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第十七話

 イルアがガリバラー諸島の連合軍基地を襲撃していた頃、ジーナはようやく旧メキシコの連合軍基地に到着した。太平洋連合帝国の首都があるニューヨークと、反抗勢力候補の多い南アメリカ大陸の間に位置するだけあってかなりの規模と防衛力を持つのだが、今回は完全に負け戦だった。

 地下に位置する司令室の無事は確かめようがないのだが、それ以外の施設が軒並みやられている。先導しているのは、明らかに動きの違う見覚えのない連邦軍の新型だ。

「これ以上はやらせないわよ!!」

「来たわねまな板ァ!!」

 ジーナの乗るクイーンと、アキの乗る凱仙が相対する。ジーナ機はアストラル・ゼロとの戦いで切り札の電磁剣を失い、アキ機も基地侵攻で手持ちの重火器のほとんどを使い果たしている。

 条件は互角。後は、どちらのパイロットセンスと運が上かで勝負が決まる。

「ここで会ったが百年目…どっちが世界最強のパイロットか、そろそろ決めようじゃない」

「冗談はその馬鹿でかい胸だけにしなさいよ。あなたはパイロットじゃなくて牛でしょ?生憎私は赤いマントを持った闘牛士じゃないのよ」

「はあ?嫉妬?嫉妬でもしてんのこの洗濯板。もう時代は洗濯機なんだっつーの。洗剤まみれの板なんかまな板にも使えないじゃない」

「あーそう…随分と調教が足りないみたいじゃない。一度痛い目に合わせてしっかり躾けないとダメねぇ!」

「言ってなさいよ貧乳。あ、そーかぁ!実はアンタ男だったり?そーだよねー!じゃなきゃそんな絶壁ありえないもんねー!!」

 だんだんヒートアップしていく二人。オープンチャンネルの無線で喋っているせいで周囲にも聞こえているのだが、二人共気付く気配はない。と言うか、もはやこの基地周辺に展開されている全ての部隊がこの二人の空気に飲まれて動くどころではない。

「あははははははは…!!」

「ふふふふふふふふ…!!」

 背筋に走る冷たい汗。誰しもが身構えたその瞬間、空気が凍りついたかのように黙り込む二人。

「死ねよやぁぁぁぁぁ!!」

「そっちがぁぁぁぁぁ!!」

 アクセル全開にして飛び込んでくるアキ機を手持ちのライフルで迎撃し、アキ機はそれらの銃弾を特殊ロッドで叩き落としていく。そしてそのまま特殊ロッドを突き出し、ジーナ機がそれを軽くいなして蹴りを入れる。が、アキ機はそれを片手で受け止め特殊ロッドをパージすると巴投げの容量でジーナ機を投げ飛ばす。空中で思いもよらぬ飛び方をする機体を、一瞬安定した瞬間を狙い無理やり変形する。

「私を空に飛ばせたこと、たっぷりと後悔させてあげるわよ!!」

 一旦上空まで一気に飛び上がり、そのまま垂直に降下しながら機首に装備されたバルカンを掃射。加速のかかった銃弾の雨あられに襲われたアキは、取り敢えず地面に捨てた特殊ロッドの回収を諦め移動を開始する。

 この技の弱点は、一度に使える時間に限りがあることと、弾の使用量が半端じゃないこと。なら、少しでも動き回って時間を稼ぐしかない。

 上空から定期的に銃弾の雨が降ったり止んだりを繰り返す。恐らく、アキ機の機士の火力が届かない程の高度を維持しつつ攻撃を繰り返しているのだろう。

「甘い…流石は貧乳!胸元が貧しい女は発想も貧しいようね!!」

 アキ機は銃弾の雨が止んだタイミングで動きを止め、余計な武装や補助パーツをパージしていく。

「技術の進歩は早いのよ!行っけぇぇぇぇ!!」

 ペダルを思い切り踏み込む。すると凱仙の背中のメインブースタが火を噴き、凱仙はロケットのごとく空へと飛び上がっていった。

 上空で一瞬アキ機を見失ったジーナは、咄嗟に人型に変形し上から飛び蹴りをかましてきたアキ機を受け止める。

「何をするの!?このままでは、あなたも一緒に地面に落ちるのよ!?」

「やってみなくてはわからん!!」

「正気か!?」

「あんたほどアタシは真面目じゃないのよ!!」

 アストラメタルの装甲に守られているとはいえ、この高度から機士二機分の重量の物体が落下すれば、中にいるパイロットが無事で済むとは思えない。と言うか守るよう命令されている司令室ごと潰しかねないことを思い出し、ジーナは首に取り付けられているドッグボムに触れる。

「悪いけど、地獄への道ずれは遠慮しておくわ!!あなた一人で死になさい!!」

 ブースターを全開にし、二機のバランスをごちゃごちゃに崩す。落下の最中にバランスを崩すことはかなり危険な行為ではあるが、それくらいやらなければアキ機を振り払えない。

「アンタも十分正気じゃないわよぉぉぉぉ!!」

 アキ機が断末魔の叫びを上げてどこかへ落下していく。チラリと見えた方角からして海の方面だと思うが、問題なのはこっちだ。何処に向かって落ちているのか全く分からず、今果たしてどの角度に向いているのかも分からない。自体を散々から悪化させたブースターをとめても、機体は一切安定しない。

 諦めて脱出装置を起動させようとするが、脱出装置が一切反応しない。思い出せば、脱出する権利も剥奪されていたんだった。

「ならせめて…最後のあがきを!!」

 無理やり変形し、メインブースターを再び全開。高度計が急速に低くなっていることを確認し、操縦桿を力づくで持ち上げた。

 そして、激しい衝撃とともにジーナは意識を失った。




「ガリバラー独立軍の諸君!!本日、等々我らの悲願の第一歩たるガリバラー諸島全域の開放に成功した!!これも諸君らの奮闘と活躍のおかげだ!今夜は無礼講といこうじゃあないか!!」

 既に酒に酔った赤い顔をしつつ、ガリバラー司令官のバレルは高らかに宣言する。それを受けてドンチャン騒ぎを始めた独立軍の戦士たちを少し離れた場所で眺めつつ、イルアたちはノンアルコールのジュースをちびりちびりと飲んでいた。

「よく言えたもんね。実際にはイルアに戦わせた癖に」

 不満げに呟くレノア。事実、本島を含む残りの島全ての基地を制圧したのはイルアだった。元々連邦軍の襲撃で混乱していたこともあり、連合・連邦の双方をたった一機で追い払うアストラル・ゼロの出現を前に、戦意を保てる兵士そのものが少なかったことも十分な要因だったが。

「あんな簡単に逃げれるんだな。あの人たち」

 イルアは逃げ惑う連合の兵士たちの顔を思い浮かべる。誰も彼も、自身の居場所をあんなにもあっさりと捨てられる理由が分からない。もしかしたら、あそこは彼らが元々居たかった居場所じゃあなかったのかもしれないが、それでも兵士たちにとっては基地こそが居場所なのではないのか。

「太平洋連合帝国は貴族社会だからね。兵士にも貴族のお坊ちゃんが多いのよ」

 これまで静かに二人を見守っていたカレンが口を開く。どこか元気がなく見えたが、聞き出せる訳もなくただ話を聞くしかない。

「話に聞いた限りじゃ、軍も含めて連合のどの組織でも出世には貴族の家柄が居るらしいわ。勿論、その更に上に行くには本人の資質が不可欠だけれど、殆どの貴族が中間管理職の立場で好き放題してるみたいでね。特に軍の下っ端には不満が溜まってるらしいの」

「だからって、基地の放棄も簡単に出来るのかな?」

「言っちゃ悪いけど、こんな辺境の基地の司令官ならただの家柄だけの貴族がやってると思うから、多分その司令官がさっさと逃げたから、それに便乗して行ったんじゃないかな?正確な心情まではわからないけどね」

 ふうん、とどことなく納得できない顔でジュースを飲むイルア。イルア自身の行動原理が自分の居ていい居場所を守ることだけだから、あの連合軍兵士たちの腰の軽さは理解できないのだ。

 イルアが遠い目をしているのを横目で見つつ、レノアは小さくため息をつく。こんな風に思い悩むイルアを見たくなくて、少しでも力になろうと頑張ってきたのに、結局出来ていることなど一つもない。

 そんな風に苛立つレノアを知ってか知らずか、二・三人の男性兵士たちが声をかけて来る。

「おいおい姉ちゃん?こんなところで固まって何喋ってんだよ?」

「んー?何よ、アンタたち」

「そんな隅っこに居ないで、こっち来て色々お喋りしようぜ?せっかくのパーティーなんだからよ」

 あからさまに近寄らないで、と言外に伝えたつもりだったが、どうやら伝わらなかったらしい。だが、それ以上に伝わった上で無視しているようにも見える。

「ほら、こっち来いよ」

 半ば無理やり手を取られ、引っ張って行かれそうになる。ようやくそれに気づいたイルアが手を伸ばそうとするが、それより早くカレンがレノアを掴む男の手を叩き落とした。

「その辺にしときなさいよ。嫌がってるじゃない」

「おーそうかい。ちっ…」

 カレンに睨まれてすごすごと立ち去っていく男たち。

「あ、ありがとうございます…」

「いいのよそんなこと。ねえ、それよりも一つ聞いてもいい?」

 カレンがこっそりと通信機の盗聴器の電源を切りつつ口を開く。誰にも聞かれないようにと顔を近づけ、二人の耳元でそっと呟く。

「なんで、君はあんなにも戦えるの?まだ子供なのに…あんな、ありえない力を持って戦うのは怖くないの?」

「怖いですよ。戦うことも、今日みたいに化け物を見る目で見られることも」

 あのアストラル・ゼロの力は、まさに人知を超えた力と言っていい。それを操るイルアは世界を自由に出来ることだろう。だが世界を自由に出来るという事は、すなわち世界そのものを背中に背負っていることと同じなのだ。

「だけど、戦わなきゃあの島に居られないから」

「イルア…そんな事ないっていつも言ってるじゃない。私も、ヘラ姉も、おじさんも、イルアが好きだから一緒に居るんだよ」

 そっと抱き寄せ、説き伏せるようにいうレノア。嘘偽りのない本音をそのままぶつけるが、それでもアストラ島で受けた島民たちの猜疑心に満ちた視線は紛れもない現実だった。それが分かっているからこそ、無駄だと分かっていてもレノアも抱きしめる以外のやり方が出来ない。

「ラブラブねぇ。じゃあ、もう一ついいかな?その力で何かやりたい事があったりする?」

「やりたい事?」

「そう。やりたいこと。例えば、そう。野望はでっかく世界征服とか?」

「…そんなことしないよ。だけど、そうだな。出来ることなら、この戦争を終わらせてみたい。俺がここまで激化させた原因かもしれないけど、こんなことになって悲しいし、悔しい。だから…」

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