05
次の日、山穴に行くとアルは昼寝の真っ最中だった。
せっかく、お菓子を持ってきたというのに。
村でお菓子は貴重で滅多に食べることはない。
今回は昨日の魔物退治の報酬でルドルフがくれたものだ。
一緒に食べようと思ったのに。
なかなか起きそうにない。
今日はもう薬草も取ってきてしまったからやることもないし。
空を見上げると雲一つない青空だ。
「Cause you, you've got this spell on me
I don't know what to believeー♪
Kiss you once now I can't leaveーー♪♪
Cause everything you do is magicー
But everything you do is magicー♪」
思わず口ずさむ。
「--- 綺麗だ ---」
振り向くとアルが目を丸くしてこちらを見ていた。
「アルおはよう。起こしてしまった?」
「・・・・い、いや。天使かと思った。」
「?」
アルの言っている意味がよくわからない。
返事に困る。
「とても素敵な歌だったよ。言葉に出来ないくらいに。」
「そう?」
「そうだよ!!将来は歌手になれるね。きっと王都へ行ったら歌姫としてもてはやされるよ。」
「私は将来、騎士になる。」
「・・・・・」
なぜ、何も言わないのか。いきなり黙られる。私は何か変なこと言ったかな?
「どうして?」
ようやくアルが口を開いた。
「だって騎士になれば、安定した給料が貰える。」
「え?それだけ?」
「うん。」
「ぷっ。はははは(笑)リーは面白いね。」
なぜか笑われる。私は真剣なのに。
「ごめん。ごめん。怒らないで(笑)でもリーには難しいかもね。戦に出たら小さいからすぐ飛ばされてしまいそうだ(笑)」
「大丈夫。」
「大丈夫って(笑)剣は扱えるの??騎士になるのは厳しい道のりだよ。」
「使える。」
なんだか馬鹿にされているような気がして、魔力を使って剣を出してみせた。
「驚いた。」
そ言って、本日二度目の目を丸くしていた。
その後はお菓子を食べながら他愛のない話をした。
途中、アルは騎士なのか聞いたら笑いながら否定されてしまった。
もうほとんど体の傷が治ったアルは山穴から出て行っていまうのだろうか。
なんだか寂しい。
---山を下りると村の様子がなんだかおかしい。
いつもは静かなのに今日に限って騒がしい。
じい様が心配だ。
早く帰らないと。
途中の英文はMagicという曲の一部分をお借りしたものです。