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第二十一話

 アストラルの周囲に建造された人工島。侵攻してくる連合軍の機影をレーダーに感知し、ヘラたちアストラル防衛部隊のメンバーはそれぞれに武装を構え、迎撃体制を整える。

「みんな、もうひと踏ん張りよ!もうそろそろ到着するから、それまで持てばいいわ!!」

「時間稼ぎなんかやらないわよ。全部アタシたちで片付けてやるわ!!」

「すっごい自信。なら、ここは任せるわ。ステルス機能を持った機体が回り込んでるみたい」

「了解!!ちゃっちゃと片付けてきなさいよ?」

 人型のまま空を飛び、島の裏側に位置する人工島に向かうヘラ機。それを見届けた頃には連合軍の部隊は戦闘可能空域にまで迫っていた。

「作戦通り頼むわよ!?弟君!!」

 空戦部隊のリーダーであるカイナが舌なめずりしつつマシンガンを連射し、戦闘機形態の連合軍機士のメインブースタを的確に撃ち抜く。しかし火を吹いて海に落下しながらも人型に変形すると、自由落下をサブブースタで制御しつつ反撃してきた。

「結構やるじゃん!!」

「でもさあ!!」

 ドナールが剣で真っ二つに切り捨て、島に落ちそうな軌道で落下していくジェネレーターをケインが正確にスナイパーライフルで狙撃し爆散させる。

「こっちにも来たわよ!!陸戦部隊、アターック!!」

 挨拶がわりに反対の方角から回り込んできた別働隊に向けマイが背部ユニットに装備された機士用迫撃砲を発射する。命中こそしなかったが、支援用の小型戦艦が数隻が着弾の波に揉まれて海の藻屑に変わる。

「落ちろよ!!落ちりゃあ今度はジョーがやってくれるってさぁ!!」

「それが嫌ならバーニィのライフルでお陀仏になってくれよ!!そっちのほうが楽でいいや!!」

 ライフルやミサイルを手当たり次第に乱射し、次々と負傷した連合軍機士が墜落してくる。取り敢えずダメージを与えることを優先するバーニィ機の攻撃では完全な撃墜は難しいが、ジョー機が機動力を活かして立ち回り、正確に剣でコックピットを潰していく。

 その頃、戦闘空域からかなり離れた場所にまで回り込んだ連合軍のステルス機士部隊が島本土へと上陸を果たしていた。合計四機の最新鋭のステルス機能を搭載された、特殊作戦用の極秘部隊だ。

 だがそれらは、全く予期していなかった方角からの砲撃を受けて散り散りになる。

「やっぱりこっちから来たわね。だけど私のイルアが帰ってくるのよ!邪魔はさせないわ!!」

 高威力の砲撃が可能な戦車形態に変形したヘラ専用の隊長機。連射可能で、正確に狙える利点を持ち、たった一機で陸戦部隊三機とほぼ同等の陸戦戦力を持つ。しかし機動力は皆無に等しく、人型の連合軍機士部隊が接近してくればあまり利点はない。

「ならば…変・形!!」

 こちらも人型に変形し、機動力でかく乱しヒートナイフで切りつけていく。向こうも銃で反撃してくるが、ヘラの腕をもってすれば回避しつつ接近は容易い。

「て、撤退だ!!くそ、あんなのまで居るなんて聞いてねえぞ!!」

 半数である二機がやられた時点で悲鳴混じりに叫ぶ隊員たち。今回初めてアストラル侵攻に参加した特殊部隊のメンバーからすれば、予想外すぎるヘラの実力は恐怖でしかなく、そもそも敵に待ち伏せされている状況は作戦の失敗を意味する。

 戦闘機形態に変形し、最高速で島から離脱する。それを見て、ヘラは改めて操縦桿を握り締める。

「逃がさない!!」

 メインブースタを全開にし、空中に飛び上がる。そして再度変形ボタンを押し、サンドラ隊長機が戦闘機形態に変形した。

「嘘だろっ!?」

「あなた達が何十機もサンプルを落として行ってくれたおかげよ!!」

 特殊部隊のどれよりも早く、見えないが売りの戦闘機形態にすんなりと追いつき、両翼の付け根に装備されたバルカンと呼ぶには大口径すぎるバルカンが火を噴き、一瞬で二機が蜂の巣と化した。

「随分慣れちゃったなぁ…」

 海へ落ちていく破片を見送りつつ、ヘラは小さく呟いた。

 その光景をモニター腰に見ていたカルマたちにもその一言は聞こえていた。すでに成人したとは言え、娘や息子に戦わせて自分たちは後方で見ているだけ。特に副官のオズマにとっては、もうすぐ帰ってくる娘に指摘されて以来、ずっと胸に突き刺さってきた事実でもあった。

「…残りの敵は?」

「はい…残存する敵の数、五です…」

 重苦しい空気の中、ついに防衛部隊より少なくなった敵機の数がまた一つ消え、四になった。

「くそぉ!!どんどん力を付けてきてやがるぞ!?」

「赤いのは中米に居るんだろ!?これで合流されたら…」

 悲鳴混じりの連合軍機士部隊が撤退していく。合流したヘラたちも、下手に追撃することもなく見送った。

「戦闘開始から三十分。新記録じゃない?」

「そうね。ヘラも弟君が帰ってくる前に終わらせれて良かっじゃない」

「うん!ああ…イルア。もう一週間も会えなくて寂しかったわ…」

 機士のコックピットの中で身悶えるヘラ。防衛部隊のメンバーからの冷たい視線も気にしていない。

 その時、司令室のレーダーに新たな機影が映った。

「レーダーに反応!!これは、大気圏からの長距離ミサイルです!!」

「迎撃ミサイル発射!!」

「発射しました!!」

 島のあちこちにある無人の空き地に設置された発射装置から迎撃ミサイルが放たれ、大気圏を超えて計測された長距離ミサイルに向かって飛んでいく。

 発射されてから約十秒。計算上は敵の長距離ミサイルと衝突しているはずのタイミングだが、地上からでは確かめようがない。

「ミサイルはどうなった!?」

「外れました!!ミサイル、大気圏を突破してアストラルに接近してきます!!」

「馬鹿な!?最新鋭の迎撃システムだぞ!?」

「言っている場合ではない!!迎撃ミサイル再度発射!!防衛部隊も遠距離攻撃で迎撃しろ!!」

「りょ、了解!!」

 にわかに慌ただしくなる司令室。ヘラ機も戦車形態に変形し、陸戦のマイ機と空戦のケインの二人の遠距離型と一緒に遠距離攻撃でミサイルを狙う。が、ミサイルの機影はレーダーに映るのに、ミサイル本体はどれだけ探しても見つからなかった。

「ミサイルは!?ミサイルはどこよ!?」

「まさか、物理的なステルス機能!?でも、レーダーには映るのに…」

 ミサイル本体を見つけらないまま、三人はそれぞれデタラメに遠距離攻撃を続けるが、当然なんの効果もない。ただレーダーに映る機影と、どんどん大きくなる風切り音がアストラル防衛部隊の心を蝕んでいく。

「ミサイル、予想被害範囲がアストラル本島に重なります!!」

「ツバサさん!何か分かったことはないか!?」

(無茶言わないどくれ!サンプルが無いんじゃ何にも分かりゃしないよ!)

 通信機越しのツバサも焦った顔であちこちの計器を弄りまわすが、なんの成果も上げられず頭をかきむしる。

「着弾予測時間、残り三分!!」

「北西方面に最大限の弾幕を張れ!!防衛装置もありったけ出させろ!!こうなれば数で勝負だ!!」

 カルマの指示通り、島を守る全ての戦力が北西方面に火力を集中する。だが、効果は全く見られない。

 その時、ツバサがふと気づいた。もしかしたら、本当にミサイルは存在しないのではないか。

 そこまで考え、すぐに行動に移す。司令室が受信するあらゆる電波の出処を解析し、更に気象状況などといったあらゆるデータを調べなおす。どれもこれも常人なら複数人で一日かかるであろう仕事だが、ツバサはそれを一人、一瞬で解析し終えた。

「違う!!北西じゃない!!ミサイルは北の方向だ!!」

 更新されたデータが各計器に送られ、誤認されていたミサイルの本当の居所が判明する。

 しかしそれは、すでに島本土に着弾寸前の所まで来ていた。

「総員撤退!!早く!!」

「無理です!!ミサイルが直撃する!!」

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 アストラ島が爆炎に包まれ、強烈な衝撃が地下の司令室に轟く。床に投げ出されそうになるのを司令官席に必死に掴まって堪えるカルマ。現場にいるであろうヘラのことは愚か、周囲の無事を確認する余裕すら無かった。

 やがて爆音が落ち着いた頃、現場に居たヘラたちは、あまりの衝撃と爆音で意識を朦朧とさせながらもようやく自分の無事を確認するだけの余裕を取り戻しつつあった。

「うう…ってあれ?生きてる…」

 五体満足は愚か、機体すらも無事なことに驚くヘラ。周囲には赤い波動のようなオーラが漂っていた。

「大丈夫?姉さん」

「イルア!?イルアなの!?」

 声のした方を見れば、アストラル・ゼロがゼロ・フィールドを展開してミサイルの爆炎を防ぎきっていた。周囲を見渡せば、防衛部隊の機体も無事だし、爆破の衝撃で倒壊した建物も無い。

 だがそれ以上に、ヘラにとっては今はイルアが帰ってきたことだけが重要だった。

「ただいま姉さん。俺もレノアも、ちゃんと帰ってきたよ」




「首尾はどうだ?」

「ミサイルの直撃を確認。ですが、アストラル・ゼロのバリアで防がれました」

「だが、直撃はしたということは、やはり効果はあるという事だな。それが分かっただけでも十分だ」

 ワシントンにある旧アメリカ合衆国国防総省、現太平洋連合帝国軍総司令部にて、連合軍総司令官は満足げに頷いた。

 今日の作戦は、今までアストラル侵攻を指揮していた洋上基地ではなくここで指揮を取られていた。

「ですが、いいのですか?核を使うというのは…」

「構わん。国際法違反など気にしている場合ではないということを、ようやくニューヨークが認めたというだけの話だ」

 ニューヨークにある太平洋連合帝国の中枢である、貴族議会。そこではジーナ・オートライトの帰還とガリバラー独立軍の事実上の壊滅を受け、ついに本格的にアストラルの鎮圧が議題に上がったのだ。

 そしてそこで、アストラル鎮圧とアストラル・ゼロの完全破壊と、その為の核ミサイルの使用が秘密裏に議決された。

「作戦開始は次の連邦軍による侵攻が始まったタイミングだ。連邦軍の有象無象もまとめて消し炭にしてやろう」

 総司令官は、これが歴史の転換点であることなど知る由もなく、極めて事務的に宣言した。

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