第一話
お久しぶりです。前のロボット物を覚えている方はいらっしゃらないかもしれませんが、ゴミナントです。
結局前作はあのまま封印と言う形にいたしましたが、新作引っさげて復活いたしました。
到らぬ点は多々あるかと思われますが、どうぞ楽しんでくだされば幸いです。
太平洋のちょうど真ん中にひっそりと浮かぶ、小島と呼ぶには大きく、大陸と呼ぶには程遠い大きさを誇るアストラ島。人口千二百人ほどが暮らし、そのほとんどが中央にそびえる鉱山で働いている。
かつてこの島の調査に訪れれた科学者曰く、この島は何万年も前に、隕石L77流星が地球に落下した時の衝撃と破片で出来た島らしく、この島の鉱山から取れる鉱物は地球上では珍しい鉱物も多く、今や地球を二分するユーラシア連邦共和国と太平洋連合帝国のニ大国はこの島をかけて幾度となく小競り合いを起こしていた。小さいながらも独立国家としてニ大国相手に鉱物の取引を武器に生き残っていたアストラル王国も、十年前の人型新型兵器『機士』の誕生と共に始まった機士開発競争と言う新たな冷戦と共に太平洋連合帝国に併合されることとなった。
「うーん…よく寝たぁーっ!」
鉱山の麓にある小さな森の小さな洞窟。燃えるような赤髪のショートボブがボサボサなのも気にせず、レノア・サノレアースは元気いっぱいに目を覚ました。そして起き上がろうと腹に力を込めた所で異変に気づく。
腹部と胸に回された見知った手。首筋にかかる規則的な寝息。そして何より、明らかに胸の方はしっかりと鷲掴まれている。こんなことをするのは一人しかいない。
「起きろぉ!こんのドスケベ星人ーっ!!」
「ぐはぁ!?」
腕を振り払い、顔を髪の毛と同じくらいに真っ赤にして殴りつける。殴られた方は赤く腫れた右頬を抑えながら悲しげな表情をしてみせた。
「酷いじゃないか。俺が人肌の温度を感じてないと寝れないの、知ってるだろ?」
「だったらなんでアタシの胸を鷲掴んでいるのよ…?えぇ?」
「だって柔らかくて落ち着くんだよ。長い付き合いなんだし、いい加減なれてくれよ」
「アンタこそいい加減その無邪気系ポルノキャラ卒業しろぉ!!」
もう一度ゲンコツを入れ、レノアは目の前で頭のてっぺんをさする幼馴染、イルア・ジュデアスを睨みつける。
「はあもう…いい?確かにアンタは昔っから甘えん坊で、無邪気で、ボディタッチ多めだけど、それはねぇ!普通小学校に入る段階で卒業しなきゃいけないの!」
不満げにブーたれるイルア。レノアはそんないつまでも子供のような幼馴染を前にため息をついた。
イルアはこの島で生まれたわけではない。十年前、ある嵐の夜にこの洞窟で育ての親であり島の代表であるカルマ・ジュデアスに、記憶の全てを失った状態で拾われたのだ。名前すらなく、たどたどしい世界標準語しか喋れず、何よりも孤独を恐れていた。たった一人で取り残されるとパニックに陥るほどに。
そんなイルアの世話をしたのがイルアの義姉のヘラとレノアであり、今でもどちらかが居ないと眠れないらしく時折こうやって寝込みに忍び込んできたりするのだ。
「うーん…それにしてもレノア。また胸大きくなった?」
「コルァ!!」
そのくせやたらと手つきがいやらしかったり、こうやってセクハラ発言をしてきたりするのだ。しかもいつまでも変わらないキラキラエフェクトが後ろに見えるほどに無邪気な笑顔で。
「もーいいや…帰ろう。時間もそろそろ遅くなるし…」
「ああ…うん…」
「ん?どしたの?」
「いや…」
イルアは何も言わず、ここで拾われた時に唯一持っていたペアリングが組み合わさったネックレスを握り締めつつ静かに洞窟の奥を見つめている。それほど広く深い洞窟じゃないし、そもそも洞窟じゃなくて洞穴と言ったほうが正確な場所だ。目を凝らせば一番奥なんて簡単に見える。
それでも、ここに来るたびにイルアはぼうっとした目で奥を見つめ続けていることが多々あった。理由を聞いても教えてくれないし、何よりイルア自身もよく分かってないんだろう。
こうなったらいつまでたってもイルアは自力で動かない。それを知っているレノアはイルアの手を強引に繋いだ。
「帰ろう?イルア」
「ああ。うん…分かった…」
イルアの手を引き、洞窟を出るレノア。眼下に見えるアストラルの街は既に夜の灯りを灯しつつあった。
太平洋連合帝国軍アラスカ基地。極寒の地にそびえる軍事基地の敷地を大型の人型兵器『機士』が練り歩く。極寒での凍結対策が施された油圧ポンプが音を立てて作動し、機士が大地を踏みしめる。頭部のコックピットに乗るジーナ・オートライトは予想以上の振動の少なさに感心しつつヘッドセットの無線を入れる。
「動作確認完了。外気温マイナス環境での油圧の変化は確認できません」
(了解。では次に空中での変形機構のチェックをお願いします)
「了解」
ジーナは無線を切るとフットペダルを踏み込み、機士のバックユニットが火を吹く。一瞬激しくコックピットが揺れるが、ジーナはそれを無視して手元のスイッチを操作し、機体のあちこちのサブスラスターが機士の体勢を整える。
「変形開始」
機体のバランスが整った瞬間を逃さず右のレバーを倒し、金属の擦れる音と共に機士は戦闘機形態に変形した。
「変形完了」
(そのまま基地周りを周回してください。ユーラシアの連中がこそこそ嗅ぎまわってます)
「分かったわ。見てくるだけでいいのね?」
(はい。ですが、もし万が一向こうが発砲してきた場合は…)
「大丈夫ですよ。そんなバカ、ユーラシアには居ません」
(そう願いたいもんですが…例の情報が漏れてる可能性もありますので、慎重に)
「了解」
ジーナはそこで無線を切り、フットペダルを踏み込みホバリング状態から一気に最高速まで加速。強烈なGがかかるが、ジーナは空を飛ぶ時の独特な感覚の一つとしてそれすらも心地よく感じていた。
「居たわね…」
ベーリング海峡の上空をしばらく飛んでいると、メインカメラが水上をホバーで滑るように進む三機のユーラシア製の機士を捉える。一応太平洋連合とユーラシア連邦のちょうど国境付近であり、領海侵犯は犯していない。しかしユーラシア製の長距離望遠カメラならあの距離からでもアラスカ基地での実験は観察できるのかもしれない。
その時先頭の一機がジーナ機に気づき、銃口を向けた。一瞬ジーナも身構え、ミサイルの安全装置を解除しようとするも、隣の一機が銃を構えた一機を押しとどめ、撤退の合図を送った。
デジニョフ岬にあるであろうユーラシア連邦軍基地に戻っていく三機の後ろ姿を眺めつつ、ジーナはこちらに銃口を向けた一機のことを思い出す。あの忙しない動きとこちらに向ける敵意。一年前の連合・連邦合同訓練の時に顔を合わせた宿敵の顔をジーナは思い出した。
ベーリング海をホバーで進む三機の機士。本来は陸戦用のユーラシア製機士は海面での運用には潮風や海水の被害が必要最低限に済むよう細かい技術が必要であり、進む三機は全員がトップエースだった。
トップエース三人が先頭を進む中、一機は最後尾で銃を構えたままの一機に通信を送る。
「アキ、さっきのは何だ?あの時向こうが撃ち返してきたらあっと言う間に全面戦争のきっかけになるんだぞ?分かっているのか?」
一応階級が上ということもあって強気に出る。が、相手はフーッ!っと威嚇するような声を出して応答する。
「仕方ないじゃない!あいつ、間違いなく太平洋連合のヴァルキュリアよ!ああ思い出すだけでも腹が立つわぁ…」
「何を言っている。あのジーナ・オートライトがあんな田舎基地でのテストパイロットを務めると?確かに腕は良さそうに見えたが、そういうのは専門のテストパイロットが居るだろうに」
「いーや!あの気取った飛び方…見間違えようがないわ!一年前、私の独壇場だった新型お披露目パーティーのトリを横からかっさらっていったあのまな板女に違いなわよ!!」
ギラギラと怪気炎をあげる、ユーラシア連邦のブルファイター(本人の前では禁句)とあだ名されるアキ・フラストワーズは苛立たしげにあだ名の元となった窮屈そうなパイロットスーツの胸元をさする。
アキのスタイルと荒々しい戦い方と、ジーナの精錬かつ研ぎ澄まされた戦い方とスタイルは完全に水と油であり、この二人が出会ってから一年間、幾度となく冷戦はたった二人の女性パイロットのせいで灼熱の全面戦争に発展しそうになっていたのだった。
「まあいい…やはり報告通りか。明らかに二か月前と比べて機士の出力が上がっている…」
「では、スパイからの情報は確かなんでしょうか?とても信じられません」
「超が付くくらい固くて、熱にも強くて、そんでエネルギー源にもなる鉱物だっけ?確かに嘘っぽい話よね」
「全くだ。だが、少なくとも向こうがより高性能なジェネレーターか、それに相当する物を機士に組み込んだのは確実だ。こちらも、それなりの対策が必要だ」
冷戦は、あくまでも対立する二カ国の戦力が均等でなくてはならない。かつての冷戦では核ミサイルの数とそれを飛ばすロケット技術がその指針として使われたが、今回の冷戦は一般市民の目に見える程にハッキリと技術を見せつけることができる機士の性能差が指針として使われる。当然それを作る技術者の奪い合いや、情報を奪い合うスパイ合戦も激化の一途を辿っているのだ。
「アストラメタル…実在するならぜひこの目で見てみたいもんね」
アキはボソッと呟くと、モニターに太平洋の海図を出す。今世界中で話題のアストラ島は、海図を少し拡大しないと見えないくらいの大きさだった。
いかがでしょうか。イメージとしては80年代から00年代のロボットアニメのごちゃまぜになるかと思われます。
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ちなみに今作は前作同様大体25くらいで完結する予定です。




