーナは冷静に避けてみせる。それを見たヘラは迷わずもう片方のヒートナイフを構えてジーナ機に飛びかかった。

「この機体は動きがいいけれど…やはり素人っぽさが抜けてないわね」

 しかしジーナはそれすらも軽やかに避けてみせるとライフルの銃口をヘラの乗る『サンドラ』の首筋のコックピット辺りに突きつけた。

「このまま全滅するか、今ここで投降するかを選びなさい!」

 島全域に聞こえるよう、外周スピーカーと無線で呼びかけるジーナ。それぞれの乗る『サンドラ』のコックピットに乗るヘラたちは呆気なく鎮圧された事実を前に呆然とする他なく、司令室のカルマたちは半ば予測していた通りの結末を前に目を伏せる。

「投降だとォ!?まだこの司令室は落ちてねえだろ!!」

「よしなよ魚屋!!ここに居るのはアタシたちだけじゃないんだよ!!」

 島の独立を人一倍願う魚屋の親父ゼオが顔を真っ赤にして叫び、居酒屋のフォルテが悔しげに叫び返す。初めから無謀で、万に一つも成功するとは思っていなかった。ただ思った以上に早く、カルマ達の十年越しの願いが終わってしまったというだけの話だ。

「投降、する他ないな…ヘラ、よく頑張った。機体を捨てろ」

 カルマが無線越しに搾り出すように呟くのを聞いたヘラは、ようやく自分たちが負けたことを思い知った。

「ごめん、なさい…父さん…」

 涙ながらに言うヘラ。アストラル建国から僅か三十分足らずで、たった一機に制圧されてしまった。これではただのピエロにすらなれていない。

(いいんだ。私たちのわがままに、お前たちを巻き込んでしまった。せめて、イルアだけでも無事に生きていけることを願おう)

 これで島の大人たちは全員反乱者として後世の笑いもの。残された反乱者の家族がどんな未来を歩むかと思えばより一層後ろめたさが胸を打つ。せめて一矢報いたいとも思うが、レーダーに映る連合軍の増援部隊の機影と、今も役場でこの戦いを見ているであろうイルアの顔を思い浮かべれば下手なことなど出来はしない。

「みんな。投降しましょう」

 ヘラはそう告げて武装をパージしようと緊急用のスイッチに手をかける。

 しかし次の瞬間飛んできたミサイルによって、既に動けない陸戦部隊が吹き飛ばされた。

(何をしている!?命令は鹵獲だぞ!?)

(そんな命令受けてねえぜ!手柄を独り占めしようたってそうはいかねえ!!)

 慌てるジーナをよそに、功名心に心を奪われた名無しパイロットが変形して地面に倒れたマイ機に向けて銃口を向ける。

(へへへ…最低一機くらいは落とさねえと出世できねえんでな!悪く思うなよ!!)

(キャアアアッ!!)

 無線越しに聞こえるマイの悲鳴でヘラの頭に血が上る。パージスイッチから手を離すとヒートナイフを構えて一気に突撃する。そして高熱の刃を連合軍機のコックピットに突き刺した。

 ジュウっと何かが蒸発する音が聞こえた。それが溶けた鉄の音なのか、それとも人が跡形もなく蒸発した音なのかは分からなかったが、少なくともその音は後方で様子を見ていたその他の増援部隊を動かしていた。

(ザッツ!!よくも仲間を!!)

「くうっ…!?」

 一気に接近してくる六機の連合軍機。たった一機だけで、手持ちの武器はヒートナイフと腰のライフルだけ。咄嗟にヒートナイフを投げつけて一機を地上に叩き落とすも、腰のライフルを構えるより先に敵機のミサイルと機銃で一方的に嬲られあっという間に機士のあちこちが破壊されてしまう。

「はあ…はあ…」

 やがてまともに立ち上がることすらできなくなり、コックピットのあちこちでショートした配線が火花を散らし始める。

(反乱者め!身の程ってやつを叩き込んでやらァ!)

 立ち上がることすら出来ないヘラ機を痛めつけるように何発も銃弾を叩き込んでいく連合軍の兵士たち。思わずジーナはため息をついた。本部からの命令では止めなくてはならないが、もう通信での警告では止められない。力ずくで取り押さえることもできるが、仲間を失って頭に血が昇った彼らを取り押さえるのは容易ではなかった。

 だがせめて原型をとどめている内に止めるべきと感じたジーナが威嚇射撃の為に空砲を撃とうと銃口を向けたその時、強烈な恐怖を感じて思わず身構えた。

「どこからだ…!?」

 気配の元を探って島のあちこちにメインカメラを向ける。やがて、鉱山の麓の森から急に飛び立つ鳥の群れを見つけ、そちらにメインカメラを向けた。

 そしてジーナは、赤く輝く何かが立ち上がるのを見た。

「うわァァァァッ!!」

 勇ましく、それでいて悲しげな絶叫と共に赤い機士が駆け出す。足元の森や建物を蹴散らし、ヘラ機を痛めつける連合軍機にタックルを決めた。

(な、なんだこれェ!?)

(追いかけてくる!?おいヴァルキュリア!!助けてくれ!!)

 今になって都合よく助けを求めてくる兵士たち。しかしジーナはそんなことなど気にもならないほど、怒り狂うかのように暴れまわる機士見つめていた。

 戦闘機形態になって逃げ回る連合軍機の機動力など全く意味を成さい程の速度で追い掛け回す。まるで歩行者とスポーツカーのような圧倒的な速度差だった。

 そして無造作に連合軍機を捕まえると思い切り殴りつけ、コックピットを引き抜くと残骸を空に逃げた連合軍機に投げつける。直撃した連合軍機は空中で炎を上げながら墜落していき、パイロットが悲鳴を上げながら脱出する。

 まるでかつて見た怪獣映画のような光景を前に、ジーナは震える体を押さえ込んで操縦桿を握り締める。

「あれをこれ以上暴れさせるわけにはいかないわね!ならっ!」

 本丸を叩く以外無し。総判断すると戦闘機形態に変形し超低空で飛行しつつ機首に取り付けた機銃を連射する。連邦軍機の装甲であれば撃ち抜ける機銃の威力に戦闘機形態の速度を合わせた高威力攻撃。高い突破力と破壊力を誇る反面、超低空飛行をこなしながら正確に敵機に当てる技量を求められるジーナの得意技だ。

 しかし赤く輝く人型は、再び響いた唸り声と共に一斉射撃をものともせずジーナ機目掛けて走り出した。

 咄嗟に機首を上げて上空に逃げるが、赤い機士は足元に転がっていた連邦軍機士の残骸を拾い上げてジーナ機に向けて投げつけ始めた。アラートを聞いてから避けたのでは間に合わないと考えたジーナは直感に身を任せて機体を左右に避け、飛んでくる残骸をギリギリで避ける。

「ハルクを相手にしてるみたいね…!!」

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