プロローグ―日常
「運命」―。既に決められていることがら、さだめ。
ある意味絶対の力を持っている言葉。
どんな事もその一言に集約される。
その言葉は完全で、さらには逆の言葉なんて無いようで。
そんな言葉を俺はきっと―。
好きではなかった。
◆◆◆
いつものように起き、学校へと向かう支度をして朝食を取る。この場合は摂る、の方が正しいのかも知れないがそんな事は些末な問題だった。
ともかく〝いつも通り〟の朝を迎えて〝いつも通り〟の事をして〝いつも通り〟に家を出る。
今日も天気は雲ひとつない快晴―とまではいかないけれど晴れであることに間違いはなかった。
天気予報では降水確率は0%らしい。だから今日は(も)傘を持たずに家を出る。念のために鞄の中には折りたたみ傘も入っている。「備えあれば憂いなし」というやつだ。
さてさて今日も足を動かして学校へと向かう。靴と地面がコツコツ、と低いながらも心地よい音を立てている。
前を向いてみると幼馴染が前を歩いていた。幼馴染の隣に移動しつつ声を掛ける。
「おはよう、ハル」
すると声を掛けられたことに驚いたのか、
「ひぃやぁあ!」
と素っ頓狂な声を上げた。その後、
「なんだ君か、あまりビックリさせないでくれ」
と髪を弄りながらこちらに抗議をしてくる。
「ごめんごめん、驚かすつもりはなかったんだ。」
謝罪を試みる。
「本当か?」
「神に誓って。」
「ならよし」
こんな簡単に神に誓っていいのか、とも思ったが彼女が良いというのならきっと良いのだろう。
因みに彼女は『青陰ハル』という。さっきも言ったとおり俺の幼馴染で、クラスメイトだ。彼女は常に大人しく、言動も常に淡々としている。それも相まってか、黒髪ロングという髪型が非常に似合っている。
「―ところで、なんであんなに驚いたんだ?」
「少し考え事をしていただけだ。」
いつも冷淡な彼女の考え事とは何なのだろうか。
「考え事?」
「君には関係の無い話だ、あまり気にしなくていい」
そう言われると余計に気になるのだが…。
「余計に気になる」
「君には関係の無い話だと言っているだろう!」
そうこうしている内にも時間は進んでいて、時計は登校時間の少なさを物語っていた。
「やっべ!急ぐぞ!」
言いながら彼女の腕を掴み、走り出す
「えっ、ちょっ!待って!」
彼女の声を無視してできる限りの速度で駆けた。
◆◆◆
「ふぅ、何とか間に合ったみたいだ...」
胸を大きく上下に揺らしながら言葉を吐き出す。
「いきなり...!走り出さないでくれ...!」
彼女はもちろんというか、やはりというか息が上がっていた。
まぁ、俺もだけど。
「いいじゃないか、間に合ったんだし結果オーライだろ?」
実際のところ後3分ほどで校門は閉められているところだったのだ。納得してもらわないと困る。超困る。
「まあいいが...!走る時は走るって言ってくれ!」
長い黒髪を揺らしながら本日2度目の抗議をされた。
「これからは気を付けるよ」
と少しだけ反省の素振りを見せた。
返事はもちろん「ならよし」で、俺達はクラスへと向かった。
話は随時更新していく予定ですが、次話投稿に時間がかかる場合があります。その際はお待ちいただけると幸いです。